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テリーザ・メイ首相 書簡に署名後の演説(全1記事)

メイ首相「歴史的な瞬間であり、後戻りはできない」イギリスのEU離脱を正式に通知

3月29日、イギリスのテリーザ・メイ首相はEUのトゥスク大統領に書簡を送り、離脱の意思を正式に伝えました。その後に議会下院で行われた演説の全文書き起こしです。

真に国際的なイギリスとなることを望む

テリーザ・メイ氏(以下、メイ):議長ありがとうございます。本日、イギリス政府はイギリス国民の民意を受けて行動に移します。そして、本議会の明確かつ説得力に溢れた立場に基づいた行動です。

わずか数分前になります。ブリュッセルにて、欧州連合(EU)イギリス政府代表部は、私の代理として、欧州理事会議長に書簡を手渡しました。イギリス政府は、正式な決定としてEUの基本条約リスボン条約50条を発動致します。50条のプロセスは現在進行中です。イギリス国民の希望に従い、イギリスはEUから離脱します。

これは歴史的な瞬間であり、後戻りすることはできません。イギリスはEUから離脱します。これ以後、私たちは自らの法律に基づいて、自ら意思決定を行います。もっとも重要な事柄に対するコントロールを自分たちの手に取り戻します。これを好機として、より強く、公平なイギリスを作ります。それはつまり、子供たちや孫たちが誇りを持って「家」と呼べる国です。

これは私たちの念願であり、絶好の機会です。政府が決定したことは、これを手に入れることです。

議長、このような瞬間、つまり、私たちの国の歴史を変える瞬間においては、私たちの選択が国の特徴を決定づけます。

この先に待ち受ける交渉は荷が重いと言うこともできます。後ろを振り返って、このようなことは実現できないと言うこともできます。

もしくは、楽観と希望と共に前を向き、苦難に耐える力を持ったイギリス精神を信じることもできます。

私は、イギリスを信じ、そしてすばらしい日々が訪れることを信じることを選択します。

なぜなら、確かな展望と計画をもって、この瞬間を利用してよりよいイギリスを作ることができるという確信があるからです。

EUの離脱はほかに類を見ない好機をもたらすでしょう。私たちの国に明るい未来を生み出すために、この世代が手に入れた絶好のチャンスです。1歩下がって、私たちが本当に望む国の姿はどういうものか、自ら問い直すチャンスなのです。

私の答えは疑う余地はありません。この変化の時を経て、イギリスがより強く、公平で、団結し、外向的となって生まれ変わることを望みます。安全で豊かで才能に溢れた国になることを望みます。国際的な才能ある人々にとって魅力的な国であり、これからの世界を形作っていくであろうパイオニア(先駆者)やイノベーター(革新的な人々)にとって「家」となる国です。

真に国際的なイギリスとなることを望みます。

ヨーロッパ加盟国とは、最も親しい友人であり隣人です。しかし、ヨーロッパという枠組みを私たちは超えていきます。世界に飛び出し、古い友人たちや新しい同盟国と新たなパートナーシップを築き上げます。

ジョン・バーコウ氏:メイ首長、遮って申し訳ありません。ボズウェル氏、落ち着いてください! あなたは政治家らしい振る舞いというものを学ぶ必要があります。ファッションもそうですが。先の長い目標かもしれませんね、非常に先が長いかもしれませんが、あなたはそこを目指さなければいけません! 

お伝えしたいことは、これまでの実績を顧みてください。みなさんすべてに、首相に質問する機会があります。この声明は非常に大切なものです。首相は、みなさんの言葉に真剣に耳を傾けるべきですし、他の議員のみなさんも首相の言葉に真剣に耳を傾けるべきです。

では、首相どうぞ。

ヨーロッパは親しい友人であり同盟国である

メイ:はい、議長。真に国際的なイギリスとなることを望みます。ヨーロッパ加盟国とは、もっとも親しい友人であり隣人です。しかし、ヨーロッパという枠組みを私たちは超えていきます。世界に飛び出し、古い友人たちや新しい同盟国と新たなパートナーシップを築き上げます。

だからこそ、これから始まる交渉に向けては、明確かつ大きな希望を抱いて計画を設定します。

イギリスとEUの間に、深く関わる特別なかたちでの新しいパートナーシップを構築する計画です。価値観に基づくパートナーシップ。利害に基づくパートナーシップ。そして、安全や経済問題などの分野での協力に基づくパートナーシップです。イギリス、EUひいては世界の利益を最大化するパートナーシップです。

おそらく、過去に前例のないほどに、ヨーロッパが誇る自由主義と民主主義の価値観が、世界に求められています。そして、この価値観をイギリスも共有しています。だからこそ、私たちはEUという機関からは離脱しますが、ヨーロッパから離脱することはありません。これまでと変わらずに、親しい友人であり同盟国です。

私たちは「コミットパートナー」となります。ヨーロッパがその価値観を大いに発揮し安全保障上の脅威からも守られるよう、私たちは自らの役割を果たします。EUの繁栄と成功のために、できる協力はすべて行います。

議長、本日トゥスク大統領に渡された書簡ですが、この書簡のコピーは議会図書館に収納しました。書簡の中には、イギリスとEU双方の利益が最大化するよう、深く関わる特別なパートナーシップを求めると述べています。

そして、建設的な姿勢で交渉に臨むことを明記しました。つまり、誠実な協力精神に基づいて、このパートナーシップを生み出していきたいということです。

2年の交渉期限の間に、今回の撤退に伴う交渉と共に、将来のパートナーシップに関する条件についても合意に至る必要があります。

私はイギリスに大きな希望を抱いています。この交渉に際して設定した目標は変わることはありません。可能な限り行き渡るようにします。このプロセスを通過するに当たって、ビジネス、公的機関、その他すべての人々がはっきりと理解できるよう可能な限り情報を提供します。

このために、明日報告書を公表します。「アキ・コミュノテール」(EUの法規範)からイギリス法に転換する計画を確認し、誰もが立ち位置を正確に理解できるようにするためです。イギリス政府は、イギリスとEUの間で合意された最終合意を持って、上下議会にて投票を行い、この計画を施行に移します。

自らの法律に対するコントロールを取り戻し、イギリスにおける欧州司法裁判所の裁判権を終わらせます。EUの離脱が意味するのは、私たちの法律はウェストミンスター、エディンバラ、カーディフ、ベルファストで作られるということです。そしてルクセンブルクの裁判官が法律を解釈するのではなく、この国の裁判所によって解釈がなされます。

連合王国を構成する4国家の団結を強める時が来ました。私たちは1つの連合王国として交渉の席に着きます。すべての国、そしてイングランドの全リージョンの利益を考慮します。

ヨーロッパに明け渡したパワーを取り戻した際には、どの権限をウェストミンスターに残し、どの権限を権限委譲行政機関に明け渡すのか、丁寧に相談していく必要があります。

議長、権限委譲行政機関によってなされるどのような決定も削除されることはなくなるでしょう。ウェールズ、北アイルランド、スコットランドの権限委譲行政機関は、このプロセスの結果、自らの意思決定権が大幅に拡大することをご理解いただきたいと思います。

アイルランドにおけるCommon Travel Area(CTA)は、これを維持します。過去の境界線に戻ることはありえません。

入国管理については、引き続き頭脳明晰な人材が集まり、仕事や学習においてもっとも魅力的な国であるようにします。しかし、国益に合致するように適切な審査プロセスを実施する必要があります。

イギリスに住むEU市民たちの権利を保障すると同時に、EU各国に住むイギリス国民の権利も早急に保障されるよう求めます。これは、優先順位の高い案件として、書簡にはっきりと記載しています。

労働者の権利は間違いなく完全に守られ、維持されます。これに加え、私のリーダーシップの元では、イギリス政府は労働者の権利を守るのみでなく、その上にさらに構築します。

EUとの間には、大胆で希望に満ちた自由貿易協定を望みます。イギリスとEU加盟国の間で、可能な限り自由な商品やサービスのやり取りを可能にしたいと考えています。これによってイギリス企業は、EUとの貿易やEU市場でのビジネスで最大限の自由度を得ることができるでしょう。そして逆にEU企業に対してもイギリス国内での同様の自由を認めます。

「おいしいとこ取り」はできない

ヨーロッパのリーダーたちが常に言っているように、私たちは「おいしいとこ取り」をすることはできません。単一市場のメンバーであることと、4つの自由を受け入れることとは切っても切り離せません。この見解を尊重します。イギリス国民の総意として民主的に提示された意思と、これら4つの自由は相いれることができません。つまり、単一市場のメンバーでいることはできません。

EU諸国以外の国々とも、貿易協定を締結します。EU諸国との貿易を通じた輸入はこれまでも、これからも変わらないでしょう。だからこそ、イギリスは急速に拡大する世界の輸出市場との取引を拡大しなければいけません。

科学、教育、研究やテクノロジーの分野でEU諸国とは引き続き協力していくことを望みます。イギリスは、科学と革新における最先端国の1つであり続けます。

犯罪やテロリズム、外交など重要な課題については、引き続きEU諸国と連携して対応していきます。

円滑で秩序あるBrexit(EU離脱)の履行が、私たちの目標です。2年後50条の交渉プロセスが終わるまでに、将来のパートナーシップに関する合意に至り、イギリスとEU機関・EU諸国の間ですでに締結された新たな合意に向けて準備し、履行の段階に入ります。

イギリスがEUを離脱することには結果が伴うでしょう。ヨーロッパ経済を牽引する影響力を失います。EUと取引を行うイギリス企業は、すでにその一員ではなくなってしまった組織(EU)のルールに従わなければいけません。海外の他の市場で行っているのとまったく同じことです。これを受け入れる必要があります。

しかしながら、交渉は、建設的かつ双方敬意をもって、誠意ある協力精神に基づいて行われます。

イギリスそしてEU双方の利益のためにも、このプロセスを通して公平かつ秩序ある手順で目標に到達しなければいけません。イギリスそしてEU双方の利益のためにも、混乱は最小限に抑えなければいけません。イギリスそしてEU双方の利益のためにも、ヨーロッパは強く、豊か、そしてその価値観を世界に向けて発信していかなければいけません。

世界貿易の成長が鈍化し、世界中で保護貿易主義の動きが出現しています。ヨーロッパは、すべての国民の利益のために、自由貿易主義を実現すべく立ち上がる責任があります。

ヨーロッパの安全保障は、冷戦終結以来、かつてないほどの危機にさらされています。協力体制を弱体化させ、ヨーロッパの価値観のために共に立ち上がることに失敗すれば、大きな代償を払うことになるでしょう。

EUを離脱するという国民投票の結果は、ヨーロッパの仲間たちと共に掲げる価値観を否定するものではありません。ヨーロッパの一員としてこの価値観を推進、支援する役割を果たし続けます。交渉の最中であっても、そして交渉が終結しても。

より強く、より公平で、よりよいイギリスを築き上げる

私たちは頼もしいパートナーであり続けます。良き同盟国であり良き友人です。EUからの商品やサービスは引き続き購入します。そして私たちもEUに対して販売するでしょう。可能な限り自由な取引を望みます。変わらぬ友情を通して、互いに協力し合い、すべての国がより安心・安全そしてより豊かになるよう取り組みます。

徐々に不安定さを増す世界において、近隣諸国の人々の安全をできる限り守るために、確固たる協調体制を築かなければいけません。私たちは、テロリズムと過激派という共通の世界的脅威に直面しています。このメッセージは、ウェストミンスター橋及びウェストミンスター宮殿で発生した嫌悪すべき襲撃事件によって、強化されることとなってしまいました。

イギリスとEUの間で、深く関わる特別なパートナーシップ協定を締結するべきであることに疑いの余地はありません。

議長、今日という日は、ある方にとっては祝福の日であり、ある方にとっては落胆の日でしょう。6月の国民投票によって、時には対立が発生しました。すべての人々が同じ視点を持ち、同じ投票を行うことはあり得ません。両者の主張は激しいものでした。

しかし、議長、私はイギリス国民すべてを代表して、これから数ヵ月に渡る交渉のテーブルに着きます。老いも若きも、富める者も貧しき者も、都会に住む人、町に住む人、地方や村々そしてそのはざまの集落に住むすべての人々。そして、もちろん、このイギリスを「家」と定めたEU市民たちもです。

この国に住むあらゆる人々のために、正しい合意に至ることは私の確固たる決意です。

この記念すべき旅路において、絶好の機会が私たちを待ち受けています。そして共通の価値観、利益、希望すべてが共にもたらされなければいけません。

私たちすべてが、今よりも強いイギリスを目にすることを求めています。私たちすべてが、より公平で誰もが成功する機会を与えられる国を求めています。私たちすべてが、子供たちや孫たちが安心・安全に過ごせる国を求めています。私たちすべてが、真に国際的なイギリスに住むことを求めています。外へ飛び出し、古い友人たちそして世界中の新しい同盟国と関係性を築き上げます。

これは、イギリスのための政府計画という形の念願です。この大いなる希望を持って、私たちは団結します。投じた票によって対立するのではなく、その結果を成功に導くという決意によって。

私たちは、誇り高き歴史と明るい未来を持つ国民と複数の国家から成る1つの偉大な連合国です。EUからの離脱が決まり、そのプロセスが実行に移された今、団結する時が来ました。

国家の偉大なる歴史的瞬間には、国家の偉大なる努力が必要となります。その努力とは、イギリスの強い未来をかたち作ることです。

一緒にこれを行いましょう。団結して共に協力しましょう。

楽観と希望と共に、イギリスを信じることを選択しましょう。

そうすれば、目の前に多くの可能性が開けることでしょう。

共にこの瞬間を成功に導くことができます。共に、より強く、より公平で、よりよいイギリスを築き上げることができます。それは、子供たちや孫たちが誇りを持って「家」と呼ぶことができるイギリスです。

この声明を議会のみなさんに託します。

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