2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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荻野淳也氏(以下、荻野):逆に僕が羊一さんに興味関心があったこととして、羊一さんは次世代リーダー育成とかリーダーシップ開発の専門家ということで、いろいろ講演や教育もされていると思うんですけども、今年の4月から武蔵野大学のアントレプレナーシップ学部の学部長に就任されましたよね。
そこへの思いとか、これは今まで自分がやってきたことからのチェンジなのか、それとも自分がやってきたことの延長線上にあるものなのか、どんな課題意識がありますか。
伊藤羊一氏(以下、伊藤):ヤフーやグロービスで、社会人のリーダー開発をしていたわけですよね。そこで「ヤフーアカデミアでマインドフルネスを入れてみよう」ということで荻野さんと知り合ったという流れで、最初は「社会人で目覚める人」を対象にしていたんですよね。
それはそれですごい大事で。要はいろいろやりながら35歳で気づく人もいるし、50歳で気づく人もいるし、それはそれでよかったんです。別に遅すぎることはないんだけど、「若い頃から気づいていれば違うよな」と。
だからまさに小さいことから始めるという「回転」ですよね。最初はそんな大げさなことじゃなくてもいい、「逃げたい」から始まってもいいけど、こうやって回していくことが若い頃からできたらいいよねと。
そこで「伊藤さん、学部作らないか」という、なんというか、めちゃくちゃすごいお誘いを武蔵野大学の西本学長からいただいて、「どんな学部ですか」と聞いたら「伊藤さんみたいな人を作ってくれ」「学部名とかも自分で決めてくれていいから」という、そんな流れで始まったんですよ。
伊藤:それで今何をやっているかというと、ポイントは3つあって、1つは「学」を学ぶんじゃなくて「実践」が大事。学も学ぶんだけど、学びながら実践すると、行ったり来たりできるんです。だから実践しないと始まらないという「回転」なんですね。
2つ目は、社会の最前線そのものをキャンパスに持ってこようということ。教員はほぼ全員現役の実務家なんですよね。そういう人たちが)みんな集まってくるんです。
3番目に、1年生は寮でともに学ぶということ。全寮制で、人間関係とかも社会の縮図みたいなんです。僕も寮に入って一緒に住んでいるんですけど、そういうことをやりながらまさにこの「回転」が若い頃から生み出せたらいいよねという感じで、この学部を始めたんです。だから今までやってきたことの延長線上ですよね。
荻野:今まさに接している大学1年生は、Z世代のど真ん中なんじゃないかなと思うんですけども、なにかそこで学生の方々の「Z世代の特徴」はあったんでしょうか。
伊藤:細かく言えばいろいろあります。しかしこのセッションのタイトルをぶち壊してしまうかもしれませんが、結論から言うと「別にシニアもZ世代も変わんないかな」というところはありますよね。
でもその中であえて特徴的なところを言うと、まずはもともと「アントレプレナーシップ学部」なんて、今まで世の中に存在しないわけですよ。強いて言えばSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)が近いのかもしれないですけど。
今までそんなアントレプレナーシップという名前の学部はなくて新設で、教員は実務家、そして全員が寮に住むという、わけがわからないところに集まってくるわけですよ。そんな1期生、「なにかやってやるぜ」という学生が70人集まる。そこで感じるのは、「やってやるぜと思う学生って、いるんだな」ということ。これはすごく希望を持てますよ。
僕らが気づいていないだけで、そこかしこにそういうZ世代がいるはずなんですよ。そういう人たちを見つけるのはすごく大事な仕事だなとあらためて思いました。
伊藤:ただ感じるのは、そういう人たちってわりと「学校の勉強ができます」というタイプじゃないんですよ。でも「なにかやってやるぜ」という気持ちがあるんですよね。これはわりと反比例しているなと感じるわけです。「学校の勉強をちゃんとやる」ことと、「社会で活躍する」ことは、必ずしも一致していないよね、ということは感じています。
それからやっぱり、そういう学生たちであっても正解を求めようとしちゃうというところがあって。「正解なんかないよ」と半年言い続けてようやくわかってきてくれたんだけど、どんな人でも正解を求めちゃうところはあるよねということですよね。その中でやればものすごく成長できるという「自信」を、半年かけてようやく感じてきているところなんです。
「Z世代だから」というよりも、社会の構造とか、シニアがやってきたことの影響を今の学生たちが受けているところがあると思っています。だからZ世代そのものにフォーカスすると同時に、社会の構造とか、「大人たち」をちゃんと考えることがすごく大事かなと思います。
荻野:能條さん、今の話を受けてどうですか? デンマークに行く前は「何がしたいんだろう」と悶々とされているところもあったと思います。とはいえ、近い年代の方々に「やってやろう」という人とか(いらっしゃいましたよね)。
まさに今、能條さん自信もそうなられていると思うんですけど、どうしたらそうなれるのかとか。なかなか行動に踏み出せない方々の気持ちもわかりますか? 周囲の方々を見ていてどう思われるのでしょう。
能條桃子氏(以下、能條):そうですね、今の話を聞いて特に「わかるな」という点が2つあって、1個は「正解を求めてしまう」というところです。私自身もそうだなと思うんですけど、特に留学中に「なんで自分はこんなに正解を求めてしまっているんだろう」と苦しくなるくらい考える環境にいたので、今アントレプレナーシップ学部にいらっしゃる1年生と同じような気持ちになっていたのかもしれないです。
いくら「正解はない」と言われても、十何年も「正解がある教育」を受けてきて、それによって自分の自信だったり、評価や価値を決められてきたから、それを求めてしまう。頭では違うとわかっていたとしても、そういう部分があるんだろうなと思うし、それは今までの日本の教育の特徴といえば特徴なのかもしれないです。
能條:一方で、だからといって変わらないのかというとそうではないですよね。人間慣れだと思うので、そういう日本の正解を求める教育環境にいなくなると、だんだん忘れてくるところはもちろんあるんだろうなぁと思ったのが1つです。
あともう1個が、「全寮制」がすごくいいなぁって思っています。私も留学中、全寮制の学校に通っていたんですけど、やっぱり学校が小さな社会なんですよね。
その小さな社会の中では、テストの点数が取れても何も意味がなくて、むしろ人としておもしろいとかのほうが大事なんですよね。例えばルールが上手くいかなかった時に何かみんなで作るとか、そういう民主的な過程で「この100人でどう上手くやるのか」というところが、私も学びになりました。
ただスキルを学ぶのが学校なんじゃなくて、小さな社会の中でどう立ち振る舞えばいいのかってところまで含めて学ぶのが学校なんですよね。しかもそうすると、育ってきた環境がこんなにも違うんだって気づけるんです。
同じ学校に来ているから、まあまあ似たような性質とか思考を持っているはずなのに、それでも違うんだってことを知って、学びになったり気付きになったりしているんだろうなぁと思っています。そういう意味で、全寮制はすごくいいなぁって思いますね。
伊藤:まさにですね。能條さんがデンマークに行かれるのと、学生が寮で生活するのって、ほぼ同じなんですよね。いろいろ得られることは違うんだけど、結局同じことを目指していて。
伊藤:要は今までの学校は、上から下に降りてくる感じ。何かが降ってきて、その降ってきたものを学んだりするような感じだったんだけど、そうじゃなくて、やっぱり自らが経験するところから始まるんですよね。行ってみました、そして知りました、「ウォーーー!!」みたいなね。
「そもそもこれでいいの?」って問いを立てたり、自分でやることがめちゃめちゃ大事だと思っています。だから経験する、知る、問いを立てるというのが(学びの)最初かなって思いますね。
能條:そういう生活だと「違和感を持てる人」だとか、「人とは違うことに気付ける人」ほど価値があるって認識されるからこそ、新しいものが生まれたりとか、正解ではなくて何か違うものに対して価値があるよねって認識ができてくるんですよね。従来型の学校のように、ただ行って授業を受けて帰るだけではない、「学び」があるんだろうなぁと思って羨ましくなりますね。
伊藤:能條さんのNO YOUTH NO JAPANは「政治」がテーマでもあると思うんですけど、視聴者からのチャットに「民主的過程は共同生活が原点」ってあって、まさにそうだと思いますね。
寮生活は、もういろんなことが噴出するわけですよ。「それでこれ、どうするんだ?」とか「ロジックから言えばこうだけど」とか「感情的にこうだけど」って、みんながピーピー言って決まんないんですよね。それを「どうやって決めていくの?」と考えるので、民主主義の原点のようなところがすごくあります。
民主主義って、二院制とか教科書を読んでもわかんなくって、実際に体験してみると「たしかに理屈とか正論じゃ決まんないことってあるよねとわかるんです。だから、自民党の総裁選挙の流れと、寮の生活で学べることはけっこう同じだったりするんです(笑)
能條:デンマークでは生活様式が民主主義と言われいて、私が行っていた学校は民主主義の学校って言われていたりもするんです。
日本で民主主義っていうと学問上の「学ぶ」みたいな、ただ覚えるようなことだったけど、そうじゃなくて。「私たちが生きている社会って私たちが決めていくよね」っていう、その認識が学校でもあればいいし、それが社会という意味で、国とか地方自治体のレベルでもあればいいなと思って活用しています。
伊藤:なるほどね。
荻野:この前羊一さんとお話させてもらっていて印象に残った言葉があって、「もう大学生の彼女たち彼らたちは縦じゃなくて横なんだよねー」っておっしゃったんです。本当にそうだなと思って、僕たち40代、50代、60代世代って、もう縦の関係性が当たり前というか、縦だからまずは先輩には挨拶しなきゃいけないとか、身に染みているじゃないですか。
でも、能條さんのような20代の世代は、そういったものがだんだんなくなってきていて、僕の母校の部活とかも本当に横というか、フラットというか、そんな感じになってきているんだなって思うんです。
伊藤:これは本当に大事で、先に整理しておくとすべてのことがクリアになるんだけど、社会構造全体が縦から横になってきていると思うんですよね。
伊藤:「縦」が何かというと、高度経済成長期とか、物がだんだん便利になっていく世界においては、製品を作って大量生産することが必要だった時代だったんです。だから洗濯機がなかった時代やクーラーがなかった時代は、それを大量生産してみんなが持つという時代でした。そうすると、そこにおいて必要とされる社会って「縦」だったわけですよね。ヒエラルキーの中の世界だったんです。
今はもう物もサービスも行きわたっている。行きわたっている中での縦社会も当然あっていいんだけど、シニアだろうがZ世代だろうが、みんなフラットに横になっている。むしろ「君はどうやって考える?」って分け隔てなく会話ができて、そこに新しいアイデアがあって、新しいものが生まれてくるんですよね。
だから「横の社会」って呼んでいるんですけど、やっぱり経済とか社会とか、政治もそういうことになっていると思うんです。すべてが縦から横になってきているし、なんなきゃいけないってすごく感じますよね。
自民党がリベラルっぽくなっているのも、そういうことだと思うんですよね。今までみたいに保守とリベラルとか、右派左派とかって話じゃなくて、社会全体がもうリベラルというか、それが大前提になってきている気がしますね。
荻野:そうじゃないといけないですよね。これだけ時代がうねりをもって変わっているということは、今までのようにトップが正しい答えを持っていて、それを実行するという縦の構図が成り立たないし、そこに気付いていかなきゃいけない時代なのかなって思うんですね。
伊藤:だから「これからはZ世代だね」じゃなくて、Z世代もなんとかシニア世代もみんなフラットで、みんながみんな、みんな違ってみんなよくてリスペクトするっていう社会になるべきかなって。
荻野:そうですね。
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