
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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早田吉伸氏(以下、早田):ではさっそく始めていきたいと思います。まず、藤野さんにお話をうかがっていこうと思っているんですけれども。今日の対談は、「これからの時代を生き抜く人材」と、ちょっと大きなタイトルなんですけれども。藤野さんの観点をお伺いするところからスタートしたいと思います。
藤野英人氏(以下、藤野):そうですね。本当はみなさんにリアルな対談で見ていただきたかったんですけれども。今まさに、この新型コロナウイルスの蔓延によって、オンラインでの開催になっています。でも、このこと自体がある面で見ると、すごく大きなメッセージや意味があるんじゃないかなと思っています。
この新型コロナウイルスという新しいイベント、イベントというのは新しい出来事のことを言うんですけれども。それによって今、世界経済や世界の在り方が大きく揺らいでいるわけですね。日本もそれで右往左往していることになります。
感染者数も収まらないし、高校生のみなさんもしばらくの間、在宅での学習を余儀なくされたということがあります。でもこれは、この話も後でさらに深く考えていきたいんですけれども、若い人にとっては、ものすごくチャンスなんですね。
この新型コロナウイルスの感染症がこの規模で広がったのは、約100年前のスペイン風邪の時以来です。だから、どんなに年を取っている人も、私たちがほとんど経験したことのないことが起きているということです。
社会ではいろいろなことが起きます。それは経済が良くなったり悪くなったりということもありますし、新しいテクノロジーが出てその影響があったり、もしくは戦争があったりもするんですけれども。昔の人はだいたい、そうした経験をしているんです。でも今回は、誰も経験していないということです。これは先生であったり、お父さんやおじいさん、おばあさんも経験したことがないことが起きているということなんです。
これは一重に、若者の時代ではないかなと思うんです。若者というのは、先が長くて未来があって、そしてたくさんのトライアンドエラーができるという特権があります。
今この新型コロナウイルスが広がったという中で、誰も経験したことがないというところですから、若い人もベテランの人もまったく同じ環境なんですね。そういう面で見れば、若い人がけっこうチャンスをものにすることができるかもしれない。新しい考え方、新しい時代に対応できるかもしれないと思っています。
藤野:この叡啓大学はこれから来年にできる予定の大学なんですけれども、私たちは非常に溌剌(はつらつ)とした気持ちになっています。それはなぜかと言うと、このような混迷の環境なんですけれども、新しいことへ船出することは本当にワクワクします。
大学が新しくできることは、そんなに滅多にないんですよね。その新しい大学も、今度ソーシャルシステムデザインという学部ができて、先見性・戦略性・実行力・自己研鑽力・グローバルコラボレーションといったことを旗頭に、これからスタートするんですけれども。特に、とても大事なことは自己研鑽力だと思っています。
私はファンドマネージャーという仕事をしています。ファンドマネージャーの仕事は、お客様のお金をお預かりして、株式や債券や不動産等々に運用して、そのお金を増やすという仕事なんです。私の運用資産は投資信託という、お預かりしたお金を集めている1つの箱なんですけれども。
この1つの投資信託の中で、日本株のアクティブファンドとしてアジアで最大級のお金を運用しているのが私なんですね。だいたい7,000億円から8,000億円ぐらいのお金を運用しています。
それでたくさんの経営者に会って、「この経営者は素晴らしい」「この会社は大きく伸びるな」というところを見定めて、「じゃあこの会社に投資をしよう」「この会社は投資するのをやめよう」ということをしています。
その経験を駆使してみると、やっぱり伸びている会社は新しい挑戦をしているのと、挑戦を怠らないというところがあります。今、私たちも新しい大学を作ろうとしています。新しいことを始めていくことは素晴らしいことですが、その中で特に私が伝えたいことは何かというと、やっぱり自分で学ぶ力ということです。それがこれからすごく大事だと思うんです。
なぜならば、新しいモデルがない。とくに日本だと成功モデルがなかなか見出せない時には、やっぱり自分たちで学ぶことがとても大切になってくると思います。なので、私たちはみなさんに対して、もちろんいろんな方法論など教えられることはいっぱいあるんですけれども、何か新しいことに挑戦する楽しみであったり、そのワクワク感を伝えることができるんじゃないかなと思っています。
他にもたくさん伝えたいことがあるんですけれども、一度このぐらいで切って、有信先生にバトンタッチしようと思います。
早田:藤野さん、ありがとうございます。藤野さんから今、トライアンドエラーだったり、それに向けての学ぶ力であったり、特に自己研鑽が今回のポイントだとご指摘をいただきました。有信さん、それを受けてどうお考えですか? もちろん有信さんなりのご示唆もいただきたいと思うんですけれども、合わせて「これからの社会を生き抜く人材」についてコメントいただければと思います。
有信睦弘氏(以下、有信):今、藤野さんからすごく重要な話をしていただいたと思っています。中でも「未経験の時代に遭遇している」というご指摘。これももちろんその通りなんですけれども。実はコロナがなくても、私たちは経済環境、さまざまな日本国内における環境でも、未経験の事態に遭遇していたわけですね。
ところが、藤野さんのご指摘の中に含まれていましたけれども、今までの人たちは、過去の成功体験を持っていました。とくに日本では、もう戦後70年を過ぎていますけれども、戦争直後の非常に悲惨な状態から、世界で第2位の経済大国にまでなってきた。
その中で、経済発展だのあるいは教育についても、優秀な人材を次々に生み出してきて、さまざまな成功体験を蓄積してきたわけですね。大企業もその成功体験の中で、さまざまな苦難に接した時も、それなりに自分たちの過去の成功体験を踏まえつつなんとか対応してきた。
だけど、今はもうその成功体験がまったく役に立たない。こういう時期に来ていると私は思っています。これは藤野さんが未経験をチャンスとおっしゃったのとまったく同感なんですけれども。今のようなまったく経験のない事態に直面した時、やっぱり過去の成功体験が、次々と打ち消されて。
昔から「柳の下にドジョウは2匹いない」と言われてきています(笑)。藤野さんも投資をされていると、そういう事態はしょっちゅうあると思うんですけれども。これがやはり素晴らしい成功体験を持った人たちが今の社会のリーダー層になって、今までの日本社会を引っ張ってきているんだけれども、先がまったく見えない。
今まで経験したことがないことに直面したときに、どれだけの想像力が発揮できて、新しい事態に対応できるんだろうか。そういう時に、私たちが育てようとしている新しい学生たちは、そういう社会の中でコンピテンシーを身につけた人たちになってほしい。そういう思いでさまざまな準備をしています。もちろんこれはまったく新しい試みなので、おそらくさまざまな困難はあると思いますけれども。
藤野さんがおっしゃったような自己研鑽力を持って、要するに今まで教わったとおりのやり方でキャンバスに絵を描くのではなくて、本当に自分の力でものを見て、こうあって欲しい社会の絵をキャンバスに描いて、それを実現するために一体何が必要かを、また学問の世界に戻って考えつつ、さまざまな知識やスキルを身につけて世の中に出ていく。そこで新しい必要性を感じたら、また大学に戻ってもいいし、新しい道に飛び込んでもいい。そういったことができる人たちを育てていきたいと思っています。
藤野さんのお話を聞いて、非常に触発されるところがあったんですけれども、やっぱり私たちの想いと同じ想いを持っていただいているんだなぁということを実感しました。私の感想のようなものですけれども。とりあえずこんなところで。
早田:ありがとうございます。藤野さんのお話にかぶせていただいて、かなり共通のお話をしていただいたのだなと思います。特に、過去の成功体験が役に立たないというか、場合によってはしがらみにさえなるような時に、若い人たちにとって大きなチャンスでもあるし、そのためにはやっぱり新しい絵を描いていかなければいけない、というお話をしていただけたと思いますけれども。
そうなったときに、大学の教育はどうあるべきなのか。先ほど有信さんからは実践と修得の繰り返しの観点のご指摘もあったと思うんですけれども。この大学の教育のあるべき姿について、もうちょっと詳しく具体的に、もしくはどこかにフォーカスをしてお話をいただければと思います。
有信:教育基本法にも書いてありますけれども、大学というのは、要するに高い教養と専門的な知識を身につけさせると。ただし、それは研究によって成し遂げられると書いてあります。
したがって、高い教養と言うと、今までは基本的に専門的知識が体系化されて知識として教授されるということで、完全に完成したかたちで大学では教えられてきている。教える側は、確かに系統的な知識があると信じて教えているところがあるわけですね。
ところが、学ぶ側からしてみるとそこで教わった知識が一体なんの役に立つのか、という言い方はちょっとまずいんですけれど(笑)。つまり、そこで身につけた知識が社会の中でどう活きるか。
昔、曽野綾子さんという作家がいて、中教審の委員になった時に、「私が教わった数学で役に立っているものはなにもない」と。「二次方程式の解法なんて使ったことがない」とおっしゃって、だいぶ顰蹙(ひんしゅく)を買ったことがありますけれども。現実には、そういう感想を与えるような教育がなされてきたのではないかと非常に心配しています。
有信:もちろん大学の中では先生方がさまざまな努力や工夫をされていて、私たちが今、取り組もうとしているような、さまざまな実験的な試みをされていることはよく存じています。しかし「自分たちが直面した課題、あるいは問題に対して、本当に役に立つかたちで知識が身についているのだろうか?」というのが一番の疑問です。
私も本当に驚いた経験があるわけですけれども、非常に有名な大学の博士課程を修了して入ってきた人がいて、ものすごく知識が豊富なわけです。それで実験装置の設計を頼んだんですけれども、その設計の中に、本人が持っているものすごい知識がまったく活かされないんですね。そのパスがまったくできていないことに気がついて、愕然としたことがあります。
つまり知識は知識として蓄積され、その知識はいわば試験で正しい答えを出すことにだけ使われていて、自分が取り組むべき課題に対してどう使えばいいのかが決められたかたちでしか使えない。決められないかたちに対して、知識は使えるようになっていないんです。これは大変な問題ではないかとずっと思いつつ、今まで来たわけで。
これをなんとかしたい。そういう意味では、学問というのは非常に体系的にできあがっている部分もあって。これを一から順番に教えなければ知識が身につかない、とみんなが信じているんだけど。これはある種の定型的な問題を解くためにそうなっているんだけど、知識の全貌や学問の全体像を掴むという意味ではまったく必要がない場合もあるわけですね。
有信:例えば、これも例としてはあまり適切ではないかもしれないですけれども、数学のような学問は基礎からやっていくとこんなにしんどい学問はないわけです。だけど、これがある段階を突破して、あるレベルに達すると、一気にものすごく見通しが良くなるレイヤーがあるんですね。
だから逆に、その見通しがいいレイヤーから教えて、必要なところに降りていくようにするという教育の仕方もあるはずで、そういう教育にトライしている外国の先生たちはいるわけですけれども。日本ではきちんと定まったとおりに教えなければいけないという、ある種の強迫観念があるのかどうかわかりませんが、そういうかたちで教育がやられてきているのではないかと心配しています。
ですから、私たちがこれからやろうとしている教育は、従来のように試験問題に対して正しい答えが出せるような体系だった教育にはならないかもしれないけれども、必要な時にその学問分野のどの扉を開けばいいのか、それがわかるような教育をしたいと思っています。こんな感じでいいのかな?(笑)。
早田:ありがとうございます。高校生の方々にはちょっと難しい表現もあったかとは思うんですけれども。知識の体系をどういうふうに捉えるか、その捉え方はいろいろあるよということをおっしゃっていて。従来とは違ったやり方でも身につけられることや、それをどうやって実践に繋げていくかということも重要だよ、というご指摘をされたと思います。
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