2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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青野慶久氏(以下、青野):それでは、本題に入りたいと思います。「変える覚悟、変わる覚悟」。1年前、この場所で「リスクか、チャンスか」というタイトルで、日本で継続する4つの問題を取り上げさせていただきました。それから1年たちました。その結果、どう変わってきたでしょうか。
まず、「エネルギー問題」。1年前は太陽光発電、風力発電、電力をつくるところの話題ばかりでしたが、この1年で水素という新しい手段が注目されています。電気を水素に変えれば、貯蔵しやすくなり、輸送もできる。この水素社会に向けて、たくさんの企業が活動を始めています。
「持たざる経営」はいかがでしょうか。1年前、ここでUberを取り上げさせていただきました。ところが、まだまだ理解が進んでいないようです。この記事ではウーバライゼーションという言葉を使って、「持たざる経営」について経営者の関心が集まっていることを紹介されています。
「少子高齢化」はいかがでしょうか。すごいことが起きました。先月、安倍総理が発表した内閣改造、新3本の矢の1つが、出生率1.8です。ついに数値目標が出ました。昨年の出生率が1.42ですから、随分高い目標になります。でも、この国家レベルで数値目標が出たことは、大変すばらしいことだと思っています。
それから、「多重下請け構造」はいかがでしょうか。残念ながら、最近人手不足でむしろ悪化しているんですって。この記事でも「格差がさらに広がっていますよ」と。そんなことが紹介されています。何とかしないといけない、何とかしないといけない、うーん……変えなければ。
やっぱり、ここで必要なのは「変える覚悟、変わる覚悟」です。変えて、困難が起きようとも、それを受けとめて乗り越える、その気持ちを持たないといけない。今回はこれをテーマにさせていただきました。
今日は新しい3つのテーマをご紹介したいと思います。「長時間労働」、「地方創生」、「新しいSI」、この3つの日本が抱える問題について、もうすでに覚悟をもって取り組まれているゲストを今日はお招きしております。ぜひ、先人に学んでいきましょう。
まずは1つ目のテーマ、「長時間労働」です。もし、少子高齢化を国家レベルで解消しようとしても、企業が長時間労働を励行している状態が続いていたら、これは子育てに参加することも、介護に参加することもできません。まずは企業がこの長時間労働という悪い習慣を手放さないといけない、変えないといけない。そんなふうに思います。
実際に私のことを振り返りますと、むしろ長時間労働、大好きでした。(スライドのスケジュールを指して)これは私が子供が生まれる前の頃のスケジュールになります。いっぱい詰まっていますね。ちょっと見ていきますと、月曜日、午後6時半から何か定例会議が入っていますね。そして夜8時から経営会議が入っていますね。もうめちゃくちゃですね。こんな経営会議、とてもじゃないけど子育てしてる人は参加できません。
また翌朝、火曜日の朝8時から事業戦略会議ですね。こんなことして頭働くんでしょうかね。私もこういう働き方が大好きで、もうとにかくスケジュールをいっぱい詰めていました。
ところが、私にも子供ができまして、今年1月、第3子が誕生いたしました。そして私は半年間、4時に退社するという、4時まで社長という、これを実践いたしました。(スライドが切り替わる)これが今年のスケジュールです。4時から下は私、スケジュール入れられなくなっています。
こう比較しますと、以前働いていた時間がこれぐらい、それに対してこの4時まで勤務をやっていた頃働いていた時間これぐらい。感覚的には半減しているわけです。こうなりますと、もう私も考え方を変えなければいけません。もうそれまでのやっていた仕事のスタイル、それはもう、来た仕事を片っ端から撃ち落とすという仕事のやり方をしていました。
ただ、この時間が半減しますと、もうこういう働き方は通用しません。絶対やらないといけない仕事は何なんだろうか? インベーダーゲームでいうと、UFOはどれなんだろうか? もう、この目の前のザコキャラは無視して、とにかくこの点数の高いUFOだけを狙っていくと、こういう考え方にシフトせざるを得ませんでした。
私も自問自答しました。じゃあ私にとってUFOは何だろうか? UFOは何なのか。私、社長にとってのUFOとは、意思決定、それから価値観の浸透です。この2つだけです。あとはもうザコキャラです。とにかく、この意思決定と価値観の浸透、この2つだけに絞って仕事をすることで、4時までに仕事を切り上げることができました。
そして、もっと驚いたのが、私が積極的に家事・育児に参加することで、私はそれまで会社のことしか知らなかったのが、それまで知らなかった医療でありますとか、教育でありますとか、自治体の動きでありますとか、そういったことまで理解できるようになりました。
それまでの私は、会社の中のことしか意思決定できませんでした。でも今は、社会のことを私は知っています。もっと社会の視点に立って意思決定することができます。私は1つ、社長としてレベルアップした気がしました。
今ははっきり言えます。長時間労働は諸悪の根源です。私はようやくここで気づいたわけですけれども、これを10年も前からずっと訴えられている方がいらっしゃいます。それが、ワーク・ライフバランスの小室社長です。
今日は小室社長にお越しいただいておりますので、ぜひお話をお伺いしたいと思います。大きな拍手でお迎えください。
(会場拍手)
青野:わざわざお越しいただきまして、どうもありがとうございます。
小室淑恵氏(以下、小室):ありがとうございます。
青野:今日はずいぶん聞いておられる方もいらっしゃいますしね。長時間労働をしてそうな人が多そうですけれども(笑)。
小室:ございますね。はい。
青野:まずお聞きしたいのは、もう10年も前、世の中がまだまだ長時間労働が当たり前だった時代に、なぜ小室さんが、この問題が一番大きな問題だと気づかれて、そこに覚悟を決められたのか。
小室:私、前職は資生堂に勤めていたんですけれども、社内ベンチャーを起こして、育児休業者の復帰支援のプログラムをつくったわけです。育児休業中の女性が復帰できる職場をということをやっているうちに、いろんな企業さんを回っていたらですね、結局、復帰した女性がその後、長時間労働の職場で辞めてるということがわかりました。
さらに言うと、その頃、私にはなかった視点で、確かキャノンさんだったと思うんですけれども、「うちはもう男性の育休者がいて、男性の育休者だって復帰したら長時間労働の職場ではなかなか両立できないぞ」とかですね。
それから、ある家電メーカーさんなんかは、「今もうメンタルで休んでる男性がたくさんいるんだよ」という話で、もう育児、介護、メンタル疾患、男性、女性、全ての方が復帰を一生懸命支援しても、その戻った職場が長時間労働だったら、結局、介護なんてこれから非常に多いですけれど、両立できない。これに最初気づいたんですね。
そしたらその後に、今度は私、自分自身が起業をしようとして、資生堂に辞表を出した翌日に、自分が妊娠していまして。私は大学時代はネットベンチャーでインターンをしていましたから、私の中にもベンチャーを起こすというのは、「夜討ち朝駆けでやるんだ」「寝ないでやるんだ」という意識があったんですよね。
なので、ものすごく打ちのめされてしまって。そのときは、長時間労働を是正する会社をやろうという自分の夢を、1回あきらめようとしたんです。
青野:そうなんですか。
小室:もう起業できないと思って。そのときに、一緒に起業したメンバー、今度大阪の会場で対談させていただきますけれども、同じく長時間労働の楽天から転職をしてきた大塚が「何言ってるんですか、これからワーク・ライフバランスの会社やるんですよね」と。「あなたが両立できなくて、どうしてお客さんにコンサルできるんですか?」って言われて。
そこから「そうだ、それをやるんだった!」というので、もう覚悟を決めまして、残業ゼロ。今や、全員残業ゼロです。それから、有給消化100パーセントで会社をやるというのを決断して、9年間経営して連続増収増益で進んでいる形ですね。
青野:すごいですね! ベンチャーを立ち上げたのに、残業ゼロ、有休消化100パーセント、すごい革命的なことだと思います。ただ、これを恐らく特別な目で見ておられる方とかもね、けっこういらっしゃるんじゃないかと思うんですけれども、このあたりは特別なもの……?
小室:私が起業して、残業ゼロというのを決めたのも、一瞬でできたわけではなくて。私はお迎えがあるから、もう5時台には会社を出なきゃいけないからというふうに、最初は私だけって決めたんです。
ですが、あっという間に他の社員と自分に労働の時間の差があることが、これほどまでに自分に肩身の狭さと役に立たない感というのを感じさせるんだなということを実感しました。
人って、肩身が狭いと意欲が落ちて、意欲が落ちると成果が出なくなるんですね。それを実感していた頃に、私の右腕の大塚まで妊娠してですね。「ああ、これって全員順番に来るんだ」ということがわかったんです。
その当時は育児のイメージを持っていましたけれども、今や弊社の社員は、介護している社員、それから旦那さんが鬱病で治療中でそれをサポートしながら仕事をしている社員とか、いろんな社員がいるわけなんです。なので、もう全員に順番に来るというのがわかったところから、全員残業ゼロにしようと。
小室:ただ、やっぱり最初はいっぱい反発を受けて、「やりたいからやっているんです」とか、「人が足りないからやっているんでしょ」とか。一番効いたのは「小室さんだって若い頃は猛烈にやって、それで成長したんでしょ」と。
青野:なるほど。
小室:「自分だけ成長しちゃったからって、僕たち若者にはその成長の時間を与えてくれないっていうのは、どういうことですか」ということも言われました。でも、私はそのとき「ごめん、それは結構古い話だよ」と。
これはみなさんご存知かわからないんですけれど、人口ボーナス期という時期は、日本の60年代から90年代の半ばなんですが、若者がたっぷりいて、早く安く大量にで勝負をして勝てる人口構造のフェーズという時期があるんですね。日本は90年代半ばに終わりました。中国はもうすぐ終わります。
この人口ボーナス期は、若者がいかに量をやって、熟練性で勝負する仕事の熟練性を上げて、そのスキルがその後10年ぐらい使えるので、10年、20年使えるので、それで勝ってくというようなモデルができた時期だったんだよねと。これは若者の特徴じゃなくて、日本の90年代半ばまでの……。
青野:産業構造の話なんですね。
小室:産業の勝てるパターンがそうだったんだよねと。今、90年代からの人口ボーナス期、若者ちょっとしかいない、高齢者がたっぷりいて、もうどう考えても国全体の構造として高付加価値型のビジネス、もう安いものは海外に出すかPCにお願いするかしないといけなくて、数をこなしてはならない。さっきのインベーダー、全部撃ってはならないっていう(笑)。そういう時期になっている社会構造なのよというのも、もう一生懸命説明をして。
人口オーナス期に勝てる成長の仕方は、むしろ付加価値を職場外からどうやって毎日持ってくるか。さっきの育児で医療のこと、社会の構造を知ったというようなことを、どれだけデイリー、社会、会社外で勉強してくるかだよ。つまり、日常の生産性を上げるには、もうライフで勉強しろということだよというのをですね(笑)。
青野:なるほど。
小室:実はすごい厳しい社長なんですけれども(笑)。
青野:たぶん聞いておられる方も、「いや、若い頃はいっぱい働かせたほうがいいんちゃう?」って思う方もいっぱいいらっしゃると思うんですけれど、もう時代は変わったと。
小室:そうですね。先日リクルートさんで講演をしたときに、シルク・ドゥ・ソレイユを昔やっていたという会場で、ものすごい数の社員さんが聞いてたんですけれども、その人口ボーナス期とオーナス期のプレゼンテーションを20分間やってですね。
その後に社長が「さあみんな、今のプレゼンを聞いて、それでも若い頃は猛烈にやるっていう人?」って言ったら、実は私が来る前にみんな若い頃は猛烈にやりたいっていう札を上げていたらしいんですけれども、札、しーんって(笑)。上がらなくてですね。やっぱり知らなかったんで。
青野:はい、知らないんですね。
小室:はい。ずっとそれで先輩たちだってみんなすごい位置についてる、自分だってそうなりたいんだっていう、もう日本ではできない成功パターンを憧れてやっているという。これ、すごい不幸ですよね。
青野:なるほど。不幸ですね。あと、よく言われる言い訳が、その若い人に続いて、経営者も違うと。経営者が猛烈に働いて、社員はワーク・ライフバランスで、経営者はもうワーク・ワークだ、こういう主張をされる方もいらっしゃるんですけど、これはいかがですか?
小室:うーん……もう私自身が、いかに経営者が時間外に自分のインプットをしてくるかこそが重要だと思っているのと。あとはもう、私がいなくても回る状態をどれだけつくれるのかが真のマネジメントだと思っているので。属人化の排除ですよね。私は、社長がめちゃめちゃ忙しい会社は危ないと思っていてですね。「その人じゃないとできない仕事がまだそんなにあるのですか?」と思います。
私自身も、非常に今いろんな状況を抱えていて、仕事にかける時間が持てないんですね。それから、政府の仕事が多過ぎて、とにかく今は少子化の問題を解決しなきゃいけないので、うちの仕事の意思決定とともに政府の委員会に割く時間というのはすごくとられます。一緒に総務省のプロジェクトをやっていますけど、恐ろしく時間かかりますよね。(笑)
青野:はい。そうですね。
小室:そして、恐ろしく意思決定が遅いですよね(笑)。
青野:そうですね。
小室:でも、そこに時間を割いていくためには、さらに労働の時間も少なくなきゃいけない。それでも、増収増益を達成できるためには、いかに権限委譲して、その人たちが自分たちで意思決定できるかという、育成が勝負なのかなと思っています。
青野:なるほど。これからの経営者は、権限委譲をしっかりするとともに、外でインプット、アウトプットをいかに増やすかと。それをやらないと、もう会社として高付加価値にいけない。
小室:うん。本当にちょっとした外とのコミュニケーション、とってきた人脈で解決したものがいくらでもありましたしね。
青野:本当ですね。
小室:はい。経営者こそが、どんどん職場外に出れば、(長時間労働の是正が)できたと思うんですね。
青野:私もたぶん、子供を育てる経験がなければ、小室さんとお会いすることはなかったかもしれませんしね。こういうカンファレンスでこういうお話をすることもできなかったかもしれません。
小室:とにかく、私自身に制約を持ったときに、初めて理解するんですよね。今までのやり方をちょっとずつバージョンアップしてたら、絶対だめだと。最初に決めたことが、一人ひとりがメールアドレスを持つなんていうことは、これはもう危な過ぎると。小室@にメールが来るなんていうのは危ないと(笑)。
青野:属人的なやり方だと。
小室:私が1週間メール見れなかったら大変なことになるもんね、もしくはメールをチェックするだけの人を置かなきゃいけなくなるもんねと。それで、サイボウズさんのメールワイズを導入し。
青野:ありがとうございます。
小室:さらにkintoneになりと、どんどん進んだわけですけど、一人ひとりがメールを持ったりしない。もう、それは1つのアカウント、講演担当なら講演担当、取材だったら取材担当と決めたアドレスを、5人なり6人なりが常にチェックするという手法に変えてから、有休消化100パーセントができるようになったわけです(笑)。
青野:なるほど。それはワークシェアができている状態ということなわけですね。
小室:そういうことですよね。それができていなかったら、3日休み取るのなんか、怖くて誰も取らないですよね。取ったら仕事がたまるだけで、メールの未読が1,000とかになるだけですから。
青野:そうですね。離れられなくなっちゃいますよね。
青野:先ほど、政府のお話も少し出ましたけれども、政府もしくは国家レベルでの変化というのは、どういうふうに感じておられますか?
小室:この2年半ぐらいですかね、大きな変化をしたと思うんです。ただ、全体的に大きな変化をしたんですが、最初はちょっと的外れだったなと思ってます。
青野:そうですか(笑)。
小室:この安倍政権というのは、少子化対策と女性活躍には最初からとっても熱心ではあったんですけれど、じゃあ具体策はというと、3年間抱っこし放題とかいうわけですね。
青野:なるほど、昔ながらの。
小室:「抱っこし放題はつらいんです」と……わかります?(笑)それから、女性、女性と言い過ぎて、これも女性が優遇されることで、何か下駄を履かされてその地位に来たかのように思われる、これは頑張ってきた女性ほど嫌なことです。
何かそこに注目をしてくれたことは正しい、だけど具体策がどうしてそうなっちゃうのというのをずっと感じていたんですけれど、たしか昨年の12月頃に大きなパラダイムシフトがあったなと感じています。
ずっと政府に言い続けてきたことなんですけど、内閣府のデータで、なぜ少子化になっているのかがわかるヒントがあって、1人目を持った夫婦、子供を持つ・持たないは個人の自由ですけれども、1人目を持った夫婦が少なくとも2人目、3人目を持ちたい、子供を持ちたい家庭であるということがわかりますよね。子供が好きである可能性がある。
「その1人目を持った家庭が、2人目、3人目にいかなかった要因って何だろうか?」というのを調査したときに、5年間追跡調査をしたら、その後、2人目を持ったか否かに一番影響を与えていたのが、1人目が生まれたときの夫の帰宅時間だったんですよね。
青野:うわー!
小室:帰宅時間が遅く、家事・育児の参画時間が短い家庭ほど、2人目以降が生まれていないというデータが、きれいに出てたんです。だからもう、4年も前のデータなんですけれど、なかなか見る人が見ないとその意味がわからないので、あんまり話題にならなかったものが、昨年末、官邸の中ですごく話題になったんですね。
今まで女性と少子化に注目して、何か女性にしてあげようと思ってたけど、「実は少子化対策と女性活躍をやるのに必要なのは、男性の労働時間改革じゃないの?」と。
青野:なるほど!
小室:このことが大きく転換したんです。本当に大きなぶっちゃけ話ですけれども、私、昨年の9月から安倍内閣の産業競争力会議の民間議員をやってるんですけれども。
昨年の12月より前は、総理との会議なので、事前に役人との打ち合わせがいっぱいあります。「こういう発言をする予定です」という話をすると「長時間労働の是正は、経済団体とのさまざまな折り合いがついておらず。官邸でも結論が出ていない話題なので、もう少しトーンを抑えてね」みたいな。
青野:ああ、なるほど(笑)。
小室:でも私、気にせず会議で言うんです。そうすると、その後ちょっとお電話が(笑)。なんとか大臣とかからかかってくるみたいなことが、実際にあったんですね。それが、12月から本当に変わりました。「長時間労働の是正のポイントこそが重要なので、もっと言ってください」とか言われて(笑)。
青野:そうですか。
小室:骨太の方針に、急に4行入ったりとかですね。
青野:入りましたよね。びっくりしました。
小室:本当にその前までは、結論が出てないからと言われて、何かどっかに小っちゃく入れようとするんです(笑)。それが急に昨年の12月から、「もっと前のページへ、どうぞどうぞ!」みたいな感じで(笑)。
青野:すごい前進ですね。
小室:大きな変化がありましたね。
青野:パラダイムシフトですね。
小室:はい。
青野:もう本当に、小室さんが変える覚悟を決めていただいて、日本が大きく動いてきたと、そんな感じがいたします。
最後に、この長時間労働脱却へ変える覚悟、まだまだ決めきれない方もいらっしゃると思いますので、もしよろしければメッセージをいただけませんでしょうか。
小室:そうですね。私、実際に企業の残業を減らして業績を上げるというコンサルを900社にしてきたんですけれども、驚くほど業績が上がっています。ある建設系の企業さんで、6億だった利益が今、40億です。
それから、リクルートスタッフィングさんなんかでは、労働時間、休日労働86パーセント削減です(笑)。今12パーセント成長していて、一番おもしろいのが、女性従業員が産む子供の数が1.8倍になったんです。
これはなんでだかわかります? 今、この数字だけ見てもよくわからないですね。それは、今まで女性たちは長時間労働なんかで勝負させられると、月末、年度末に夜討ち朝駆けでお客さんのところを回れる人しか、この勝負には勝てないわけです。
なので、自分は最初から、どんなに頑張ったって最後のこの時間外勝負で積む数字が積めないから、最初からこの勝負には勝てないってわかって、意欲がどんどん落ちていたんです。
それが、リクルートスタッフィングさんは、ある一定の時間内で勝負をしなさいというルールに変えたんですね。賞をとれるのは、ある労働時間以内のチームだけというふうに、チーム表彰の基準を変えたんです。そうしたら、一気に情報を共有するようになり、かつ短時間で成果を上げる人が偉いという話にもなり、育児中の女性が上期1位を達成したんですね。
青野:おお、ゲームのルールを変えちゃった。
小室:そういうことです。これって時間当たりの生産性。今まで日本は期間当たりの生産性だったわけですけれども、この時間当たりの生産性にルールを変えたら、何が起きるって、今まで勝負に本気で取り組めなかった人たちが、全力で働き出すんです。
そうやって時間に制約があっても勝てるんだったら、子供も産みたいと思う人が出て、業績も上がる、女性は元気になる、生まれる子供の数が増えるというですね。これ、日本が今やらなきゃいけないことなんですよ(笑)。
なので、いろんなタイプの従業員のモチベーションも全部上げながら、成果も上げながら、この国の課題解決をする。じゃないと、この国自体が沈んじゃいますもんね。
こういうことができる手法というのは、経営者が評価基準を変える。期間当たり生産性じゃなくて、時間当たり生産性で徹底的に競わせるということをすれば実現できるので、ぜひそれを、一緒に動いていただきたいなと思います。
青野:みなさん、よろしいでしょうか。ゲームのルールを変えて、ぜひ社会を変えていきましょう。小室さん、本日はお越しいただきまして、誠にありがとうございました。大きな拍手でお送りくださいませ。
小室:どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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