2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:この書籍(『アフターコロナのニュービジネス大全』)は昨年の事例をまとめたものなんですけど、今回最新の事例も補足で集めたので、ご紹介したいと思います。
「Zoomでは物足りない」というお話もありましたけれども、やっぱりイスラエルのようなテック大国では、どんどん新しいものが出ています。この「Vidi Plus」は、画面上で3Dコンテンツまでも紹介できると。ちょっとお見せしますね。
(デモ動画を再生)
こうやって3Dモデリングまで投影できたり、画面に自分がいながらプレゼンテーションをきれいに合成できるような仕組みができています。この辺は「プレゼンテーションの効果を高める」という意味で、日本でもどんどん導入されていきそうな事例かなと思っています。
あとは、もうオフィス自体をバーチャル空間にして出勤しようという動きが、アメリカでは進んでます。特に代表的なサービスがこの「VirBELA」。仮想オフィスということで、アバターで出勤をして、バーチャル空間内を歩き回ってミーティングをしたり、社員同士で空間に集まって雑談とか交流ができる。二次元のZoomではできなかったようなことが、もうすでに仮想オフィスというかたちで実現しています。
日本でも最近CMが始まりましたけど、oViceという会社から似たサービスが出てます。この辺の導入は、間違いなく(多くの企業で)検討されていくんじゃないかなと思っています。ご興味ある方はぜひ調べてみていただきたいと思います。
司会者:「距離を超える」という動きで最新のおもしろい事例としては、タイですね。タイはLINEが非常に市場進出しています。日本に次ぐ、もしかしたら日本以上かもわからないですけど。そのタイでLINEが始めたのが、「お祈りの代行サービス」です。
タイは仏教国で、日常にお祈り文化が根付いてるんですけれども。(LINEで)希望を伝えると、代わりに誰かが行ってくれて、写真も送ってくれますし、経文がスマホで送られてくるのでオンラインを通してお祈りをできると。花束も代わりに届けてくれて、その写真まで届けてくれる。距離を超えた日常の体験が、このようなサービスで実現してきています。タイならではのおもしろい事例ですが、日本でも導入できる分野があるんじゃないかなと思います。
最後に医療の分野ですね。書籍にも事例が出てますけれども、イスラエルの事例があります。イスラエルのNONAGONというスタートアップ企業が開発した最新のデバイスでは、オフラインでもスマホと連動したデバイスで体温測定とか心音とかをチェックできます。このデバイスとスマホがあれば、正確な遠隔医療が可能になるというデバイスが開発されています。これは間違いなく、日本でも進んでいくような分野かと思います。
ざっと最新事例をご紹介しましたけれども、小祝さん、原田さん、なにか印象的なものがありますでしょうか。
原田曜平氏(以下、原田):まず最初の「Vidi Plus」。間違いなく、こういう方向に世界中がいくだろうなと思います。要するにポイントは「リアル超え」だと思うんですよ。リアルな場でお得意先の前に立って、あるいは上司の前に立って「こうです」ってプレゼンするよりも、よっぽどこっちのほうがリアルを超えてるわけですよね。
やっぱり今のオンラインミーティングは「結局あったほうがいいよね」ってなっちゃうところでとどまってるところもあると思うんですよね。だからテレワークが普及しないっていう現状にもつながっているんですけど、それを1つ超えるっていう意味では、これは非常に良い事例です。リアルを超えるものは、コロナがどうなろうが間違いなく普及していくだろうということですね。すごくおもしろいなと思いました。
原田:それからタイのお祈り代行。先ほども言いましたけど、日本は3,600万人の65歳以上がいて、「2025年問題」と言われていますが、日本で最大の人口ボリュームである団塊世代、ビートたけしさんの世代が2025年には全員75歳以上の後期高齢者になると。
実は僕は今、日本で高齢者とデジタルの調査をしてるんです。ちなみにちょっと余談ですけど、このコロナ禍でかなり高齢者のYouTube利用率が高まっています。さっきもニュースで総務省の調査結果が出てましたけどね。視聴時間はテレビとか旧メディアはあんまり変化がなかったんです。それでデジタルメディアが伸びてたんですけど、これは一言で言うと、もう完全に中高年のYouTubeですね。
司会者:(笑)。
原田:それはいいんですけど、2025年に日本の後期高齢者が増えて、今の後期高齢者1,800万人からもっとものすごいボリュームになるわけですよ。人類史上初めての状況になります。「人生100年時代」って言われるけど実際はどうかっていうと、やっぱり後期高齢者になると、人によりますけど活発に行動できる人の割合としては減りますよね。気力もなくなったり、テレビもあんまり見なくなったり、ビールもあんまり飲まなくなったりとか。寿命自体は延びるかもしれないけど、そうなっていくのは確かです。
そうなった時に、お祈りやお墓参りだけじゃなくて、もっといろんなものを代行できる可能性があるんです。この期間にLINEを使う高齢者も増えただろうし、YouTubeを使う高齢者も増えただろうし。不幸中の幸いなのか高齢者のデジタル化が進んだので、それをうまくビジネスチャンスにする企業が、きっとこの令和の時代の後期高齢者大国・日本を支えていくんじゃないかなと思いますね。だからすごく示唆深い話になると思います。
司会者:おもしろそうですね。ありがとうございます。小祝さんはなにか印象的なものはありますか。
小祝誉士夫氏(以下、小祝):このコロナ禍で進化したものは、必ず定番になっていくようなものがありますよね。もう見えている未来なので、見えている未来に対してはいろいろ打つ手があると思うんです。いろいろサービス派生したりここまでテクノロジーが進んだ時に、じゃあ自社のアセットを使って何ができるかという。
原田さんの話みたいに、当然高齢者のボリュームがある国なので、そういったところに対して何を訴求していくか考えていく必要があるんじゃないかなと思います。
司会者:ありがとうございます。
原田:もう1つ。さっきのオンライン診療の事例で、「オンライン診療」って言葉だけはずいぶん前から日本でも聞かれるようになってるから、一見するとそんなに真新しくは感じないかもしれないですけど。僕、実はすでにオンライン診療を日本で受けていまして。結局、日本のオンライン診療ってお医者さんとしゃべるだけで、本当のオンライン診療じゃないんですよ。直接会ったほうがもっと詳しく聞けたり、お医者さんの微妙な表情がわかったりして、やっぱり「リアル超え」じゃないんですよ。
ところがこういう「TytoHome」のようなデバイスが開発されたり普及したりすると、例えばその場で検査できないことが検査できたり、「リアル超え」になる可能性がすごくあると思います。この分野も間違いなく進化していくだろうなと思いますね。
司会者:ありがとうございます。原田さんが若者だけではなく高齢者の事情にも詳しいのは、ちょっと驚きでした。またその辺も聞かせていただきたいと思います。
司会者:ちょっとこのペースでいくと時間がヤバいことになるので(笑)、次のテーマに変えます。
今回2個目にピックアップするのは「Beyond LUXURY」ですね。「贅沢の概念が変わる」というテーマです。高級なものを買ったり、高級なレストランで食事したり、高級な宿に泊まって旅をするような贅沢消費は、もちろん残っていくと思うんですけれども。
その一方で、やっぱり自宅時間が増えたので、よりパーソナルなスペースで自分らしい時間を楽しむことこそが贅沢であるという概念が、世界各地、特に若い世代で見られてきています。このテーマに関しても書籍の事例をいくつかご紹介したいので、小祝さんお願いします。
小祝:デンマークで非常に話題になっているレストランの「noma」ってありますよね。世界中からお金持ちの方やセレブの方が飛行機で乗りつけるようなレストランで、予約も何年待ちという感じなんですけど。
ただ、コロナになってそういうお客さんが一切来なくなったわけなんですね。その時にやっぱり「食事って本来どういうものなんだっけ」という原点に回帰して、実際に2020年5月から6月末まで、期間限定で「予約を取らないレストラン」に180度変えたんです。書籍では「臨機応変レストラン」と紹介してるんですけど、出すものもハンバーガーと白ワイン。それを屋外で、身近な仲のいい人たちと一緒に食べる・飲む。そんな事例ですね。
もともとラグジュアリーって概念が、「高級なもの」とか「なかなか食べられないもの」だったんですが、「本当に仲のいい人と飲食の時間を共にすること」こそが贅沢だという、価値観が変わっていったという話です。「食事の原点回帰」はすごくおもしろいなと思いましたね。
原田:特に日本は高齢者のほうがお金を持ってる国ですから。お金を持ってる高齢者が外に出られなくなっているので、より需要がありますよね。要するに、おうち時間も増えて、オフをオンにしたいっていう気持ちだと思うんですよ。おうち時間の贅沢な過ごし方の1つに「食」があるんですよね。
小祝:もう1つ、食以外の事例なんですけど。コロナ禍でものすごく消費が伸びたのは、苗とか種とか、ガーデニンググッズとか。あとガーデニングを覚えるオンライン講座などが一気に伸びていったんです。書籍では「庭消費」って伝えたと思うんですが、やっぱり植物で癒されることとか、家族とともに自宅で過ごすことこそが贅沢だというように、これも価値観がシフトしていきましたね。
原田:今までは、日頃働いてストレスを溜めて、たまに休みを取って……という、「非日常消費」をエンジョイしてたんですけど。やっぱり「日常の中の非日常」というのが欲しくなって、それがさっきの世界一のレストランのテイクアウトだったり、ガーデニングだったりという方向にきてるんでしょうね。
小祝:次の事例もおもしろくて、「発酵家電」と言うんですが。今回のコロナで、「免疫力」という言葉がかなりキーワードになったと思います。今まで流行していたのは「高級家電」だったんですが、もう自分を強化して免疫力を高めるために、中国の「小熊」や「九陽」というメーカーの発酵機を使って自宅で納豆を作っちゃうという事例があります。
我々が勝手に「発酵家電」と呼んじゃっているんですが、そういった自宅で自分を強化するための家電の存在なんていうのも、今までの贅沢の路線とはまた違う方向性かなと思ってピックアップしてみました。
原田:日本でも売れそうですけどね。僕も買いたいです。日本だって発酵食品大国ですし、このコロナ禍で「明治R-1」とかキムチとか、なんだって食べられるようになっていますからね。日本のメーカーさんに作ってほしいなぁ。
司会者:今日の参加者の中にもしそのようなメーカーさんいらっしゃれば、ぜひ(笑)。
原田:「自分で作る」っていうのも、このコロナ禍でキーワードになっている気がしますね。家の中の事例じゃなくてちょっと恐縮なんですけど、今日本の若者の間で流行っている「Artbar Tokyo」というバーがあるんですよ。ご興味ある方はぜひ行ってほしいです。僕のYouTubeとかInstagramとかTwitterにも載せてるので、こんな様子だっていうのを見ていただければと思います。
今は緊急事態宣言下なのでお酒は出していないんですけど、本来であればワインを楽しみながら絵のレクチャーを受けて、2時間でそれらしい絵が描けるんです。「この雲の下のほうに黄色を入れるとよく見えます」とかいろいろ教えてくださって、絵がめちゃくちゃ下手な人でも、それなりの絵を描けるんですよ。すごい感動体験なんです。
それから中目黒の「THE FLAVOR DESIGN®︎」というお店とかいろんな所で、これこそ日本のZ世代に「香水作り」が流行っているんですよ。
小祝:それ、聞いたことある。
原田:これも僕も行ったんですけど、もう最高におもしろくて。「これとこれを混ぜるとこんな匂いになるのか」ってやれるんですよね。やっぱりおうち時間も増えたり、このコロナ禍で空き時間もできてるからね。ガーデニングもそうだけど、「自分で作る」っていうのが1つ、いろんなジャンルでキーワードになっています。
発酵家電も、発酵食品を買うんじゃなくて自分で作ってみたい。その喜びを味わっちゃったから、コロナ禍が落ち着いてもたぶん残っていくと思うんですよ。だからこれはすごくいい事例だなと思いますね。
小祝:次はちょっと違う文脈なんですけど、ソーシャル・ディスタンシングと言われて、非常に距離を取るようになりました。その時にやっぱり車の価値が、移動するだけではなく感染症予防にもなるってことですごく高まったんです。そこで、車の中にいながらにして高級レストランのディナーのフルコースを食べられるというサービスがドイツで始まって、これも話題になっていましたね。
車の価値が変わっていくっていうところもおもしろいし、車のまま礼拝したり、車のままコンサートに行ったり、車の存在意義とか車を持つ理由とかが、ちょっと広がっていったんじゃないのかなと思います。
原田:「若者の車離れ」ってもう10年〜15年くらい言われていますけど、僕も今のZ世代にインタビューしていて、このコロナ禍でだいぶ変わったなって印象があるんです。大学生の子は(外出することに対して)いろいろ親から厳しく言われたり、友人や恋人となかなか会えない中で、誰か車を持ってるやつのところで乗って、その間ちょっとしゃべるとか、デートするとかね。
車の価値が世界的に見直されてて、日本でもドライブインシアターとかけっこうやられてましたけど、せっかくだったらそれだけじゃなくて、もっといろんな「非日常」を味わいたいですよね。こういうディナーのフルコースなんて、あんまり日本では聞かないじゃないですか。今回のコロナで車の喜びを知ったZ世代も多いから、もっといろんな切り口で、いろんなサービスと「×車」で考えてほしいなってすごく思いますね。
司会者:なるほど、ありがとうございます。私もドライブインコンサートの事例はいろんな国のものを見ましたけど、その中の1つに「アーティスト側がそれぞれの車の間を歩き回ってパフォーマンスをする」というのがあって。
やっぱり大勢を集める今までのライブ会場だと、見えにくかったり、全員が一緒の体験しかできないんですけど。アーティスト側から近くに寄ってきてくれるっていうのは、ドライブインコンサートならではの価値ですよね。そういう車を活用してエンタメと掛け合わせた演出は、まだまだいろんな可能性があるだろうなと、今のお話を聞いていて思いました。
司会者:ちょっと私から、このテーマの最新事例をご紹介します。「自宅で贅沢」というところで、アメリカではこの「自宅美容クリニック」っていうコンセプトを打ち出しているD2C系の美容サービス「Varacity」があります。
自宅に検査キットが届くんですけれども、それとスマホが連動していて、そのキットが届くと同時に自分の肌の状態に合わせて、映像を通して専門家のアドバイスを受けられるという、そういう包括的なサービスが自宅で受けられるようになってきております。この辺のキットとかサブスク系の動きは、コロナ禍で爆発的に伸びましたので、これからもどんどん進化していくだろうと思います。
あともう1つ、これもおもしろいなと思うんですけれども。やっぱりコロナ禍で「安全でパーソナルなスペースを持ちたい」「それを旅で利用したい」とか、あとワーケーションも広がりましたので、そういう場所の自由な利用の仕方をしたいという動きが高まってます。
そこでドイツでは、「タイニーハウス」に注目が集まっています。例えば「Noordesk.Studio」では家として販売してるんですけど、小屋タイプで2万5,000ユーロ、家タイプは4万ユーロ。日本円で約400万~500万円ぐらいですかね。この需要が非常に高まっているという事例が出てきています。
これを企業単位で、スペースをいくつも買い取って社員に使わせるような動きとか。非常に自由度の高い贅沢なスペースというのが、このタイニーハウスという動きかなと思いますね。これは日本でもすぐにでも導入できるようなアイデアじゃないかなと思っています。というところで、このテーマの2つの補足事例なんですけど、お2人のご意見としてはどうですか。
原田:僕は前者の(自宅美容)の事例。まず日本でも、けっこういろんなサブスクがこのコロナ禍で増えましたよね。例えばZ世代の間では、毎月香水が送られる「香水のサブスク」とか、あるいは絵画のサブスクとかお花のサブスクとか、けっこう広がってきてるんですよ。今までは「なかなか消費しない」と言われてた日本の若い人たちも、かなりサブスクは染みついてるからね。いろんなサブスクは出てくるだろうと思います。
一方で、自分の骨格に合わせて「あなたはこの骨格ですからこういう洋服を着てください」という骨格診断とか、あるいはパーソナルカラー診断とか。美容業界の方はみんな知ってると思うんですけど、自分のお肌がイエローベースかブルーベースかとか見てもらうんですよね。とにかく今の若い子たちって、「診断」が大好きなんですよ。
逆に言うと、情報が多すぎて自分でなにかを選択できなくなっている。なにか自分の合うものを診断してくれるものが欲しい。この事例なんてまさにそうですよね、もうバッチリ合いますよ。だから、必ず日本でも広がると思いますね。
司会者:ありがとうございます。小祝さん、一言ありますか。
小祝:いや、大丈夫です。
司会者:(笑)。
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