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Stanford Graduate School of Business Stanford GSB 2015 Entrepreneurial Company of the Year(全4記事)

「アリババを102年続けたい」ジャック・マーが86年後のビジョンを語る理由

シリコンバレーの優秀な起業家を讃えるために作られた賞、The Entrepreneurial Company of the Year Awardをアメリカの会社以外では初めてとなる受賞を果たしたアリババ社。その受賞式にて元CEOのジャック・マー氏が、Yahoo!の創業者のジェリー・ヤン氏を交えてアリババ社の歴史やビジョンを語ります。ジャック・マー氏は「アリババ社を102年経ってから成功したかどうかを語れる」と言います。彼のビジョンの1つは、アリババ社を102年続く会社にすることであるため、そのプロセスで成功しても、まだ失敗する可能性はあると主張します。では、なぜ102年が目標なのでしょうか? また、自身がシアトルで学んどこと、企業家に大切なこととはどのようなことでしょうか? ビジネスの成功者2人が語ります。

過去の受賞者、選考委員の紹介

ジェフ・ヤン:こんにちは、みなさん。ようこそ。Encore Award 2015にいらっしゃったみなさんと、ネット上のすべてのみなさんを歓迎します。選考委員長のジェフ・ヤンと申します。Graduate School of Business を代表して、今年の受賞者であるアリババ・グループに敬意を表して足を運んで頂いたことを感謝致します。

The peninsula Chapter of the Stanford Business School Alumni Associationはthe Entrepreneur of the Year Awardを1977年に創設しました。70年代後半にシリコンバレーで立ち上がった起業家のたちのスピリットを評価するためです。

最初の栄誉は、1977年にRome corporationのCEOケン・アッシュマンに与えられました。この革新的な企業のCEOに与えられた5年後、この賞はthe Entrepreneurial Company of the Year Awardに変わりました。それ以来37の企業がこれを受賞してきました。

アップルは2回受賞しています。1981年と2005年です。本日アリババ・グループは38番目にして、初のインターナショナル受賞者となります。おめでとうございます。

(拍手)

オーディエンスのみなさんや、キャンパスにいるみなさんに過去の受賞者について知っていただきたいと思います。ジェリー・ヤン、もちろん本日登壇していただきます。

(拍手)

ヤフーの創設者で、1998年の受賞者です。チャック・シュワブ、チャールズ・シュワブの創設者で1999年の受賞者です。

(拍手)

リード・ホフマン、LinkedInの創設者で2012年に受賞しています。リード・ヘイスティングス、Netflixの創業者で、昨年の受賞者です。始める前にこのイベントを支援して頂いた方々と、ご来場頂いたみなさんに感謝を申し上げます。Catalyst partners、Vent Mark Capital、Evercore Partners、General Atlantic、Red Point Ventures、Sierra Ventures、ご協力ありがとうございます。

(拍手)

最後に選考に携わってくれた委員のみなさんです。Benchmarksのピーター・フェントン、Evercoreのストゥ・フランシス、Stanford GSB Fucultyのチャック・ファロウェイ、Andreessen Horowitzのジェフ・ジョーダン、Draperのスティーブ・ジャービソン、KleinerPerkin and Warriorsのジョー・レイコブ、Catalystのフランク・クアトロン、Greylockのデイブ・ジー、Sierraのピーター・ウェンデル、ご協力ありがとうございました。

(拍手)

アリババが受賞した理由

それでは今夜のプログラムと、授賞式に移ります。我々がどのように受賞者であるアリババ・グループを選んだのかを少しお話させてください。我々は毎年突出した会社を選んで、起業家精神を醸成、育成しています。

我々は創造と再創造を行う会社と業界を求めています。また、重要な場面において状況を形成できるグローバルリーダーを求めています。創業者が持続的な到達を追い求めるような、リーダーシップのあるチームも求めています。

アリババはこれらのすべてを期待以上に満たしていると考えています。アリババ・グループは1999年に創業され、中国の杭州市に拠点を置いた、世界最大のオンライン・モバイル企業です。ミッションはビジネスをどこでも簡単に、壮大なスケールで行えるようにすることです。

アリババはそのプラットフォーム上で1,000万のアクティブな販売者を抱え、3億6,700万のアクティブな買い手を抱えています。その数は、アメリカとカナダの人口を合わせた数よりも多いのです。昨年度にはアリババの総流通総額は約4,000億ドルとなり、前年から46%アップしました。

私は最近知ったのですが、中国の携帯電話上で購入されたすべての商品の86%がアリババによるものだそうです。アリババは11月11日をSingles Dayとし、世界最大のショッピング・デーとなりました。

この24時間でアリババは93億を売上げますが、これはアメリカのBlack FrydayとCyber Mondayを合わせたeコマースの総額の3.5倍にあたります。1日平均で3,000万のアリババパッケージが配達されていますが、これはアメリカで記録された過去最大の郵便サービスの量よりも多いのです。

昨年の9月には世界最大のIPOを250億ドルで行いました。このように「世界最大」の功績が多くありながらも、企業としてはまだ若く革新的なのがアリババです。創業者のジャック・マーは今日の世界で、もしかしたら歴史上最高の、革新的で思慮深い起業家とされています。

ではなぜ我々はアリババを選んだのでしょうか? もうお分かりですね。

(会場笑)

Yahoo!創業者がアリババの歴史を紹介

本日は幸運にもジャック・マーと、旧知の仲である著名なネット起業家のジェリー・ヤンをお招きしています。ジェリーに関しては少し説明が必要ですが、このイベントにとても相応しい方です。彼はスタンフォード大の学部と院の卒業生で、スタンフォード大の博士課程だった1995年にYahoo!を共同で創業しましたが、彼の母がいなければ卒業できただろうかと思ってしまいます。

(会場笑)

彼はヤフーのCEOなど様々なマネジメント職につき、2012年まで役員を務めていました。またヤフーの投資、今では有名になったアリババの投資も率いていました。これについても本日お話頂ければと思います。

ジェリーはヤフーとCiscoのディレクターを勤め、最近ではWorkdayや、Lenovoそしてアリババで役員を勤めています。彼とその妻のアキコは、最近まで役員として働いていたスタンフォードに対する慈善家、後援者としてよく知られています。

私自身ジェリーとは20年来の付き合いになります。もし私がお金を払ってジェリーと呼んでもらえるなら、喜んでスタンフォードに寄付しますね。

(会場笑)

それではジェリーをお呼びしましょう。

(拍手)

ジェリー:ジェフ、ありがとう。本日はここに来れたことと、アリババ・グループのトップであり私の友人であるジャック・マーをご紹介できることをとても光栄に思います。ジャックは、自分でも言っていますが100%中国製です。

(会場笑)

しかし彼のストーリーはアメリカン・ドリームを見事に体現しています。お金もコネもない英語教師がイチからアリババを創ったのです。彼は杭州市に生まれました。1972年にニクソンが訪問したことで有名な中国の都市です。

私はこれを知らなかったんですが、彼はホテルに行くまでの、バイクに乗っている間に英語を覚えたんだそうです。毎日9年間、観光客のツアーガイドをボランティアでやって練習していたんです。

そして彼が初めてアメリカに旅行したのは20年前の1995年。インターネットを初めて見て、中国の内外で人々をつなぐポテンシャルに気づいたのです。

1999年に友人たちとアリババを創設しました。最初からジャックと共同創業者たちは、スモールビジネスに焦点を当て、起業家コミュニティを共有することとしていました。これをテクノロジーにテコ入れすることによって達成するというのが、彼らの信念でした。それがスモールビジネスを中国からグローバル経済に持っていくという考え方です。

ジャックは技術者タイプの起業家ではないので、自分でコードを書いたりはしません。しかしあらゆるセンスにおいて先見の明があるのです。たったの15年で、アリババは世界最大のオンライン・モバイル企業になりました。

ジャックでさえも、彼が中国にもたらした変化は予測できませんでした。雇用をつくり、都市においても地方においても繁栄を生み出しました。多くの起業家にパワーを与え、人々の生き方を変えました。生き方だけでなく、オンラインでの買い物や働き方も変えたのです。

ジャックを迎える前に、ちょっとビデオを見てみましょう。

ビデオ:アリババは中国で創業されました。その信念はシンプルです。スモールビジネスは社会繁栄の基盤であるという考え方です。そしてビジネスをしたいと望むすべての人には、成功のチャンスが与えられるべきです。

アリババは世界最大のオンライン市場になりました。そこでは数百万のスモールビジネスが消費者とつながることができます。ビジネスを創業し、経営し、育成していくことがクリックひとつでできるのです。

我々は中国で成長している起業家を支援し、数百万の人々を経済に巻き込み、人々の買い物、働き方、生き方の形を変えます。雇用を生み、イノベーションを促進し、新しいミドルクラスの成長を促します。

アリババは中国で生まれましたが、世界のためにつくられた企業です。いまや世界中のあらゆる場所で、スモールビジネスの成長を支える準備はできています。テクノロジーを活用して障壁を下げるため、未来への商業のインフラをつくっています。そして可能性の領域を広げています。いつの日か、どこかでビジネスをしたいという誰かが、どこでも人とつながれるようになるのです。

アリババが成功したかどうかを語るのは86年後

ジェリー:それでは私の友人を暖かい拍手でお迎えください。ジャック・マーです。

(拍手)

ジェリー:ではこれから30分から35分ほどの間に、ジャックに質問をしていきたいと思います。面白いものになればと思いますが。アリシアはどこにいるかな? 彼女が私に手を振ったらQ&Aを始めます。マイクがセットされたら行きましょう。これは炉辺歓談(fireside chat)ですね。

(会場笑)

GSBはちょっとした火の写真をお見せするにはちょうどいいですね。外は華氏95度(摂氏35度)もあるので火なんていらないんですが。

ジャック、我々はシアトルにいたね。ああ、これはメールを読んでいるんじゃなくて、ノートを読んでいるんですよ。

(会場笑)

この何日かシアトルに滞在して、ジャックは派遣団の一員として習近平国家主席と一緒にいたんだよね。議論したなかには、面白いことがいくつもあった。ジャックはソーセージを売ったり、コーヒーを入れたりしている起業家たちと一緒に火曜日の朝登壇していたね。習近平と共通のテーマというか、中国側とアメリカ側で共通しているテーマって何かあったかな?

ジャック:そうだね、まずこのような名誉ある機会を頂いたことをスタンフォードに感謝致します。こんな素晴らしい賞を頂けるなんて思ってもいませんでした。20年前、シアトルでインターネットを知って、19年前に初めてシリコンバレーに行きました。

そこの人たちにとても刺激を受けました。特に夜ですね。すべての道路で渋滞が起きていて──それにワクワクしたんですが──特に週末は駐車場も全部埋まっていて、車を停める場所もありませんでした。これにとてもワクワクして、中国もこうなるべきだと思って戻りました。ご存知の通り、今では中国も酷い渋滞を起こしています。

(会場笑)

それから中国に戻ってビジネスを始めました。まさか20年も続けられるなんて思っていませんでした。だから自分は盲目の虎に乗っている盲目の人間だと思っています。20年経ち、いまだに生き残っています。我々はこの会社をあと102年続けたいと思っています。今はまだ16年しか経っていないので、あと86年残っていますね。

ジェリー:なんで102年なのか説明してもらえる? 創業したのは1999年だよね。

ジャック:そうだね。中国では誰もが会社を大きくして100年続けたいと思うんだ。スローガンみたいなものだね。だれもそれを真剣に考えてはいないけど。

(会場笑)

もしKPIを公開するときは、とても詳細にしないといけないんだ。そうするとみんな真剣に考えるようになる。1999年に生まれたときまだ赤ちゃんだったアリババは、20世紀の最後の1年を経験して、この21世紀は100年続ける。そして次の22世紀で1年。そうすると102年で3世紀をまたげるってことだね。

だからすごく細かく言うと、我々の会社では成功したかどうかなんてことは話さないんだ。まだ86年もあるからね。ダメになる可能性なんていくらでもある。だから成功についての話はしないようにしてるんだ。話すとしたら86年後だね。

世界共通の重要なことは「誤解されない人間関係」

ジャック:そう、シアトルの旅はとても良かった。そこでアメリカの起業家とビジネスリーダーたちが何を心配しているのかを聞いたよ。それと同じく、アメリカのビジネスリーダーたちも我々が何に懸念を抱いているのか、何が必要なのかを聞きたがっていると思う。

でも重要な点については、世界中の起業家もビジネスリーダーも同じだと思うよ。他者とのバランスを取りたいんだけど、我々の間には多くの誤解が存在する。ぼくの提案は、アメリカと中国が”ニワトリとアヒルがしゃべる(中国の言葉で二者が言語障壁によってうまくコミュニケーションを取れないこと)ような関係にはなるべきではないということなんだ。

みんなが好き勝手にしゃべって、誰も聞こうとしない。ニワトリとアヒルの間には共通言語が必要だよね。人は同じ言語をしゃべり、同じ基準を持っている。こういう対話が効果的だと思うんだ。だからアメリカと中国は、毎年ビジネス的な対話をするべきだと提案したよ。アメリカで開催したら、次は中国で開催して、政府のリーダーたちを集めて、どうすればビジネス環境を改善できるのかを考える。

普通政府のリーダーたちは「議論」をするけど、ビジネスパーソンは「会話」をたくさんするんだ。会話をしないと問題になる。だからシアトルの旅は良かったと思うよ。

ジェリー:そうか。

ジャック:そうだね。

ジェリー:ジャック、ぼくの質問にも答えてくれて驚いてるよ。

(会場笑)

普段ジャックは自分のしゃべりたいことしかしゃべりませんからね。ありがとう。

(会場笑)

ジャック:ぼくはアヒルの言語でしゃべろうとしてるんだよ。

(会場笑)

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