2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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石田真康氏(以下、石田):一番最初に岡田さんが言っていた、近い将来できる宇宙空間のGDPという話を中村さんにお聞きしたいのですが。
ちなみにみなさん、宇宙産業というのは世界で今、35兆円くらいですかね。いろいろな統計がありますが、約35兆円と言われていて、これを大きいと思うか小さいと思うかは人によって違うと思いますが。
自動車産業は200兆円くらいですかね。それと比較すると約10分の1が宇宙の産業なので、やっぱりまだちっちゃいなと思ってしまいますね。
中村さんは衛星をバーッといっぱい作って、そこからデータを作って地上の産業にいろいろと貢献していこうと思うわけじゃないですか。ぶっちゃけ、宇宙技術、スペーステック、宇宙の技術、上の技術など、名前はなんでもいいのですが、今後、地上の僕たちの生活をどのように、どれくらい変えていくものになっていくのでしょうか?
中村友哉氏(以下、中村):定量的には難しいと思いますが。でも、要は今はビジネスジャッジをするときにどうするかというと、やっぱりまずいろいろなデータを集めてそれを分析して判断するのが当たり前になってきている中で、宇宙というのはかなりユニークなポジションだと思っているんですよね。
地上から集めるデータにはすごくローカルなデータがたくさんあるんだけど、宇宙からのデータでは、基本的にマクロな広いエリアがいっぺんにわかるわけです。
例えばある現象が観測されたとして、そこだけを見ていても原因がわからないこともある。周りを見ることによって初めてわかることも当然あります。要は物事は、多角的に見てはじめてその本質がわかったりすると思うのですが。そうした場面にやはり宇宙というのは役立ちます。
それをほかのもので代替しようと思っても、あまりないと思うんですよね。そういった意味で、宇宙というのはビッグデータの1つのデータソースとして、かなり特殊なポジションにありますから。
今は、ある特定の産業だけではなく、あらゆる産業に有効なデータになる可能性を秘めているというように考えていまして。そうした意味では、新しいインフラですよね。
宇宙ではすでにGPSといったインフラを我々は当たり前のように使っていますが。おそらく我々が撮った写真であるとか、白坂先生もレーダーのデータをこれからどんどん撮っていくわけですが、そういったデータがどんどん、どんどん使いやすいかたちで出てくることによって、あらゆる産業で活用されていく世界は必ず来るでしょう。
それはもう何十年後というような話じゃなくて、5年、10年ぐらいのスパンの話だろうと思っていますね。我々は、まさにこのプラットフォームを作ろうとしています。
これは本当に、今はまだ世界中の誰にもできていないことですから、どこが最初にそういったデファクトのものを作っていくか。競争になっているわけです。そこは、我々日本はかなり強いんじゃないかと思っていまして。
ITの世界では、それこそ先ほどもお話しましたが、資本力の差でバーンとやっちゃったらアメリカが勝つようなことがけっこう起きちゃいますが。
ハードウェアが絡んでくると、ハードウェアの時間軸というのはお金を積んでもそう早くはならないので、そこをうまく活用することによって、資本力ではぜんぜんアメリカに敵わない国であったとしても、十分チャンスがあるんじゃないかと思っています。
ですから、ここがやはり日本の宇宙ベンチャーに大きなチャンスがあるところなのではないでしょうか。世界で使ってもらえるようなプラットフォームを作る、という前提においてですが。
石田:白坂先生もある種、衛星データという意味では同じだと思いますが。AI×衛星データ、これを突き詰めてどんな社会的インパクトを本当に起こせると信じて走っているんですか?
白坂成功氏(以下、白坂):例えば、我々がやろうとしていることは、なかなか言いにくいところもありますから(笑)。もう公表されていて、たぶんみなさんがあまり知らない例で言うと、エアバスという会社が我々と同じものでより大きなものを持っているんですね。
メルセデスベンツと包括提携をしたんですね。レーダーのデータといいますか、そこから抽出した世界中の高度情報を全部渡すという契約をしました。
どうしてかと言うと、メルセデスベンツが自動運転で、例えばアウトバーンで車をガーッと走らせようとする。アウトバーンをすごいスピードで走らせようとすると、自分が持っているローカルのセンサーだと、センシングしてデータが戻ってきて処理する間に、車がそこを通り過ぎてしまうんですね。つまり地上での自分たちのセンシングでは間に合わない。
いま何が起きているかと言うと、2次元はすごく効率的に計画が立てられる。3次元で、今から(この道を)上るのか、この先は下るのかという情報が、実は速度コントロールをきちんとするとすごく(運転の)効率が変わることがわかっています。なのに、それをするための情報が、世界中で見るとほとんどないんです。日本ぐらい地図情報の精度が高ければあるんですけれども。
彼らがやろうとしているのは、ロジスティックスなんですよ。個人のではなく。そうすると都市間(の移動)になるので、余計にデータがないんですね。それをグローバルで見るとないところだらけなんです。
ですから、(高度の)データをもらうと彼らはロジスティックスのコントロールをするときに、とてつもなくエネルギーをセーブできる、効率を上げることができる。エアバスは、その情報をメルセデスに売ることを契約したんですね。
すごく単純に考えると、所詮衛星というのは単純なセンサーなんですよ。ですから、私や中村さんもそうですが、今、大型衛星と言われている、国がやっている人工衛星が持つセンサーをすごく安く小さくして数を上げるというアプローチなんですね。
そういったセンサーは、実はまだたくさんあるんです。例えばJAXAがやっています、NASAがやっています、ヨーロッパスペースエージェンシーがやっています。そういったセンサーだけど、まだ小さく安くなっていないものはいくらでもあるわけですね。それをやるだけで、たぶんビジネスになる可能性がある。
白坂:次に、地上にあるセンサーで宇宙に行っていないもの、これを持っていくと違う情報が取れる可能性がある。その情報を使うと、これまたビジネスになる可能性があるんです。
岡田さんのところはちょっと別問題なんです。ここはね、やっぱり今までビジネスでないものを完全にビジネス化しようとしている。アストロスケールさんのビジネススケールはやっぱりすごくおもしろくて、いま我々、私はオールドスペースで働いていたので、その人間からすると考えもつかなかったユーザーを捕まえようとしているんですね。ですからおもしろいのですが。
私がやっていることは、ある程度大きな人工衛星でやってきたことなので、ユーザーも見えるし、その先に「あ~商用だったらこんなのができるかも」というものがまだ想像がつきやすい。ですから、ビジネスが見えやすいんです。
みなさんは、知らないとなかなかユーザーも見えないと思うかもしれませんが、やると意外と簡単に、たくさん見つかります。ただ、簡単に見つかるところは、競合もいやすいところですね。
その先の競合がいない、新しいユーザーを見つけることは、やっぱり簡単ではない。ですから、うちのベンチャーはそこを見つけるための、まあ私が大学の研究者なので、方法論、手法を作ってそこを一緒に作るところもやっていこうとしているわけですね。やっぱりそこまでやると、次の新しいユーザーを見つけていくことができる。
我々の場合は、エッジコンピューティング化して、人工衛星の中にAIができるようなものを入れて、単なるエッジのセンサーをたくさん宇宙にばらまいているつもりです。それと同じような感じでいくと、まだまだ日本もやれることはたくさんあります。ただ、世界との競争というものがありますが。
いま日本はセンサーが得意なので、それをうまく持っていってエッジ化して、地上でみなさんがやろうとしていることと似たような仕組みのものの宇宙版をやると思えば、そんなに特殊性があるわけでもない。そうすると、まだまだやることはたくさんあるという気はしますね。
石田:さっき例としておっしゃっていた、エアバスとメルセデスベンツの例がすごくわかりやすいと思うのですが、宇宙からのデータで高度情報を出すとのことでしたが、どれくらいの細かさの高度情報を衛星からのデータで作ることができるんですか?
白坂:今、タンデムエックスという、彼らが持っている衛星でやると、実はまだメーター単位なんです。
石田:メーター単位というのは1メーター単位くらいということですか?
白坂:はい、まだ1メーター単位くらいです。もっともっと細かいものがやっぱりほしいんです。ほしいのですが、それでも違うと言うんです。つまり、こんなにちっちゃいやつじゃなくて、かなり上って、かなり下りている。長い目で見ると、ここの工数が大きいらしいんですね。
それがわかるだけで、「この先何百メートル後に何メートル上がったあとに、何百メートル下がるから今の速度をどうしよう」という計算を先にする。エアバスがやろうとしているのは、そうしたイメージなんですね。これがもっと細かくわかれば、(運転の効率が)より良くなっていくという感じです。
石田:何年後ぐらいに、そのコードが入ったもっと細かい全球の地図ができるんですか?
白坂:もう数年だと思いますが。
石田:10年もかかる話じゃなくて?
白坂:10年もかからないと思います。
石田:2020年東京オリンピックのときにはできているくらいですか?
白坂:彼らの衛星がたくさん上がってしまえば、たぶんもうすぐできますよね。
石田:中村さん、それはいつまでに作っていただけるんですか?
中村:あ、僕が作るんですか?(笑)。 そうですね。確かに高度のデータは斜めに見ないといけないのでね。
もちろん技術的には可能で、そういったデータはかなりニーズが高いことはわかっていますから。観測の合間にそういったデータを作っていくということは十分あると思っていますね。
石田:なるほど、おもしろいですね。岡田さん、今、白坂先生が非常にいい振りをしてくださいました。さっきのデブリを捕まえるのと同じように、ものすごーくシンプルに言うと、どういうビジネスで、誰がお客さんのビジネスをやっているんですか?
岡田光信氏(以下、岡田):誰がお客さんだと思いますか?(笑)。実は、この話の中にもヒントがあったのです。
今までの人工衛星は、大きいものを1機打ち上げて、東京上空で1日2回写真を撮るようなビジネスでした。これから分解能を上げるということで、1社が数十機、数百機、数千機と(衛星を)打ち上げる時代がもう来ているんですね。
これをコンステレーションと言います。そのままで言うと星座という意味なんですが、複数(の衛星)が打ち上げられて、星座のように見えるので、コンステレーション。いつでもどこでも上にいるという状態が生まれます。
こうしたものは、いま世界中に100以上のプランがあります。残念ながら、一定の割合で壊れます。これはもう統計学的にそうなるし、放射線の影響や、どこかの駆動系が壊れたりします。
(宇宙で)修理はできませんから、カバレッジをキープするために、すぐに代替機を打ち上げなければいけないんですね。
代替機を打ち上げようと思うと、そこのスポットに入れなきゃいけなくて、そのときに故障機は除去しなければならない。まず、それが私たちのお仕事です。コンステレーション向けの故障機除去というものになります。
白坂:我々は(アストロスケールさんの)お客さんだと思います。
岡田:そうですね。このあと別室でお話しなきゃ(笑)。
(会場笑)
岡田:これから出てくるゴミの大半がコンステレーションから出てくるのですが、他方で既存のゴミというのがあります。
これはサイズがいっぱいあるのですが、10センチ以上のものだけで2万3,000個ぐらい飛んでいます。大きいものだと5メートル10メートルという、2階建てバスのようなものがブォンブォン飛んでいるんですよね。
かなり環境的に危ないものが約200くらいあります。これがもし1回爆発すると、宇宙はもうダメかなというぐらい、それぐらいある。これが約1パーセントありまして、これを除去しなきゃいけない。
これは誰が出したかと言うと、政府です。今までの宇宙開発は全部政府なので、政府です。ですから、各国政府とずっと長い間議論をしています。あまり細かいことは申しあげられませんが、2年前や1年前までは見向きもされませんでしたが、もう変わりました。
あまり言うといろいろネタバレになるのですが。例えばですね、6月にトランプ大統領が正しい宇宙政策を発表しています。日本のメディアでは宇宙軍発表としか書いてありませんが、あれをよく読んでほしいのですが「宇宙ゴミ除去が必要である」と、初めてアメリカ政府がちゃんと書いています。
日本の政府も、いま自民党でスペースデブリ、宇宙ゴミに関わる法制の勉強会のようなものが正式に立ち上がっていたりします。
それだけではありません。国連でも初日に呼ばれて話をさせていただくのが私だったり、そのように動いています。ですから、だいぶ変わってきました。そういうかたちでもうビジネスが明らかに見えてきているという状況です。
石田:では、元に戻ったら、お客さんは結局誰かと言うと、たくさん衛星を打ち上げる人たちということですか?
岡田:……と政府ですね。
石田:政府ですか。政府からのお金というのは、どのようにもらっていくんですか? 1国1国ごとにその政府が打ち上げた衛星の人からもらうのか? もう少しコンソーシアム的なものからビジネスになっていくのかで言うと、どんな感じなんですか?
岡田:そこはですね……あと何回かあすか会議が開かれてからであれば、お話ができるんじゃないかなと(笑)。ちょっといまは難しいです。はい。
石田:なるほど(笑)。ありがとうございます。
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