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子どもが不登校になったら、仕事はどうする?不登校と貧困について考える(全3記事)

悩みを抱える「しんどい子」ほど、大人への不信感でSOSを出せない 子どもを取り巻く課題と、必要性を増す“逃げる場所”の確保

文部科学省の調査によると、2021年度の不登校者数は24万人と、過去最多の人数であることが明らかになりました。また自分の子どもが不登校になった場合、サポートのために仕事をセーブする家庭も少なくなく、経済面でも厳しい状況を強いられるケースも。そこで今回は「子どもが不登校になったら、仕事はどうする? 不登校と貧困について考える」と題し、10代のセーフティネット作りに取り組む認定NPO法人D×P理事長の今井紀明氏と、DEIを推進する採用マッチングプラットフォーム「Sangoport(サンゴポート)」の運営を行う株式会社SAKURUG代表取締役の遠藤洋之氏が対談しました。

都市部と地方の「学び」の格差

遠藤洋之氏(以下、遠藤):私自身もずっと片親で育ってきて。僕の場合は違っていたのが、祖母が一緒に生活をしてくれました。僕はお母さんの味と言えばおばあちゃんの味なんですが、金銭的なサポートも少ししていただいていたので、不登校にならずにいられたのかなと思っていて。

今井紀明氏(以下、今井):そうなんですね。

遠藤:千葉県出身なので、これは千葉県千葉市の片田舎でのエピソードなんですが、今井さん的に地域差って感じられたりしますか? 東京、大阪、あとはもっと地方とか。

今井:これは「ユキサキチャット」でも本当に大きな話題にもなっていて。やはり大きな課題としては、人口が少ない地域の不登校の子どもたちの居場所のなさはものすごいですね。

都市部と違って近くにフリースクールがあるわけじゃないですし、そもそも車で行かなきゃいけない距離だったり。なにかしら不登校になった時に、通えるような場所がなかったりもするので、大きな課題かなと思っています。

僕もずっと言ってきているんですが、1つ言いそびれたなと思っているのは、オンラインで学べる環境をどこまで作れるかは本当に重要なことだと思っていて。

地方でも都市部でも、経済的にしんどかったとしても、オンライン教育はパソコンが提供されれば(どこでも勉強ができる)。今はGIGAスクール構想というかたちで、小中学校でもだいぶ提供されてきていると思うんですけれども。

「学びを保障する」という観点がすごく重要で、学校に通えなかったとしても、地方とか経済困窮の都市部の家庭もひっくるめると、ちゃんと家で授業が受けられる環境を作っていく必要性を感じています。

多様な学びは、子どもだけではなく親にとっても必要

今井:特に地方の孤立の問題は、「ユキサキチャット」上で聞いているとかなり厳しいなと思っていますし、お金がないとなった時には、もうどこにも行けない。ひきこもりを強制させられているような状態になってきてしまうので、自治体によってはこういったオンラインでの不登校の対応が必要ですね。

熊本市はGIGAスクール構想をかなり先進的に行ってきていると思うんですが、地方自治体に任せるのではなくて、国全体である種も教育保障というか、学校に行かずとも学べる環境作りを親御さんのためにも作ってあげることは必要なのかなと思っています。

子どもたちにとっても必要ですし、親御さんにとっても必要な部分になるのではないかなと思っています。

遠藤:確かにそうですよね。タブレット、ないしはスマホでもあれば、コンテンツが受けられるようになってきているので、誰もが平等に学べる環境は本当に急いで構築してほしいですよね。

今井:そうですよね。親御さんにとってもかなり重要になってくるというのは、仮に不登校になった時にすぐ「オンラインで授業は受けられます」となったら、フリースクールを探す手間とか、子どものために動く時間とか、いろんな部分での手間が減るかなと思っていて。

そうすると、労働契約を変えなかったり、時間も少し増やしたまま在宅に移行できるかとか、なにかしら親御さんにとっての負担感も減ると思うので、教育の保障は親御さんの時間確保にもつながっていくのかなというのは、思うところではありますね。

遠藤:ありがとうございます。

子どもたちが「逃げる場所」を増やす必要がある

遠藤:あっという間に30分近く経ってしまったんですが、事前にいただいているご質問にもお答えさせていただきたいなと思います。あとは、もし今「こういったことを聞いてみたい」というのがあれば、ご質問いただければと思っています。

あと、僕の話をもう1個だけ。居場所作りのところなんですが、先ほどお話したとおり祖母が僕のことをずっと見てくれていて、当時はそのありがたみがわからなかったんです。

今考えてみると、学校から帰ったら親はいなかったですがおばあちゃんがいて。「学校どうだったの?」と聞いてくれたりして、思春期なのでそんなに大した話をするわけでもないですが、今考えればあれはすごくありがたいこと。そういう居場所がない子もどんどん多くなってきている、ということなんですよね。

今井:そうですね。居場所のなさとか、地縁や横のつながりがなくなってきたというのは、戦後の高度経済成長期のあとによく言われてきました。あとは実際の調査でも出てきているとは思うんですが、所得が低い家庭だけではなく、全般的につながりと居場所も減ってきているなとは思っています。

何ができるかというと、「逃げる場所」じゃないですけど、相談先とか頼れる先をとにかく増やしていくことは必要だなと思っていて。今、ユキサキチャットはまだ1万人弱くらいしか登録者はいないんですけれども、子どもたちやユース世代が気軽に相談できる場所が必要になってくるかなと思います。

アクセスしやすい「オンライン相談」の必要性

今井:いじめの相談ということで、行政もオンライン相談を実施しています。各自治体が文部科学省から予算を出してはいるんですが、それ以外の民間の頼り先もは必要なのかなと思っています。

ユキサキチャットがいじめだけの相談じゃなくて、虐待とか経済困窮とか、すべての問題に横串を刺して相談できるような体制にしているのは、不登校やいじめってそれだけの問題だけではなくて、けいろんな課題が複合的に起こっている場合があったりもするんです。

居場所を作っていくとか、居場所につなげるために、あとは頼れる環境を作っていくためにも、なにかしら子どもたちがアクセスしやすいオンライン相談を作っていく必要性は、本当に常に感じています。

特に10代、20代の子たち、小中校生は電話相談をしないので、支援を受けられる場所にも行かなかったり、特にしんどい子ほど行政への不信感があったりするんですよね。「学校の先生に相談しても微妙だった」と言われたりすることもあるので。

相談しやすい、アクセスしやすい。民間からチャットでも相談できるサービス作りをして、あとは居場所も作っていく。学びやすい環境を作っていくことが必要なのかなと思っています。

遠藤:ありがとうございます。

コロナ禍で増加している10代の自死

遠藤:質問をすごくたくさんいただいていますので、順番にお答えできればなと思っています。

「周りの大人がその子をどんな目で見るかで、命が救われる子もたくさんいると思っています。質問ですが、不登校を機に自死に至ってしまうケースは今も多いのでしょうか」というご質問です。今井さんが現場を見られているとどうですかね? 不登校を機に、というケースも多いんですかね。

今井:自死に関しては、10代の数自体は増えてきているんですね。コロナ禍で増えてはいるんですが、不登校が原因かと問われればうまく回答できないなと思ったので、あとで調べてみたいなと思うんですけれども。

ユキサキチャットに「死にたい」といった相談が来る時に、不登校の方の率はかなり高い印象があります。「死にたい」という言葉が出た時の原因としては、不登校、虐待、あとはDVとか、すでに精神疾患の当事者になっている方とか、いくつかあったりもするんですけれども。

10代に絞ると(自死の要因の1つとして)虐待と不登校が多いんじゃないかなと思っています。はっきり回答できなくて申し訳ないんですが、10代の子たちの自死がこの2~3年で増えているというのは事実としてあるんですが、不登校が機にというところは回答できなくて、申し訳ないです。

遠藤:でも、(自死の件数が)増えていることは増えているんですね。

今井:そうですね。(全年代で見ると)これだけ自死が少なくなってきた中で、子どもたちの自死自体が増えて来ているというのが、大きな課題だなと思って見ていますね。

不登校になると、家庭に経済的な負担が求められる

遠藤:僕自身が思っているのが、子どもたちが未来に対して希望というか、明るい思いを持って生活してほしいなと思っているんですけど、現状はそこに対して課題が多いということですね。

今井:課題は多いですね。子どもを取り巻く環境が本当に大きく変わってきた2年間だなと思っていて。そこへの対応が非常に遅いというのは、まぎれもなく非常に社会の大きな問題だと思っています。

ちなみにさっきの回答に関しては、(10代の)自死の学校要因が4割というかたちで最多みたいですね。家庭問題、健康問題は3割と書いていますが、自死が学校問題というのは具体的に何か? という感じですね。

遠藤:不登校以外にも、他にも要因はあるということですね。

今井:可能性はありますね。不登校だけではないということです。大多数で学校が要因になっているというのは、2020年のこの記事からは参照できるかなと思いました。

遠藤:なるほど、ありがとうございます。続いての質問が、フリースクール系のご質問ですかね。「多様な学び、フリースクールなどの費用を公的に経済支援を求めるために現実的な方法と、それがどの程度実現可能かという点について、お考えがあればおうかがいしたいです」ということです。

今井:これ、一時期話題になりましたよね。「私学助成金とかを使って、フリースクールの支援とかができないか」とか。1つみなさんにご説明すると、今って小学校や中学校に通うのは、金額的にはかなり公的費用が使われています。

確か中学校だと、年間1人当たり90万円とか100万円くらいの予算を支援していますし、私学も私学助成金と言って、大学や小中高も文科省が助成金を出して、1人当たりの金額を支援しているという現状はあるんです。ただ、フリースクールに関してはまったく公的な経済的支援はないので、学費が非常に高い。

さっき言ったとおり、フリースクールだと平均で(月額)3万円程度を支払いしなければいけない。不登校になると、なぜかそれだけ経済的な負担が求められる状況が、大きな課題ということですよね。

公的な経済支援の「障壁」になっているもの

今井:こういった私学助成金や経済支援が国に求められるのか? というところだったと思うんですが、これは政府の委員ではないので、実現可能かどうかはわからないんですけれども、求めていくべきことだなとは感じています。

というのが、フリースクールが不登校の子どもたちの受け皿になっているという事実はありますし、この10何年、20年掛けて歴史的に支えてきたこともあるので。

たぶん、自治体によってはすでにいくつかやってたような気がするんですね。確か東京都とか、いくつかの自治体でやっていたと思うので、そういった実例を積み重ねて、公的負担というある種の経済的な支援を求めていくことは必要なのかなと思っています。ただ1個、他の識者の方から聞いたことがあるんですけれども。

遠藤:障壁が。

今井:そうなんですよね。国からの支援を受ける際に、学校の法律的な部分がかなり障壁になってはいるんです。自治体単位ではなにかしら支援を模索できるんですけど、国レベルになってくると、その障壁をクリアしていかなければいけなかったなという記憶がありますね。

これもなかなか回答になっていないかもしれないんですが、私も求めていきたい部分なので、もし一緒に協力できるんだったらやりたい部分ですね。

遠藤:本当にそうですね。声を挙げることにも価値があると思いますし、それを続けていくことで変わっていくと思うので、みんなで変えていきたいなというのはありますよね。

今井:そうですね。民間からできることもぜんぜんあると思うので。今回のSAKURUGさんの試みもそうだと思うんですが、(不登校者数が)これだけ過去最多になっている状況を見過ごしていくわけにはいかないので、「不登校の子どもたちに対する支援に取り組んでいこうよ」というムーブメントを作っていく。

例えば高校生でいうと、過去60年か70年の歴史の中で、通信制高校は過去最多の生徒数になっているんですよね。つまり、生徒数が一番増えている。高校だけの話で言うと、不登校の数が増えているのでそうなってきています。本当に大きな課題というか、実存している公立の学校の人数が減ってきているって、けっこう課題ですよね。

遠藤:そうですね。

今井:それをフリースクールとか通信制のほうが支えているので、それやったら公的支援せなあかんよね、という話はできますよね。

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