2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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安渕聖司氏(以下、安渕):ありがとうございます。これからフロアをオープンにしてQ&Aを取りたいと思います。
(会場挙手)
質問者1:すごくおもしろい話だったんですが、私の問題意識はいろんな教育の中身を、どうやって教育の現場に落としていくかをお聞きしたいです。私は2年前に山梨学院大学という大学に、ぜんぜん違う業界から転職してきたんですけれども、現場を見ると、私が大学に通っていた30年前と本質的になんにも変わってないんですよ。
そういうところに「新しいことに変化するべき」と持っていっても、対応できるのか。全国に大学生は200万人いるけれど、新しいものをどういうふうに現場に落としていくのか? というところを教えてください。
安渕:ありがとうございます。
質問者2:本日はお話ありがとうございました。高濱さんに質問です。本日は「不易と流行」というテーマだったので、流行を取り入れていくうえでも、変えるために捨てるものを選ぶうえでも、やっぱり本質が大事かなと思って。
さっきの教育の機会費用がどんどん上がっていくので、どれに投資していくかっていう意味でも、本質を見抜く力が大事かなと思っています。もう大人になってしまった段階の我々は、これから本質を見抜いていく力をもっと身につけるために、どういうことをやったらいいのか、ご意見があったらお願いいたします。
質問者3:ありがとうございます。質問としては変化が早くて激しい、かつ未来が不確実な中、教育制度を早く確実に正しい方向に導くために何ができるのか。
意図としては、教育制度の良し悪しって20年とか40年くらい経たないとわからない、PDCAがすごく遅いものだと思うんですね。ただ一方で世の中の変化は早いと。また全員に同じ教育制度を導入されるので、基本的にはもしもその教育制度が失敗したら、すごく国にとっての打撃がでかいと。
僕は、人しか資源がない日本の教育においては、ミスはしてはいけないと思っているんですね。そこでスピードと正しい方向性を担保するためにどういうことができるのか。
例えば、バカみたいなアイデアなんですけど、個人番号奇数にはこういう教育制度、偶数にはこういう教育制度を適用する。ネット業界ではよくA/Bテストを実施しますが、例えば、そういう大胆なことをやってみるだとか、アイデアや構想などがあればお伺いしたいなと思います。
安渕:ありがとうございます。
質問者4:食品企業で人材育成の仕事をしています。大人への教育があまり意味がないという話をいただいて、ちょっと愕然としているんですけれども。
私は、個人として生き生きと活躍するような大人をどんどん増やしていきたいと思っています。質問は、社会人になってからの教育のような部分で、主体性を発揮するとか、こういう力を養う教育をしたらいいのにといったものがあれば教えていただければと思います。よろしくお願いします。
安渕:社会人教育ですね。ありがとうございます。
質問者5:キャリアにとって何が大切かという課題に関して、教育現場で今問われているインターンシップについておうかがいしたいです。
あともう1点。今は不登校生が中高生・大学生ともに大変多い。チームプレーより個性を活かすための教育についてのヒントをいただければ、ありがたいと思います。以上です。
安渕:教育の中身を現場にどう戻していくかとか。それから高濱さんに質問がありました。本質の見抜き方。それから変化の激しい時代に、教育を確実に正しい方向にどうやって導いていくのか。
それから社会人教育。生き生きとした大人を作りたいと。キャリアにとって何が大切かの観点からインターンシップ。それから不登校生ですね。個性をどう見るか。そういったところについて、どなたでも。
高濱正伸氏(以下、高濱):僕、先にいいですか? あの、いいところで止めてください。
(会場笑)
パパッと言っていくと、本質の見抜き方は、小さいころから「あの山の奥に何があるかな?」とか、見えないものをありありと見抜くことの繰り返しからスタートしていて。
例えば、お父さんがこう言ってるけど、実はこういうことが言いたいんだな、みたいなこととかですね。見えないものにアンテナを研ぎ澄ました経験から来るんですね。今できることとして、例えば読書。読書はけっこう効果があります。
G1絡みでボクシングの村田諒太さんとお話するようになったときに象徴的ないい話をされていました。何かというと、ジャングルジムに子どもを連れて行ったんだと。
それで「あれは右、左、右、左って同じこと繰り返すだけなのに子どもはある高さで萎縮するんですよね~。おもしろいっすよね~」って彼は言うわけ。どういうことかというと、彼は「人間は筋肉でできることと、心でできることがある」と、子どものジャングルジムを見てずっと言うわけですよ。
これが典型的な本質を見る力ですよね。99パーセントの人は子どもをジャングルジムに連れて行ったら、「楽しく遊んでたよ」って言うわけ。これはステレオタイプ。表面しか見てないというのはこういうことで。
彼がすばらしいのは、同じ日常的な光景に対して全部そういうことを言うんですよ。「こういうことしたんですけど、こういうことはないですか」みたいな。
この話で一番言いたいのは、彼のお父さんのこと。話をしている間、ピーンピーンってスマホに通知が来るんですよ。村田さんも「また来た」とか言って。
それ、お父さんが読んだ本の感想文なんです。お父さんが超のつく読書家だそうで、30過ぎた息子に「すっごくいい本を見つけちゃった」って連絡がひっきりなしにやってくるんです。2時間で2回くらい来るんですよ!
(会場笑)
本を読むと、書き手の言いたいことや要点、自分の中の反論。それらから導き出されるポイントだったりが、自分の中に湧き上がってきます。つまり、そういうものをギュッと絞っては書くことをお父さんが当たり前のこととしてやっている。そして、息子にとってはそれが言語教育になっているんですよね。
社会人はどうなるかという答えですが、私たちが把握し実践していることを教えます。どんな子が来ても、お父さん、お母さんの前で輝く社会人に育てなければいけないので、1回の授業に対する日報を厳しく指導しています。ありきたりなことを書いたら、「お前、これ普通じゃん」と指摘する。
あと、知ったかぶりなことを書いたら、「それは人がすごくいやな気持ちになるんだぞ」とかも教えます。何を見てきたかを言語化する訓練をしっかり取り組んでみたら、ある程度、拡大基調に乗ったという実績はあるので、それが1つヒントになるかなと。これくらいにしときます。
安渕:ありがとうございます。ほかの質問いかがでしょうか?
中室牧子氏(以下、中室):教育制度のPDCAの質問に1分くらいでお答えさせていただきます。きちっとデータを蓄積することが鍵になると思っています。日本の教育データは、実は同じ個人をずっと追跡していくというデータの取り方をしてきていません。なので、結局振り返ってみても、どういう教育が功を奏したのかについては、ほとんどなにもわかっていないんですね。
遅きに失した感はあるんですけど、たとえこれからでも、ちゃんと同一個人を追跡していくデータを取って、それがうまくいったかどうかを検証して、そしてそれを次のステップの判断の根拠にしていくことは、きわめて重要なことだと思います。
私はA/Bテストみたいなやり方は、これから先ちゃんとやっていかなきゃいけないと思うんですけど、この国は先進国で、しかも人口も1億人を超えていますので、さすがに日本を2つに分けて、こっちは学習指導要領Aを、こちらはBをというやり方はあまり現実的ではありません。
なので、構造改革特区のようにある小さいエリアの中で、例えば、徹底的にプログラミング教育をやるという学校群と、徹底的にアートの教育をやる群と、徹底的に伝統的な数学の教育をやる群で、その人たちに将来どういう差がついたのかを見てもいいんじゃないかなと思うんですよね。
実験台にされるということに対して、みなさんが非常に抵抗を持たれるのはよくわかります。でも実験をやらないと、新しい発見もなく、未来に対してどうやって投資をしていったらいいかは、いつまで経ってもわからないままです。
ですので、未来に向けて新しい一歩を正しく踏み出していこうと本当に思うのであれば、私は教育の分野で実験は避けて通れないのではないか、と思っています。
安渕:ありがとうございます。あと残りの質問に対して。じゃあ、福武さん。
福武:僕も1分で。今の中室先生の話と逆の立場を取ろうとすると(笑)。いきいき生きるというときに、きれいなデータを取ったり、ファクトを集めたりすることによって、自分がいきいき生きられるかというと、たぶん別の話になると思うので。そこに関してお話を。
僕はある程度情報を断つというのも、1つの要素としてはあるのかなと思っていて。僕には、「nendo」というデザイン事務所をやっている佐藤オオキさんというデザイナーの友人がいます。
彼の事務所では、400くらいプロジェクトをバーっと並行して走らせているんですが、彼は「だいたい最初のミーティングでほぼやることは決まってます。それ以上に情報をいくらインプットしてもアウトプットのクオリティは変わってこなくなるから」と言うんです。
それはなかなかおもしろい発想だなと。インプットとアウトプットがきれいに正比例するかというと、そうじゃない要素もあるので。どう生きたいかに関しては、ある程度パッと基本的な情報が入ったら断絶をして、自分が主体的に考えていくことが大事なのかなと思います。以上です。
安渕:ありがとうございます。
水野雄介氏(以下、水野):じゃあ、教育現場にどう落とすかと、不登校という質問に対して。教育現場にどう落とすかのところでいくと、"Learning Experience”という言葉を大事にしています。スマホがなぜ普及したかというと、結局は便利だからなんですよ。みんながガラケーからスマホに変えたのってそうじゃないですか。
今の教育現場に入っていくものって、全部教師の仕事を増やすものなんですよね。それって簡単に言うと、提供者側のエクスペリエンスが悪いからなんです。まだまだサービスの質が悪いんですよね。
だから逆に言うとめちゃめちゃチャンスなんです。そこの提供者側が増えれば増えるほど、先生の仕事が楽になれば先生は使うし、そしたら子どもたちにもっと時間が使えるようになるし。というところの提供ができるのかどうか、というポイントが1つと。
あとはお金。お金をどのようにして、もっと教育側に入れてこられるか、というのがポイントだなと思っていて。ふるさと納税みたいな仕組みを学校側の税金控除で使えるようになるといいなと思っています。結局、それをやらないと選挙の仕組みが変わらない限り、子どもにお金が流れないようになるので、それをやりたいなと。
不登校の子に関しては、僕は不登校ってぜんぜんオッケーだと思っています。みんな居場所は欲しがっているので、ちゃんとそういう仲間がいる、居場所を変えてあげることも必要。けっこう僕らのところに来る子も多くて。
僕らのところで、ゲームが好きだから作ってみたら、すごく褒めてもらえて自己肯定感が高まって、ちょっと発表してうれしくなって「学校に行けるようになりました」というお声をいただくこともすごく多いです。僕らも、やっている意味があるし、そういう少しの経験で変わる可能性もあるので、すごく応援したいなと思います。
安渕:ありがとうございます。Learning Experienceについては、水野さんのライフイズテックのオンラインのテクノロジア魔法学校という、ディズニーのコンテンツを使った大変おもしろいプログラミングを学べるサービスがあるのでご覧ください。
それから、例えば、花まるもホームページに行っていただくと、いろんなおもしろいコンテンツ、大人にも役に立つコンテンツがあります。
今日お話いただいた登場人物を検索していただくと、みなさんいろんなところでおもしろい記事を書いていたり、本を出したりしています。福武さんもけっこうおもしろい対談を中野信子さんとしています。
そういうのもぜひ参考にしていただいて、今日のお話の補足としていただければなと思います。今日はみなさん、どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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