CLOSE

CMOを目指すマーケティング人材のための「キャリアの磨き方」(全3記事)

マーケティングが変われば経営が変わる--米国との違いから考える日本の課題

11月10日、渋谷ヒカリエにて開催された「CODE CONFERENCE TOKYO 2015」。「CMOを目指すマーケティング人材のための『キャリアの磨き方』」をテーマに3者が話しました。。本パートは、「日本とアメリカではマーケティングの定義自体が違う」というフロムスクラッチ安部氏の指摘から始まります。日本では、広告と同義で語られがちなマーケティングですが、本質的な意味では非常に多岐に渡る仕事。CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)もCEOと同じ経営者目線を持つことが求められます。

マーケター、アメリカと日本との違い

小野進一氏(以下、小野):それでは安部さん、代表者でマーケターとして仕事もされていますが、どんな仕事をされていますか?

安部泰洋氏(以下、安倍):先ほど西井さんがおっしゃったようにCMOとしての仕事はなにか、ということだと思うんですが、僕自身は、経営者であり、全社的なマーケティングの責任者でもあるかなと思っています。

これ具体的にどういうことかというと、そもそもCMOという言葉が流行り始めたのが、直近この10年ぐらいで、日本で徐々に流行り始めました。でもいまだに、アメリカと比べると日本のCMOの設置率とアメリカのCMOの設置率って、アメリカではフォーブス、フォーチュン誌の500社にインタビューすると60%ぐらいがCMOを設置をしていると。

日本の今の現状と比べて、この10倍以上の差って何かというところから、マーケターの仕事と、僕の仕事をお話しするとわかりやすいかと思うんです。

そもそも、CMOが設置されているか、されていないかというよりも、マーケティング自体の定義が、アメリカと日本で大きく違いますと。これが、CMOが設置されるか、しないか、育てられるか、育てられないかの違いだろうと僕は思っています。

先ほど、西井さんがおっしゃっていましたが、アメリカでのマーケティングとは何かというと、商品のリサーチなど市場調査から商品の開発設計に携わり、誰に何をどのように広めていくのか、物流までを含めて全部マーケティングと呼んでいます。

当然、多岐にわたる部署なので、統括するマーケティングの責任者が必要であるという発想のなかで、CMOという概念がアメリカで生まれたということです。

それに対して日本では、「皆さんマーケティング施策、何をやっていますか?」と聞かれたときに、何て答えるかというと、「マーケティング=広告」なんですよね、日本というのは。

そういった意味で言うと、「広告部門の責任者」が結局、CMOと言われがちなんですが、それは企業のマーケティングの責任者であって、CMOではありません。

西井さんがやられているような仕事というのは、まさにCMOの仕事であり、CMOの本質的なものと定義できます。

それに置きかえて、自分の今の仕事についてお話すると、商品をどんな市場のなかで、商品設計、デリバリなど、どんなサービスを皆さんに提供すれば、産業が変わっていくのかをプロダクト開発から商品リリースまで俯瞰的に見ているという意味で言うと、まさにCEOでありCMOでもあるのかなと。

アメリカではどの職種から社長に登用されるケースが多いかというと、圧倒的にCMO、マーケティング出身が多いです。日本は、どちらかというと営業とか、最近は技術者が増えてきていますが。

「CEOの仕事=CMOの仕事」という定義で捉えると、商品開発、企画、リサーチ、販売、デリバリなど全部やっているというところが、僕自身の仕事であると思います。

小野:安部さんは、マーケティングの仕事柄、仕事の種類のなかで何が一番好きですか。

安部:そうですね。どこまでそれを定義するかによりますが、今の段階でいくと、やっぱりマーケティングが。すごく大きな話をすると、マーケティングが変われば経営が変わるぐらいのインパクトがある、1つのテクノロジーというか、キーワードだと思うので、そういった意味で一番好きかもしれないですね。

小野:経営者よりも、そっちが好きですか? どうですか。

安部:感覚的に言うと、今の日本でCMOを語るのであれば、CEOと同じ目線であったり視点を持たなければいけないということだと思うので。先ほどのオイシックスの社長の話は、すごくおもしろいですけど。

CEOとCMOって、視界というか、役割の違いだけで、見解であったりとかっていうのは、ほぼ同じであるという立ち位置の違いでしかないと考えると、今僕はCEOであり、上の立ち位置からマーケティングを見ており、当然うちにもCMOというポジションもありますし、そういう人間もいますが、そういう意味ではまさに西井さんのようなかたちで、下からそれを支えているというかたちなので、今の仕事はすごく楽しいかなと思いますね。

小野:なるほど。すばらしいですね。随分調達もされて……。

安部:いいえ、それはないです(笑)。

マーケッターが持つべき経営者目線

小野:続いて川上さん。まさしく今、商品を預かっているマーケターとして仕事をされていると思うんですけれども、具体的にお願いします。

川上智子氏(以下、川上):わかりやすいところでいくと、一番心血注いでいるのは製品開発だと思います。私たちの化粧品販売というのが、単品通販化粧品事業という言葉を聞かれたことがあるかもしれないんですけれども。

化粧水とか、1つの商品を入り口にきっかけで入っていただいた後、それを定期的に月1回とかって買っていただいて。女性だとわかるかもしれないんですが。

その商品の売り上げだけで6割ほどを占めるので、事業の売上の6割ぐらいはその商品にかかっています。そんな商品をいかに売り出すかということに対して心血を注いでいます。

CEOとCMOの話でいくと、私の行っている事業部長という立場がまさにそうです。20億円を預かる経営者のような位置づけで仕事をしています。数年前までは製品開発に心血を注いでいるだけでよかったんですけれども、それは販売にはなるんですけれども商売にはならなくて。

何か商売をするために、やっぱりコストやリソースの最適化みたいなことで、製品開発から物流まで全部を一気通貫で見渡したときに、人材をどこに采配すべきかということを、組織として、経営感覚を持ちながらやっているというところで、CMOに近いCEOというか、普通のマーケターよりかは少し役位が上がった感じで仕事をしているのかなとは思います。

マーケターになるまでのきっかけ

小野:マーケティングの仕事をされている方が、この中にもたくさんいらっしゃると思います。そこからマーケティングの一部ですけれども、もっと広い範囲での、今おっしゃったような物流とかを含めて売上を上げていかなければいけない。

マーケティングが売上を上げていくということではあると思うのですが、なかなか難しい仕事でもあると思います。日本だと、部長、本部長、事業部長やチーフなんとかが、そうなっていくんですけれども、そこに行きたいと思っていましたか?

川上:思っていました。

小野:わりと日本って、残念なことに女性でそういうポジションにつかれる方が少なくて。私も社長業が10年以上になりまして、こんなことを言うのも何なんですけれど、女性がそのポジションにつくと病んでいくみたいなことが……(笑)。

川上:(笑)。

小野:仕事はできるんです。できるけれども、肩書きを与えて給与を高くしたりすると、「そもそもそういう仕事はやりたくなかった」みたいなことを言われたりっていう経験が結構あるんですが、どうですか、そういうところは?

川上:思ってました。そのきっかけというのが、最初は新規集客の部分だけ担当していたのが、1,000人に1人、いかに買ってもらうかって集客してくるんですけれども、そのあとリピートして続けてもらうかっていう視点では、仕事ができていなかったんです。

私たちの事業は、新規集客だけじゃなくその人による継続的な売上が必要なので、そこまで視野を広くしていかないとつまらないみたいな気分になって。仕事をし始めて3、4年ぐらいでは思ってましたね。

小野:じゃあ、20代前半ぐらいから。

川上:そうですね。

小野:周りの人って、そんな感じですか?

川上:いや、違うと思います。でも、なんかこの話ネガティブじゃないですか(笑)。

(会場笑)

小野:性格ですか、それは?

川上:どうでしょう。「意味のないことをしたくないな」という性格かもしれません。目的意識が、新規集客という、組織で断絶されているなかの一部の役割を担っているだけだったので、それだけだと企業としての目的を達成できないじゃないですか。目的志向というか、そんな性格だったんだと思います。

西井:川上さん、新卒でJIMOSに入られたときから、もともとマーケティングというか、一気貫通な思いでその会社に入られたんですか?

川上:いえ、思いはないですね。化粧品会社に就職したときは、旦那の給料のちょっとした補助になればいいかなぐらいの、軽い気持ちだったんですけれど。

西井:やっている間に、じゃあ。

川上:やっている間にです。最初はコミュニケーターという販売員からスタートするんですけれども、その役割がとても小さいので、多分イライラしていたんです。

西井:そうか、我慢強い性格っていうことなんですかね(笑)。

お客様と向き合う仕事をしながら自分も発展したい

小野:今の話と通じるものがあるので、西井さん、いろいろな職位を持っていますけれども、きっかけは。

西井敏恭氏(以下、西井):きっかけ……。難しいですね。職位、旅人とかも? 職位にならないですね(笑)。

前職でドクターシーラボという化粧品会社にいましたが、もともと化粧品はまったく興味ないんです。完全にデジタルマーケティングというのをやってみたいという思いで、前職はやっていました。そこで仕事をしていくなかで、日本にマーケティングが必要なんじゃないかなって。

さっき川上さんの話でおもしろいなと思ったのは、マーケティングって「売れる」じゃなくて、「売れ続ける」が大事なんです。

売れ続けてなんぼなんで、そういうふうに継続して買ってもらうことを、日本ではまだまだできていないなと思ったところから、自分の会社を作って、日本のマーケティング業界に浸透させていきたいという気持ちがあります。

それから、なぜオイシックスのCMOでありながら社長なのかと言うと、もともとオイシックスには全く入るつもりはなかったんですが、前職のドクターシーラボをやめた半年ぐらいに、また世界一周中で南極に行っているときに、(オイシックスの)高島社長からスカイプで連絡がありまして。

「西井さん帰ってきたら就職してよ」と言うから、「いやいや、独立するからやりません」と言ったんですけれども、高島社長に「2つやりゃいいじゃん」って言われて。

私自身、BtoCのお客様と向き合う仕事をやりながら、自分も発展したい、どんどん進化して、そのサービスを外部に提供できたらすごく素敵なんじゃないかと思って、結果的に社長とCMO、2つ肩書きを持っているという感じです。

小野:今現在、2つの肩書きを持っているメリットは何かありますか?

西井:JIMOSの田岡社長とよく飲みに行くのですが、そのときに、「こういうことをやっているのは日本で西井さんだけだから、西井さんにはすごく価値がある」と言ってくれるんですね。

いわゆるマーケティングってどんどん変わっていって、10年前に言っていたマーケティングと本質的には変わらないけれども、手法が変わっています。その手法に対して、常に僕自身がアップデートしながら追いかけてやっています。

そういうことを自分でやりながら、外部にサービスを提供できる。そういう意味だとよかったんじゃないかなと思っています。ただ、大変ですけどね。人の2倍働かないといけないので。50パーセントずつじゃなくて、どっちも100パーセントなので、結構大変です。

小野:それで、時々旅に出ちゃうんですね?

西井:そうです、はい(笑)。

(会場笑)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • “退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!