2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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三浦宗一郎氏(以下、三浦):もちろん大前提として、夢は自然発生的に出てくるものであると。でもその上で、夢のパワーはものすごいということは僕もすごくわかるし、わかる人も多いとは思うんですけど、まさに水野さんご自身が20代の頃から今のご年齢になっても夢があって。
みなさん自身の夢の話や関わる子どもたちの夢の話もそうですけど、それが強制された夢ではなく、自然発生的に内側から湧き出てくるためのマニュアルって作れるんですかね?
水野敬也氏(以下、水野):それはおもしろいですね。でもそのために必要なのって、やっぱりエゴなんじゃないかなと僕は思うんですよね。他者の自己実現を支えるのが僕の今の夢になっていますけど、最初は本音というかエゴなんじゃないかと思うんですよ。
もう例が全部子ども絡みになるんですけど、最近セミが木に止まっていたんです。僕は田舎育ちでめちゃめちゃ昆虫が大好きで、保育園の時はあだ名で昆虫博士って呼ばれていたんですよ。それでめちゃくちゃ(昆虫が)好きなんですけど、娘たちはこのへん(東京)に住んでいるので、虫をほぼ見ない。
でも木にセミが止まっていて「セミだ」ってなって、俺が子どもたちに「ちょっと待て。手で捕れる」と。鳴いているのでこのセミはオスですよね。お尻がこうなっていますよね。(お尻のほうから)手で捕ろうとした時に、小学生の自分になっているわけです。でね、セミの動きに完全に同調しているんですよ。
三浦:すごいな。
水野:ミーンミーンと鳴いている時、ここで捕ろうとしたら波長が崩れますから逃げるんですけど、ミーンミンと(波長を合わせて)やるとどんどん近づける。「あれ?」と思って。これ、めちゃめちゃコミュニケーションじゃないかと思ったんですよ。
三浦:セミとの?
水野:そう。
三浦:自然との?
水野:そう。セミという相手に対して、完全にセミの気持ちになりきっているんです。コミュニケーション能力ってここで磨かれるのかもしれない、というのがまず第1の気づきなんですよ。そして「あれ、このセミは今俺に殺されそうになっているぞ」という第2の気づきがあるんですよ。
三浦:確かに。
水野:つまり極論、コミュニケーションをとろうとしている奴に命を奪われそうになっているんです。僕は殺生する気はないんですけど、捕まえる時に事故が起きるかもしれない。セミと仲良くなろう、一緒になろうとしているのに、僕はこのセミを捕まえようとしているんです。それで「エイッ」って捕まえたら、娘からしたら「すげぇ」ってなって、「どうだ」という。もうエゴ野郎じゃないですか。
三浦:確かに(笑)。
水野:めちゃめちゃエゴじゃないですか。
三浦:セミからするとね。
水野:そう。でもめちゃくちゃコミュニケーションをとろうとしているんですよ。それで「あーっ」と思って。どういうことかというと、「コミュニケーションを学びましょう」というと、「相手の立場に立つ」とか「相手の気持ちを理解しましょう」と(よく言われます)。
それもあると思うんですよね。イルカショーの飼育員さんはたぶんそうだと思うんですけど、僕らの人生を思い出してみると、「あの女の子をゲットしたい」という時に一番コミュニケーションをがんばったと思うんです。
三浦:そうですよね。母国語も違う海外のパートナーを見つけると(コミュニケーションが)上達するような話に似ているかもしれないですね。
水野:本当にそう。それで「俺って結局、今他者の自己実現を本音の夢としているけど、それもエゴを経てきてここにたどり着いているな」と。だから、やっぱり最初は「これがやりたいんだ」という本音。これはたぶん誰にでもあると思うんですよ。
三浦:確かに。
水野:欲望だから。でも、それをいろんな社会の声が蓋をして、ないことにしている。それを引っ剥がしていく作業が大事で、三浦くんが違和感を持っている夢の強制も、また1個本音に蓋をかぶせている。
(「夢は何?」という質問をされることで)「何枚目の蓋をかぶせるねん」という感じで、余計に本音を遠ざけているような。セミを捕った時に、そんなふうに感じたんですよ。
三浦:なるほど。ありがとうございます。あっという間に時間が迫っているので……。
水野:やばいですね。この意見を読まないといけないですもんね。
三浦:そうなんですよ。Q&Aもこのへんからいただけたらなと思っていまして、ぜひ……。
水野:すみません、聞き合いだったのに、最初からしゃべりたいことがたくさんあって、ずっと楽しくて。
三浦:これは各セッション2時間ぐらいあったほうがいいかもしれないですね。
水野:いやぁー、本当に僕は先生方に頭が上がらないし、しかも(先生に感謝の気持ちを直接)言えないので。
三浦:そうですね。
水野:なかなか言えないので、授業参観の帰り際に「あっ、先生の教え方で助かっています。以上」みたいな。「今のすげぇ社交辞令っぽいな」「本当に俺はあなたのあのテストの青字に感動しているんだ」みたいな。
(娘が)デシリットルをリットルに間違えた時に、青字で「ちょっと多すぎて飲みきれないかな」って、汗(の絵文字)が点々とついていて、すげぇいいじゃないですか。その一言に俺は感動しているんだという。
それを授業参観のあとに言えないんですよ。そんな時間はないし、ほかの子の親たちもたくさんいるから。
三浦:確かになぁ。
水野:だからちょっと、先生方が(会場にいらっしゃっていて)興奮しちゃっている僕がいます。
三浦:そうですよね、あまりないですよね。
水野:そう! あまりないというか一生ないかもしれないです。だから感謝したくて、最初の話になってテンション上がっちゃって、ちょっと今(意見を)読めていないということですね。
三浦:ありがとうございます。ちょっといいですか? フタカワさんから、「本音をしゃべれない人が多いと思うんです。先生たちも対話できない」という意見があって、「それでどうする?」という話だと思うんですよ。
大事なのは本音だと思う。自分はどうするかという自分自身の夢の話や、まさに他者の自己実現を応援するような、他者に対しての関わり方も含めて、何をすると本音が出てくるんですかね?
水野:これはやっぱり「聞く」ことなんですけど、僕が子どもとやり取りしている中で、この「聞く」ことに対してまったくフィルターを設けないってすごく難しいんですよ。
例えば、寝かしつけで「寝よう寝よう」とやっていて、本来寝なきゃいけない時間からもう30分経っていると。その時にポロッと「嫌な奴がいてさ」みたいに(子どもが言ったりします)。まだ寝たくないから、この「嫌な奴がいてさ」を使って、寝かしつけを引き延ばそうとしているというのもあるんですよ。でも本音でもあるから、やっぱり聞いちゃう。
これだったらまだ、親からするとちょっと聞きたい話だけど、例えば「あまり動画を見すぎないでね」みたいな話の流れで、まったく関係ない動画の話をしてきた時に、こっちのエネルギーが100で食いつけるか。「動画なんか見ないで勉強しろよ」という思いがよぎった時に、本当に相手の興味と言いたい話を引き出せるかというのがめちゃくちゃ重要な気がしますね。
三浦:なるほど。
水野:(子どもにとっては)もうこっちの都合は関係ないんですよ。
三浦:めちゃくちゃ地味で、内的な戦いが都度あるということですね。
水野:おっしゃるとおりです。やっていることなんて「ほうほう」(と相づちを打つ)ぐらいだけど、本気の「ほうほう」を出せるのかというと、なかなかできないんですよ。興味ないし忙しいし、もっと言えば「もう早く寝ろ」みたいな中で、「ほうほう」といけないんですよね。
これは学校の先生も絶対そうだと思うんですよ。もう次から次へと(仕事が)くる中で、それをちゃんと聞けるのかということが、やっぱり本音につながっていくような気がします。
三浦:ありがとうございます。ちょっとヒントになりそうだなと思ったのが、「対話を恐れているのか雑談ですら気を遣う」という(コメントです)。全部雑談ですよね。
水野:うん。
三浦:だから最近、僕はちょっとミーティングのような目的のある対話をしすぎている気がしていて。「ちょっと雑談しようや」みたいな話があまりないなという感覚がすごくあるんですよ。
でも、子どもたちのそれって全部雑談じゃないですか。大人たちの雑談をする体力や気持ちが、ちょっと失われているのかもしれないなって思います。
水野:そう。ちょっと怖いんでしょうね。やっぱり本来の雑談って、こっちも思ったことを言うじゃないですか。ある塾の先生ですごく雑談のうまい人がいて、夏の合宿に行った時に「つまらなかった」「ぜんぜんおもしろくなかったよ」みたいに言った生徒がいたそうなんですよ。
その時に塾の先生だったら、「あれ、なんか問題があるか」とかいろいろ(考えることが)あるじゃないですか。でもその人は間髪入れず「いやもう、そんなこと言うなよ」と言ったんです(笑)。
三浦:(笑)。
水野:本音ですよね。「こっちだってがんばってやっているのにそんなこと言うなよ」という。この時代、これがムズいんだと思います。
三浦:なるほど、確かに。そうですよね。対等であるってそういうことですもんね。
水野:そうそう。対等であるっていうのは、こっちも思っていることを言うし、イライラする時はイライラするし。
三浦:確かに。
水野:いや、それが本当に難しいなと思いますよ。
三浦:「お前、俺だって一生懸命がんばっているんだよ」みたいな話ですよね。
水野:そうそう。でもベースに愛情がないといけない。
三浦:確かに。とは言いつつ、雑談って心も時間も余裕が必要ですよねと、ちょっと諦めモードになる。忙しい現代人、特に学校の先生は可処分時間が少ない中で余白を生み出さなきゃいけない。
水野:めっちゃムズいですよね。今朝も3人の子どもたちを送ってきたんですけど、僕は10時15分に登壇するので早めに起こしたんですよ。「今日は仕事がある。だからちょっと急いでくれ」みたいに言って。
でも(子どもたちは)ぜんぜん急いでいない。「違う違う、今回は10時15分に人が待っているんだ」と。そうしたら3歳の子が「いやいや、来てもらえばいいじゃん」って言ってくるんです。
三浦:2,800人ですからね。
水野:そう。「いや、今回は来てもらえないんだ」と言って、それで「食べて食べて」みたいな、時間がないってめちゃくちゃ朝に言ったんですよね。
三浦:それはどう向き合っていったらいいんですかね。
水野:こんなことを言ってもなんのバズりもしないし広まらないですけど、「もっと良い方法があったな」という反省と、「いやいや、しょうがなかったよ。だってこういう日もあるよと自分を許す気持ち。
あと、今日帰ったら娘に「ごめんね、今日ちょっと余裕なかったね」という謝罪。この3点セットじゃないですか。
三浦:なるほど。
水野:これをノウハウかと言われると、ノウハウですらないというか。
三浦:確かに。
水野:僕が思うのは、これを日々いろんなレベルでみなさんもやっているということ。「それを俺は知っているよ」「全部じゃないけど、ちょっとわかっている側のやつです」というのを言いたいんですよ。
三浦:僕は今、すごくうれしい気持ちになりました。
水野:わかるでしょ?
三浦:はい。
水野:三浦くんもその葛藤はわかるでしょ? この3点セットでやっても、これは誰もわからないし。もっと言うと、ぜんぜん論破でも何でもないから人に発表しても「ふーん」みたいな。「いやぁ、人生って大変ですよね」「それでも前を向きましょう」みたいな。
三浦:そうですよね。
水野:だからメディアに載ってもぜんぜんおいしくないんですよね。
三浦:おいしくないですね。
水野:でもそれに対して僕はすごく忸怩(じくじ)たる思いというか。「俺、気づいているよ」というのを1人でも多くの人に伝えたいです。
三浦:確かに。でも、最後の「帰ったら謝ろう」って、やっぱり本当に難しいと思うんですよね。
水野:そうですよね。でも一方で僕は、謝るって欲深いことでもあると最近思っています。なぜかというと、ほとんどのことが謝らなくてもいいわけじゃないですか。なんで謝るのかと考えた時に、自分としてはやったけど、これは自分(の理想)ではなかったということじゃないですか。
つまり、謝罪するって自分を拡張しようということなんですよね。「今の自分に留まらずに拡張していくぜ」という宣言なので、これはある種欲深いと思うんです。世の中の欲のある人が「いや、俺は俺の生き方だ。これが俺だから謝らないよ」とSNSで極端な意見を言ってバーッとバズっている。
でも僕はそれを小欲というか、欲深くないと思うんです。(僕は)謝っている時に、「あっ、また俺拡張しようとしている」と(感じる)。これはある種の変身ですからね。「変身!」じゃなくて(頭を下げながら)「変身……」みたいな。
三浦:すごいですね。
水野:俺の変身ポーズは「変身……(頭を下げながら)」なので(笑)。
三浦:その変身ポーズ、めちゃくちゃかっこいいですよ。
水野:いいよね? 「かっこいい」「まさに俺」というのではなくて「変身……」という。
三浦:いいですね。ごめんなさいをするヒーロー。
水野:今日の僕は苛立っていたけど、次からはもっと余裕があるように「変身……」という。
三浦:ありがとうございます。
水野:でも変身できていなかったりするので、もう1回変身のおかわり(笑)。
三浦:日々おかわりを(笑)。ありがとうございます。もうあっという間に時間が。
水野:いやぁ早いですね。
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