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岩田拓真 × 川辺洋平「遊び上手」な親が子どもの「探究心」を刺激する!(全5記事)

大人の興味関心が子どもほど長続きしない理由 人が「楽しむ」ために必要なものとは

『「勉強しなさい」より「一緒にゲームしない?」』の著者・岩田拓真氏が、同じく、子どもたちが夢中で学ぶ環境づくりのプロである「おうちピテクス」の川辺洋平氏を迎えて行った本屋B&Bでの刊行記念対談イベント。本記事では、大人の興味関心が子どもほど長続きしない理由や、趣味で続けた探究が仕事になり得ることなど、「探究」を語り尽くします。

大人の興味関心が子どもほど長続きしない理由

川辺洋平氏(以下、川辺):確か岩田さんは本(『「勉強しなさい」より「一緒にゲームしない?」』)の第1章の中で、遊びから勉強になることもあるし、勉強から遊びになることもあると……。

岩田拓真氏(以下、岩田):はい。書きましたね。

川辺:本当にそうだなと思うのが、僕は今38歳で、早稲田の博士課程の3年生にいて、何人かの学生さんは、その中で博士論文を書き、博士号を取りたいと思って入学してくるんですけど。

僕を含め、そうじゃなく、勉強するということを一番最後までやってみたいという人もいて。(博士課程)最後の3年生まで来て、初めて、前は興味がないと思っていたことに興味が移ったり、先生の研究内容に興味が持てるようになったり。

もう「それをやったからなんなの」って話なんだけど。でもおもしろそうだから読みたいというところなんですよね。

同じように研究者も、「キミは理科が得意だから理系に行ったらいいよ」と言われて理系を勉強してみた結果、生命とは何なのかみたいな哲学方向に興味がいくこともあるわけですよね。

岩田:ありますね。

川辺:そう考えると、勉強をした結果が遊びということもあるし、遊んでいたらそれを勉強だと他人が呼ぶようになったりすることもあると思うんです。

岩田:確かにそうですね。質問が来ていて、大人の学びにも関わるので読ませていただくと。「子育ての経験がないので想像がつきづらいのですが、大人側が興味関心に熱中し続けることの難しさがあるような気がしています。大人が何かを心から楽しむために必要なことは何だと思われますか?」ということなんですけれども。どう思いますか? 

川辺:大人が何かを心から楽しむために必要なこと? そうねー……。

岩田:そもそもどう思います? 大人のほうが難しいと思います? 興味関心。

川辺:(うなずく)

岩田:あ、思います? それってなんでですか? 

川辺:生きていくために稼がなくちゃいけないから。

岩田:なるほど、なるほど。仕事があるからですね。

川辺:うん。そういう場合が多いですね。

岩田:稼がないといけない。なるほどな。

川辺:楽しむと言った時に僕らがイメージするのは、「それをやってもやらなくてもいいんだけどやっちゃう」みたいなのが楽しむなんですけど、そうなるためには、心に不安や焦りがない状態を作らなきゃいけないわけ。もしそれが楽しみだとしたらね。

岩田:確かにそうですね。余白がないと言うか余裕がない。余裕とか余白がないと存分には楽しめないですもんね。

自分の中の「楽しむの定義」を変えると、人生が変わる

川辺:なので楽しむということをやってもやらなくてもいいんだけど、やってるふりとかね。やってもやんなくてもいいんだけどやってる囲碁とかね。わかんないけど。そういうものだと捉えれば、まずは心から楽しめない別の理由のほうをしっかり埋めるというのが。

岩田:本当にそれはありますよね。この質問を聞きながら思ったのは、僕は医学とか生物学的なものの見方をするのが好きなので。生物的には、例えば、大人が生物として何かを楽しむという力が子どもの時よりすごく落ちているかと言うと、経験によって落ちていることは可能性としてあると思うんですけれども。

ただ、そもそもの人間のポテンシャルは、そんなに変わってないんじゃないかなと思っています。どっちかと言うと、川辺さんがおっしゃったように社会的な理由とか、仕事で稼いで生活をしていかないといけないとか、子育てをしていて、ちゃんと子どもの面倒を見たりしないといけないとか。そういう社会的な要因のほうが大きいんじゃないかなと、聞いていてすごく思いましたね。

そこでのうっぷんとか、忙しさとかをうまく解消できたら、楽しくいろんなものに向かっていけるんじゃないかなと思います。

川辺:というのがありますよね。あともう1個、さっき「楽しむというのは、やってもやらなくてもいいこと」と定義しましたけど、楽しむの定義が変わっちゃうと、楽しみやすくなると思うんですよ。

さっきは「やってもやらなくてもいい」だったけど、「めちゃくちゃやる」という楽しみ方もあって。例えばカメラマンという職業の人がいるとします。カメラが好きで始めたはずなんだけど、例えば最近はもう写真を撮るのが楽しくないという。

このままだと自分が怪我をしたらしばらく仕事もできなくなっちゃうし、どうしたらいいかなみたいな。楽しむとかよりも、不安がある時に、カメラマンとしての経験を、どうやったらおもしろい方向に持っていけるのか。人にはできない材料を持っていると思うので。

僕らからすると、僕はレゴを持っていないけど、君はレゴを持っていることに悩んでいるみたいな。

岩田:確かに。なるほどな。

川辺:だったらレゴのプロになったほうが絶対いいよと思うのと一緒で。楽しむことを、生きるとか稼ぐことと結んでいいという設定にすると、人生がぜんぜん変わる気がしますよね。

趣味で続けた探究が、仕事になり得ることを知る

岩田:そうですね。極めていった先に見えるものってありますよね。あとは、ちょっと時間はかかりますけど、子育てとか家事とか、仕事の中で楽しめる部分を見つけ出すみたいな。余裕がない中でもそういうことならできますよね。

川辺:そうですね。それで言うと後者は、探究や研究という言葉を突き詰めていくと、研究予算を集めて人件費を払っていたり、発明して大成功したり。実は仕事で稼ぐことと、何かに夢中になることは、わりと世の中的にはイコールなんですよ。

ただ、あたかも楽しみのためだけにやることが探究だと思わせてしまう文脈が今の社会にある気がしているので。それは前者なんですよね。囲碁とかね。

岩田:なるほど。確かに。本当はどっちもありますよね。

川辺:そう、そう。もうちょっと「遊びが仕事になっているんだよ」とか、「実は」と思うような考え方で仕事を立て直すと、岩田さんが言ったみたいに、楽しみも続けやすいかなって。

岩田:確かに。

川辺:気はしますね。

岩田:ありがとうございます。

川辺:いえいえ、なんか本当に……。

岩田:質問いただいた方も、ありがとうございます。今お聞きしながら、僕は28歳で起業するまでは、川辺さんが言ってたみたいに、子どもの頃からすごく好奇心旺盛でいろんなものをやってみたいタイプでした。親にも1年ごとにはまっているものが違うとずっと言われていて。28歳までいろいろやってみてというのを繰り返していて。

結果的にだんだん、自分の得意なことや好きなことが見えてきたんです。教育はバックグラウンドじゃないんですけど、結果的に教育がおもしろいなと思うに至って、そこから8年ぐらいやっているんですけど。好きなことや興味関心があること、得意なことがぴったり合うところが、28年かかったんですけどやっと見つかって。

今は仕事の中で好きなことがけっこうできちゃっているというか、遊んでいるように仕事をしていて。日々仕事の中で探究している感じなんですね。逆に、今まで趣味だったものが全部こっち(仕事)にきちゃって(笑)。プライベートの趣味とかだいぶなくなっちゃってるんですよ。

「こういう本書いてるけど、あなた最近趣味なんてないじゃないの」みたいなことを妻から言われて。あ、確かに全部仕事でやっちゃってるなみたいな。

川辺:なるほどね。

仕事の探究と趣味の探究

岩田:明日はアートが好きな友だちとアートホテルを貸し切って、アートのホテルに泊まりながらアーティストと一緒に作品作ったりとかいろいろやるんですけど。そういうのも、自分が好きだから「おもしろいかな」と思って企画して、みたいな。仕事のなかでやっちゃうんですよね。

子育てもそこに乗っかってきちゃうというか「やばい、やばい。全部仕事になっている」と思って。何か他ないかな……。

川辺:教育やばい(笑)。

岩田:そうなんですよ。教育で全部受けきれるから、そこにはまったんですけど。逆に言うと教育以外の外側があまりなくなっちゃってたりして。どうしようかなと思っています。

最近ちょいハマりぐらいなのは、家で家庭菜園をやって、植物を育てたりしてるんですけど。これもどっかで植物や生き物の探究につなげちゃいそうだなと思ってたりするんですけど(笑)。

そういうのないですか? でも、川辺さんは仕事とお家のプライベートの遊びがつながってはいるけど、一定の距離感があって、それぞれぜんぜん違うものとしてやられているなぁと思って。

川辺:そうですね。僕は子どもに関することが大好きで。「こういうのないかなぁ」とか「こういうの欲しいな」と思ったものは自分で作るんですけど。それは車が好きな人に近いんですよ。車が好きなんだけど、こういうオイルがないんだよねとか、こういうガレージに俺の車を入れたいんだよねという。そのガレージ程度を作っている感じで。

じゃあそのガレージを量産して売ろうとか、オイルを中国でたらふく売ろうという発想にはならなくて。お金を稼ぐのは別のところでやるから、仲のいい人にはこんなの作っててちょっと余ってるからあげるよとかね。わりとそういう感じだなと、今聞いてて思いましたね。

岩田:僕もガレージだったんですけれども、ガレージじゃなくなってきちゃって(笑)。

子どもの誕生で広がるつながり

川辺:それを近所の人が「これいいじゃん」となって、2号店3号店となったわけだからハッピーな拡大だと思いますけど。僕はそこと、お金を稼ぐということを、ほどよく切り離している感じはあります。

岩田:なるほどな。

川辺:くっつけたいんだけど、くっつけたくないみたいな。常にそこは悩みながら。

岩田:いやいや。そこが個人的な……。すみません、ぜんぜん(笑)。関係ない。

川辺:いえいえ。本当にそうですね。

岩田:じゃあちょっとそろそろ。

川辺:あとね……。

岩田:どうぞ。なんかあります? 

川辺:いえいえ、最後の岩田さんの趣味の話を聞いて思ったのが、何かに夢中になる時に、岩田さんと趣味を点と点でつなぐと、ただの1本の線になっちゃうんですよ。

だけど本来、探究って、対象となる事柄と岩田さんと、もう1人の人間がいる気がするんですよ。探究ってコミュニティやコミュニケーションの中に生まれる気がしてて。今日は親子の話ばかり2時間してきたので、そこが抜け落ちがちなんだけど。

岩田:いや、いや。ぜんぜん。でも家庭菜園もおもしろいですよ。1つは子どもも植物が成長していくのを見て、おもしろがってるし。あと家が1階で、通りに面して育てているので、それを媒介に近くの地域の方と話すことが増えたり。

幼稚園の散歩のルートになっているので、作業をしていると、(通りすがりの子どもたちに)突っ込まれるんですよね。そういうのも、実は街に影響を与えている。

保育園の方がここを通って、子どもたちとおしゃべりする時間に使ってくれてたりして。おもしろいなぁ、みたいな。そういうのも、あったりしますね。

川辺:なるほどね。それを聞くと趣味を通じて岩田さんが今誰とつながりたいかが、明確になった気がしますね。

岩田:おもしろいですよね。子どもができたことがいいきっかけになってて。これまでやってないところを「ちょっとやってみようかな」と、腰を上げやすくなった自分もいて。

川辺:なるほど。

岩田:おもしろいですね。2時間って長いなと思ってたんですけど、意外と最初の自己紹介で2人とも20分ぐらいしゃべったり(笑)。

川辺:本当ですね(笑)。

岩田:話し出すと本当にきりがなくて、あっという間に時間が過ぎてしまいました。お聞きになっていただいた方、今日はどうもありがとうございました。

川辺:ありがとうございました。

大人も暮らしに「遊び」を取り入れて、ヒントを得る

岩田:最後になんか川辺さん、2時間話してみて感想とかメッセージとかあればいかがですか? 

川辺:そうですね。やっぱり子どもがいる・いないは、この書籍を読む上で、関心の持ちやすさとか入りやすさという意味で違うかなとは思うんですけど。

でも本来は大人も大きな子どもなので。ゲームや遊びを暮らしの中に取り入れていくことは、ヒントになるような。今日はそういう書籍の話をできたかなと思うので。子どもがいてもいなくても、楽しく毎日を過ごせるヒントを得られればと思いました。

岩田:ありがとうございます。知人で「子どもがいないんだけど読んでみるわ」と言って読んでくれたら、そういう「気づきがあった」って声もたくさんいただいていて。確かにトーンは子ども向きですけど、できるだけ本質的なことをと思って書いたので、すごくうれしいです。

本を書いて僕が思ったのは、できて終わりじゃないのがすごくおもしろいなと思っています。川辺さんも本を書かれてすごく実感されていると思うんですけど、自分が書いたものをもとにこうやってお話をさせていただくとか、書いたものがいろんな解釈とか使われ方、さっきのお家に置いておく用になっているんだとか。

これまでは目の前の子どもたちのサポートをする仕事をメインにやってきたので、本を出して、それが他の場所におのずと歩いていくみたいなのがおもしろくて。今日も、その1つとして久しぶりに川辺さんとこうやってじっくり公開でお話できたのは、すごく楽しかったです。

川辺:ありがとうございます。

岩田:ありがとうございました。聞いていただいた方がどう思われたかわかんないですけど。もしよかったら、感想とか聞かせていただけるとうれしいです。

川辺:本当ですね。

岩田:ということで、みなさん本日は2時間、長い間お付き合いいただき、どうもありがとうございました。

川辺:ありがとうございました。

岩田:また、私の本もそうですし、川辺さんの本も、もしご興味があったら、ぜひ読んでみて下さい。あとホームページとかで互いに活動をしているので、ご興味を持っていただいた方は、ぜひ見てください。ということで、本日はどうもみなさんありがとうございました。

川辺:はい。ありがとうございました。

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