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経済性からヒューマニティへ 山口周が語る教育と地域活性(全8記事)

「仕事がやりづらい」と思われてしまう人の特徴とは? 元経営コンサルが説く、“一緒に仕事をしやすい人”になる心得

人々の主体性を引き出し、生きる力を育むキャリア教育に取り組む認定NPO法人『キーパーソン21』。誰の中にもある、わくわくして動き出さずにはいられない原動力を「わくわくエンジン」と名付け、全国各地のコミュニティと協力して、さまざまな取り組みを推進しています。今回はそんな『キーパーソン21』が主催する「わくわくエンジンEXPO」にて行われた、独立研究者/著作家/パブリックスピーカー・山口周氏による基調講演の模様をお届けします。本記事では、「わくわくエンジン」を持って仕事に取り組むことの重要性に加えて、SDGsに代わる「MNA」を提唱しました。

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「わくわく」する気持ちが、問題解決につながる

朝山あつこ氏(以下、朝山):私、世の中はわくわくから始まると、幸せな社会が生まれるんじゃないかと思っていまして。実は社会の課題って、ここにあるんじゃないかと思うんですよ。うちの子どもたちの学校の問題から、私はこのNPOを始めているんです。

わくわくする思いを持った人がたくさん育って、みんながわくわくしてくれたら、一歩を踏み出すじゃないですか。今だと「これダメ、あれダメ、こうあるべき」「君はこうしちゃいけない」みたいに、枠の中にはめ込まれている感じがして。

その枠の中にはめ込もうとすると、「学校に行くの嫌だ」「おもしろくない」という話が出てくる。「わくわくする思いを持った主体的な人を育む」というのが、実はすべての社会課題の根底にあるんじゃないかと思っています。

この問題を解決するソリューションのプログラムを、うちは開発してやっています。昨日今日と解いてくださっている方々が、全国でお話をしています。あとで子どもたちも話してくれるんですけど。

わくわくエンジンだろうと、一人ひとりが必ずダイヤモンドの原石のようなものを持っているわけです。それを引き出して自覚することが大事だろうなと。これがわかると、「一歩を踏み出そう」という気になるわけですよ。「わくわくするから、やってみようかな?」「動き出せずにはいられない」、そうすると地域に目が向く。

なにかと出会う、人と出会う、気付くことがある。解決したいものやことに出会うことが起きるんじゃないかと思うわけですよ、実際に起きているんですけど。その時に初めて、自分と地域がこうやってつながる。

「失敗するのが怖い」という、悪循環の断ち切り方

朝山:「一歩を踏み出してみようかな」と思うんだけど、失敗するのが怖いから勇気がない。人と違うことをやるのも怖いし、ダメだと言われるし。「そんなバカなことやってる前に勉強しなさい」と言われるし、「あなたこの間のテスト、偏差値どうだったのよ」みたいな話になっちゃう。そうするとやる気がなくなっちゃうという悪循環になる。

そこで重要なのは、わくわくして動き出したくなる気持ちを応援する、大人たちの姿が必要だと思うんですよ。ある1人の子どもの周りには、この子を応援してくれる大人たちが何人かでもいてくれたら、その子は勇気が出てくる。そうすると、そこにはコミュニティが必要で。

サポートをしたり応援する人たちがいるということなんですね。それが今回は、学校の先生だったり、地域の大人だったり、NPOだったり、児童センターだったりするんですが、そのコミュニティがたくさんあるわけなんですよ。

そうなった時に一歩を踏み出して、「あ、これをやってみたらこうなった」という。町の課題が解決に向かって、その子もその周りの人も街もみんな元気になる。そうすると、これは志に昇華していく。つまり、結果としてSDGsの17のゴールに当てはまるんじゃないかと。

17のゴールってすごく素晴らしいことだと思っているんですが、企業の人も「これ、SDGsやらなあかんやろ」みたいな感じで、“やらされ感”でやっていたりとかして。「どうしたらいいんだ」とおっしゃるんですよ。

それよりも、中から湧き出てくることを、みんなが一人ひとり主体的にやったら、結果としていい社会って作られていくんじゃないの、というのが問題提起です。こんなのどうですかね?

山口周氏(以下、山口):まったく同意ですね。

朝山:本当? やった。

SDGsを超えて、これからの時代は「MNA」?

山口周氏(以下、山口):SDGs、あれどうなっちゃうんでしょうね(笑)。

朝山あつこ氏(以下、朝山):教科書にも出てくるんですよ。

山口:僕はこの間まで、SDGsって言葉をよく知らなくて。「Sustainable Development Goals」なんだっけ、あれ。

朝山:そうだと思います。

山口:「growth」なのかなと思っていて、「まだ『成長』と言うのか。SDGsも大変だな」と思っていたら、「いやいや、違いますよ」って。この対談をした時に、「SDGs、SDGs」と言うから「growthって、何の成長なんですか?」と言ったら、「成長じゃなくて、ゴールなんです」と言われました。「あぁ、そうなの。でも大して変わらないよな」とか思いながら。

朝山:うちもSDGsがどうこうは思ってないんですけど、やっぱり教科書にも出てきて、子どもたちが動き出す。企業も「SDGsをやりたいんですけど、どうしたらいいですか」とご相談される。これは、取って付けたように言ってるんですけどね(笑)。

山口:僕は最近、MNAと言っているんですよ。SDGsを超えて、MNAだという。

朝山:どういうことですか?

山口:SDGsとかCSRとか……いろいろありますよね。もうこれで終わり、究極のMNAなんですよ。

朝山:MNA?

山口:MNA。

朝山:ANAじゃないですよね(笑)。

山口:これね、「もうなんでもあり」という(笑)。

(会場笑)

朝山:なんでもあり(笑)。

山口:「もう(M)なんでも(N)あり(A)」。そんなのはもう、3文字にして言ってりゃあいいんだよ(笑)。SDGsを超える新しい指標はMNAだということを広げようと思っているんです。

朝山:どういうことですか?

山口:だから「もうなんでもあり」ですよ。

朝山:なんでもあり⁉

(会場笑)

山口:「もうなんでもあり」。

朝山:私たちね、「ごちゃまぜ力の時代だ」と言ってるんですよ。金沢におもしろい施設を作っている館長さんがいらっしゃって、「これからはごちゃまぜ力」とおっしゃったんですよ。これ、同じですよね。

山口:もうMNAですね。同じ同じ。

朝山:おじいちゃんもおばあちゃんも障害のある人も、みんな。私たちも障害があると思うんですよ。その人たちがごちゃまぜになって、なんでもありだという。

山口:そう。もうMNAのやつ。

(会場笑)

ここ20年間で増え続ける“3文字言葉”

山口:そうそう。僕は経営コンサルタントだったんですが、もうここ20年ぐらいの間に、この“3文字言葉”って40個ぐらいあるんですよ(笑)。

(会場笑)

山口:BPRとかCSRとかSDGsもそうだし。不思議なのはね、これ全部が3文字なんですよ。4文字もないし、2文字もあまりない。

朝山:語呂がいいからですかね。

山口:なんででしょうね。やっぱり長嶋茂雄的に「3」がいいんだと思うんですよね。

朝山:そっか、擬音じゃダメですか?「ぶわーっといく」「ぐいーんといく」とか(笑)。

山口:それだったら、BTIとかね。

朝山:BTI?(笑)。

山口:「ぶわーっ(B)と(T)いく(I)」。

(会場笑)

朝山:「ぶわーっといく」系です、私(笑)。

山口:そうそう。だから、「ここのポイントはBTIです」とか言うと、「え、それ何ですか?」ってなる。知らないとみんなビビるので。

朝山:BTI、意味わかんないですね(笑)。

山口:「BTIですよ。あなた、BTI知らないんですか?」とか。

朝山:そうか。

山口:「調べてください」って言ったってね。

朝山:出るわけないね(笑)。

(会場笑)

山口:出てこないので、「BTIって言われたんだけどさ」みたいに焦るわけですよ。

朝山:そうかぁ。相手をそうやって飲み込むか。

山口:そうなんですよ。

“一緒に仕事をやりにくい人”の特徴

朝山:さっきもおっしゃってましたけど、「それ、論理的に説明してください」「データはあるんですか?」「うちの企業のメリットになるんですか?」みたいなことを20年前ぐらいはすごく言われたんですよ。

「ぶわーっといく」系はね、「いや、あなたCSRの担当でしょ」と言い返すんですね。「CSRの担当なら、うち(NPO)が社会課題としてやっていることを見て、使えると思ったら自分たちがどう活用するかを考えられたらいいじゃないですか」「それ(自社にとっての使い方)をこっち(NPO)に求められても、こっちが考えることですか?」みたいに反論したことがあります(笑)。

山口:わかります。オーナーシップがぜんぜんない。仕事が自分ごと化してないわけですよね。

朝山:そうなんです。

山口:常に外発的で、「上司が言ってるから」「社長が言ってるから」とか言ってね。だから僕は、コンサルティングの仕事を長らくやって、本当にいろんな方と一緒にお仕事をさせていただきましたけれども、やっぱり一番仕事がやりにくいのが「自分がない人」。

朝山:そうですよね。

山口:「何したいの?」と聞いて答えがない人は、本当に仕事がやりにくいんです。「専務がこう言ってて」「僕もよくわからないんですけど」とか言って。でもこれ、もうぶすぶすと煙の匂いがするわけですよ。

朝山:煙の匂い(笑)。

山口:本当に僕は、そういう嗅覚がすごくいいので。「専務がこう言っていて」とか、それこそSDGsとか、流行りのキーワードがいっぱい出てくるんですね。

朝山:そうそう、そういうのを言ってくるんですよ。

山口:「この人、いったい何がやりたいのかな」と思って。大きな会社で予算が付いていたりするんですけど、「うちのコンサルティング会社が受けることになりました。山口さん、マネージャーをやってもらえませんか?」と言われると、そうっと逃げるんですよ。

朝山:あはは(笑)。「なんか怪しい感じになるぞ」みたいなね。

山口:自分ごと化していない人のプロジェクトって、だいたい炎上しちゃうので。

朝山:わかる。

山口:社長はこう言ってるし、専務はこう言ってるし、さらに会長が新しく出てきて。空中分解して、もうキングギドラみたいになるんですよ。

(会場笑)

朝山:あはは(笑)。

山口:みんなで違う方向にビャーって火を噴いていて。そのキングギドラにやられて、チームが徹夜とかしているわけですよ。(オフィスの)中を見て、そおっと……。

朝山:こうなるともう、カオスになってきて(笑)。

山口:「うわ、危なかったー!」って(笑)。それでしばらく経つと、そのチームの人たちがだいたいみなさん「お世話になりました」と言って、もう嫌になっちゃっていなくなっちゃう。

主体性を持って取り組める仕事が、やりがいや成果を生む

朝山:じゃあ、プロジェクトも成功しない?

山口:プロジェクトも空中分解で、本人も「こんな仕事辛くてやってられない」という。だから自分もそうだし、自分ごと化して動く人のそばにいたほうが、絶対物事って動くし仕事も楽しいし、結果的には成果も出ます。わくわくエンジンを持っている人、僕もやっぱり何度か「いいプロジェクトをやったな」という経験があるんですけれども。

必ず対面には、「こうしたい」というのを自分ですごくはっきり持っている人がいて、何を出してもその人が自分でちゃんと判断をする。その方向がはっきりしているので、こっち側も判断ができる。

だからそういう関係性ができると、物事はすごく前に進むし仕事は楽しいし、結果的には大きな成果が出るし、その人も出世する。こういうわくわくエンジンの話をすると、世の中からどんどん外れて、「『仙人みたいに生きろ』みたいなことを言っているのかな?」と思われるフシもあると思うんですけど、真逆で。

今、世の中のセンターで活躍している人ほど、実は世の中のある種の制約やしがらみみたいなものも、一応はうまくあしらいながら。

朝山:あしらいながらね(笑)。

山口:わくわくエンジンを持ってやっている、という感じがしますよね。

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