2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
Stanford Graduate School of Business Sequoia's Neil Shen to Entrepreneurs: "Follow Your Heart"(全2記事)
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司会:中国の経済は急成長しており、世界2位の規模となりました。セコイア・チャイナは多くのアメリカ資本の企業とビジネスをされています。Linkedinに投資され、Airbnbの戦略パートナーでいらっしゃいますね。アメリカの企業が中国に見出すべきチャンスと障害はなんでしょうか? そしてセコイア・チャイナはどのようにそれを手助けされているのでしょうか?
ニール・シェン氏(以下、シェン):国際企業、特にアメリカの企業が中国に参入するという点について、中国が国外に扉を開いてから30年40年の間は非常に成功していたと思います。彼らのテクノロジーが非常に進歩しているため中国国内での競合がゼロだからです。
GMが中国に参入した頃、人々は非常に喜びました。GMが世界で最も優れた自動車を提供する企業ではないとしてもです。そして多くの共同事業が設立されました。
当時のキーワードは「テクノロジーを利用してマーケットシェアを得る」でした。つまりヨーロッパやアメリカの企業が連結子会社をつくるか共同事業を立ち上げ、競争に勝っていたのです。それは民間企業であったり国有企業であったりしました。
しかし現在は違います。現在多くのセクターにおいて中国の民間企業や国有企業、どちらも非常に勢いがあります。彼らは学び、彼ら自身にアイディアが生まれています。なので海外の企業とも競争します。過去にGMが参入した時は競合がいなかったかもしれませんが、現在では国内企業は非常に力を持っています。
アメリカの企業が中国に参入するのであれば、これまでのやり方では通用しないかもしれません。アメリカ企業は中国市場に合うようにビジネスモデルや商品を変化させていかねばならないでしょう。
特にインターネット業界ではそうです。アメリカと中国、ほぼ同時期にインターネットが普及し始めました。中国のビジネスモデルにはアメリカより進歩しているものもあります。TencentがFacebookの真似をしたとは言えません。Facebookやその他SNSサイト、これらのいくつかの機能は中国のそれから学びつくられたものです。
つまり海外のサービスが中国でインターネットビジネスを始めようとするのであれば、それを売り込むポイントがあるかどうかを考えねばなりません。
次に、国内企業との競争は免れません。とても優秀な起業家が運営する企業がたくさんあります。その中で成功するにはどうしたらよいか? 我々が提案することのひとつは、ユニークな株式保有構造を構築することです。
誰か本社に属する人物ではなく、中国でのビジネスに精通している起業家を責任者にします。本社の言いなりになりすぎないようにします。それが我々がLinkedinの時に取った方法であり、Airbnbで苦戦したことです。
LinkedinとAirbnbのプロダクトは素晴らしいです。しかし中国国内に競合がおり、これら競合のCEOはとても手ごわい。Linkedin・チャイナを専門に運営する人を設置する構造を持つべきです。これがアメリカの企業が中国で生き残る方法だと思います。
もし中国の企業がシリコンバレーに参入したいというのであれば、彼らもまた同じ方法を取るべきですよね。本社から誰かをアメリカに送る、そしてその人物にアメリカで競争に勝つように言う。そんなことをしても成功できないと思います。
現地シリコンバレーで最高の人材を見つける。そしてその人物には十分な報酬を与え、存分に仕事をしてもらいます。中国にある本社は一歩下がります。そうすればもしかしたらシリコンバレーで勝ち抜く可能性があるかもしれません。このようにして我々はLinkedinとAirbnbを中国に参入させました。
このビジネスモデルは他のアメリカの企業にも応用できるはずです。既に成功している企業であっても、我々はビジネスパートナーとして最高のチーム形成を、そしてビジネス成功のためのリソースを手に入れるお手伝いします。
実際、地元のCEOを見つけるのは簡単なことではありません。この人物はもちろん起業家でなくてはなりません。さらにこの人物とは大規模な組織と共に行なうビジネスを理解できる人材でなくてはなりません。
というのも「本社」の力、すでに存在するテクノロジーのインフラを利用して上手く運営していかねばならないからです。そして本社のどの部署がいかに彼を助けるのかということも理解してもらう必要もあります。
つまり、このような人材を見つけるのは非常に困難なのです。現在Linkedinは非常にうまくいっていますが、他のアメリカの企業ともこのように共にビジネスを展開できればと思います。
司会:中国でAirbnbを使って宿泊してみたいものです。
司会:それでは質疑応答に移ります。興味深いディスカッションでした。Twitterに寄せられた最初の質問です。ここにいる我々の多くは起業家を目指しており、中国にチャンスがあると感じています。中国におけるユニークなチャンスと障害はなんでしょうか? そしてその障害をどのように乗り越えるべきでしょうか?
シェン:頻繁に起こるのは競争ですね。実際非常に興味深く、私にも完全な答えはわかりません。ここアメリカ、シリコンバレーではビジネスモデルをコピーしようとする人はいません。Uber、Linkedin、Airbnbなどありますが、真似して類似サービスをつくりあげる人はいません。しかし中国では成功したビジネスを真似して類似ビジネスを始める人々がたくさんいます。
(会場笑)
これはいかに競争するかというたとえ話です。しかし実際ビジネスリーダーたちは、新たなものをつくりだすことにプレッシャーを感じています。Ctripを運営していた時、毎週月曜のミーティングで競合他社はどんな動きをしているかを話し合いました。実際他社が我々のモデルをコピーしていることが多々あったからです。
我々が取ったマーケティング手法を他社に真似られるという状況でしたので。つまり、常に新しいものを他社よりも先に生み出し続けねばならないのです。資金を多く集め続け、新たなものを生み出し続け、他より優れた企業であり続けるのです。そして他より優れた企業、というのは細部で決まることもあります。
ある時、我々はeLongの2倍の規模になりました。彼らと我々を差別化したのはコールセンターです。彼らよりも我々のほうがサービスの質が良かった。実はこれが非常に重要なことでした。
ホテルグループと良い関係を築き始めると、eLongも後から追いかけてくる。そんな状況の中、ホテルが我々とだけビジネスをしてくれるようにするのは難しいですが、我々はカスタマーサービスで差をつけました。
カスタマーサービスは会社の小さな一部分と言えるかもしれませんが、この小さな一部分が我々を他と差別化する決め手となりました。もし本当に中国に参入したいのでれば、競争することと新しいものを生み出し続ける必要があると覚悟してください。
もうひとつ。シリコンバレーでは優秀な人材をキープすることが困難です。優秀な人材は自分で起業してしまいますから。しかし中国ではそれが更に困難です。中国の主要インターネット企業の離職率を見てみると、アメリカの企業のそれよりも更に高いです。スタートアップで成功しようと狙っている人はたくさんいます。特にモバイルインターネットの世界で。中国での障害には人材にいかに留まってもらえるかということもあるということですね。もちろん報酬の額もそのひとつですが、組織のトップがとどまってくれるような文化をつくることも大切です。
質問者:それがトレンドとなるか不確かな状態で、投資先をどのように見極めるのですか?
シェン:スタートアップを見極める時に見る一般的なポイントがいくつかあります。これはどんなビジネスにも共通するポイントです。
まず第一に、そのチームがそのビジネスに見合った経験を持っているかどうかです。例えばeコマースの場合、彼らにコンシューマーリテールの経験があるかどうか、サプライチェーンの経験があるかどうか。エンタープライズの場合、関連するソフトウェアやエンタープライズの経験があるかどうかです。
次に市場規模も見ます。これは非常に重要です。特に最初の1、2年は重要で、まずはコアとなる基盤をしっかりとさせねば次のステップに行くことができませんから。
そしてタイミングが合っているかも見ます。中国のエンタープライズの需要は間違いなくあります。しかし人々には優先事項があります。エンタープライズのソフトウェアにいくらくらい使いたいか。つまり今年何にいくらほど使いたいか。1年後は、2年後は?という計画があります。つまり企業が何の効率を改善しようとしているのかを知る必要がありますね。
質問者:お話をありがとうございます。私の質問は人についてなのですが、あなたがCtripを始めたとき、どのようにしてパートナーを見つけられらのですか?
シェン:もちろん完璧なパートナーを探すことは非常に難しいです。しかし良いパートナーを見つけることができれば十分でしょう。スタートアップが我々のところにやってきてプレゼンをするのを見て、しっくりきている仲間だなと思うチームは少ないです。
Ctripを始めた時、パートナーである我々はそれぞれ他の分野での経験を積んでいました。それでも我々3人は旅行業界での経験がある仲間を引き入れることにしました。
我々のビジネスは、インターネットであると同時に旅行ビジネスです。つまり旅行業界を知り尽くしている人材が必要だと考えました。例えばホテルとの付き合い方や、昔からある既存の旅行会社といかに競争するかといったことです。
とても興味深い質問をありがとうございます。完璧ではなく協力関係にあるチームをつくり、スタートアップに何が必要なのかを考えます。Eコマースをするならサプライチェーンを知っている人が必要です。今何にフォーカスすべきかによって、チームも変わってくるでしょう。
質問者:中国とシリコンバレー、どちらのバブルが大きいですか?
シェン:中国に大きなバブルは見えません。中国のスタートアップは時価を上げているかと考えると、会社の価値は上がったり下がったりしますので、特に私は気にしていません。市場は常に動いていますよね。
バブルの話ですが、ユーザーが価値を感じるものを生み出すことなく会社の価値を上げることばかり気にするというのはいただけないですね。UberやAirbnbは最も成功しているスタートアップ企業ですが、彼らは世の中に価値を生み出しています。
Uberは世界中で効率のいい交通手段を提供し、Airbnbはホテルが考えもつかなかった新たなデマンドを生み出している。つまり新たなデマンドを生み出すか、人々の効率を物凄くあげることが必要なのです。最終的には企業が世の中に価値を生み出すかであるので、バブルがどうだとかは気にしていません。
2001年ごろSPカンパニーというものがたくさん中国にありました。彼らは着信メロディーや写真を中国の携帯電話に配信する会社でした。その多くはすでに倒産または売却されました。
売却されたことが問題なのではなく、なぜこのようなビジネスは潰れてしまったのかが重要です。当時はものすごく流行っていましたから。彼らが提供した価値は非常にたわいのないものだった。そして人々は中間に入るそのような業者を必要としなかった。つまり携帯電話会社が自社で同じサービスを提供したら終わってしまったのです。これが真のバブルです。このSPカンパニーはバブル状態だったと言えるでしょう。
司会:最後にひとつだけ。今日会場に集まった未来の起業家たちにメッセージをお願いします。
シェン:自分の心の声に従ってください。完璧な選択をするのは非常に難しいことです。私が選択をする時にこころがけていたのは、トレンドに従う、そして本当に興味があってやりたいことをやることです。
ドイツ銀行に勤めていた時、中国の経済発展に貢献することが本当に嬉しかった、そしてもっと何かしたいと思っていました。Ctripは非常に良かったです。私は旅行が大好きで、中国はインターネットによって変化していくと思ったからです。
本当に好きなことでなければ続けられません。トレンドが読めた、でもそれに興味がない場合、6か月や12か月ほどやって次のトレンドの波に乗るでしょう。一部の起業家はそのようなタイプの人々ですね。「どうしてこのビジネスをやりたいのですか?」と聞くと「B2Bが今アツいからです」と答えた人もいました。
しかし本当は、自分がそのビジネスに向いているか、そのビジネスをやる情熱があるかが重要なのです。自分自身に聞いてみることです。好きなことをやりたいという心の声を聴いて、それに向かって進んでいってください。
司会:今日は本当にありがとうございました。
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