2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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坂本陽児氏(以下、坂本):じゃあ、次のお題にいきましょうか。最後にQ&Aがありますので、ぜひよろしくお願いします。2つ目「ビジネス上のコミュニケーションについて」ということで。
僕も世界に、シンガポールへ行く前に悩んでいたことが、やっぱり語学力だったんですよ。英語があまりできない。「英語ができたら行けるのにな」みたいなことで、なんとか振り切って勇気を出して海外に行ったんですよ。
でも、いろんな人に聞くと、「自分も英語ができれば海外に行きたいんですよね」と言う方もいらっしゃって。たぶん会場の中にも同じような方はいらっしゃるかもしれません。もちろんそういう考えというか不安があるのは当然だと思います。
そういう言葉のところから、言葉を超えたところまで、ビジネス用のコミュニケーションにおいて海外にいて感じたことがあるかないかというのを聞いていきたいと思います。川井さん、いかがでしょうか? 川井さんは先ほど自己紹介のときに……。
川井敏昌氏(以下、川井):そうですね。僕は本当に英語がダメで、シンガポールに行ったとき、記憶がちょっと曖昧ですけど、最初に(TOEICを)受けたら400点前後ぐらいだったんです。半年経って受けたら700点台後半ぐらいまでいったんですけど、当時は本当に英語を話せない状態で行ったんですね。
でも、それでビジネス上すごく困ったかと言われると、実はビジネス上の英語って準備していくので、そんなに困らなかったです。そんなに困らないと言うと語弊がありますけど。
当時はインド人のクライアントにプレゼンしていたのですが、インド人相手にプレゼンしたあとに、必ず電話で質問が来るんですね。そうするとものすごく大変みたいな、そういう経験はあります。ただ、ビジネス上の英語はこっちも準備していくし、話すトピックはすごく狭いので、そこに合わせて話す部分では問題はなかったですね。
どちらかというと、プライベートで友達がいろいろできていくんですけど、1対1はいいんですけど、複数の友達の中に入るのがすごく難しかったという印象がありますよね。
坂本:津布楽さんは中国語なども使って働かれていますけど、言葉の方面はどういうふうにやられていますか?
津布楽一樹氏(以下、津布楽):基本は英語で仕事をしているんですよ。もちろん中国語と英語、半分ぐらいずつですかね。ただ、川井さんのお話はすごくわかって。中国人だけのパーティが当然たくさんあるわけですよ。立場上行かなくちゃいけないとかもあって、参加しないといけない。当たり前ですけど、共通言語は中国語でとり行われるんですね。
そこで「なにか存在価値を出さなくちゃいけない」と思ったときに、たぶん言語は……言語よりもコミュニケーション力というか。結局その人柄というか、キャラクターのほうがどこまでいっても大切じゃないですか。もちろん最低限は(会話が)できないと、なにも通じなくなってしまいますけれど。
それはさておき、そこを超えていくとコミュニケーション力の問題だと思うんです。そこをどれだけ、誰に対してもオープンでいられるかとか、人と人で仕事をしているんだから常にリスペクトし合えるかとか、そういうような最低限のコミュニケーション力をどう高めるかをすごく意識している感じですかね。
鈴木洋介氏(以下、鈴木):すごくわかる。僕は逆に日本語がすごくダメだったので……。最近は少しうまくなったんですけど、すごくダメで。ただ、見た目は超日本人で「鈴木洋介ってめちゃくちゃ日本人じゃん」という感じなんだけれど、当時はやっぱり恥ずかしいんですね。日本人なんだけど、なかなかちゃんと……。
坂本:それは社会人になってから?
鈴木:電通時代から。
津布楽:最初に会ったとき、日本語がおかしくて。
鈴木:(笑)。そう。同じ日本人同士なのに、例えば僕の同僚とかから、「彼が言いたいのは~」って解説が入るんですよ。それってすごく恥ずかしいじゃないですか。でも、いま津布楽さんが言ったとおり、がんばっている姿勢を見せれば相手も理解しようとしてくれる。海外も同じで、すごくがんばっていれば当然理解しようとしてくれるから、それはいいことなんだろうと思う。
坂本:最終的には最低限の語学力、学習できるものを蓄えたあとは、実践で人間力というか自分の魅力でやっていけば、向こうもきちんと理解してくれる。
鈴木:英語が話せなくてもポイントはヒアリングできていればいいので。それは人間の本質というか、赤ちゃんとしておなかにいるときも、生まれたばかりで目が見えなくても、人間は音で成長するんですね。言語もそうだから、理解していればなにかはコミュニケーションができる。ヒアリングさえできれば、それがまず大きな一歩だという気がします。
坂本:それはもう語学を超えて、私の夫婦関係にも言えるかもしれない。
(一同笑)
とにかくヒアリングをする。そうですね。なるほど。
あと川井さん、やっぱり日本人はシャイだ、自己主張をしない、みたいなところがあるので、シンガポール時代は初期のほうにかなり自己主張を激しくされていたみたいな。
川井:自己主張が激しいというよりは、英語力のなさが幸いしたというか。僕は最初ローカルで、シンガポール人のデザインオフィスで一緒に働いていたんです。
先ほど言ったように、クライアントのところにストラテジープランナーという……デジタル の説明をしに行ったりするんですよ。そのプロジェクトの中で、ややこしいクライアントというとあれですけど、そういったクライアントに対して、ローカルのオーナーたちがなぜか僕をインターフェースにしたがるんですね。
「なんだろう? なんだろう?」と思ったら、「いや、こういうコミュニケーションでこういうことを言いたいから、ちょっとトシ(川井氏)、やってくれ」みたい感じで。
日本人は本当に……いや、みなさんじゃなくて、英語がわかっていない日本人にとっては、英語ってすごくダイレクトなコミュニケーションなんですよ。あまり飾り立てず「一番上に目的を持ってこい」ぐらいの感じに言われていたので「そうか」と思って、もう超ダイレクトにバシバシ書くわけですよ。
坂本:「You must go.」とか?
川井:みたいな。まぁ、そこまではやりませんでしたけど。でも、本当に「いや、これはこうじゃなくて、こうだと思う」「プロジェクト上、このスケジュールしかもう無理です」みたいなかたちで言うと、僕がそのメールを打った瞬間に後ろで「よくやった!」みたいな。
坂本:(笑)。
川井:先ほどの話と逆かもしれないですけど、海外にいる日本人だからこそ「あいつ、ちょっと言葉わかってないけど、伝えたいことはこういうことかな?」みたいに、向こうが汲み取ってくれるような環境の中で擁護されながら生きてきたところがあって。
坂本:確かにそうですね。英語はいろいろ表現がありますもんね。すごく厳しい命令形から、「Could you 〜」みたいな。
鈴木:(笑)。
坂本:そこらへんはありましたね。
川井:そういうのを後々学んでいきました。
坂本:そうですね。
川井:最初は逆にその拙さを武器に使ってほしいです。
坂本:これは本当におもしろくて。一生懸命やっていれば、周りがちょっと持ち上げてくれるというかフォローしてくれるんです。それに対して、恥ずかしがらないのが大事なのかなと思っているんですよ。
逆に言うと、向こうが拙い日本語でしゃべってきたときも、同じように持ち上げてあげる。それが人間の本質なのかなと思います。通じないからといって恥ずかしがらないことがすごく大事なのかなということがわかって。
津布楽:繰り返し言えばいいんですよ。
坂本:そうですね。繰り返し。あと、わかっていなくても、自分の言いたいことだけを言い続ける。たまにそういうふうになる(笑)。
坂本:では、次のお題にいってみましょうか。深くなってまいりました。「世界で働くことの意味」ですね。日本はいろいろ言われてはいても世界で第3位の経済規模を持つ国で、なにもチャレンジしなくても、日本の国内で仕事をすることができれば活躍できるところもあります。
そこで「なぜ、あえて世界に出るのか」とか、そういうことに関してちょっと思ったところをお話しいただければと思います。鈴木さんいかがですか?
鈴木:世界で働くことの意味ね、すごく大きいテーマですけれども。先ほどの話とつながるところもあるんだけど、やっぱり今の日本と世界の考えの違いは無視しないほうがいいなと思っていて。
例えば昔からいる大企業なのかスタートアップなのか、そこの違いもあって。やっぱり自分が当事者だと、なににパッションを持ってやっているかが一番重要です。
そうすると、おのずと「今までのやり方ではなく世界でやらないと、たぶん自分のやりたいことができないんだろうな」と思いはじめるのが基本というか。
坂本:世界のステージは変わって、もう日本と世界を分けるような時代ではなくなっている。やりたいことをやろうとしたら、必然的に世界とつながらざるをえない時代なので、それに対応しようという。
鈴木:そうですね。今、こう見えてもパパで子どもがいるんですけど、よく「自分の見えている世界じゃないところに実際はいろんな可能性がある」という話をするんです。子どもは今は理解していないけど、言い続ければたぶんどこかのタイミングでわかってくれる気がするんですね。
坂本:楽しみですね。津布楽さん、どうでしょうか。ついに世界とつながっていくことが当たり前の時代になっていくということですけど、それでも日本人として日本の文化で育ったバックグラウンドが強みになっているとか、世界で働いていてそう思うことはありますか?
津布楽:うーん……まぁ、あるとは思いますよ。自然に。やっぱり「日本人って丁寧だよね」「日本人って真面目だよね」というのは世界中の人が思っている。それはポジな意味もあればネガの意味もあると思います。
ただ、僕も鈴木さんの言った話はすごく賛成で。僕も子どもがいるので子どもにもよく言いますけど、とにかく「可能性」ということが僕の中ですごく大切なことだと思っていて。
「それが絶対にかっこいい」とかじゃなくて、別に自分にしても子どもにしても、とにかく可能性を限定しないほうがいいんじゃないかなと思っているだけなんですね。せっかく世界にいろんな人がいて、ビジネスがあって、価値観があって、いろんなやり方があって、いろんなところで新しいイノベーションやすばらしいことが起こっている。
その中で、自分が見る視野を狭くした瞬間に可能性が「ここからここまで」になってしまうと思うんです。それがどこの国だろうが、どんな価値観の人だろうが、1回食べてみて将来的に自分の価値観と合わなければそこはあとから狭めればいいだけで、広げることを最初から止める必要はないかなと。
僕らもアイデアを作ってお客さまにご提供するのが仕事じゃないですか。すごく月並みな話ですけど、やっぱりインプットが少なければアウトプットが狭くなります。インプットの幅をどんどん広げてあげることによって、アウトプットが広がるというのはごく当たり前の話だと思うんです。
世界で見ること、世界の人といろんな人と仕事をすること、いろんな価値観に触れるみたいなことも、ある意味インプットを広げていくことなのかなと思っていて。だから、僕は自分の人生という意味でも、できるだけこの幅を広げてあげたいなと思うんですよね。
坂本:あれですよね。人生で「煮詰まった」「もう未来が見えないな」というときは、思いっきりその視野自体を広げていくことで新たな可能性が見えてくるかたちで。
津布楽:そのほうが楽しいかなと思います。
坂本:そうですね。まさに今言ったように、日本と世界はつながっているというのを地でいくような、草の根的なところでFabCafeを広げられているんですけれども、川井さん的に世界で働くという意味というのは、なにか感じるものはありますでしょうか?
川井:今、情報はやろうと思えばなんでも検索できると思うんですけれども、なんだか行った気になることが多いじゃないですか。知った気になるとか行った気になるとか、そういうことが非常に多いなと思っていて。
こういうイベントなどの話でも出てくるんですけど、結局僕らもプランニングするときは本当に体験重視みたいな話で。保守的にはなるんだけど、基本的な話としては、実際に自分がちゃんとその情報を取りにいける環境にあるかとなったときに、やはり語学面とかいろんな部分で外に出ていくのがなかなか難しかったんです。
僕は幸いそういうところに関しては必然的に英語をしゃべる機会があったので、そうなったときに自分で壁を作らず、先ほどの鈴木さんの話ですけれど、壁を作らず、どこでも自分で行ってリアルな情報が得られるという環境になったんです。それによって、そこの真実がより見えてくるとか。
あとは、とくに海外で働く機会やあちこち行く機会があると、第三国で誰かと会う機会ができる。それこそ僕は津布楽さんと会うのが2回目なんですけど、けっこう仲良い雰囲気があって。
津布楽:(笑)。
川井:ただ、最初は1ヶ月ぐらい前にハワイで会ったんですね。ビジネスで行ったんですよ。遊びじゃなくて(笑)。
その第三国で日本人に限らずいろんな方と会うと、先ほどおっしゃっていたみたいに名前だけの関係で会って、そこで「フィーリングが合う」「こいつの言っていることがおもしろい」みたいな。そこから広がっていって、グローバルでレピュテーションみたいなものが上がる。ワールドクラスで上がってくるイメージがあるんですよね。
そうやって海外で働くことの楽しみみたいな部分を体験していって、「数えると、友達が世界中にいるな」という環境になってくると、ワクワク感というか。「地球上に自分の活躍のフィールドってけっこうあるな」みたいな。
そういうのは、やっぱり自分でちょっと切り拓くとすごく広がるイメージがあったので、そういうのをみなさんに体験してもらいたいな思います。
坂本:そうですね。昔に比べれば、とくにSNSがかなり発達していますし。昔、僕が高校生のときは文通とかをしないとアメリカの人とはつながらなかったんですよ。歳がバレちゃいますけど。ぜひ活用できるといいかなと思います。
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