2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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植松努氏(以下、植松):僕は、人の自信と可能性を奪ってしまう「どうせ無理」をなくしたいと思っていたので、誰もが無理だと思い込まされる、宇宙の仕事をやってやろうと思ったんです。そして僕たちは今、会社に来てもらったり出かけたりして、いろんな人に小さいロケットを作ってもらうこともやっています。
「ほらね、大人が『できるわけない』と思ってることが、できちゃったでしょう。だからどんな夢も諦めなくていいんだよ」と言うためのロケットなんですが、小さいけど仕組みは本物です。電気信号を送るとものすごい火を噴き出して、0.3秒で時速200キロを突破します。宇宙空間で使うこともできる本物の実験装置を、1人1個作ってもらうんです。
このロケット教室を始めた一番最初のきっかけは、うちの娘の学校のクラスでした。娘が3年生の時にクラスが学級崩壊してしまって、毎日毎日いじめが起きるんです。しかも、先週いじめていた人が今週はいじめられていたりと、とても陰湿ないじめがぐるぐるしてるんです。「なにが起きているんだろう」と思いました。
「自信をなくしてしまった人が、自分以下を作ろうとしてるんじゃないかな」と僕は考えたので、学校の先生に「ちょっとロケットを作らせてみてほしいんだけど」とお願いしたんです。そしたら先生に、「このクラスの子たちはとても能力が低いので、そんなものは絶対できるわけがありません」と言われて、「いやあの、うちの娘いるんですけど……」と思いました(笑)。
植松:学校に行って作り始めたら、「〇〇しなさい」「〇〇するんじゃない」と先生が仕切るので、「先生、ちょっとやめて」と話をしました。その先生はどうやら年齢がまだ若くて、一生懸命やろうとしたんだと思うんですが、それがいきすぎたんだと思います。ものすごく支配をしてしまっていたから、子どもたちは考えることをやめてしまったんだと思うんです。
だから僕は、今と同じように「好きに作っていいよ」と言ったんです。「どんな失敗をしても必ず助けるし、予備部品をいっぱい持ってきているから、大丈夫」って。そうしたら、子どもたちはロケットを作りました。
でも飛ばす時は「うまくいくわけない」と言ってるんですね。「どうせ飛ぶわけないんだ」と言いながらボタンを押したら、ロケットが飛んで、パラシュートが開いたんです。「なんで開くのよ」と言いながら、その子はうれしそうに走って取りに行きました。
そしたら、クラスのいじめも学級崩壊も収まったんです。その代わりに、その子たちがうちに遊びに来るようになりました。よかったなと思います。
どうもこのロケットには、人のちっちゃい自信を増やしてくれる機能があるんじゃないかと思います。自分で作ったからこそ、飛ばした時には「あんなに飛ぶんだ」って。「自分のは大丈夫かな」「だめかもしれない」とすごく心配になっても、飛ぶんです。そこにきっと、すてきなちっちゃな自信があふれるんじゃないかなと思います。
植松:このロケットは、いつか機会があったらみなさんにもぜひ作ってほしいと思います。でも実は、このロケットには若干問題があって。Amazonで買えるんですが、すごく高くて、おまけに飛びすぎるんです。100メートルぐらい上がっちゃうから、打ち上げ場所には100メートル四方が必要なんですが、そんな場所なかなかないですよね。「高い」と「飛びすぎ」が問題なんですよ。
「飛ばなくして安くすればいい」ということで作ってみたのが、全部紙でできてるペーパークラフトのロケットです。飛んで、パラシュートが開いてゆっくり戻ってきます。このロケットを作ったのは、本州のグラウンドが狭い所でも、学校で使えたらいいなと思ったからです。
それを見つけてくれたのが、滋賀県の「くさつ未来プロジェクト」のみなさんです。この人たちの本当の仕事は子育て支援活動なんですが、たったの3年間で1,000機のロケットを打ち上げてしまいました。くさつ未来プロジェクトのみなさんが助けてくれたおかげで、今では日本のあちこちでロケットをやってくれる人が増えています。
去年は、東京の麹町中学校でもロケットを無事に飛ばすことができました。麹町中学校はすぐそばが皇居や国会議事堂で、めちゃめちゃやりにくい場所なんですが(笑)、先生のおかげもあって無事にロケット打ち上げて、回収することもできました。
植松:日本のあちこちでロケットをやってくれる人が増えてきたら、今度は部品がたくさん必要になっちゃったんです。部品を作るのが本当に大変で、僕だけでは作れなくなりました。だから札幌に、就労継続支援A型作業所の「UniZone」を作ったんです。
この作業所は、通常であれば知的障がいや身体障がいの人たちが働くことをサポートする場所だったんですが、最近は学習障がいと言われる子たちが増えています。こういった子たちが、小学校や中学校で特別支援を受けるのは素晴らしいことだと思っているんです。でも、高校は特別な高校になります。そこから先の就職があんまりないので、もったいないなと思うんです。
だから僕は、そういう特別な高校を卒業した子たちに、コンピューターのデザインなどの特殊な技能を持ってもらって、稼げる仕事ができる作業所にしたいなと思ったんです。今、「UniZone」の人たちが一生懸命がんばって部品を作ってくれています。北海道のロケット打ち上げにも助けに来てくれるようになりました。本当にありがたいです。
僕には夢があって、「人の自信と可能性が奪われない社会」を作りたいんです。もっと優しい社会を作りたいから、僕は僕なりにがんばっているつもりなんです。でもね、僕の力が足りなくてぜんぜんなくならないので、今日もひどい目にあってる人がきっといます。だから僕は仲間がほしいので、みなさんが仲間になってくれたらうれしいです。
みなさんが「どうせ無理」という言葉に出会っちゃった時に、心の中だけでいいから「だったらこうしてみたら?」と考えてくれたら、たったこれだけで「どうせ無理」に負けない、“鋼のハートの人”になるんです。そうしたら、みなさんの周りからいじめや暴力が知らない間に消えていきます。できる時だけで構わないので、仲間になってくれたらうれしいなと思います。
植松:今、子どもたちは学校で、自分の将来のことをいっぱい考えさせられます。その時に、ちょっと覚えていてほしい考え方があるんです。「医者になりたい」と思うことは素晴らしい夢ですが、それを誰かにしゃべった途端に「すごくお金がかかるよ」「よっぽど頭良くないと無理だよ」と言われて、諦めさせられるかもしれません。
でもその時、「医者になりたいのは、いったいなぜなんだろう」と考えてほしいんです。「人の命を助けたい」だとしたら、医者が使ってる道具は医者が作ってるわけじゃないけど、大勢を助けている。
ドクターヘリも消防車も救急車も、たくさんの命を助けている。こういった乗り物がいつでも出動できるように、スタンバイしている整備の人も、すごい仕事をしている。そしてAEDも、いろんなところで人の命を助けている。健康に良い料理を考えても助かる命があるし、勇気が湧くような漫画を描いても、助かる命があるんです。
「医者になりたい」と思ったら道が1本しかないけれど、「人の命を助けたい」と思ったら、道が無限にあるんです。つまり諦めなくていいってことだから、「〇〇になりたいな」と思ったら、「なぜだろう?」と考えたらいいんです。
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