2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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猪熊真理子氏(以下、猪熊):みなさん、こんにちは。すごい密集度ですね。今回、この分科会は教育、とくに「教育×テクノロジー」ということで、EdTechを中心に、日本における……日本だと2020年に大きな教育改革もありますので、EdTechが地域にどれだけインパクトをもたらすのかについて、1時間くらい、お話をさせていただければと思っています。緊張しますけど(笑)。
(会場笑)
最初に、簡単に自己紹介をお願いできればと思います。では、まず佐藤さんからお願いしてもよろしいですか。
佐藤昌宏氏(以下、佐藤):みなさん、こんにちは。デジタルハリウッド大学大学院で教員をしています、佐藤と申します。今教えているのがまさにEdTechなんです。EdTechの定義は、このあとにたぶんお話するところがあるので、ちょっと割愛しますけれども、僕自身が実務家教員というカテゴリです。
デジタルハリウッド大学は、株式会社立学校(株式会社が設置した学校)で、2004年に作った一条校(学校教育法第一条にある、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・大学院・高等専門学校)の大学・大学院なんです。
僕もデジタルハリウッドの経営企画の役員をやっていて、30代のときに学校を作ったりしました。それ以外にも大企業にいたり、自分でeラーニングの会社を起業したりといった実務経験がありまして。eラーニング系の経験をもって、実務家教員として教えております。今やっていることのメインは、教育イノベーションをテーマとしています。
3つのアプローチがありまして、1つはトップダウンというやり方です。教育は制度や仕組みがあるので、国の側……制度を提言する側に回らないといけないということで、今は教育再生実行会議メンバーや、経産省の「『未来の教室』とEdTech研究会」もさせていただいております。
あと、ボトムアップをやっています。自分自身で授業もやっていますし、先生もやってますし、教育の現場から変えるということで取り組んでいます。もう1つは、イノベーター支援ですね。まさに、隣にいらっしゃるみなさんに、創業当時くらいからお付き合いをしていただきながら、イノベーターのパワーを使いながら、教育のイノベーションを起こしていこうという取り組みをしています。今日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
猪熊:EdTechを勉強するために、まず佐藤さんの著書『EdTechが変える教育の未来』という本を読みました。海外の事例もそうですし、たくさんのイノベーターの事例もご存知の方で、あとでゆっくりおうかがいしたいと思います。では、山口さん、お願いします。
山口文洋氏(以下、山口):みなさん、こんにちは。リクルートマーケティングパートナーズの山口です。私は、スタディサプリという名前でのオンライン教育サービスを2011年ごろに起ち上げました。2017年度では、日本が中心なんですけどだいたい75万人くらい利用者がいます。月額980円、もしくはそれ以外の金額を払って勉強しているお子さんたちがいらっしゃるんです。
利用者の約半分は、放課後の民間教育というか、放課後の学習に使っていただいています。残りの半分が、実は学校で使われていたりもします。ただ、学校の方で使われているのは、ほとんどが高校です。
義務教育の方では、まだ渋谷区、名古屋市、寝屋川市といったいくつかの自治体でしか活用が進んでおりません。今日はですね、自治体さんがどういうような要望というか、課題認識で我々のようなICTを使うのかといったお話と……ただ、EdTechを進めるにあたって、けっこうな障害などがあると思っているので、そのあたりの課題も、ぜひみなさんにお話しできるかなと思っております。よろしくお願いします。
(会場拍手)
司会者:ありがとうございます。次に水野さん、お願いします。
水野雄介氏(以下、水野):こんにちは。ライフイズテックの水野と申します。僕らは、2010年から中学生、高校生にプログラミングの教育をやっている会社です。もともと僕は教師をやっていて、物理の先生だったんですけど、3人で会社を立ち上げました。今は、延べ4万人くらいの子が来てくれていて、一応世界でも2番目の規模で、ティーンにプログラミングを教えています。
最近だと、ディズニーさんとのプロダクトで、オンラインの教材とかも出したりして、グローバルを見据えて、アメリカや中国も攻めていこうとしています。また、地方創生として、40くらいの自治体と一緒にやらせていただいています。地方を創生するには、もちろん企業を誘致するのもいいんだけど、そこで産業を興せる人材が生まれる仕組みを作らなきゃいけないですよね、やっぱりITとか。
このITのプログラミングは、ただの数文でしかなくて。プログラミングというツールと、アントレプレナーシップの両方を持っていけば、産業を興せる人材がどんどん生まれてくる可能性があると。
それが「地方×EdTech」みたいなところでいうと、重要なポイントなんじゃないかというところで、いろいろな自治体さんとスキルを身につけていって、なにか新しい問題があったら、それを解決するようなものを事例としていろいろやらせていただいています。今日は楽しみです。よろしくお願いします。
(会場拍手)
猪熊:今回、タイトルの「ICT教育が地域にもたらすインパクト」というところが大きなテーマですので、先ほどからも何度か言葉にも出ているように、EdTechについて、いろいろな認識があると思うので最初にすり合わせていきたいと思います。EdTechという言葉をご存知の方は、どれぐらいいらっしゃいますか?
ありがとうございます。8~9割くらいの方がご存知だと思うんですが、EdTechという言葉の概念がどういったものを意味するのか、まだみなさんも迷うところもあるかなと思うので、ここを佐藤さんにぜひ……EdTechがどういうものかを教えていただければと思います。
佐藤:定義があるわけじゃないんですよ。というのも、例えばEdTechの定義……例えばAgriTechなども、定義が明確にあるわけではないんですが、よくいわれるのは、先端技術、AIを活用した教育みたいな、表層的な言い方をされます。でも、僕はそうじゃないと思っていまして。
EdTechは、2010年くらいからアメリカで出てきた言葉なんですね。それがどんどん進化して、教育にどんな影響をもたらすのか、どんなイノベーションをもたらすのかということで、このイノベーション全体の動きとして、僕はEdTechという言葉を使っているんです。
例えば、デジタルテクノロジーがこれだけ普及してくると、教育という制度の仕組みを超えた学びが手に入る世界がくるということなんです。どういうことかというと、これまでは学びたいと思ったら、学校という場に行き、先生という識者に教えを乞うものでした。
この方法じゃないと学びって手に入らなかったんです。または図書館くらいですかね。ところが、これだけテクノロジーが普及すると、インターネットにつながったパソコン1台で、自分の知的欲求をとことんまで叶えることができる。図書館は夜の9時に閉まっちゃうわけですが、テクノロジーは24時間365日、知的欲求に応えてくれるわけです。
佐藤:このように、学びがどんどん手に入るようになってくると、果たしてこれまでの教育という制度の仕組み……。日本でいうと100~150年は変わっていないと言われていて、明治5年に学制という日本の教育の制度ができまして、そこからまったく変わっていない。
今、小学校に通う息子さんや娘さんがいる方、小学校に行ってみてください。みなさんの環境とほとんど変わっていないことに気づくと思うんですけれども、変わらないでいいことと、変わらなきゃいけないことがたくさんあるわけです。まさに今、変わるべきところまでもが変わっていないのが現状です。
そこで、テクノロジーでイノベーションをどう起こすか、テクノロジーが勝手に普及すると、勝手に教育がどう変わっちゃうのかを含めて、EdTechという定義でお話をしています。
猪熊:ありがとうございます。テクノロジーが普及することによって、教育という概念自体がかなり大きく変わるということがあるのかなと思うんですが、ここからは具体的な事例を含めてお話をうかがっていきたいなと思います。
猪熊:1人ずつしゃべらなくても大丈夫なので、フランクにディスカッションのようなかたちでお願いしたいと思います。まず、今回は地方創生がテーマなので、具体的に地域でどのようなEdTechの事例があるのかというお話をうかがいたいと思うんですが、山口さん、いかがでしょうか。
山口:僕らは今、スタディサプリというオンラインの教育サービスを使っていただいています。基本的には、2つくらいの使われ方があるのかなと思ってます。
1つは渋谷区。どういう理由で使っているかというと、21世紀の未来的な教育の時間やリソースをどれだけ蓄えられるかというところの逆サイドですね。
先生も生徒も、やらなければいけない基礎知識の教育をできるだけ効率化をしていかないと、企業の働き方改革と一緒で、新しいことにチャレンジできませんよね、という文脈です。英語・数学・理科・社会という基礎知識教育を、先生がどれだけ業務負荷を下げながらも、生徒にとってプラスになるように教えられるかというところで使っていただいております。
学校の授業の中で、動画を流す反転授業のような、理想的な使われ方まではいってないんですけど。夏休みや冬休みの宿題など、今まで先生が手塩にかけて作っていた宿題や、時間をかけて採点していた部分が、われわれのオンライン教育サービスに取って代わることで、先生の業務負荷を下げています。
逆にいうと子どもたちはそのICTのタブレットを持ち帰って、それでやっていくと、採点を待つことなく自分の整合がわかるとか。好きなことだったら、どこまで先でも学んでしまえというところで、先取り学習などができるようになっています。
実際、僕も実は渋谷区に住んでおりますので、小学校2年生の息子が冬休みの宿題とかでスタディサプリを持ち帰ってやっているというシーンを見て、ああこういうのも1つの安心感なのかなと思っています。
山口:もう1つが、名古屋市などが取り組んでいるんですが、学校の中でICT、スタディサプリを使っているという話ではありません。今は社会問題で、不登校をはじめとした、学習困難家庭の方もけっこう増えているんです。
この学習困難家庭、もしくは不登校のみなさんは、どのタイミングで学校に行かなくなるかがまちまちで、一人ひとりの生徒さんがマイノリティで、どこで学習につまずいているかも、百人百様なんですよね。
名古屋市さんでは、フリースクールのようなかたちで、学校の外の公民館みたいな場所を使って、スクールを用意しています。そこで、われわれのスタディサプリと、われわれが業務提携しているNPOさんの見守り役のサービスをセットにして、学校に行けなくても、ここに来れば勉強ができて、いろいろな相談ができるよというかたちにしています。
そして勉強をするときには、あなたの今できるところから、もう1回学び直しができるよということで、全員同じレベルの同じ教育を施すのではなく、一人ひとりの実力に合った学習環境を提供しています。自分がその学年の学習に遅れがなくても、「できた!わかった!」を繰り返す中で、自己否定からもう1回、自己肯定感を取り戻して、学校に復帰していったりと。
もう一度、人生に希望を持ってもらう。そんなことを丁寧にやっているような事例です。こんなものが、実際に動いています。
猪熊:不登校になるきっかけで、学校の授業についていけなくなって、その後お休みしたまま不登校になってしまう学生とかもいらっしゃると思うんですが、こういうテクノロジーを使うことで、一人ひとりに合った学び方ができるようになるということですね。
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