2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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朝山あつこ氏(以下、朝山):やっぱりわくわくエンジンを持つと、物事が自分ごとになるんですよね。でも、(持っていない人は)人のせいにしてるじゃないですか。さっきの「専務が言ったから」「社長がこうだから」「会社がこう言ったから」みたいな。
「人が言うからそうする」とやっていたら物事が進まないし、おっしゃるとおり自分がないから、その仕事をその人がやっていてやめちゃうぐらい、楽しくないわけですよね。
山口周氏(以下、山口):そうそう。それで思い出した話があって、格安航空会社のピーチってあるんですよね。僕はすごくあの会社のファンで、実際に会社立ち上げの時期に仕事を手伝ってたことがあるんですが、あそこは井上(慎一)さんという方が立ち上げた会社なんですよ。
彼はもともと、全日空(ANA)の人なんです。全日空の偉い人から、「うちの会社も格安航空会社をやることになったから、お前が社長やれ」と言われた時に、最初は「ふざけるな」と言って、その命令をはじき返したらしいですね。なぜかと言ったら、デフレデフレと言われている中で、「牛丼屋じゃねぇんだ」みたいな。
井上さんから「格安航空会社を立ち上げることになったので、手伝ってもらえませんか? と言われた時に、実は僕自身が井上さんに対して「牛丼屋みたいにエアラインを作るんですか?」と返したんです。
朝山:あはは(笑)。
山口:「いや、そうじゃない。とにかく1回話をしよう」と言うので、会社の本拠地の関西空港まで行って。「この会社は何のために作るんですか?」と聞いたら、「戦争をなくすためだ」と言ったんですね。
それはおもしろい後日談があって。要するに、格安航空で値段がどんどん下がれば、いろんなアジア中の若い人たちが、どんどん外国に出かけられるようになる。
そうすると、それぞれの国には素晴らしい文化や素晴らしい人たちがいるということを実体験できるようになるので、必ず世界平和に貢献する。だからそれは、JALとANAみたいな高い運賃を取るエアラインじゃダメなので、格安航空会社がいるんだという説得をされた。
朝山:若者が行きやすいようにね。友達がたくさん世界中にできたら、戦争がなくなるじゃんと。
山口:そう。そのためにはやっぱり「格安航空が要る」と言うので。
山口:あとで聞いたんだけど、これおもしろいのがね、「最初からそう思いついたのか?」と聞いたら、全日空でそれ(格安航空)をやれと言われた時に、彼もものすごく違和感があって。「ただ安いだけのエアラインって何だ?」と。
朝山:「牛丼屋じゃないよ」って。
山口:「どんどん従業員も大変になるし、コストも下げるってことは給料も下げなきゃいけなくなるので、やる意味がない」というので、反対したと。
一方で井上さんは非常に優秀な人なので、全日空に「やっぱりお前しかやれるやつがいない。なんとかやってくれないか」ということを言われて、何度もそのやり取りがあった時に、「自分がこの会社でやる意味って何かな?」と、本当に一生懸命考えたらしいんです。
「自分がやる気になっていない以上、(仕事を)預かっても絶対に失敗する」と。自分ごととしてやれない会社なので、自分ごと化をしてやろうと思ったら、自分でこの会社に意味を作らなくちゃいけなくて。
「どういうことが意味として与えられるか?」となったら、やっぱり若者の交流をどんどん促して、世界平和の実現に貢献することをぱっと思いついた瞬間に、その会社(ピーチ)が自分の手のひらに乗ったらしいんです。
朝山:スパーンと来たんだね。
山口:すとんと来たら「これでもう、キャリアの後半生を捧げられる。この会社と心中する」と本気になれて、「受けます。逆にやらせて欲しい」と言い出して。
朝山:わくわくしちゃったんですね。
山口:それで日本中から「こいつに手伝わせる」ということをやっているうちに、僕にも「お前来い」と声がかかって。僕は井上さんとタイプが似ているので、「安くするための航空会社に、まったく興味がありません」と言って断りました(笑)。
「とにかく1回会おう」と言うので行ってきたら、「山口さん、俺は戦争をなくしたいんだ」と唐突に話されて、「あっ、そういうことだったらお手伝いします」と。
朝山:うれしいですねぇ。
山口:これね、共感がすごく大事なのは……。
「コミットします。この会社を手伝います」「コミットする、手伝うって言ったよね」「ぜひ、これをやりましょう」「山口さん。うちね、格安航空会社なんだ。わかってる?」「わかってます。若者でも乗れるだけの、コストを作っていくということですよね?」「ということは、いろいろなコストを下げなくちゃいけないんだ」
……だんだん何を言おうとしているかがわかるわけですよ(笑)。え、それってもしかして……?
朝山:コンサル料のこと? ちょっとおまけして(笑)。
山口:世界平和のために、コンサル料も格安でお願いしたいと。
(会場笑)
朝山:いいですね、それ(笑)。
山口:「うちはぶっちゃけ、今までのコストの3分の1というのがありますから、出ているお見積もりも3分の1でお願いします」みたいな。
朝山:素晴らしいですね。
山口:でも、そんなことできないんですよね。結局は手弁当で手伝うことになるんですが。結局、共感を作ると、世の中からいろんなものをタダで集めちゃうんです。
朝山:なるほどね。NPOってそれですよ。
山口:情熱を持ってなにかやろうとしたら、喜怒哀楽というものがあって。そこに人が集まっていくんですが、現代の一種の“錬金術”なんですよ。
朝山:NPOもそうなんですよ。私が「こういう社会をるんだ」と言うと、みんなが共感してくれて、みんな会員で会費を払って、企業はお金を出して。「話させてくれ」と言って、お金が集まってくるんですよ。
山口:いいね、現代の錬金術師。
朝山:と言ったって、貧乏NPOですけど(笑)。
山口:『千と千尋の神隠し』で、(カオナシの)手のひらからぶわーっと金が。
(会場笑)
朝山:そうだったらいいんだけどなぁ。今、みんなスタッフたちが見て笑っています。
山口:ばーってばらまくのとかね(笑)。
朝山:やってもやらなくても、キーパーソン21は錬金しないなぁ(笑)。
山口:でもそれが1回1回どれぐらいの錬金ができるかは、ある種の運とか、たまたまというものもあって。だからそういうことをたくさんやっていると、たまたまものすごく集めちゃうこともあるし。今回はあまり、ちょろちょろぱっぱだなみたいな(笑)。
(会場笑)
朝山:ちょろちょろぱっぱで来ているんですけど、山口さんにもお手伝いいただいているので、今回ブレイクしたいなと思っているんですよ。
山口:いやいやいや。
朝山:やっぱり子どもが自分ごとになると、日本や地域が元気になる。みんなが笑顔になって元気になるというビジョンのスタートは、一人ひとりがわくわくすることをやる。わくわくしたエンジンがわかったら、結局仕事につながってくるので、その人のわくわくエンジンを意味付けられるようになるんですよ。
朝山:もうあまり時間がないんですが、この間、(山口さんの)お嬢さんにわくわくエンジンを発見させてもらったじゃないですか。覚えていらっしゃいますか?
山口:覚えてますよ。
朝山:中3のお嬢さん、「絵と理科と演劇が好き」って。これだけを見たらよくわからないじゃないですか。「じゃあ演劇に連れて行こう」「理科の勉強を手伝おう」「絵を描くお稽古を習わせるか」みたいに思うけど、彼女の理由を聞いていったら「自分の気持ちを表現すること」になったわけですよね。
だとすると彼女は、これから仕事をする時や進学を決める時などにこの気持ちを大事にして、仕事を意味付けることができるようになる。そんなことが実際に起きているんですよね。お嬢さん、何かおっしゃっていましたか?
山口:「医者になりたい」と言っていたんですよ。でもね、僕もそれを聞いていて「本当に医師がいいのかな?」と思って。でも、なんとなく自分でもそう思ったみたい。だからあのあと、「日大の芸術学部とかいいんじゃないか」と言ったら、「大路線転換だよね」とか言って。
朝山:でも医師になりたい意味が、例えば弱っている人を救いたいとか、なにかを開発したいとか。それは自分の気持ちを表現することになるから、別にどの仕事でもいいのかも。
山口:まあね。でも、医師であまり表現しちゃうとどうなのかなって。
(会場笑)
朝山:数字の世界か。
山口:「まだまだ生きられるかな」と思っているかもしれないのに、「このレントゲン見ると、もう生きられません……!」となって。
(会場笑)
山口:「あの人ちょっとさ……」と、あまり表現しちゃうのもどうなのかな。
朝山:医師というお仕事をすることが、自分の気持ちを表現することになる。だから、医療が表現になっちゃうと困るんですけど。
山口:そうね。“美しいメスさばき”とかね。
朝山:えー! そっちか(笑)。
山口:それだと、一際アクロバティックな財前先生(『白い巨塔』の登場人物)みたいになっちゃうか……。
朝山:なっちゃう。それは「自分の気持ちを表現すること」になるのかなぁ。技術を披露することかもしれないですね。
山口:そうね。でもいずれにせよ、「すごく考えるいいきっかけになった」って。
朝山:ありがとうございます。
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