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「稼ぐ力の鍵とは?」20~30代ビジネスパーソンの人生戦略(全2記事)

藤原和博氏が語る、年収1000万〜1億円を目指す人生戦略

2015年8月6日、ビジネス・ブレークスルー大学にて「稼ぐ人の武器=プロフェッショナルシンキング」と題するフォーラムが開催され、教育改革実践家で元リクルート社フェローの藤原和博氏が登壇しました。「『稼ぐ力の鍵とは?』20~30代ビジネスパーソンの人生戦略の決め手」をテーマに、親や学校からは教わることのなかった「稼ぐ」ことの本質を語ります。本パートでは「100万人に1人の希少性のある人材」になるために、異なる分野の組み合わせでキャリアアップする方法を紹介します。同氏は「1万時間やり続ければ人間は1つのことをマスターし、その分野において100人に1人ぐらいにはなれる」と持論を展開。さらに上を目指す人には、ひとつの分野で1万人に1人になるのではなく、近い分野に新たな1歩を踏み出す重要性を力説します。一方で、「クレジット(信任)を増やして、蓄積することで人間は自由になれる」「収入を極大化すればいいというわけではない」と収入だけに価値を置かずにある程度のゆとりを持つことの大切さも説きました。

20代から30代の前半で、まずは100人に1人の人材になろう

藤原和博氏(以下、藤原):これからお話するのは、あと15分ちょっとなんですが。自分をレアカード化するためのコツを2つだけお教えしようかなと思うわけです。教えてほしいですか? ほしいですよね。

コツ1です。世の中は20世紀の成長社会からもう21世紀の成熟社会に入っていて、情報処理的な仕事はどんどんなくなりますよね。情報処理力よりも情報編集力が大事になっていきます。

要するに知識、技術、経験、全部組み合わせて、自分の独自の価値をつくる、自分が納得できる価値をつくるのが大事だっていうのが、僕の本の前提なんですね。

ここでも同じです。情報編集力の勝負なんです。編集力。これ、やさしい言葉で言うと、「つなげる力」と僕は呼んでいます。そのものずばりの本のタイトルでもあるんですが、編集力、つなげる力でこのレアカード化するっていうのはどういうことかっていうと、掛け算を使えってことなんですよ。掛け算ね。

つなげる力―和田中の1000日 (文春文庫)

結論から言っちゃうと、ここにいるすべての人に、30代、40代、50代と、30年ぐらいかかってもいいので、100万人に1人の希少性のある人材になってほしいんですよ。

これが達成されると大体年収1000万から1億円ぐらいは絶対いくんじゃないかと思います。年収でいえばね。というわけで、あるいは時給でいえば、あの右側にグンと寄れるという話ですね。

じゃあ掛け算で100万分の1を目指すっていうのはどういうことかっていいますと、どんな仕事をしても、例えばある会社での経理の仕事でもいいですし、ある会社での販売の仕事、営業の仕事でもいいんですが、どんな仕事でも1万時間訓練しますと人間っていうのは大体マスターするんですよ。人間の脳はそうなってるんですよ。

1万時間ですね。これは世界中でそういう研究があるんですけども、1万時間やり続ければ人間は1つのことをマスターし、その分野において、100人に1人ぐらいにはなれる、と。

もう今ね、おそらくここにいらっしゃる30代の人は1つの分野で100人に1人にはなれてる人じゃないかと思うんですよ、違いますか? それが経理であろうと、受付であろうと販売であろうと、保守点検の仕事であろうと何でもいいんです。

100人に1人にまずなりますね。できたら20代から30代の前半でこの片足、この軸足ね。左足の軸足をまず置いて、そこで100人に1人になってほしいわけですね。

「分野×分野」掛け算で1万人に1人へステップアップ

藤原:次なんです、問題は。今度は30代から30代の後半、40代の前半までかけてもいいんですけど、今度は右足。右の軸足は、同じ分野でやらないで、例えば経理一直線とかですね、受付一直線じゃなくて、別の分野。

しかもこの左足の軸足もありますから、右足に近いところに出していいです。経理だったら財務だったり、受付だったら広報だったり、広報だったら宣伝だったり、というような感じで近い分野でいいいんで、踏み出してほしい。こっちに、右足ね。

この両方で100分の1×100分の1、つまり1万人に1人の希少性が確保されますよね。簡単な掛け算です、わかりますよね?

1万時間っていうと、多分何でそんな長いのって思うかもしれません。1万時間は長いなと思う人、ちょっと手を挙げてみて。

(会場挙手)

でもね、僕がこういう言い方したらどう? 1日3時間やるじゃない。365日やったら1000時間じゃん。そしたら10年でしょ。1日6時間ずつ取り組んだら5年なんですよ。

皆さんそのように今の仕事をマスターしたはずだし、例えばかなりテニスが上手い人だったら、絶対、中、高と1万時間くらいやったから、かなりベースができてるんじゃないかと思いますよ。というようなわけでみなさん、そのようにマスターしてるんで、それを応用すればいいっていうだけの話なんです。

いいですか。ここで難しいのは、1つの分野で100分の1になった後に、その分野でそのまま1万分の1になろうとすると、それはやっぱ9900人ぐらいは競争に敗れて屍になっちゃうわけなんです。その考え方より、別の分野、近い分野に踏み出して、そこで100分の1になって、掛け算するっていう感覚。これがすごく大事なの。

例えばお笑いであれば、まあ吉本行けば、だいたい20代で100分の1ぐらいにはなれるじゃないですか。だけど、テレビのレギュラーとれるかどうかっていうと、それはやっぱり1万分の1ぐらいの存在ですよね。

誰でもテレビのレギュラーとれるかっていうと、そうじゃないですよね。そうすると、やっぱり1万人のうちの9000人ぐらいは屍とは言わないけど、結局は通用しないで終わってしまったりするわけです。そうじゃなくて、2分野の掛け算で、まず1万分の1までいきましょうと。こういう話です。

例えば私の場合でも、20代でまず営業に突っ込まれましたから、リクルートで。何やったかっていうと、まず1万時間はかかったと思いますけれども、営業とプレゼンで100人に1人にはなったと思います。

一歩踏み出さなければ価値はどんどん下がり続ける

藤原:次、僕は27歳から37歳までマネジメントをやってるんですが、リクルート流のマネジメントで、やっぱり1万時間やったと思うんです。途中、メディアファクトリーっていう会社の創業もありましたけれども。というような感じで、100分の1、100分の1で1万分の1と。

僕はそれで、1万人に1人の希少性が出たので40で会社辞めたんです。40で会社辞めまして、インディペンデントになっていて、そこから僕ずっと20年間インディペンデントでやってるんだけど。

でももし僕がそのまま「リクルートのフェローです」とかいって、リクルート流の営業とプレゼン×リクルート流のマネジメントの掛け算だけで、これでずっと勝負してたら、多分、僕の商品価値はどんどん下がってたと思うんですよ。なぜかっていうと、その2つの掛け算で勝負してくるやつは、若手でどんどん出てくるから。わかりますよね。

例えばマッキンゼー出身でこういうことができるって人がいたとしても、マッキンゼー出身で若いやつでもっと力のあるやつがどんどんでて出てくるわけだから、当然価値が減っていくよね。

なので僕は47歳のときにもう一発、100分の1ね。これは何かっていうと、リクルート流の営業プレゼンとリクルート流のマネジメントをまったくリクルート流じゃないところ、ノンプロフィットの世界で試したらどうなるかっていうことに賭けたわけです。

どーんと踏み出しました。この1歩を。遠いところに。リクルートの風土と100パーセント違うし、足引っ張られるかもしれないし、先生たちなんか絶対言うこときかないから、絶対やめたほうがいいってやつが9割はいたんですが、その勝負に出て、それが結局通用しちゃった。

要するにノンプロフィットの学校もリクルート流の営業プレゼンとマネジメントでできちゃって。結果的には和田中学校っていうところは、169名しかいなかった生徒が450名になったり、23校中21位ぐらいをうろちょろしていた成績がトップになったりですね、そういう実績が出ちゃったんで、この三角形が完成することになります。

校長っていうのも5年やったんですけど、大体1日10時間ぐらい、目の前のできないことをできるようにするにはどうしたらいいか? わからないことをわかるようにするにはどうしたらいいか? ってことを考え続けて200日ぐらいやりました。そういう意味では1年で2000時間ね。だから5年で1万時間ですわ。これで僕の100分の1×100分の1×100分の1は完成しましたよね。掛け算しますと、100万分の1じゃないですか。

1つの分野で勝負して100万人に1人になるのはちょっとしんどい

藤原:確率計算しますが、これこの本にはっきり書いてあるんです。どういう計算したかも書いてあるんですが、100万分の1っていうのは、実はオリンピックのメダリスト級です。

山中さんのようなノーベル賞級っていうのは大体1000万人分の1。100万分の1クラスはですね、いいですか、みなさん。絶対なれるんですよ。この3つの掛け算をやりさえすれば。

例えば今から1つの分野で100万人に1人になろうとしたら、それはフィギュアに打って出て、あの羽生くんに勝つってことですから。今からやる人いる? 夢は叶うとか言っちゃってもね、「それはちょっとしんどいじゃないの?」というわけで。

1つの分野で勝負して100万人に1人になるには、羽生君もそうであったように99万9999人を倒さなきゃならないんで、ものすごい勝負です。アスリートはそれをやってもいいかもしれません。でも僕は普通のビジネスパーソンでもこの存在になれる方法を今、示してるんですよ。3つの分野で掛け算しましょうねと。こういう話。

「最初に旗を立てたやつが勝ち」

藤原:まだみなさんはおそらく、3つ目を見つける段階じゃないかもしれないのですが、この2つ目を見つけるのもすごく大事なので、ちょっと例を挙げますね。

1つの例としてはこれです。アロマセラピストとかネイルアーティストね。アロマセラピスト、ネイルアーティスト、どっちとも20年前にはなかった職業なんですよ。アロマをやってる人はいっぱいいましたよ。

それからね、セラピーやってる人もいっぱいいました。だって癒しをやってる人(ということ)でしょ? マッサージやってる人から寺の坊さんから、教会の牧師まで、みんなこっちですよ。

ところがアロマでセラピーをやるってことで、「アロマセラピスト」っていうふうに最初に言っちゃった人がいるわけです。それで例えば協会をつくって、それで何か教科書をつくって、検定つくっちゃって、会費とって、家元制にする。これでお金がものすごい流れ込んだんですよね。要するに「最初に旗立てたやつが勝ち」ということなんです。

ネイルアーティストだってそうでしょ。うちの母だって昭和のひと桁生まれですけど昔、マニキュアやってましたよ。マニキュアね。だけどそれをアートにまで高めてしまったという。要するにネイルをやってる人はいっぱいいた。それからアーティストもいっぱいいました。絵を描く人もいれば、彫刻やる人もいた。

ところが爪の上がアートだって言っちゃったやつがいるわけですよ。ネイル×アーティストで、おそらく1万時間×1万時間ぐらいやったやつが、ばっとそれを掛け算しちゃったわけ。旗を立てた途端にそこにお金が集まってくるわけじゃないですか。

掛け算することですごく希少性が高くなった。どういうふうに掛け算するかもとても大事ということですね。

3歩目をできるだけ遠くに踏み出すことで、周囲に敵がいなくなる

藤原:もしこの中に40代の方がいて、もうすでに2つはマスターしてるんだとしたら、3つ目をどこに踏み出すかを考えてほしいです。

この2段階目、3段階目両方の人がいると思うんだけど、先程と同じように1分半ぐらいで周りの人に、「自分はこの3つでがんばりたい」というのを語ってみてほしいんですよ。

それぞれの三角形をつくるつもりで、1つ目から2つ目でもいいし、2つ目から3つ目でもいいんだけど。多分ほとんどの人が1つ目はもうできてるんじゃないかと思うので、それも語ってみてください。

「自分はまだ1つ目ちょっとできてないな」って人は、1つ目これにしますみたいな感じで。

2つ目を探す段階の人は「ここに踏み出せば、掛け算でアロマセラピストっていう感じの希少性があるんじゃないか」みたいな話でもいいし、すでに2つある人は3つ目、「徹底的にレアな感じになるように、ここに踏み出せばおもしろいんじゃないか」というように話してみてください。

1分半のちょっとした軽いブレストです。決意表明みたいなのでもいいし、感想みたいなものでもいいですから。いきましょう、3、2、1、はいどうぞ。

(ブレーンストーミングタイムが開始)

あまり一人ひとりゆっくりプレゼンしてると時間なくなっちゃいますよ。ポイントだけね、ポイントだけ。

はい、じゃあそこまでにしてください。この問題は後で懇親するような場があれば、そこでも議論してもらってもいいし、夜寝る前に思考実験してみてもらってもいいんじゃないかと思います。これをずっと考え続けることが大事です。

こういう整理をしておきますね。左足と右足、この両方の軸足を固めますよね。踏み出しますね、この踏み出すところはできたら遠目のほうがいいです。

この2つの技術で絶対勝てちゃうようなところ、つまりこの1つ目と技術と2つ目の技術の線上など、あまり遠くないところ踏み出すとかね、怖いからこの辺にするとかね、そうするとね、三角形の面積が非常に小さくなっちゃいますよね、わかります?

どんと踏み出してほしいです。例えば僕のように、公教育なんていうところに踏み出すでしょ。するとね、そんなところに敵いないんですよ。わかります? 今や僕、公教育の分野でマネジメント語らせたら、僕以上の人いなくなっちゃった。

学校の校長って小中高と3万数千人いるんだけど、僕以上にマネジメントを語れる人はいないんですよ。なぜなら、僕にはドラッカーの基礎もあるし、私企業のマネジメントの基礎もあるから。

収入ではなく、「クレジット」の最大化を目指すべき

藤原:というわけで、大きく3歩目を踏み出ます。そうすると三角形は大きくなりますね。この三角形の面積のことをクレジットというふうに呼びます。これは覚えちゃってください。クレジットっていうのは、他者から与えられる信任の総量です。信任の総量ね。わかりますよね。

みなさんがなぜ生きるのか、あるいはなぜ仕事をするのか、なぜ勉強をするのかの答えも実は全部ここにあるんですね。要するに、このクレジットを増やすためです。クレジットを増やして、蓄積することで人間は自由になれるんです。

これをあんまり詳しく語ってる時間はないんですが、このクレジットが例えば1億円分ぐらいここに蓄積されてるとしましょうか。その人が年収として1億円を得ようとすると、かなりアップアップになっちゃって、休みもなくて病気になっちゃうかもしれないような過酷な状況になっちゃうわけ。

そうではなくて同じ1億円分の信任、クレジットがある人が、3千万分ぐらいを現金化する場合、ここに7千万分ぐらいのゆとりが生まれますよね。これがビジネスにおける自由です。

例えば、明日奈良ですごい授業が行われるっていったら、僕はばっと行けちゃう。1年先の予定なんてまったく埋めてないんです。その自由度はこのゆとりから生まれるんです。

欲出しちゃって、収入を極大化すればいいというわけではないんですよ。クレジットを極大化しておいて、現金化するのはその一部としたほうが自由があって絶対にいいわけです。わかります? これ非常に大事なポイントです。

信任っていうのは、人からの共感と信頼の関数なんで、信任(クレジット)=共感×信頼だっていうふうにいってもいいです。感情的な共感と理性的な信頼の関数だということですね。わかりますよね。

信任っていう言葉は、例えば政治家であればそのまま票ですよ。信任票でしょ。それからアメリカだと、クレジットっていうのは大学の単位のことを言います。単位をどれぐらいとれるかみたいな話ですよ。どれぐらい蓄積しておくかみたいな話。

あとはコツの2なんですが、これはあとでまた、機会があると思うんで説明します。時間を買うっていうことがすごく大事なんです。時間を買えないと、こういうことできないんですね。時間を買う、お金を出して時間を買うというようなことなんですが、これについては後で説明します。

こっから先の、時間を買う、仕事を買う、アバターを買うはすごく大事な技術なんですけど、つまり希少性を高める技術なんですが、それは全部この『中くらいの幸せはお金で買える』の中に入ってるので。

とりわけ8章の「時間を買う」はすごく大事なので、立ち読みでもいいから8章だけ読んで。多分ね、10分で読めると思います。というわけで、後はじゃあ、お任せしましょう。これでだいたい40分でしょ? ありがとうございました。

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