2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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三浦宗一郎氏(以下、三浦):ありがとうございます。(コメントを見ながら)「『ほぼ日の學校』がある中で、公立学校の役割って何ですか」という質問が来ていて、おもしろいなと思いました。
糸井重里氏(以下、糸井):あぁ……公立の学校って僕は浄土真宗だと思ってるんですよ。あ、(わかりにくいから、こういう例えを)急に言うとだめですよね。浄土真宗の教えを一番短くしちゃった状態をビジュアルで想像すると、信号待ちをしてる群衆なんですよ。
周りを見渡した時に目に入るような、絶対に何のつながりもない、そこにいるだけの人。それを全部を救いたいというのが、親鸞だと僕は思うんです。
(親鸞は)「『南無阿弥陀仏』って言った人は、全部OKだよ」と言ってるわけだよ。ふだんからちょっとでも善行を積んだ人だとか、ノアの箱船に乗るのはこういう人だとか言わずに、南無阿弥陀仏さえ言えばいいよと。それはつまり、信号待ちをしてる群衆ってことですよ。
(その人たちが)「心からそう言うんですか?」って質問したら、「心からじゃない。ただ言えばいいんだ」と。それはAnyone(誰でも)ってことなんだけど、その概念でものを伝える場面が、今はどんどんなくなってるんですよね。
三浦:確かに。
糸井:「こういう人、集まってください」というからこうやって(このHASSYADAI Teachers' Forumのように人が)来るわけで。聞いててもらえるから気持ちいいんですけど、本当に伝わるというのは、Anyoneに伝わることだと思うんです。
三浦:そうですね。僕らは学校に行ってもぜんぜん(高校生に)呼ばれてないっすもん。「お前ら呼んでねえよ」っていう目で高校生たちに(見られます)。
糸井:あー。
三浦:「こんにちは」ってところから始めるんで。
糸井:辻説法(※仏教の伝道の一方法で、人通りの多い町角(辻)に立って、自分の主張を人々に訴え、信者を獲得すること)ですよね。
三浦:まさにわざわざ出向いてね。
糸井:そうです。信号待ちの群衆と、呼ばれてない学校の人たちというのは、辻説法ですよ。公立の学校って地域だけで分けてるわけだから、地域に色があるように、実は今はもう学校にも色があるんですよ。
僕は専門家じゃないから無責任に言うと、「『こういう人いらっしゃい』って集め方をしてない場所で、何が可能か」というのは、「低くてもつながれると学ぶこと」だと思いますね。
三浦:なるほど。この前大阪の高校に行った時の話で、その校長先生は毎日、掃除のおっちゃんの格好をして「おはよう」と言いながら校門に立ってるんですって。
その先生が赴任してきたばっかりの時は、進路指導部の先生が登校して来た生徒に対して第一声で、「おい、お前なんやその髪は!」と髪の毛の色を指摘したり「化粧しとるやろ!」と声をかけているような学校だったそうなんです。
「いや、違うだろう」と。まずは、「『おはよう』。今日も登校してきてくれたなぁ、ありがとな』というところから始めなきゃだめだと僕は思うんです」という話をしていました。「家にも居場所がない。社会にも居場所がない。じゃあ、居場所がここ(学校)じゃなくなったら、あの子たちはどこに行くんだ」とその校長先生が話していて。
さっきのセッションでも、子どもたちの居場所がなくなってるという話があったんですけど、まさに学校が、「選ばないからこそ、優しさでつながれる。低いところでつながれる場所」というのは1つの可能性かなという気がしてます。
糸井:そうなんです。いっぱい知識を詰め込むことで、なんか「確かに教えたよね」という、証拠を作ってるみたいな時代があって。「このくらいの学力があるんですよ」ということを、知識とか方法の総量で測って、人の地位を考えてた時代が、工業社会だと思うんですよ。
工業生産をするには、「みんなだいたいこのくらいのことを知ってるよね」「このくらいのことを望んでるよね」「じゃあそれを間違いなくたくさん作るにはどうしたらいいか」という教育の仕方はすごく都合が良かったんです。
それもできてない地域の人にとっては、「早くあれがやりたい」と感じたと思うんですよ。でも、今は「そこは機械ができますよ」「その仕組みごと変えますよ」とか言われ始めたから。
そうなった時には、「今みんなが知ってなきゃだめだよ」ということを山積みにするよりも、後で学べる可能性や足腰を鍛えることが必要なんじゃないかと思うんです。そういうものを、どう言えばいいんでしょうかね。
イージーになっちゃうんだけど、ある人間と人間が「信じ合いたい」という気持ちのもとで分け合っていれば、「お前頼むな」ということも含めて、学校で学べるじゃないですか。というあたりが、「(教育の現場を)知らないから言うんだよ」って言われそうな気がするんだけどね。
三浦:いや、それも含めて。
糸井:「勉強は後でできる」というのは、やってる最中にはわかんなかった。まだ勉強が苦手じゃなかった小学生の時には、1日風邪で(学校を)休んだだけで遅れると思ったもん。
三浦:うわ。学校の勉強ってそういう感じがしますよね。
糸井:1週間休んじゃったから、すっかり遅れちゃった。
三浦:それで諦めることもありますよね。
糸井:「そんなもんじゃなかったんだよね」と大人になるとわかって。その長い時間の中で1年休んでも、「君はなんにも負けてないよ」と言ってあげられると、「学校に行ってて良かったな」と思えるような気がするんですけどね。
三浦:ありがとうございます。あっという間に残り時間が5分ほどになっております。ホワイトボードに、この1時間考えた「学校とは何か」を糸井さんにも記載していただく時間がありまして。
ぜひみなさんも、1時間考えたうえでの「学校とは何か」をコメントしてください。では、ちょっと僕から先に言っていいですか。学校とは「みんながいてもいい場」かなって思いました。
糸井:あー、三浦くん、いいね。
三浦:ありがとうございます(笑)。いてもいいって、安い入浴料で入れる銭湯のような場所かなぁという気がしました。糸井さん、いかがでしょうか。
糸井:僕は「人と人が、」って、点で終わって何も書いてないんですけど。「藤岡弘、」みたいですね。他に人がいるというだけで、なんか関係ができちゃう。「あ、良かったなぁ」って思える場所かなぁと思ったんですけど。また明日になると違うこと言うんですけどね。
三浦:(笑)。
糸井:そんなことを思いましたね。
三浦:ありがとうございます。「つながる場」とか、本当に今いろいろなコメントをいっぱいいただいて。
糸井:こういうのを聞いてても、「もっと学んだ感のあることを言えよ」って、思ってる人もいるんですよ。
三浦:今回ずるいのは、一番最初にちょっと約束事として「答えを出すより、『考え直す』に価値を置く」ってルールを決めてるんで。
糸井:なるほど。
三浦:もうこういう場ですと。でもそうですよね。
糸井:「その(すぐに答えを求める)癖を治すにはどうしたらいいか」というのが、当面の学校のテーマかもしれないね。絵画を見て「何を伝えてるんですか」とかさ。「おかしいだろ、それ」みたいなことを、こういう話の中でも思うんですよね。「一緒に泳ごうよ」と言ってるだけで。
三浦:そうですよね。だから町歩きみたいな話がしたいと思ったんですよ。目的地があって、そこにみんなで歩いていくような話ではなくて、本当にぷらぷらと歩きながら、どこの店に入るかもわからない。どこで立ち止まるかもわからない。でも、そこに入ったらなんかおもしろいものがある、みたいな。本当に話し手も聞き手もわからないような話をこの場では作りたいという。
糸井:そうですね。これはもうここまで進行しちゃうと、「次はどうするんですか」とか聞かれるでしょ。
三浦:言われますね。「地方開催をやりたい」と言われてます。
糸井:なるほどね。1回やると、やっぱりすぐ「次は」って言われるのが苦しいよね。
三浦:そうなんです。せめて終わってからにしようって思うんですけど……(笑)。
糸井:それって(自分は)やらない人が言うんじゃないかと僕は思ってて。自分もやったことがある人だったら、「それを言ったら苦しいだろうな」ってわかりますよね。
三浦:そうっすね。まあでも、自分の期待も含めて体が元気なうちに応えられる期待には応えたいと思います。
糸井:そうするとメニューの多い中華料理屋みたいになっちゃうからさ。
三浦:確かに(笑)。
糸井:チャーハンにいろんなものを乗せたりしてるうちに、材料の仕入れが大変になっちゃったりするから。だから、どっかで上手に「それはしないんです」とか、ちょっと冷たくなる練習をしたほうがいいかもしんないね。
三浦:うわ。僕、それ7年前に沖縄の占い師に言われました。
(会場笑)
糸井:あ、そう。それは俺だよ。
三浦:マジ!?(笑)。いやいや、本当にもうあっという間に時間が経っちゃいました。1時間バーッと先生たちと話をしましたが、糸井さん、どうでした?
糸井:ちゃんと聞こえる人たちとしゃべってるんで、とてもありがたいです。こんなに「崩しても崩したままで届いている」と思うと、しゃべるのは嫌じゃないですね。本当にありがとうございます。
三浦:ありがとうございます。オンラインでも先生方がたくさん見てらっしゃると思うんですけど、もし学校の先生とか親御さんに、メッセージがあれば。
糸井:昔からなんですけど、「あなたみたいな人はいいんですよ。うちの子なんか普通だから、なんか身につけてないと食いっぱぐれるんです」とか言われるんですよ。それはたぶん、その考え自体がビビりすぎだと思うんだよね。どう言えばいいんだかわかんないけど、(僕のことが)すごく楽をしてる人に見えるんでしょうね。「そんなことないんです。苦しいんですよ」ってしのぐ方法もあるんですけど、そこまで苦しくはないんですよ。
三浦:(笑)。
糸井:人が大変だと思うようなことを、大変じゃないと思うからやってるわけで。それよりは、「君はもっとすごいよ」と言いたいねぇ。うまく言えるといいなぁ。
三浦:「大丈夫だよ」っていうことなんですかね。
糸井:三浦宗一郎の、「他に何にも考えることがなかった」という高校からの流れは、人に言うのにすごくいいですよ。
三浦:そうっすね。頭の中があまりにも暇だったという。
糸井:いいですよね。
三浦:ありがとうございます。もう時間が来てしまいました。めちゃくちゃ楽しかったっすねぇ。
糸井:はい。こちらこそありがとうございます。
三浦:また僕も「ほぼ日の學校」でずうずうしさ講座(をやりたいです)(笑)。
糸井:あなたとだったらもっと崩してみたいですね。そういうのをちょっと高校生とかにもぶつけてみたいですね。何人が寝るのか。
(会場笑)
糸井:だんだん体力がなくなってきて、みんな昔は飲み屋でも朝までいたりしてたけど、今の時代は徹夜でしゃべることがなくなったじゃない。あそこで生まれたものは大きいんだよね。
三浦:僕はコロナ禍でもシェアハウスをしてたんで、やりまくってましたね。でも話の内容は全部覚えてないです。
糸井:それでいいんですよ。
三浦:そういうのでも、ぜひなんか一緒にやれるとうれしいなと思います。ではちょっと名残惜しいですが、以上で「学校を考えなおす」のセッションを終了したいと思います。糸井さん、本当にありがとうございました。
糸井:どうもありがとうございました。
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