2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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前田恵一氏(以下、前田):経営者の方々から見てAIに関する理解の必要度合いはどの程度が妥当だとお考えになりますか?
亀山敬司氏(以下、亀山):少なくとも、俺はプログラムを一行も書いたことがないけれど、「ITの社長です」とか偉そうに言ってるわけで、だからこれからも(自分で)AIについてやる気は全然ないからね。英語も勉強する気がないのに(人には)「DMM英会話やれよ!」と言ってるわけ(笑)。
(会場笑)
「DMM英会話」は使ったことないからね(笑)。
前田:そうなんですね!
亀山:「ビットコイン」も買ったことないし、「CASH」なんか1回も触ることのないまま終わったような感じだしね。
そういうことで言うと、それぞれの分野があって、経営的な分野だったらITでなにができるかぐらいを理解しておく。AIはどこまでできるのかとか、さっき言った「この職業はなくなるからAIでよくね」とか、それぐらいはざっくりと理解しておく。あとは、政治とか世界経済とか為替とか、他のことを理解した方が勉強になるんじゃない。
でも、ポジションによっては、そこがわからないと仕事にならないプログラマーのポジションもあるよね。なので、なにを目指すかで、どこまで深めるか、どこまで広くやるかを決めるという話になるかな。
藤原和博氏(以下、藤原):どちら側に回るかで要求されるレベルが違ってきますよね。例えば、医者の仕事も結局かなりの部分がAI・ロボットに置き換わっていきます。ガンなどの病気を発見するために、心電図やレントゲンを撮ったデータを計測して、同じような症例を検索して、それで同じような症例の人たちがどういう薬品、あるいはどういう放射線治療で治ったかみたいなものがわかるようになる。
これはもうすでにIBMのワトソンというコンピューターが実践配備されて、アメリカでは実用化しているわけです。そのワトソンの開発、あるいは医療サービスをもっと改善するAIの開発など、そちら側に回るなら数学に強くないとダメですよね。
一方で、利用者として気分良く、医者の診断を受けるときに「そのほうが安心だよね」という側の人は、必ずしもそこまで勉強する必要はありません。なので、どの立場に立つか、どの立ち位置を自分の場所にするかで違ってくるのではないでしょうか?
亀山:例えばさっきのようにガンを発見するとなると、(人間は)AIには勝てなかったりする。人間の目で見るよりも、画像解析をやって、症例を比較しながらどの病状にはどの薬の投薬がいいかを判断することなんかは、AIのほうが優れているからね。だから、(これから治療のためには)どちらかというと、AIを扱えるエンジニアを目指さないといけなくなる。
ただ、AIは特殊な分野にはすごく強いけれど、病院の中にはガンを発見する仕事もあれば、看護師さんが患者を癒す仕事、精神的なフォローの仕事もあるよね。あとは、受付をどうするかとか、入院環境をどうするかという仕事もある。
そういうことに関しては、AIはけっこう横の繋がりが弱いので、今後は「ここに人をどれくらい入れて、AIではどのくらいまでやるのか」というマネジメント的な仕事が、人のやるべきことの中心として起こるかな、という感じはしますね。
前田:ありがとうございます。
亀山:伊藤さん、喋らなくていいの?
伊藤羊一氏(以下、伊藤):喋ろうとすると「1分でまとめなきゃ」と思ってしまうんです。
(会場笑)
下手に口を出せない感じがします。
藤原:それを考えるのに3分かかるんだよね。
伊藤:「もう帰ろうよ……」な感じになっています。でも1つあるのは、(AIが)どこまでできるのかは、なるべく事例をたくさん……(水の入ったコップを倒す)あ。ごめんなさい。
藤原:緊張しすぎですね(笑)。
伊藤:(AIが)どこまでできるのか? について、けっこうびっくりすることが多いです。例えばヤフーのスマホのトップページがありますよね。そこで、レコメンドをディープラーニングで最適化するぐらいは、すぐにわかると思うんです。
でも、トップページに出ている写真がありますよね。あれは写真を自動的に切り取ってスマホの画面に出しているんです。
PCの写真はけっこう大きく出ているんですけれど、スマホ用の写真は小さいですよね。それを切り取って出しているのですが、切り取り方はAIがディープラーニングでやっているそうなんです。
例えば、テニスの試合の写真を、PCでは全部表示するんだけれど、スマホではどこにフォーカスしたらいいかわからない。大きな写真の中で顔っぽいところとか、強調するべき部分とかを、人間だったらどこを 切り抜くか?を模倣して自動で抽出しています。
それを聞いた時に、「あ、そういうこともやっているのね」というぐらいには(情報を吸収しておく)。(実例を)知っておくことが大事なんです。それを知らないと、(AIで)なにができるかがよくわからないままになってしまう。
前田:そうですね、道具の範囲というやつですね。今道具そのものはチューニングというか、改良を深めていくフェーズがある程度落ち着いている、というふうに聞いています。
とくに画像診断や、自然系の処理の分野に関しては、もうビジネスレベルまで達しているそうです。一方で自動運転技術みたいな強化学習の分野に関しては、まだまだビジネスのほうへの進展の余地はあるというふうに聞いています。
どの道具をどの現場のビジネスにインストールするかといった時に、インストール、つまり新しい道具を導入することを仕事にしたいのか、またはそのモデル、道具自体を改良する方向に行きたいのかは、ご自身のキャリアによるかと思います。ですが、インストールする、新しい道具を世の中に適応させる人材が圧倒的に足りていないようです。
前田:ただ、AIは新しい道具、1つの手段にすぎないと思います。VRもそうですし、IoTもそうです。そこで、実際にそういう新しい核になる技術が世の中をどんどん変えていくという文脈の中で、どういう教育が必要とされているのでしょうか。
併せて、今からどういう教育を実践して広げていこうとされているかも、ぜひ承りたいと思っております。思いついた方からでけっこうなので、お願いいたします。
伊藤:僕は今、ヤフーアカデミア という企業内大学で、ヤフーグループ内のリーダー開発をやっていてるんですけれど、外の方とも接触しながら、(企業内大学の人材を)少しずつ外に出し、刺激を得ることで、次世代のリーダーを育てていこうという姿勢です。
そこでなにが大事かというと、スキル的なことは参考書を読むとか、ビジネススクールに行くとか、そういうことで学べる場所が多いんじゃないかと思うんです。
ただ一方で、マインドみたいなところは、なかなか学べるところがないし、学び方がわからない。どうやってマインドを鍛えたらいいかなんて、よくわからないですよね。
ヤフーアカデミアでは、不確実な時代の中でセンスを持って想いを持って、チームで未来を作っていくような、そういうマインドを持った人を育てようとしています。
そのためになにをするかというと、マインドを鍛えるといっても、滝に打たれて「ウオー! 俺は耐えきる!」というようなことではなくて。
あとでワークショップをやりたいと思うんですけれど、自分はどこからきて、今どういうことを大事にしていて、将来何をしていきたいかという、自分の過去・現在・未来に一本軸を通すことをやっています。
起業家の方などは生きている中で自然と「これだ!」と思ってチャレンジされていますよね。ステレオタイプに言うつもりはないのですが、大企業などで働いている人は、就職するときになんとなく就職活動をして、なんとなくここを通って、なんとなくここに配属されたからなんとなくこの仕事をやっている、みたいな人がけっこう多いんです。
それだと「未来を作るといってもどうすればいいの、指示がないよ!」みたいな感じになってしまいます。そうではなく、「俺はなにをして、どこからきて、なにを考えてどうしたいんだ」ということをひたすらやろうとしています。
前田:おそらく伊藤さんのおっしゃっているリーダーシップは、文脈としては、誰かを率いるというよりは、ご自身で勇気を持ってなにかをやる、というようなことなんですね。
伊藤:そうです。だから「リーダーシップ」の「リード」はなにかというと、「リード・ザ・ピープル」の「リーダー」は人を導くリーダーなんだけれど、その前提として「リード・ザ・セルフ」、自分自身が熱狂する、自分自身を導いていくイメージです。
亀山:突き詰めると、大企業には入らないで、フリーランスか起業しろということだよね。
伊藤:おっしゃるとおりです。
亀山:これが「1分で話す」ということだからね。
(一同笑)
藤原:(伊藤氏の)悪い例と(亀山氏の)いい例が示されましたね。あの本(1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術)は30万部売れたんだよね?
伊藤:22万6000部です。
(会場笑)
前田:受付で売っています。
(会場笑)
亀山:当の本人が1分で喋れないという(笑)。でも、さすがにはじめは就職したいよね。「フリーランスや起業は怖い」という人に、就職先として勧めるとしたら、どちらかというと大企業よりはITとかAIとか、今の流行りで今伸びている業界だよね。
亀山:別にそこでエンジニアをやらなくてもよくて、営業や経理でもいいから、例えばDMMでもDeNAでもヤフーでも楽天でもなんでもいいんだけれど、そういうところにいると、どんな業務でもなんらかのかたちで身近にテクノロジーや、流行りものに触れる機会が多いんだ。
IT業界はけっこうフレンドリーで、縦社会じゃないから、社内のコミュニケーションもけっこう混じり合ったりする。「ライバル他社とは会うな」とかも言わないし、いったんそういう会社に入って4〜5年やって、その中で磨いたもので転職する。
例えば「俺、AIわかってますよ」とか「ITちょっと詳しいですよ」とか言いながら、不動産や銀行やゼネコンへ行くと、今はけっこう高い値でとってくれたりするわけよ。
最初からいきなりゼネコンとか銀行とかに入っても、「営業の下っ端からやれ」とか言われて、「言われたことをやれ!」というとこから始まりやすいからね。
だから、おじさんがちょっと弱い分野の業界に入っておいてから、「え、こんなことわからないんですか? 今時はメールじゃないですよ。僕がSlackの使い方教えましょう」とか、そういうことを言いながら変えていくと、意外と良いポジションで迎えられたり、おじさんの上に置かれたりすることが起きやすいんだよ。
藤原:すごく具体的ですね。
亀山:具体的でしょう。
伊藤:はい。
(会場笑)
藤原:まあちょっとその……。
前田:なんだか今日は圧がすごいですね。
藤原:教育の話にちょっと引き戻します。亀山さんが作ろうとしている、新しい高校の話が出やすいようにしておこうかなとも思います。みなさんがぜったいに意識しないといけないのは、自分が受けてきた教育がどういう教育かを理解することです。それは戦後70年間、ずっと一貫して変わっていないんですね。
日本の場合は、強固に正解主義と言って、「正解をひたすら覚えなさい」となるんです。たぶんみなさんも、4択問題はおそらく数百回、数千回解かされたと思います。あれを解きすぎると、ある癖がついてしまうんです。
本当は、これはブレスト(ブレインストーミング)してみなさんに答えてもらいたいぐらいなんだけれど、今回は僕が答えを言います。4択問題の4択、あれは仮説なんです。その仮説を他人が与えてくれると、期待する癖がついてしまう。わかりますか?
つまり、先生が「イ・ロ・ハ・ニ」と仮説を与えてくれているわけです。本当はあの仮説さえも自分で生み出さないといけないのに、人が「イ・ロ・ハ・ニ」と与えてくれてしまうんです。怖いことに、それを当たり前だと思う癖が、実はみなさんに刷り込まれているんですよ。
さらにもう1個あるんだけれど、その4つのうちの1つにぜったい正解があると信じてしまっている。この癖がついてしまっているんです。「それは自分にはついていない」という人は、おそらく海外で教育を受けた人じゃないかと思います。
日本の教育を受けたら、正解主義・情報処理力偏重で、ぜったいにその癖がついているんです。でも、「その癖がついている」ということを意識したらその呪縛が解かれるので、是非それを意識すべきだと思いますね。
藤原:とにかく今後半に言った4つの「イ・ロ・ハ・ニ」のうち、人が与えた仮説のうちの1つにぜったい正解があるというのは非常にやばい考え方です。おそらく伊藤さんも亀山さんもそうだし、前田さんもそうだし、ここにいる人たちでビジネスをやっている人は、日々、そんな問題と戦ってはいないですよね。
「イかなロかな?」と考えて、自分の仮説を「イ ・ロ」としてそれを徹底的に試してみたら、全然違う。実際のマーケットでは「ハ・ニ」でさえもなくて、「ト」だったというようなことはいっぱいある。結局今の企業が欲しい人材は、そこまでしつこく「イ ・ロ」を試しながら「ハ・ニ」でもなく「ト」までいける人なんです。
さらにそれを実際に市場に投入しながら無限に修正していけるような人、そのしつこさを持っている人が、例えばDMMやリクルート、ヤフーやGoogleなどが欲しい人材だと思うんです。というわけで、「正解主義から離れないと、ちょっと厳しいぜ」ということを強調してみました。
亀山:うちもDMMアカデミーとかで「自由にやれ」ということは言ってたんだよ。入ったあとは何も指示を出さないから、「社内で自由に動き回っていいからね」「どんな部署に行ってもいいし、自分のやりたいことを決めて動けよ」と言ってた。でも、半年間ほったらかしにして、なんの指示も与えないでやると、1、2割の人しか動けない。
みんな自由を与えても、自由を使えない。「え、どうすればいいんですか!? せめてヒントをください」となるんだ。だから、問題があったら答えるけれど、「自分で勝手に問題を作れ」ということが難しい。
伊藤:そのアカデミーの話で、おうかがいしたいのですが、そうやって「ヒントでもください」と言っていた人が、変わってくんですか?
亀山:いや、ほとんど変わらない(笑)。1割ぐらいは勝手に動いて、残り1割ぐらいは途中で気づいて、なんとか動き出す。でも、残りの8割に関しては、迷子のまま終わっちゃう。
伊藤:なるほど。でもその1割は、変わる人がいるわけですね。
亀山:確かに1割は、今までそういう機会を与えられなかったから、なんとか自分で、苦悩して、考えて、動き出す人はいるね。
伊藤:なるほど。
亀山:でも、やっぱり、教育の中で刷り込まれているから、8割がなかなか動けないままで終わってしまう。
伊藤:そうでしょうね。だからこそ、藤原さんのおっしゃっている「イ ・ロ」をやって「ハ・ニ」で、次の「ト」までいけるという、このしつこさというか、そういう思いを持っている人が(必要とされるんですね)。そもそも、そうでない人がそうなるためにはどうしたらいいんでしょうか? その1割のところは。(どうやって変わったのでしょうか?)
亀山:その後、アカデミーがどういう状況になったかというと、結局その8割は入って半年ぐらいで「お前はこのままいても、お前のためにならない。会社にとってもよくない」ということで、辞めろと言うんだよ。でも辞めても、「元アカデミーです」と言うと、その人は意外と就職できちゃうんだよね。
(会場笑)
「いやいや、お前ら何にもできてないんだからね!」ということなんだけど、「結局、迷子のまま終わった奴でもアカデミーの卒業生だ」」となると、DMMアカデミーブランドの信用がなくなる。
なので、今やり方を変えようと思っていて、フランスに42という、プログラムを無料で教える学校があるんだけれど、そこに先週行ってきたんだよ。
そこはもっとスパルタで、課題を与えて、ゲーム感覚で生徒同士で課題を解決しろ、「Facebookのこのページを良くする課題をやれ」みたいな感じで、みんなでチームを組んで課題をどんどん出していく。ゲーム方式で、できなかったらどんどん振るい落していって、できた生徒にはポイントを与えてレベル10とか20とかになっていく感じ。
これが何かっていうと、チャンスは与えるけど、親切丁寧に面倒はみないということ。20を超えた人はもうGoogleだろうがAppleだろうが引っ張りだこのエンジニアになるという仕組みらしい。これをうちが日本に持ってきて、レベルに応じて実力を担保できる人材を排出する。でもこれはまあ、お金にはならないけどね(笑)。
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