2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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内田雅和氏(以下、内田):そして、先ほど掲げた文科省が掲げている4つの部分で大事なことは、働くことの現実や資質・能力の育成を軽視してはダメですよということです。「社会に出るにあたって、こういう力が必要になるだろう」という12のコンピテンシーを掲げています。
こういうコンピテンシーを意識できるようになった生徒たちが、自律して活動している事例について、最後に話をさせていただければと思います。
ちなみに、いろいろな活動している生徒たちは日本を見るだけでなくて、およそ100万円の賞金が出るようなインドのビジコンに参加をして、準グランプリで2,000ドルの賞金を手にしました。しかも、グランプリまでは0.01ポイントしか差がなかったので、「ほぼ優勝だった」みたいなかたちなんですけれども。
彼女たちが実際に何をしたのかと言うと、関係性アプローチの中で「自分は世界に対してどんなアプローチができるのか?」ということを考えていきました。その中で彼女たちは、今の世の中において、油がこのように捨てられている現実があるとわかりました。
油は普通に燃やされると二酸化炭素の排出量が3倍で、日本においては91パーセントがリサイクルされていない。そして日本の洗剤はパーム油を原料にしているものが多いんですが、これは決して環境に優しくない。なので、彼女たちは「油を原料に洗剤を作れないか」ということで、自分たちなりに実験して油から洗剤を作り出しました。
さまざまな企業とコラボレーションをして、実際に油から作られた洗剤を販売するところまでかなりリサーチを進めています。そして将来的には日本だけではなくて、自分たちが作った洗剤を世界で販売しようとしています。
内田:最後に、三田国際の中学1期生でリフレクティブ・ヒアリングを行いました。卒業するにあたって、「将来の職業に関して考える機会があったか」「将来の職業だけでなくて、自分の人生を考える機会があったか」という質問を生徒に行ったところ、職業に関しては95パーセントの生徒が「考える機会があった」と。
「そう思う」と力強く答えてくれた生徒が75パーセントもいました。「どちらかといえば」を含めれば95パーセントです。
もう1つ、「人生について考える機会があったか」という質問にも、95パーセントの生徒が「考える機会があった」と答えています。
「自由に自分の将来について記述しましょう」と言った時に、こんなことを書いてくれる生徒がいました。
「最近考えることは、ある意味当たり前で誰もが思っていることなのだけれども、『誰かのために何かをしなくちゃいけない』と逆算して道を決めるよりも、自分にできること、自分が続けられること、自分が好きなことを極めていった道の先に、自分にできる最大限の貢献や可能性があるんだろうなということ」。
「それは本能に従って楽に自分だけが楽しめれば良い人生とは違って、三田で世界をクリティカルに見てアクションにつなげる力を得たからこそ、自分のしていることが、この先何ができるかを探りながら訪れたチャンスに何度もトライし続ける人生にしたいと思う」。
こうした言葉を書いてくれた生徒が、大学生になってどうなっているのかを自分なりに調査をしています。1期生なのでもう大学2年生になっているんですが、Zoomでインタビューをしました。
内田:この生徒は現在、慶応のSFC(湘南藤沢キャンパス)に通っているんですが、日本の食の問題についていろいろとテーマを持っている生徒で、Zoomをする時に突然スキーウェアみたいな服で出てきたので「何かな?」と思ったんです。
「私は今、北海道にいるんです。北海道のファームで実際にいろんなことにチャレンジしています」という話を聞いて、「大学生になって、自分のやりたいことに向かってちゃんと突き進んでいるんだな」ということを感じた次第です。
正直、今日お話しした内容は一部でしかないので、プロティアンキャリア教育に興味を持っていただけたら、ぜひタナケン先生との共著(『プロティアン教育』)を読んでいただけたらなと思います。
そして最後にみなさんに伝えておきたいこととして、これは先ほども出した1999年の答申なんですが、「キャリア教育の実施に当たって家庭・地域と連携し」とあります。やっぱり、企業・NPOがちゃんと団体がスクラムを組んで世の中を変えていくことが重要です。
キャリアカウンセラーを学校に配置するのを文科省に頼っているという難しい状況があるのであれば、プロティアン・キャリア協会ががんばります。プロティアン・キャリア協会は、全国に無料提供を実施して進んでいきます。
実際、学校において大きなアドバイスをいただける部分があるので、世の中に住む大人全体でプロティアンを広げていくことが非常に重要なんだと思います。
内田:中高生にキャリア教育にしっかりと向き合ってもらうためには、大人がキャリアオーナーシップを示すことが非常に重要なんじゃないかなと思います。社会にプロティアンが浸透していけば、キャリア教育はこれからもっともっと変わっていくと思っています。というところで、この後は辻さんにまた戻します。
辻優樹氏(以下、辻):内田先生、どうもありがとうございました。本当に素晴らしい取り組みをされていて、私も授業に登壇させていただいた際に生徒たちから感じるものがひしひしとあったので、子ども時代に三田国際さんがあればぜひ入学したかったなと思っております。どうもありがとうございました。ご質問がいろいろ来ているみたいですね。
久保内:そうですね。5つぐらい来ていまして、全部にお答えはできないんですが、内田先生のできる範囲でチャットでお答えいただくことは可能ですか?
内田:はい。
久保内:じゃあ貼り付けます。せっかくたくさんいただいたので、内田先生のできる範囲でお答えいただきたいと思います。
辻:では、その間に私がご案内をさせていただきます。本来はすべての質問に直接お答えいただくほうがいいかと思うんですが、お時間の関係上、このご案内をさせていただいている間に内田先生にお答えいただければと思っております。
最後に駆け足になって大変恐縮ではございますが、内田先生からもご案内があった通り、やはり学校だけではキャリア教育を推進していくことがなかなか難しい現状がございます。
そこで我々プロティアン・キャリア協会のキャリア教育チームとしては、全国にプロティアンキャリア教育をお届けするための活動をしております。全国に無料提供というかたちで、オンラインやリアルの提供も可能となっておりますので、気になる方はぜひお問い合わせいただければと思います。
辻:協会公認の団体がございまして、そちらともコラボレーションをさせていただいております。通称九州プロティアンのキャリスマ、新潟、関西プロティアンという3つの団体がございまして、そちらとも連携を取りながらキャリア教育を進めていきたいなと思っております。
九州では、「親と子の幸せな生き方とは」「不登校から未来への選択」というテーマでゲストの方をお招きして、キャリア教育の推進の取り組みをされております。大学や専門学校と連携しながら、今後は九州全体で教育を届けていこうとされております。
新潟では、一般社団法人愛・南魚沼みらい塾という団体とのコラボレーションイベントを開催されておりまして、こちらはもう終了してしまったんですが、実際に新潟を拠点としたキャリア教育の推進を行っております。新潟におきましても、まさに今キャリア教育の推進を実践されている状況です。
あと、関西ではまだ具体的なキャリア教育には進んでいない部分はあるんですが、定期的な交流会等を実施しております。その中で、今後関西を基盤としたプロティアン教育の推進も予定している状況です。
ちょっと駆け足になりましたが、今後は各協会ともコラボレーションをしながら、プロティアン教育をなんとか全国に広げていきたいと思っております。
辻:そんなこんなしている間に、質問はいくつかお答えいただいている状況ですかね?
内田:書いたんですが、チャットではなかなか簡単に書けない部分があって。
辻:そうですね。もし、何か気になった質問とかがあれば。
内田:いくつか質問があった中で、「子どもたちが将来のことを考えるのがストレスになっていないか?」という部分なんですが、正直、ストレスになっている生徒もいます。プロティアン教育の本の中で、インタビューを実施した1期生の生徒は本当にそれがストレスだったと回答しています。
しかも、周りの生徒たちが自分の将来のことを考えているのに、自分が考えられないから劣等感をすごく強く持ってしまったということもありました。だけど、やっぱりその中で向き合うことが大事なんだろうなと思っています。
最後の質問で「自分自身の夢は何ですか?」ということなんですが、今、三田国際で進めているキャリア教育がゴールだとは正直まだぜんぜん思っていないです。また、自分自身もキャリア教育やキャリアカウンセリングについて学び終えたとも思っていないので、学び続けることが大事だなと思っています。
生徒に「生涯学習を意識しようね」と伝えていて、自分もまだ46歳で人生半分も終わっていない状況なので、ここからまだまだ学び続けていきたいなと思っています。特にキャリアに関する学びを続けていくために、法政のキャリアデザイン学部で終わりではなくて、次を見据えて学び続けていきたいなというのが自分の大きな目標です。
(視聴者が)チャットに書かれていた「ストレスが成長過程において非常に重要で、一緒に考える姿勢を大人が示すことができれば」という部分については、僕も本当に肝だと思います。
大人が、キャリアオーナーシップを持つために悩んでいる姿勢を子どもたちに示していくことで、日本のキャリア教育は変わっていくと思うので、ぜひ一緒に協力して、良いキャリア教育を変えていく力をみなさんからもらえたらなと思っています。
辻:内田先生、どうもありがとうございます。もっとお話を聞きたいところではございますが、お時間となりましたので、セッションを終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
内田:ありがとうございました。
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