2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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星川安之氏(以下、星川):次に厚志さん。ユニバーサル農園をこれからは自分たちだけではなくて、みんなでやっていこうとし始めていると聞いたんですが。それはどういう意図で、今後はどう広がっていくのでしょうか?
鈴木厚志氏(以下、鈴木厚志):ビデオの中にもあったように、障がいを持った人たちが農場に来てくれることで、農業の弱点に気づくことができます。みなさんがどう捉えているかわかりませんけれども、今農業人口がどんどん減って、「有休農地」という耕されない農地がどんどん増えている状況で、日本の農業ってちょっと元気がない。これからの日本の農業をどうしていくのかという課題に直面しているんです。
その現状の中で農業の弱点を知ることができて、なおかつ障がいを持った人たちが働けるようにしていくと、いろんな変化が起こっていくと手応えとして感じるようになったんです。
1つはNPOを作って、ユニバーサル農業や農福連携というものをいろんな人たちに知ってもらう。障がいを持った人たちのためというよりは、「農業を強くする」というキーワードで取り組んでいます。
農業は北は北海道から南は九州・沖縄まで全国にあるので、農業が活性化されれば、障がいを持った人たちや高齢の人たちの働きの場が日本全国の地域の中に生まれていくんじゃないかと。そんなところでNPOの活動をさせてもらったり、自分たちの取り組みをお話をさせてもらったりしています。
星川:1つの農家だけではなくて、広がりが重要ですよね。海外からもあるんですか?
鈴木厚志:おかげさまでユニバーサル農業や農福連携という、「農業」と「福祉」の連携は世界の問題でもあって、世界の農業をどうしていくのかにもつながるんです。
鈴木厚志:世界にもやはり障がいを持った人たちがいて、各国どこにも福祉の問題がある。その中で農業と福祉を連携させることによって、もっとおもしろいことができる。みんなが思うおもしろさは、世界でも同じようです。
鈴木厚志:今この取り組みに24ヶ国の人たちが携わっています。調査したいとか研究したいということで、大学の先生方が、アフリカとか、僕も知らなかったような国の名前のところからも訪れてくれて、ユニバーサル農業、農福連携を自分たちの国の中でもやってみたいと。そんな動きになってきていますね。
星川:24ヶ国の人たちが京丸園を見学に来られているということですか?
鈴木厚志:そうですね。僕が英語とか他の国の言葉をしゃべれるわけじゃないんですけど、通訳さんと一緒に来て調査されて、論文とか書かれているみたいですね。
星川:すばらしいですね。この絵本(『めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!』)も24ヶ国で翻訳されるといいかもしれない(笑)。ありがとうございます。緑さん、この絵本を通じて、どんな人たちにどういうことが伝わるといいなと思われますか?
『めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!』(文・絵:多屋光孫/合同出版)
鈴木緑氏(以下、鈴木緑):多屋さんから高校生や保育園の子どもたちの感想を聞いた時に感じたことは、最初に星川さんがうちの農園を気に入ってくださって「いろんな人に知っていただきたい」と声をかけてくださった時の思いが絵本という形なんだ、と気づきました。
鈴木緑:子どもたちには、いろんなことに挑戦してもらいたい。何かしらの障がいがあってもできないと決めつけるのではなくて、できることから、やはりチャレンジしてほしいなと思います
鈴木:私たちも、障がいを持った人たちと働いていても、みんながどう育ってきたのかは知らないんですよ。でも日々関わることで、親御さんも本人もたくさんの思いを抱え様々な経験をしそのうえで働くという道を選んでくれた。それがすごくありがたいなって。
そしてたまたま数年前に、出生前診断の誤診で問題になった事例について書かれた方が取材にお越しになり、制度も含めて知ることになりました。もしかしたら今京丸園で働いている人には、生まれてこなかった人がいるのかもしれないという思いをもちました。
そう思うと、先ほど夫が言ったように「この世に生まれて必要じゃない子は誰もいないんだ」という言葉とつながってくるんですね。私もずっと生きてきて、まさか自分がこの様な仕事をしているとは思っていなかったですし、障がいを持った人たちと一緒に働くと考えていませんでした。
人との出会いで人生はどんどん変わってくる、ということです。私たちにとって特別支援学校の先生や福祉現場の方がそうだったように、皆さんも出会いを大切にしてもらいたいです。
星川:ありがとうございます。
星川:もう1回だけ厚志さんに戻すんですが、100人で仕事をしたいと思っていらっしゃって、100人になったのが障がいがある人たちが入ってきてから実現したことなんでしたよね?
鈴木厚志:そうですね。『一年生になったら』という歌があるじゃないですか。「友だち100人できるかな」という。僕はあれが好きで、せっかく農業をやっていくなら、100人でやれる農園を作りたいなぁって思っていたんですね。
でもなかなか100人なんてとても集められないし、人も来ないし。無理なんだろうなって諦めかけていた時に、障がいを持った人たちとの出会いがあって。彼らが入ってきてくれたら、それこそ高齢の人たちが来てくれたり、女性や若い人たちが集まるようになって、今のような100人の農園になったというのが本当のところです。
たぶん障がいを持った人たちが入ってくれなかったら、100人の組織ってできなかったと思うんですね。それで僕、女性や若い人たちに、なんでうちの農園を選んだのか、来てくれた1つの動機はなんだったのかと聞いたら、「障がいを持った人たちが働けているなら私も働けると思った」って答えが非常に多かったんですね。
なるほど。となると、僕たちの農園は障がいを持った人たちがいたからこそ、その人たちと出会えたり、その人たちがいろんな人たちを突っ込んでくれたりしたんです。障がいを持った人たちは、1人では生きていけないというハンディを背負っていると僕は思うんだけれども、でも1人では生きていけないからこそ、いろんな人たちを惹きつける力があるんじゃないかと思うんですね。
その効果を僕らはいただいて、この1つの組織、農園ができあがったのかなとちょっと感じています。そういう意味で感謝していますね。彼らとの出会いが、今の農園ができた1つのきっかけになっていると思っています。
星川:もう1つだけ。障がいがある人たちが入ってきたことによって、農園の空気は変わりましたか?
鈴木厚志:漠然としてますけど、本当にいろんな人たちが優しくなりました。障がいを持った人たちがちょっと困った顔をしていると、「どうした?」って声をかけているとか。その一言が、本当の優しさを醸し出してると思うんですね。
そういうチャンスを彼らが作り出してくれている。じゃあそれを経営にどう反映するのかという話と、またリンクしてくると思うんですけれども。障がいを持った人たちと働いてもらうようになったら、うちの農園がどんなふうになったかというと……。
これ(スライド)はうちの農園の業績です。折れ線グラフが障がいを持った人たちの人数で、増えていったと同時に売り上げもどんどん伸びていったんですね。
多くの場合、障がいを持った人たちはビジネスにおいてリスクだって捉えている方が多いと思うんです。でも僕らが、障がいを持った人たち、実際に彼らに入ってもらったら農園が変わった。100人になったことも含めて、売り上げも伸びていったと考えると、もしかしたら彼らと一緒に働けるような組織というのが、小さいけど強い組織とか、優しい組織とか、そういう会社として作り出せるんじゃないか。
表の最後の2年はコロナ禍の影響の中で下げてしまいましたが、なんとかここからまた挽回して経営を立て直していきたいなと思っています。やはり障がいを持った人たちとの関わりの中で、こうやって業績を伸ばせてきたというところも、ぜひみなさんにも知っていただきたいなと思っています。
星川:このグラフはとても大きな意味があると思います。ありがとうございます。
星川:多屋さん、この2人の夢であった100人になった農園を最後のページで描かれましたね。
多屋光孫氏(以下、多屋):100人描くのは大変でしたね。
(一同笑)
ラフといいまして、絵本を作る前段階でいろんな打ち合わせをするんですけど、「当然100人描きますよね」みたいなプレッシャーがあって。最初このラフで描いてみて、顔のところに番号を1234……って振っていったら、番号をふるだけでも手が疲れるぐらい大変だったんです。
でもがんばって「これは100人描くしかないな」ということで描いたんですが、ちょっと描きすぎて、あとで数えたら102人ぐらいになってたかな。ちょっと多く描いてしまいました。一番大変だったところですね。
芽ネギを描くのも大変でした。ネギが細いんですよ。葉っぱも細いし種も描かなきゃいけないので大変だったんですけど、さらに100人。よく見ると寝てる人とか。後ろのほうの顔の長い人は、棒じゃないかぐらいの。鈴木さんの隣の隣ぐらいにいる顔の長い人の顔とか、これはちょっとかなり影の薄い人とか、シニアカーに乗った人とかね。老若男女、いろんなバリエーションを持たせて描かせていただきました。自分で言うのもなんですけど、大変でした。
(一同笑)
星川:芽ネギも大変でしたよね。
多屋:チンゲン菜のほうがよかったんじゃないかと途中で思ったり。ミツバよりもさらに細かいですしね。あれを見ちゃったから、かなり……。
星川:これ全部手書きで……。
多屋:描いてスキャンしてなんですけど、コピーしたらうまいこといくかなと思ったら、なんかずれるんですよね。だから全部描かないといけなくて。あーあっていう感じでしたけども。でもがんばりました。たぶん芽ネギは10万本くらい描いたんじゃないかと思います。もっと描いてるかもしれないですね。
星川:で、一番今好きなのが、芽ネギ。
多屋:芽ネギです。芽ネギの魔力に取り憑かれている感じですね。
星川:今日はすごく幸せですよね。ちょうど多屋さんの右隣に、さっきの芽ネギが置いてあって。
多屋:そうですね。見つめあってしまう感じです。さわやかな香りが届いてきています。
星川:してるということです(笑)。ありがとうございます。
星川:質問時間が(少なくなってきていて)、すみません。
鈴木厚志:たくさん質問をいただきまして、ありがとうございました。全部お答えはできないかもしれませんけど。
例えば農薬を控えた野菜作りのことで、「有機認証のようなものを取ることを考えてますか」とありますけど。水耕栽培だったり、今やっている農業の中では有機という部分ではないんですけど、来年春から土耕部(土を耕す部門)で、さつまいもとかお米作りで有機栽培にチャレンジしていきたいなと思ったりもしています。
あと「想像力や視点を磨くために工夫されていることは何ですか」というのがあるんですけど、これは「気遣い」っていうやつですかね。女房に嫌われないように、なおかつ女房を楽しませるように、常に気を遣う。人に気を遣うことを訓練していくと、いろんなものが芽生えてくるんじゃないかと僕は思っているんですけれども。そのために女房と結婚したんですけれども......それはちょっと冗談としても(笑)。
やはり福祉の人たちの視点。障がいを持った人たちをなんとか世に出していこう、つなげていこうという特別支援学校の先生方や親御さんたち。そういう人たちの声をどれだけ聞くかというところで、そこにまた新しい道が開けていくかなと思うので。
ぜひいろんな困りごとは発信していただいて、それがすべて叶えられるかどうかはわからないんですけど。やっぱり「聞く」から何か考えるようになっていくと思うので。ぜひ困りごとは声を出してみるといいんじゃないかなと思っています。
星川:まだまだ質問があると思うんですが、質問していただいた方には後日、4人で責任を持ってお答えをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。ではそろそろ時間になってきたんですが、一言ずつ、この絵本がどう羽ばたいていってほしいかも含めてメッセージをお願いします。多屋さんからお願いします。
多屋:先ほど海外の方も(農園に)来られてるということで、世界中の人にガ・ガ・ガガーンってなってもらえるような絵本になってくれたらなと思っています。
星川:ありがとうございます。
鈴木厚志:私は最初に本が出るという話で、僕の写真集が出るのかなと思って楽しみにしてたんですけど、写真集は出ないで、この絵本になったということで。今度は、写真集になるといいなと思っているんですけど、それはたぶんでないと思うので……。
鈴木緑:(笑)。
鈴木厚志:今多屋さんがおっしゃったように、もっといろんな国の言葉に翻訳して世界の人たちにも読んでもらえるようになったらいいなと思うし、小さい子から大人まで、多くの人にユニバーサル農業とか農福連携のことを伝えていきたいと思っているので、この本を活用させていただきたいと思っています。ありがとうございました。
星川:ありがとうございます。
鈴木緑:今回この絵本ができて、めねぎの認知度が低いことがわかったのでますます営業活動をがんばらなきゃいけないなと思いました。これからこの絵本を持って京丸園の営業に行きたいと思います。逆に絵本を読んでくださって京丸園を知ってくださった方は、見に来ていただくことも可能です。リアルにめねぎのうえんのガ・ガ・ガガーンがわかります。ぜひお越しください。
鈴木緑:またこの絵本は障がいを持った人たちが働くこともそうなんですけど、農業について興味を持ってもらったり、さまざまな人との垣根がなくなるといいなと思います。読んでいただいたり、学生さんや社会人の方それぞれの感想をもってくださると嬉しいです。手に取ってもらって、読んでいただけるとありがたいです。
星川:ありがとうございます。「100人で一緒に農家をやりたい」という目標があったり、そこから障がいがある人たちのことを知って、学び、工夫をすることが出てきて、変えるのは相手じゃなくて自分だよというところに辿り着く。そうすると会社の空気がすごく温かくなってきて。団体戦で農業を進めていく決意ができている。その結果売り上げが上がってきているんですね。
この本の最後に、ここで働いている方が「楽しい職場なので長く働きたい」って書かれているんです。この絵本のすべてがすばらしいと私は思っているんですが、その一言に集約されているというか、楽しいから長く働きたいと従業員に言ってもらえる会社は誇りだと思いますし、長く長く続けていただきたいなと思った次第です。
今日は聞いていただいて本当にありがとうございました。3人とも、ありがとうございました。
司会者:みなさま、ご参加いただきまして、誠にありがとうございました。また、この「本の街で、こころの目線を合わせる」では、また来年もイベントを企画していますので、お楽しみいただければと思います。本日は誠にありがとうございました。
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