2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:ここからは、本日のメインスピーカーの一般社団法人日本アンガーマネジメント協会安藤俊介代表理事と、岡山大学准教授中山芳一先生にマイクをお渡しいたします。それでは安藤代表理事、よろしくお願いいたします。
安藤俊介氏(以下、安藤):みなさま、こんばんは。この度は弊会主催のトークショーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤でございます。では先生、どうぞよろしくお願いいたします。
中山芳一氏(以下、中山):よろしくお願いいたします。
安藤:トークショーを始めていきたいと思います。今日は本当にいろんな立場の方がご参加されていると思うので、まずは少しずつ言葉の整理をしていきたいなと思っています。ですがその前に、簡単に中山先生から自己紹介をしていただければなと思っております。
中山:わかりました。ありがとうございます。みなさん、こんばんは。お仕事でお疲れのところ、ご参加いただきましてありがとうございます。あらためまして、中山芳一と申します。岡山大学の教育推進機構で教員をしています。今から12年ほど前から、キャリア教育の担当教員として在職しております。
授業ではキャリア形成論もやっていますし、僕のメインの授業の1つとして、コミュニケーション力に磨きをかける授業をやっております。実はこのコミュニケーションの授業で一番大事にしているのが、今日安藤さんとお話しをさせていただく「メタ認知」です。
この話はまた追々になるんですが、学力テストで測れるような「学力」とはちょっと違う、我々のメンタルや心と言われるような「非認知能力」について、今は実践的な研究をやらせていただいております。以上です。
安藤:ありがとうございます。私も簡単に自己紹介させていただきますと、日本アンガーマネジメント協会の代表理事をしております。
2011年に協会を設立したんですが、僕自身は2004年にアメリカでアンガーマネジメントを学び始めて、2008年に帰国し、アンガーマネジメントの活動を細々とずっとやっていました。気づけば本当に多くの方にアンガーマネジメントを知っていただいて、今は研修や組織運営をしているところです。
じゃあ、さっそく本題にいきたいと思います。「非認知能力」は言葉としてはわかるような気もするんですが、わかるようなわからないようなものになってしまっているのかなと思います。
今日は非認知能力とかメタ認知がテーマになっているんですが、トークショーを始めるにあたって、あらためて「そもそも非認知能力とは何ですか?」という言葉の定義からいきましょう。
中山:安藤さんにいただいたようなご質問を、最近よくいただきます。本当に今、「非認知能力」がすごくホットワードになってきていますよね。
例えば海外で言うと、心の知能指数と言われるEQ(Emotional Quotient)も、1990年代ぐらいから注目されるようになりました。そのほかにも「ライフスキル」とか「ソフトスキル」なんていう言葉も出ていたんですが、それが「非認知能力」という言葉で使われるようになっているとご理解いただけたらなと思います。
中山:シンプルにご説明をさせていただくと、日常があって非日常、常識があって非常識なので、認知能力があっての非認知能力です。じゃあ、この「認知能力」とは何か。
よく「認知機能」と言われますが、高齢になられたり、お酒を飲み過ぎたりするとできなくなる記憶や状況判断といった「認知機能」と、「認知能力」は別物です。
逆に言えば、認知能力はもっとシンプルです。学力テストなどで、はっきりと誰もがわかる点数や順位とか、偏差値のような客観的でわかりやすい点数にして、「この人は全体的に学力がこういうところにある」「学力の中でも国語は得意で英語は苦手」と、誰から見てもわかる力が認知能力です。
なので誤解を恐れずに申し上げると、学力とほぼイコールとして捉えていただくと良いと思います。
学力とか、勉強で身につけられるもの以外の力として、テストなどではっきりとした客観的な点数にはできない力の総称として、非認知能力と言われているわけです。
だから、先ほどのような「EQ」とか「ライフスキル」と非常に一致するものです。多くの場合は、メンタルとか心とか、気持ちの「気」と言っているようなものが該当しているとご理解いただけたらいいんじゃないかなと思います。
安藤:今日は「大人から始めるメタ認知」がテーマになっています。大人になると「非認知能力って大事だよね」と徐々に気づいていくので、今日もこうして多くの方に関心を持ってご参加いただいていると思うんですが、少なくとも僕が子どもの頃は、非認知能力という言葉はなかったんですよね。
なかったというか、別に言われてはなかったわけですよ。おそらく、生きていく上では大切な能力のはずですが、子どもの頃はあんまり言われなかったんですよね。じゃあ、なぜここにきて「非認知能力って大切だよね」と教育業界で言われるようになったんですかね?
中山:安藤さんがどういう子ども時代だったかわからないんですが、大人から「我慢しなさい」と言われたことはありますか?
安藤:「我慢しなさい」は、すごく言われますよね。
中山:(笑)。あと、「やる気を出していこう」「友だちに優しくね」「思いやりの気持ちを持っていこうね」とか。言ってみれば、これが当時言われていた非認知能力寄りのものだと捉えていただけたらと思います。
それが今、これだけきちんとしたかたちで言われるようになった1つの大きな理由は、時代ですね。
中山:まずは、言うまでもなく科学技術が非常に進歩してきている。例えば、AIを筆頭とした技術の進歩であったり、人生100年時代と言われる我々の寿命。
今の高校生ぐらいだと、2人に1人は107歳まで生きられるという推計が出ている中で、長い人生をどう豊かに生きていくのか。
そして何よりも、みなさんがここまで嫌というほど体験されてきている、新型コロナウイルス感染症の問題や、ウクライナ・ロシア、もしくはその他の国々の世界情勢の問題、あとは気候変動の問題であったりとか、我々がSF映画で見てきたような状況が非常にリアルに起きている。
「良い大学に行って、良い企業に行けば、あとは大丈夫よ」という単純な時代ではなくなってきたんですよね。いわゆる知的な内容をインプットしていくだけでは、もう太刀打ちできない時代へとどんどん変わってきたのが、非常に大きなバックグラウンドとしてあります。
安藤:実は先生と僕は年齢が近くて、だいたい昭和40年代生まれの層なわけです。(企業名は)言いませんけど、僕たちが学生の頃から社会人になるあの当時にすごく人気だった企業って、今はけっこうなことになっていたりするわけですよね。
価値観の変化が早すぎてしまって、今当たり前のことが当たり前ではなくなるのが普通で、それをどうやって受け入れていくのかはけっこう大きな課題ですよね。
安藤:あとは大前提として、「非認知能力」と言うからには、伸ばすことができるということじゃないですか。じゃあ、そもそも「非認知能力を伸ばすことができる」とはどういうことですか?
中山:「伸ばすことができる」とは、つまり「変えていくことができる」ということです。変容をしていくことができるんですが、ここで安藤さんにマニアックな話をさせていただきますね。
安藤:もちろんです。
中山:さっきの話の続きになるんですが、我々は死ぬまで人格を形成し続けるじゃないですか。人格形成において求められる学力以外の能力のことを「非認知能力」と言うとすれば、教育は人格形成を助けることだし、学校は人格形成の場です。
例えば、教育はエデュケーション。エデュケーションとは、人格形成に必要な非認知能力なる力を引き出していく(エデュースする)という考え方です。だから、実はぜんぜん新しくないんですよね。
教育の本質について、「能力」という言葉を使って言っていると捉えています。例えば我々が生まれながらに持っている気質とか、3〜4歳ぐらいまでの低年齢時に形成されていく性格とか、いわゆる発達障害特性のような生まれながらに持っている基本特性。こういったものは、我々の人格とか非認知能力にものすごく影響を与えます。
気質や性格、基本特性ってすごくベースですが、それこそ年齢を重ねれば重ねるほど、はっきり言ってもう変えられませんよね。
中山:じゃあ何を変えていくのかというと、ここで非常に重要になってくるのが「価値観」です。我々が何を大切にして生きていきたいのか、こういう時にはどういう行動をとっていきたいのか。それこそ安藤さん、我々が某週刊少年誌のいろんな漫画のキャラクターから影響を受けたことも、もろに価値観ですよね。
「こうなりたい」「こう生きていきたい」「こういう行動をとっていきたい」という価値観を持つ。だけど、「これが大事だね」「これはかっこいいよね」「と言っているわりに、あなたはやっていることがぜんぜん違いますよ、というような、言っていることとやっていることが違う人も出てきます。
そこで必要になってくるのが、価値観だけではなくて「自己認識」です。自己認識とは、言い方を変えれば「自分が周りからどう見られているのか」ということです。
自分のとっている行動で、周りはどういう印象を受けているのかとか、自分を客観的に見る。そして客観的に見て、その上で自分の行動を調整する。つまり、「モニタリング」と「コントロール」です。なので、ここでメタ認知が非常に関わってきます。
リアルタイムで自己認識することがメタ認知ですから、自己認識をしていきながら「じゃあ、こういう行動をとっていこう」と考える。
例えば「短気な性格は変わらないかもしれないけど、いろんなことにイラッとせずに我慢できる寛容な人になりたいな」という価値観を持った人が、「今の自分に足りないのは何だろうか」「やっぱりぐっとこらえることだな」「我慢することだな」「忍耐力を持つことだな」という自己認識を持ったら、今度はイラッとしてもぐっとこらえる。
ムカッとしてもぐっとこらえることで、腹が立ってもちゃんと我慢することがどんどん行動として身について定着してくる。すると、まるで息をするかのように、当たり前の行動に変わってくる。これを「行動特性」と言うわけですが、こうなってくると非認知能力が伸びてきているんです。
行動特性にまで定着した人に対して、周りの人は「あいつ、最近丸くなったよな」と言うわけですよね。「あいつ、最近丸くなったよな」とは、「あいつ、最近忍耐力が伸びてきたよな」と評価されているということです。長くなりましたが以上です。
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