2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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市來孝人氏(以下、市來):そういった現地の若者のトレンドというのは、どのように収集されているんですか? やはり現地の方と一緒に働かれているからということが大きいのでしょうか?
齋藤真帆氏(以下、齋藤):とにかく街に出ることですね。シンガポールはイベントが多いのと、レストランとか飲食店がたくさんあって、かつ入れ替わりも激しいです。流行るエリアが比較的早いスピードで変わっていくのですが、その通りを歩いてみるとだいたい今の若い方たちとか、外国人エキスパットの方たちの動向がわかったりします。
あとは、Facebookで繋がっている周りの方々が書いていることも流行を知る意味ではわかりやすいかなと。よくイベントページのお誘いとか来るので、そこでどういう場所でどういうイベントをやっているのかとか、どんな人向けにいくらぐらいでやっているかとか。
私がいる9年だけでもどんどん変わってきていて、今はシンガポールと東京を行ったり来たりしているので、ちょっと離れるだけでも「察知できてないんじゃないかな。感覚が鈍ってしまうな」と不安になるぐらいです。
市來:動きが早いという意味では、「アジアマーケットで流行るプロダクト・サービスは?」というテーマについてはいかがでしょう。これまでのお話を踏まえると、正直これは「答えが出ない」ことが答えなのかなという気がしますけれども。
現地でこういうサービスが流行っているかとか、そういった情報はどういった形で見つけていくのがベストなのでしょうか?
日向徳旭氏(以下、日向):スタートアップ業界の面で言いますと、アメリカとかヨーロッパのVCさんや投資家の方が日本をかっ飛ばして東南アジアとかインドとかに行くって言ってました。その理由の1つは成長しているというのがあるんですけど、なぜ日本に投資しないのか、来ないのかというと、2つ問題があると言われてまして。
1つは情報が見えない。日本のサービスとか、コミュニケーションとか、ブラックボックス化してまして、投資をしてもリレーションが難しそうだねとか、他の似たようなサービスも日本のリサーチ資料が全然出てこないと。
その背景でいくと、海外を見習った日本のサービスにものすごくおもしろいものがたくさんあると思うんですけど、それがアジアにも進出していくスペースがかなりあるのかなと思ったりします。
その情報の発信源というか、弊社Tech in Asiaも日本にあるんですけど、なかなか日本のスタートアップ業界とか、日本のサービスを海外に発信していく能力がまだまだ低いので、日本全体がどんどん「日本のサービスにはこういうものもありますよ、次はどうされます?」と発信できるようになるとおもしろいかなと。
皆さん日本にはすごく興味あるんですけれども、なかなか来れない。日本のサービスの会社にいながらコンタクトできないというのもあり……。
市來:日本のサービスへの興味は持たれているんですか?
日向:持ってるのは持ってるんですけど、誰にコンタクトしていいのかわからないとか、英語での情報が他の国と比べて少なすぎるというのが1つあると思います。
市來:新井さん、齋藤さん、いかがですか? 日本のサービスであることで注目されることもあったりするんでしょうか?
新井豪一郎氏(以下、新井):ありますよ。ただ国ごとに違って、タイと台湾は親日度が高いので、日本をどんどん表に売り出していったほうが上手く行きやすい。韓国は親日度というよりも、国内のサービスのほうが優遇されるので、あまり日本という言葉を出さないでやるっていうのが、今のところのメッセージの伝え方。
あとは僕らは教育サービスなので、所得層でどこのセグメントを狙っていくのかっていうところが、1つ考えないといけないところで。そこに関して言うと、台湾と韓国はあまねく全ての層が教育に投資をする。そしてある程度、かわいいとか、気楽さをサービスとして前面に出していく。
タイはミドル層までなんですけど、やっぱりお金を最終的に払ってくれるのはトップ層、ソーシャルクラスで言うと上の層なので、これを使っていることがかっこいいとか、ハイソだとか、そう感じさせるようなマーケティングをしないといけないと思います。
インドネシアは特にそうですね、まだまだミドル層が少ないですし、当然アプリにお金を払ってくれなくて、ハイクラスの人たちにいかに課金してもらうかを考えると、少しハイソなサービスとして出していくっていうのは必要だと思っています。
なので流行るプロダクトっていうのは、その国の経済事情とか、日本に対する見方とか、そういったところで切り替えていくっていうのがたぶん必要。もちろんそれは時間軸によって変わっていきます。
市來:それも変化があるということですね。齋藤さんはいろんなクライアントさんを抱えていらっしゃいますけど、いかがですか? 先ほどの話だと、シンガポールの方はフラットに自国と全世界と比較されるという意識でいらっしゃるということでしょうか?
齋藤:そうですね。シンガポールにおいては、メイド・イン・シンガポールってあまり無いんですね。外国産、輸入に頼っている国なのですが、その中でもメイド・イン・ジャパンは安心安全という認識がありますね。弊社でアパレル関連のテストマーケティングのプロジェクトをお手伝いさせていただいた時に、ポップアップショップを運営して、いらっしゃる方の買い方や見方を見ていたらタグのメイド・イン・ジャパンを気にしていました。
生活雑貨もそうでしたね。規格を見たりとか。どこからのものかというてことは常にチェックをしている。洋服に関しては縫製とか、生地の質だとか、「日本のものは質がいいよね」と言って、多少それが高くても買ってくれる傾向にあります。
安心安全というところも強いですし、デザイン性というか、若い方たちでいうとコスパも結構気にされるのと、他の国で話題になっているかどうかもおそらく気にしていて。
というのは、どの国の英語メディアでも彼らは全部読めるので。日本は基本的に日本語のメディアだと思うんですけど、シンガポールの方たちは、英語圏全世界の情報を見ているわけです。なので、それだけ選択肢がある中で、いかに自社の商品の強みを理由付けられるかはチャレンジだなと思います。でも皆さん日本のことはもともと好きですし、ヘルシー志向なので、日本食も大好きで、シンガポールのどこに行っても日本食が当たり前のようにあるほどですね。
市來:先ほど英語メディアの話もありましたが、現地のメディア事情の話に移っていければと思います。例えばシンガポールの書店に行ってみると、本当にいろんな国の雑誌がありますよね。やはりシンガポールのその環境は独特といえるのでしょうか?
齋藤:東南アジアの中ではそうですね。英語だけでなく中国語のメディアも多いです。その上シンガポールにはいろんな国の雑誌も買えるし、逆にシンガポール発信の媒体が少ないので、他の国のメディアからも情報収集しているっていうのはあると思います。
市來:現地のメディア事情も教えてほしいと言われることも多いと思うんですけど、そういった時にはなんと答えますか?
齋藤:現地のメディアは日本に比べると媒体数は少ないです、なので露出の数はあまり期待しないでください、ということですね。メディア数が少ないからか、ライターさんとかエディターさんがとても忙しいというのと、ニュース性の高さを問われるので、「日本企業がシンガポールに進出しました」というリリースだけだと難しいと思います。外資企業がそもそも多いので、進出報告だけじゃニュース性が弱い。そこにおもしろい話題性があるのかどうかを問われる。比較的ジャーナリズムに忠実な国なので。
あとシンガポールって、日本に比べるとセレブの数が少ないんですよね。いわゆる芸能界が存在しない。シンガポールのテレビ局は、国営放送みたいなもので、6チャンネルぐらいしかなくて、英語のチャンネルは2チャンネルぐらい、それ以外はマレー語とか、インドネシアのタミール語とかになってます。
そうするとテレビの力っていうのが日本に比べると弱いのかと。芸能人をアサインしてそこで話題性を狙うというのもなかなか難しい。日本人のように芸能人やセレブへの憧れが強いわけではないので、日本の広報スタイルとは別のアプローチを考える必要があります。
市來:そのライターさんは、どこで執筆されているんでしょうか?
齋藤:一般紙のライターさんとか本当に引く手あまたなので忙しそうです。コネクションも大事だと思うんですけど、そもそものコンテンツの質が問われる気がします。
市來:新井さんと日向さんも「この国のこのメディア事情は特殊だった」という体験がいろいろあると思うんですが、いかがでしょうか。
新井:タイからいきますと、テレビのチャンネルが地方局ばっかりで、全国にリーチするっていうのはあまり期待できないなというのは、結構早い段階から感じてました。
最近、うちのデザイナーが「現地のデザイン感覚を把握しておきたい」というので、タイのインターン生たちに「雑誌買ってきて」って言ったら「は? 雑誌?」って(笑)。「そんなもの読まないよ」「は? 紙?」みたいな反応で。紙離れが日本よりも激しいんじゃないですかね。紙媒体から離れてますね。
市來:私もタイに行った時に思ったんですが、それこそYouTuberみたいな女の子が日本のファッション誌のタイ語版でコラムを持っていたりとか、影響力がすごいなと思いました。あと、SNSも盛んですよね。
新井:そうですね。Facebookのファンページみたいなものがすごい多い。
市來:どうやって検索したらそういう人が出てきますかね?
新井:ちょっとそこはよくわからない(笑)。プロモーションしたいんだったらFacebookのファンページを書いている人にお金を払って書いてもらうみたいなことは、現地のIT系のスタートアップの人たちはみんな口を揃えて言います。
市來:じゃあそういうルートが実際にも出来つつあるということですか?
新井:そうです。
市來:日向さんはいかがですか、他の国で何か特殊なメディア事情などありましたら。
日向:アジアではないですが、僕が住んでいた経験でいいますと、アメリカに住んでいた時はテレビをつけると100チャンネルとか無茶苦茶あるので、次の日に会社に行って、日本だと「昨日のさんまさんおもしろかったよね」とか、一昨日見たとか、話がかぶることがあるんですけど、アメリカだとテレビで言うと全然かぶらない。よっぽど有名なハリウッドのテレビとかマンガ以外は全然かぶらない。そういった、「人によって見てる情報のソースは全く違うな」っていうのはものすごい感じます。
それで電子書籍のマーケティングなんですけど、日本とアメリカの電子書籍の違いは、日本は書店の数が確か世界でトップクラスで。アメリカはあまり無くて。日本は電車通勤の中でスマホとか集中して見るという国民性があるというデータがありますが、アメリカだとオーディオブック。まず本屋に行くのにかなり遠いのと、全然本屋がないので。
アメリカの本やテキストブックはめちゃくちゃ大きいんですよね。あと重い。それで電子書籍化するのが早くて、今はオーディオブックとか。アマゾンさんもオーディオブック出していて。そういった住んでる特性の違いっていう中で、これからプロダクトの戦略が違うのかなって思ってます。
アジアに話を戻すと、弊社はインドネシアとシンガポールに拠点がありまして、インドネシアは英語が話せる人も割りと多い気もしますが、インドネシアではローカライズして全部インドネシア語でやってます。アクセスもインドネシアからだと、英語のサイトよりインドネシア語のサイトのほうが多いですね。シンガポールやその他のアジアからは世界に対して英語でやってます。
日本からのサイトのアクセスがすごい少なくて。理由がありまして、日本人が英語ができないという理由じゃなくて、1つは英語の文章を読むのが面倒くさいと言ってます。ページには来てくれるんですけど読んでないんですね。それは英語ができないんじゃなくて、英語を読むのが面倒くさい。なのでアクセスにそういった違いが出てきます。
市來:語学の話が出ましたけれども、やはりアジア進出にあたって、言語という壁はどうしても乗り越えていかなければいけない部分ではあると思います。最初はやはり英語圏というところでやっていくのが無難なんでしょうか?
新井:僕は別にタイ語を話せるわけでもなく、中国語もそんなに喋れるわけではないので。英語が話せればどこの国でも行けるのかなっていう感じはします。
市來:サービスとしては、まずは英語対応していくほうが最初なのか、タイ語で最初に対応したのか、どちらでしょう?
新井:それは日向さんの話に関係しますけど、僕らみたいなWebサービスでもインターフェイスがタイ語だとユーザーも親近感を持ってくれる。それを現地の言葉にローカライズする。それ自体はそんなに手間がかかるものではないので。
市來:そこはそんなに手間がかからず、すぐに対応出来ると。
新井:そうですね。
市來:シンガポールは、英語と中国語で二分されますか?
齋藤:基本的に英語でいいと思います。余裕があれば、中国語でも。でも英語で充分だと思います。
市來:さらに言うと、現地に住む日本人マーケットから攻めていくという方法は果たしてあるんでしょうか?
齋藤:弊社はあまり注力していません。今、明らかに増えている人口は東南アジアの他国からだと思うので。日本人もこれから増えていくと思いますけれど、ドラスティックには増えていかないでしょうからね。
シンガポールの場合は、私が9年前に移住した時は大半が駐在の方、プラス現地採用の方。それがリーマンショックで日本に帰国された駐在員の方も多く、その後にいらっしゃったのが日本から海外進出をされる中小企業の方たちですね。このように在留日本人の方のタイプが多様化してきたなというのもあります。また求人でいうと9年前は日本人じゃないとできないポジションというのが多かった気がします。日系企業で日本語と英語が喋れる人の需要があった。でもこれからはローカルや外国人で日本語と英語が喋れる人がいるので、本当にそのポジションが日本人でなければいけないのかというところが問われていると思います。
2カ国語3カ国語喋れることがシンガポールでは当たり前なので。そういう方たちにリプレイスされてるという中で、日本人がこれからどうやって海外でプレゼンスを上げていくのかは気になるところです。
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