2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ビル・ゲイツ氏(以下、ビル):携帯電話とフルスクリーンデバイスに共通する話ですが、クラウドだけでやるのか、ローカルに落として起動させるのかというのも大事だと思います。デバイスの画面サイズが異なるというのは当たり前で、5インチ画面は20インチと競合しないし、同じように20インチは大画面スクリーンとは競合しません。ただ、ローカルでのユーザーインタラクションが瞬時なのか、それとも時差が生じるのか、そこが注目点になります。
カラ・スウィッシャー氏(以下、カラ):5年後はどういうデバイスの話になるんですか? 1つだけ?
ウォルト・モスバーグ氏(以下、ウォルト):まだ普及しきってないですが、タブレットを持ち歩いて?
ビル:今はWindows 92の状態だと思います。
ウォルト:お二人は何を持ち歩いていますかね? ご存知かわかりませんが、ジェフ・ホーキンスはLinuxベースの、確か「コンパニオン」と呼んでるデバイスを持っていましたよ。今はタブレットコンピュータとかMacBook Proをお持ちだと思いますが。
スティーブ・ジョブズ氏(以下、スティーブ):あとiPhoneかな。
カラ:今持っているの?
スティーブ:持ってるよ。
ウォルト:さっき見せびらかしてたよ。ビル、5年後に持ち歩いているデバイスは?
ビル:多分ひとつじゃないでしょうね。読む用のフルスクリーンデバイス、軽量な何かが1台あるでしょうね。音声やペン入力、ハードウェアキーボードを何かしらの方法で取り入れて。それとポケットに入るデバイスがひとつ、そしてそのデバイスにナビゲーション、メディア、電話機能が取り入れられているかも。
技術発展的には、デバイスに取り入れることができる技術が増え続けているけど、ユーザーにどれだけ提供するのかが論点だと思います。将来的には、どちらも大きな発展をし続けるだろうし、ひとつ持っていれば片方も持っていると思います。
カラ:そして家ではそれをつなげる何かが?
ビル:リビングにはネットに繋がっているテレビでしょうね。そこからゲームやエンターテインメントが全部インターネットに繋がっていると思いますし、コンテンツの提供方法もまだ試案の段階です。壁やデスクがあればプロジェクターで情報を表示している状態になると思います。
ウォルト:プロジェクターや画面がない部屋を作ってもいいですか?
ビル:いいよ、トイレね。
ウォルト:スティーブ、あなたの5年ビジョンは?
スティーブ:数年ごとにコンピュータが終わると言われてきたのにも関わらず、今でも打たれ強く続いていることはすごい興味深いと思うんです。
ウォルト:ここで言うコンピュータは、Windowsだけじゃなくてパーソナルコンピュータ全般のことですか?
スティーブ:コンピュータ全般のことです。効率向上という名目でスプレッドシートやワードプロセッシングが発展して業界が大きくなって、そのあとしばらく何事も無く平常となりました。そこにインターネットが現れて、みんながインターネットができるように、スペックの高いコンピュータやブラウザが一般化して、インターネット時代が到来しました。
そして数年前、我々はデジタル・ハブと呼んでたんですが、当たり前のものとして存在したコンピュータが、デジカメやビデオレコーダーの影響で、そのメディアをネット共有するレポジトリとしてメディアセンターに生まれ変わったんです。
何かわからないですが、また業界が動き始めていることがわかりますよね。コンピュータがバックエンド側と動き始めたり、モバイル端末と同時活用されているように、タブレットだったりノートだったり曲面のデスクトップだったり形は時代と共に変わるかもしれないですが、今後も一般的なものとしてコンピュータは使用され続けられるとは思います。
その傍ら、ポストコンピュータデバイスと言われているものが発達し始めています。iPodだったり……。
ウォルト:そう呼ぶと怒られちゃいますよ。
スティーブ:なんで?
ウォルト:冗談です。まあ、ポストコンピュータデバイスって使うと編集長にクレームが来るんです。
スティーブ:そう、まあいいけど。とりあえず、一般使用じゃない、ひとつの機能に特化したデバイスのカテゴリーがあると思うんです。携帯電話やiPodやZuneなど、そういうカテゴリーがどんどん発達していくと思うんです。
カラ:その例としては?
スティーブ:例えばiPodはポストコンピュータデバイスだと思います。iPhoneもそうだと思います。
ウォルト:iPhoneやスマートフォンは、形が違うコンピュータじゃないんですか?
スティーブ:そんなこと言い始めたら全部形が違うコンピュータなんですよ。それは関係ないんです。それがどのような用途で、消費者がどのように使うのかが大事なんです。中身がどうなのかはもう関係ないのです。
ウォルト:では、今まで携帯電話として存在した「ポケットデバイス」はどのように使われるべきなのですか? 5年後、その「ポケットデバイス」のメイン機能は?
ビル:ナビゲーションや電子ウォレット、電話、カメラなど、これらの機能の発達のスピードはものすごく速いと思ってます。結果的には、これらの機能がすべてちゃんとできるデバイスは生まれてくると思います。
ただ小さいので、宿題をやったり、動画を編集したりするような用途では使われないでしょうね。だから違うデバイスで読み物を読んだり、編集したりすると思います。例えば掛け軸みたいに引っ張り出せる画面ができたら、全部の機能をきちんと使えるようになると思いますね。
ウォルト:最初の「D」カンファレンスの時、e-inkを開発してる人たちに来てもらったのですが、彼らもその話をしてましたよ。ちょうど5年前です。
ビル:プロジェクション技術の発展はフレキシブルマテリアルの技術より意図的に早い気がするんですけど、どちらにせよまだ5年くらい先の話だと思います。
ウォルト:5年後「ポケットデバイス」には何が使われていますかね?
スティーブ:わからないね。5年前、iPhoneみたいなデバイスに地図が出せるなんて思ってもなかったからね。新しいものが出て、人気が出て、それが普通になるというサイクルの中で、有る機能と無い機能を区別することが大事だと思います。持ち歩くデバイスは通信デバイスで、通信がメインなんです。
カラ:デバイスサイドでは色々発達がありますが、インターネット側で興味があるところはありますか? ソーシャルネットワークやウィキなど?
スティーブ:今言えないことを色々開発しているんだけど……。
ウォルト:どんなこと?
カラ:知りたいわね。
スティーブ:社内で「上から水漏れする船」という訓戒があってね、トップ自ら情報を漏らすわけにはいかないんだ。ネットでは面白いことがたくさんありますよ。サービスとかね。
カラ:エンターテインメント側?
スティーブ:それもそうだけど、生活をもっと効率的にするものとかね。誰かに見せて、必要性を説得しなくても欲しがるものがあるとすごくいいですよね。数年後はそういう時代が訪れるんじゃないでしょうかね。
ウォルト:ビル、あなた方もHotmailやWindows Messengerなど、多くのユーザーが支持するサービスを持っていますが、スティーブ・バルマーが今日言っていたように、インターネット上で検索の面などで他の会社に届いていないところがあると思います。
コンピュータに特化している会社として、やはり他の会社には及ばないところがあると思いますか? MicrosoftもAppleも大きい会社なので、従業員が10人しかいないような会社に比べて動きが鈍くなっていると思いますか?
ビル:他の会社がすごいものを作ることはずっと続くでしょう。そこで有益な立場にいることが大切だと思うんです。そこでWindowsやパーソナルコンピュータの需要が大きくなればいいと思っています。もちろんその反面、スティーブが言ったように将来的には検索にも力を入れたいと思っています。
ウォルト:そういえばおっしゃっていましたね。
ビル:様々なアプリケーションの専門性が上がってきています。例えば教育系も、動画がメインになってきて、インタラクションが増えてきています。
業界の始めにも、こういうものがあればいいな、などといろいろと考えてきていますが、エコシステムとしてこのような新しい技術が業界全体で開発されて、広まっていけばいいと思っています。
スティーブ:僕はちょっと違っていて、我々は別に全部やろうとしているわけではなくて、専門性がある人たちとタッグを組むことが大切だと思います。例えば、Microsoftはわからないですが、我々は検索には弱いので、検索に強い人たちとタッグを組みます。
地図用のクライアントはできても、地図のバックエンドには弱いから、強い人たちと組みます。我々は、消費者が最終的に手にする経験を、素晴らしいUIと製品をユーザーに届けたいのです。そういうこともあって、他社より手間を掛けなければいけないこともあります。
例えばiTunesでも、合理的な音楽サービスがなかったから、自ら作るしかなかったのです。ただ他の分野で成功している会社とは、ぜひ一緒に仕事をしたいですし、ひとつの会社が全部のことをやるのは不可能だと思います。
カラ:2人ともApple TVだったり、Microsoftはハリウッド関係などのエンターテインメント関係に力を入れ始めていますが、YouTubeの時代となりつつある今、コンテンツ提供はどうなるのでしょうか?
ビル:インターネットを使ってコンテンツを配信できるという点で新機軸が生まれたと思います。将来的な方向性としては、Xbox Liveのようなコミュニティ重視のテレビ配信があるのではないでしょうか。
一緒に観たり、話したり、友達を探したりね。それを教育、スポーツ、オリンピック、選挙に応用すると、とても影響が大きくなると思います。Haloゲームはさておき、我々はプラットフォーム会社なので、スピーチやインクやグラフィックス、ちょうど10年掛かってやっとAT&Tが利用し始めているIPTVなど、やっとのことでコンテンツ配信のベースが出来始めているのです
ウォルト:今日、ビルがいなかった時、Apple TVのYouTube視聴機能を見せてくれたんですが、そのようなエンターテインメントの触媒的な立場は増えるのですか?
スティーブ:人々はエンターテイメントをいつ、どこでも、どのような方法でも観たいと思っています。最終的にはエンターテイメント会社のビジネスモデルを変えるでしょう。コンテンツ提供会社としてはいいでしょうね、もっとユーザーが増えるだろうし。
ただ、その方向への移行は難しいと思います。音楽業界でもダウンロード速度が速いのと、合法的な別手段がないことからiTunesが伸びていますが、他社は新しいビジネスモデルを用いた音楽配信へ移行しつつある段階なのです。
ハリウッドも音楽業界で起きたことを教訓に動こうとしていますが、まだ把握しきれていないでしょう。様々なプラットフォームからいつでも視聴できる、顧客に自由がある状態がわからないのです。この段階は、将来的にすごい良い方向に進んでいると僕は思います。
ウォルト:パーソナルコンピュータのUIについておうかがいしたいのですが。史上最高と言われているWindows Vistaが出て、Appleも秋にはLeopardが出るということですが、まだファイル/アイコン/メニューという段階で、この先4~5年でUIのパラダイムが変わるという可能性はあるのでしょうか?
ビル:ずっと言われていますが、3Dがインターフェイスに取り込まれるときだと思います。ウェブサイト上で歩き回って人と会ったり、様々な実験が行われていましたが、スピードなどの問題で実現可能性が低かったのです。
今では、地図やグラフィック上でクオリティの高い3D機能が現実的になったと思います。本屋等に入って、自分の慣れている並び方で本が並んでいるような未来はあると思いますよ。3Dは情報を整理する手段だと思います。
今では情報や操作が増えてコンピュータが中心的な存在になってきていると思います。PBXなどがやっていたことをコンピュータが加わったのと同じように、変化が生じて、ナチュラルインプットも影響が強いと思います。
ウォルト:じゃあマルチタッチは? iPhoneでスティーブが見せてくれましたし、スティーブ・バルマーもSurfaceで見せてくれました。このカンファレンスのスポンサーのHPもマルチタッチディスプレイをやっていますし……。
カラ:『マイノリティ・リポート』っぽい感じですね。
ウォルト:このような直感的な入力がラップトップの主要インプット、もしくは従来の方法に加わるようになるのですか?
ビル:まず、ソフトウェアは視覚的要素ですよね。バットやラケットを振って操作ができるゲーム機はないですよね。
ウォルト:ありますよね? Wii?
ビル:そうじゃなくて、デバイスを使わなければいけないですよね?
カラ:なるほど、そういうことですね。
ビル:そのような機能は3D位置認識デバイスであって、ビデオ認識の話です。例えば会議の中で、誰がしゃべってるかわからないですよね。カメラがユビキタスになるんです。
もちろんプライバシーに考慮して作らなければいけないですが、ソフトウェアでその視覚要素の開発が低コストで可能なんです。ということは、ラップトップだけにとどまらず会議室やリビング、いろんなところに組み込まれていく方向に向かうのです。
ウォルト:現状としてはいいのかもしれませんですが、10年前とあまり変わらないと思うんです。もちろん改善に改善が積まれて現状になっていると思いますが、劇的な変化はないと思います。マウスができて、アイコンがあって、グラフィックスが良くなって。その変化は1984年では賭けだったと先ほど仰っていましたが、変わるんですか?
ビル:タッチ、インク、スピーチ、ビジョンなど、これらが加わってきても劇的な変化は気づきにくいものです。10年間どこかにいって帰ってきてから今の技術を見ると驚くように、変化は隅々を見ないと見出せないのだと思います。
進化はすごい良いことなんです、OfficeのUIのリボンが変わった時もそうでした。ユーザーは慣れなければいけないけど、それは退化ではなく進化で前進しているんです。先ほど話したナチュラルインターフェイスも、3Dと同時に、革命となるでしょう。
カラ:あなたもまだ話せないプロダクトに取り組んでるんでしょう。
スティーブ:そうだよ……。
ウォルト:ビルは秘密の計画をちょっぴり教えてくれるのに!
スティーブ:わかってる、フェアじゃないよね。僕は、先5年で出てくる革命的なものはコンピュータにフォーカスするのか、それともポストコンピュータデバイスに向けて作られるのかが論点だと思います。
全く新しいことに取り組めるし、何かに特化しているデバイスかもしれないし、過去のものとの互換性を保つ手間も省かれることから、ポストコンピュータデバイスに誘惑されてしまうと思います。
ポストコンピュータデバイスは革命的なものがたくさん生まれると思いますが、コンピュータではどうなるのでしょうか? Microsoftもそうだろうけど、我々もすごく面白い開発を進めています。
ただ、全部が全部型破りなものだとダメなのです。何百万人、ビルの場合は何千万人ものユーザーがいます。そこにいきなり6輪の自動車を出しても誰も欲しがらない。ジョイスティックじゃなくてハンドルを欲しがります。
ビルが言っていたように、完全に取り替えても問題ない場合もあれば、ちょっとした変更で十分な場合もあるんです。僕は革新的な変化はポストコンピュータデバイスで起きるのではないかと思っています。
カラ:そろそろ質問を受け付けたいと思いますが、その前に、お二人の関係で、一番周囲に誤解されている感じる部分はどこですか?
スティーブ:密かに結婚してもう十数年になるんですよ(笑)。
カラ:カナダで式を挙げたんですかね(笑)。
ビル:お互い文句はないかと思いますよ、全体的に。Macプロジェクトも楽しかったし、お互いリスクを負いながらやってましたよ。
もう一緒に仕事していない人たちはすごく懐かしいね。この業界は入れ替わりが激しいから、スティーブは長くいてくれて嬉しいよ。山あり谷ありと言うように、新しいものが出ると業界内では騒がれやすいんです。
成功してる会社が生き残ると言われ続けているしね。そのような流れを一望していて、リスクを背負ってまで新しい取り組みを行う会社があることはすごく良いことだと思います。
ウォルト:最後の質問だけど……。
カラ:まだ質問に答えていないわよ、極秘結婚の話しかしてないわ(笑)。
ウォルト:それが答えじゃなかったのか(笑)。
スティーブ:いやいや違うだろう(笑)。私とビルが初めて会った時、私たちは一番若かったんですね。今では僕が大体一番年上。こういうトークはだから好きなんだ。
ウォルト:それはよかった。
スティーブ:僕は人生の大体のことをボブ・ディランかビートルズの曲みたいに思いがちなんだけど、「僕らには未来より長い歴史がある」って歌詞があるんだ。そう思ってるよ。
ウォルト:ちょうどいいから終わらせましょうか。
カラ:涙が出そうだわ!
ウォルト:2人とも、どうもありがとう。
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