2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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水野雄介氏(以下、水野):僕からはさっきの「非認知能力」で2つ話があります。1つは、僕は中学生・高校生を教えていて、会場には中学生・高校生になるお子さんをお持ちの方も多いと思うので、その事例を。もう1個は、ITをどう教育に活用するのか。今やっているプロジェクトの話をしたいと思います。
なんとなくですけど、人の全体の育成の8割くらいは幼児教育がやはり重要だなと思ってます。ごめんなさい。DNAとか先天的に備わっているものにプラスして幼児教育で8割くらい。
しかし、中高時代でも、もしかしたら1〜2割くらい人生を変える可能性がある事例があるんです。中高時代で一番彼らの好きなところ1つにギュッと集中した瞬間に、グッと伸びると僕は思うんですよね。自立しだすときです。だから中高生のときにやっぱり夢や目標を持てなかったら、すごくもったいないと思ってて。
夢や目標を持っているかどうかで、その子の伸び方がグッと変わったりするので、もし持っていない子がいるんだとしたら、持たせてあげたいなってすごく思います。
その中で、僕らはITのキャンプをやっているんですね。去年か一昨年に佐渡島(庸平)さんに講演に来ていただいて、漫画の編集の話をしていただいたことがありました。
先日、たまたま佐渡島さんに会ったら、「あの講演を聞いて漫画家になりたいと、うちの会社を受けに来てくれた子がいる」と聞いて、めちゃめちゃうれしかったんです。テクノロジーのキャンプに来ていながら、編集の話を聞いて、そっちに人生が向いたと。
その夢にどうテクノロジーをかけ合わせるのかはわからないけれども、もしかしたら中高時代に、そんなふうに人生が変わる瞬間が……みなさんもあったかもしれないじゃないですか。
この恩師に出会えたからとか、これをやれていたからとか、部活でこういう体験をしたからといった瞬間を作ってあげることは、すごく大事だなと思ってやっています。
ITの話では、中馬(ちゅうまん)くんという小学校6年生の子が、アレルギーのアプリ(注:食物アレルギー情報アプリ「allergy:アレジー」)を作って、「アプリ甲子園」で優勝したことがあります。
彼は卵アレルギーなんだけど、海外へ行ったときにそのことを言えなかったので、それを解決したくて、自分でアプリを作ったんですよね。それが何万ダウンロードもされて、自己肯定感も生まれてね。
彼はプログラミングを通じて海外に興味を持って、孫財団に受かって、今シンガポールで学んでいるんです。そこでグローバルに多様性の大切さを学んでいる。そういう人生の極点を作るのも1つ大事だなと思っています。
水野:あともう1つの話です。今やっていることは……例えば部活動を高3で辞めて受験の勉強をしたほうがいいのか、やり抜いたほうがいいのかは、わかっていないじゃないですか。それでさえデータで取られてないっていう。これはなんとかしたい。
これからはディープラーニングができるので、まずはいろんなデータを取って、恣意的な結果を作るんじゃなくて、実際の今の卒業生までしっかりデータを取れば、かなりいい精度のものができあがってくると考えています。今、そのプロジェクトをシナジーマーケティングの漆野さんとかリンさんとかと、取り組んでいます。
このあたりの研究が可能になると、自分が得意なものは何なのか、今何を取り組むとよいか。レコメンドをある程度得られますよね。レコメンドされたら、またそのあと自分なりの生き方を考えればいいじゃないですか。
それを教師や親御さんの勘でやっちゃってると、不幸せな子も出てしまうのをなんとか解決したいというのが今の興味あるところです。
安渕:それは中長期的な成功にどう関係しているか、ということですよね。今までは、例えば大学に入る瞬間で親は成し遂げた感で終わっていたかもしれないけど、ぜんぜんそんな話じゃないんです。そこから先は何十年を考えて、子どもが長期的に成功するためには今こうやったほうがいいですよ、みたいなことがもうちょっと言えないかと。そういうことですよね。
水野:さらに、その中長期的なゴールを何にするのか。例えば、年収が高いかどうかでもないじゃないですか。最終的なゴールをどこに置くのかというのも1つ難しいテーマかなと。今well-beingとか勉強してるのは、そのあたりが絡んでくるんじゃないかという理由もあります。
安渕:中高生でほとんど決まりだなと言うと、場内に絶望感がまたもう一度やや流れているので(笑)。
(会場笑)
安渕:今度は、大人もなにかできるんじゃないかということについて、みなさんから大人もやれよみたいな話をちょっと。
高濱正伸氏(以下、高濱):それはまあ全部話せば2時間になるんですが。
(会場笑)
簡単に言うと、みなさんがおっしゃったとおりで。例えば、高校生は非認知能力なり、やる気とか集中力は伸びるんですよ。でも、なにが阻害しているかというと、やっぱり心なんですよね。
つまり心にかけるマジックの問題です。小さいときに"自信"というマジックをかけてもらって、「俺はなんでもやれる」「やったらおもしろいよね~」みたいなことの繰り返しで生きた子は、試験を前にして「よっしゃ、やってやろうじゃねぇの!」って思える。
一方、不安をまとっていると、「え~、失敗したらどうしよう」みたいな、恐れやネガティブな感情が出てくる。やっぱり心の問題は大きくて、それをどう乗り越えるかというと、思春期でももちろん成功体験が重要です。みなさんがおっしゃっているように、これは本当に大きいです。
あとはさっきの切実な課題みたいな逆境ですよね。卵アレルギーでめっちゃ苦労したことは、本人にとって大課題だから、それがあることで乗り越える目標がはっきり見える。
つまり、苦労した人は強いってやつですよ。「お金がないから学校に行けない」という状況になったときに、そこでめちゃくちゃがんばった人は、人生の後半の部分ですごいものを獲得しているみたいなことです。
一番まずいのは生ぬるいことなんですよ。「いいよいいよ、それでも。卒業だよ~」みたいなかたちでダラーンと行かせちゃうこと。成長する課題なり、がんばる局面や適切な逆境を与えるといい。
例えば、チンパンジーで言えば、食べ物を棒で落とすことに気づく知能の子たちには、ちょうどいいくらいに下げておいてあげる。武器を作ってパーンと落とせるような知能がある子には、もっと上にしておくみたいなこと。
教育って、その後の設計の仕方が大きい課題だと思うんです。子どもたちなりに「え~無理~!」って思いながら、「あ、やれた!」みたいなことを上手に設計できるとよいですね。
今プロジェクトが注目されているのは、みんなで取り組むからですよね。簡単に言うと部活。「甲子園で優勝するためにやろうぜ」「補欠に落ちたこいつがすごく落ち込んでるから、なんとかしてあげようぜ」みたいな、全体的な目標に向かって、一緒にがんばることになるからだと思います。
やっぱり技術があったほうがいいと考えれば、「ビデオでちゃんと見ることから始めようぜ」「データ取ろうぜ、科学技術の時代じゃん」とか、だんだん主体的にやり出すんですよ。そういう意味で、とくに中高生には、プロジェクトベースの授業って、すごく価値があるなと思っています。
僕に言わせると、ハイテク杯みたいな活動が注目されている学校は、部活と変わらないなと。部活の中みたいなものにはすごく可能性を感じています。というのは人生の後半組でもやれることですね。
安渕:ちょっとQ&Aの時間が迫っていますので、ちょっと順番にサッといってみましょうか。今のような、もう少しあとになってもできることみたいな話を。
中室牧子氏(以下、中室):あとになってできること。これはなかなか難しい質問だと思いますね(笑)。あんまりエンカレッジングな話にならないかもしれないんですけど、2019年に『American Economic Review』っていう経済学のトップジャーナルに載った論文は、for-profitのinstitutionで資格取得の勉強をした大人の教育のリターンは、決して高くないという論文なんですよね。
(会場笑)
これはいったい何が言いたいかということが、非常に重要なんですけれど、大人になればなるほど、教育の投資の機会費用は高くなることは、ちゃんと覚えておいたほうがいいと私は思ったんです。
学び直しとか、あるいは人生100年と言って、大人もちゃんと学ばなきゃいけないことは間違いない。それは論をまたないんですけど、質の低い教育を受けたら、時間の無駄になると理解することはとても大事です。
ですから、今の自分のキャリアにとって何が大切で、何が大切じゃないのか。お金をかけてまでやるべきことが何なのかっていう見極めは、きわめて重要だと私は思います。
安渕:ありがとうございます。福武さん、水野さん、いかがですか?
福武英明氏:大人になったあとの希望ですか?
(会場笑)
じゃあ簡単に。冒頭に不易という話もありましたけれども、未完成なものを楽しむ心構えは大事なのかなと思います。
ゴールは何ですかとか、何を目指して生きていますかということを考えることも大変だと思いますけど、いったんセットしたら、その中にはめ込まれるという要素もあると思います。
例えば僕は今Artをやっていて、現代アートとかオークションがおもしろいと思っています。オークションは作品としては完成されているのに、そのあと人が売ろうとしたときに、どんどん価格が上がっていくんですね。
一番おもしろいのは、オークションのブックが送られてくるんです。今度こういう作品が出ますと。これくらいの予想の落札価格ですと。ただ、ぶ厚いオークションブックのうちのほとんどが、その作品に対する解釈なんですよ。
この作品はこういう解釈ですと。過去のコンテクストから照らし合わせると、こういう価値がある可能性があるとか、過去のこういうビッグネームの作品に対するオマージュですとか書いてある内容がけっこうおもしろくて。
要は作品は終わってても、解釈自体はずっとアップグレードされていくんですよね。答がない中で、ずっと生き続けていくことで、どんどん盛り上がっていく要素はあると思うので。そういう意味では、未完成なものに対して、あまり不安を持たずに楽しんで生きてほしいなっていうのと(笑)。
そういう意味では、みなさんがサグラダファミリアを楽しいって言うのは、完成してないからというのがあって。完成予想図のYouTubeがあって、あれを見ると一瞬楽しいんですけど、完成が見えちゃうと楽しくなくなっちゃうので、あんなのやんなきゃよかったのになぁと思ってます。そういう心構えはどうでしょうかと。
安渕:ここにいるみなさまも、まだまだ完成しえないということですね。水野さん、どうですか?
水野:大人になってからの教育ですよね。若宮さんという84歳でプログラミング教育を始めて、Appleのティム・クックが来てしゃべったという方がいらっしゃるんですが、その方が「クリエイティビティというのは、神様が人間だけに与えてくれた宝物ですよ」ということを言っていて。
それってすばらしい言葉だなと思っていてですね。結局、安藤百福さんもそうじゃないですか。100歳までものを作っているんですよね。だから、夢見てものを作るということをやっていれば、どんどん成長できるのかなと思ってます。
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