2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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福武英明氏(以下、福武):「楽しみながら学ぶ」というのは、先ほど高濱先生からもお話がありましたね。子どもに対しては、やっぱり努力よりも夢中になれるところに大きな要素があると思うんです。
例えば「この子はこういうものに向いているんじゃないか」「習い事に行きなさい」「プログラミング学びなさい」「野球しなさい」というのは、考え方によっては親の押し付けというか、あんまり子どもの特性を見ていないケースもあると思うんです。
いろいろなお子さんを見ていらっしゃって、例えば「この子はこういうところに夢中になるんじゃないか」とか、その子の得手不得手とか、そこはどういうかたちで見られているのでしょうか。そういった気づきを与えたりすることには取り組まれていらっしゃいますか?
高濱正伸氏(以下、高濱):お二人のお話でいろいろ言いたいことはあるのですが、先に答えだけ言っておきます。実は講演会をやっていて、保護者の質問コーナーでは常に「空手がいいと思って始めたんですけど、なんかやりたくないって言い出して……」的な質問が多いんです。つまり、お稽古を我が子にどう始めさせるか、そしてやめさせるかで常に親たちは悩んでいる。
そして喧嘩です。「あんたが始めるって言ったんでしょ!」とか、よくあるパターンです。ピアノみたいに毎日練習が必要だと、「もうピアノの練習をやらせる親子関係が嫌でやめさせたい」というのが非常に多いです。これも二次的に起こるよくあるパターンなんですね。
答えとしては、なにが合うかはどうせわからないんですよ。親たちに言っているのは、親が信念を持つこと。イチローの親だってそうじゃないですか。子どもは基本的に繰り返したものを好きになってくれる生き物なので、「この子をバッターにするんだ!」と思いながら連れて行っているうちに、嫌なことをしなければだいたい全部好きになるんですね。それが1つ。
あと、向いてる・向いていないを見立てるのは、大人たちがある程度やってあげたほうがいいかもしれないですね。2年生・3年生になるあたりでだいたいわかってきます。そこで「どうもサッカーのほうが向いているな」と思ったら、「ほかのをやめてサッカーにしぼろうか」みたいなことはあると思います。
基本的に子どもは「ちゃんとやりなさいと言ったでしょ!」「ほかの子ができて、なんであんたできないの!」みたいな嫌なことさえ言われなければ、だいたい全部好きになると思うんです。
水野さんのお話で思ったのは、これからはmust(やるべきこと)で、まさにプログラミングがこれだけ言われている時代の20年後はどうなっているかというと、どちらにせよ絶対全員できるようになっているんですよ。
そのとき、なにが大事かというと、やっぱり魅力的というか、デザイン性ですよね。同じプログラミング教育でも「こっちのほうがかっこいいよね」「かわいいよね」「おもしろいよね」というのが1つです。やる側としても探すし、売る側としてもそこが勝負になってくる典型的な例だなと思いました。
高濱:(山口)文洋さんの話で心を打たれたのは、「無限のキャンバス」という今日のキーワードですね。もうこれですよね。これから講演会で、僕は自分の言葉のように多用したいと思います。
(会場笑)
いや、本当にそれに尽きるんですよ。つまり、データとして出ていることで言うと、理系ノーベル賞の歴代受賞者は田舎育ちばっかりなんです。どの国にもニューヨークやロンドンがあり、一番いい小学校と言われているのはあるんだけれど、そっちじゃないんです。(進学先の)大学はだいたいトップに上り詰めてはくるんですけれどね。
なので、まさに「無限のキャンバス論」でしょうね。毎日「今日なにをしようかな」みたいなことを想像して、「昨日はあっちで秘密基地をつくったから、今日こっちにつくろう」とか、自分で想像してやり遂げる。
あとは「今日は4人しかいないから野球やめよう」ではなくて、「4人しかいないんだったら、キャッチャーを壁にしてさ、足で線を引いて、ここから先はホームランにしようぜ」みたいに新しいものを考える。
常に毎日創造してクリエイティブに生きるのが、ある程度不自由な何にもない山の中だと育つんですよね。そういうのが東京にいるとないというか、全部管理されているし、公園なんか自由に遊ばせてくれないじゃないですか。「ボール遊びしちゃいけません」みたいな立て札が立っていたりしますし。
そういう意味だと、環境として都会はちょっとハンデもあるなと思います。ただ、お稽古ごとでいいものがあるという意味では、東京の環境はいいですよね。すみません。長くなっちゃいました。
福武:ありがとうございます。
福武:じゃあ、「無限のキャンバス」(の話題を最初に話した)山口さん。無限に可能性があるとなると、逆になにをやっていいかわからなくなるケースもあると思いますが、どうでしょうか。
例えば、僕はこの前、建築家の方と話をしていて、「じゃあ予算はいくらでもいいですよ。好きな建築をつくってください。どういうものをつくりますか?」という話をしたんです。すると「それは困ります」と言われたんです。その方は「スペースも決まっていたほうがいいし、予算も決まってたほうがいい。そのなかでクリエイティビティを発揮したいんです」ということなんですね。
一方で、例えばアーティストと話をして「いくらでもお金使っていいよ」と言うと、「やりたいことが腐るほどあるんです」と言う人もいます。いろんなケースがあると思いますが、そのあたり、どういうふうに個人の可能性を広げていけばいいのでしょうか。ご自分の経験上でなにかあればお願いします。
山口文洋氏(以下、山口):それでいうと、大人になってから後天的にその制約をつけられたほうがいいのか、無限の可能性を求めていけるのか、という考え方の差は、幼少時についてしまうのではないかと僕は思います。
「無限のキャンバスだから自由にやっていいよね」という考えは、「無限」と言いながらもいろんな制約があるなかで、1つは無限なキャンバスを与えられるということと、もう1つは自由であることだと思うんですよ。「今日の制約だったらこうしよう」ということなんです。「今日雨だったらこういう遊びでいいじゃん」とか「今日は天気いいから」とか「いっぱいいるから、これやろう」とか。
そのときに、無限のキャンバスという言葉と、もう1つ、僕が最近リクルートのマネージメントをやっている上でもすごく大切にしていることがあります。リクルートのなにが一番強いのか考えると、「お前はどうしたい?」というふうな、いわゆる主体性を求めるマネジメントにあるんです。
これは心理学を応用したマネジメントなんですよ。江副(浩正)さんという創業者の周りは、実は東大の心理学出身の方で構成された経営陣で、「自分たちはカリスマでもない」と考えていたんです。
だから、この心理学を応用して、どれだけ組織の構成員の内発的動機、モチベーションを引き出して、それを高め続ける仕組みをつくるか。その高い生産性や創造性がほかの会社に対して競争優位・高収益な源泉になることを掲げた会社なんですよ。
その心理学を簡単に紐解くと、3つの要素が日々会社で実践されています。逆に言うと、僕は子どもの頃に気づけば親にそうされていたなと思っている3つの要素があるんですよね。
1つ目は、まず物事を、今日どうするかとか、この1年どうするかとか、この3年どうするかもそうですが、プランを立てるときにどれだけ自己決定性があるかという、本人が決めたという感覚をつくらせることが大事なんです。
子どもの頃でいうと、僕は反抗期でキレる子どもだったんですよ。だから、それまでは親がどちらかというと「あれをやれ、これをやれ」と言っていたけれど、それに全部反発して反抗期になってしまった。すると、反抗期後の親は、キレる自分を知っているので、「じゃああんたがやりたいようにやりなさい。そのかわり決めて責任持ちなさいよ」と言ったんです。
反抗期が終わった後、高校生と大学生の頃は変な方向へ行ってしまったのですが、変な方向へ行くなりに、ダメな人間になるよりは、「それは自分で選んでやっているんだから、自己責任(の意識を)持っていこう」という自己責任性はすごく強くなったんですね。そういう自己決定性は、社員にも子どもにも重要かなと思います。
山口:もう1つは、物事を決めて走り始めるとよくわからなくなるんですよね。本当にこれでいいのかどうなのかがわからなくなる。そのときに大事なのは、自己効力感や自己肯定感です。
自己決定した後に進んでいるなかで、ゴールに向かって一歩一歩、確かに進んでいるなと思える自己肯定感や自己高揚感が必要なんですね。それを感じられるような仕組みを、親や企業や会社がつくるんですよ。
例えばリクルートでいうと、年間の売上目標もあるんだけれど、営業だとそれがクオーターごとに分割されているんですよね。クオーターの営業目標だけじゃなくて、それが月間目標になっていたりもします。
売上の手前では、受注プロセスでいくつかのポイントがありますよね。だから、そういうのが行動計画化されていて、またそれも因数分解されているんです。
だから、若手の営業が「どうやったら売上取れるんだろう?」の手前が因数分解されていて、1週間ずつ一歩先に順調に進んでいるという、成長した実感を感じられる仕組みを会社は用意している。
親の場合は、それを子どもに感じさせられるようなコミュニケーションをしている。「いや、あんた今泣いていじけてるけど、でも一週間前よりはちょっとできるようになってんじゃん」ということですね。
「友達よりはできてないかもしれないけど、進んでいるじゃん」とか、「1年前から比べたら、まだまだなのかもしれないけど、ぜんぜん変化あるじゃん」とかです。そういう相対評価ではない、自分の過去との絶対的な比較をさせるような仕組みを用意する。
最後の要素は承認欲求です。人間は誰しも社会的な承認欲求を有しているんです。本当にがんばったときに(普段だったら)ありえない承認をされること。それはハグかもしれないし、会社だったら称賛かもしれない。
それを常に仕組み化して、日々のちょっとした成功で自己肯定感を高めながらも、本当にがんばったときに、本人が「えっ、そんなに喜んでくれるの?」と思えるような周囲からの褒め言葉を与える。逆の場合は、もしかしたら叱ることも大事なのかもしれませんけれどね。
そういった自己決定、自己肯定、そして承認欲求。僕は、これが日々の心理学的な人間の3大効力感だと思っています。いわゆるモチベーションを高く保つ行動様式ですね。
だから、これを家庭や学校、もしくは企業の中でやると、本当に個人がやりたいこと、自分で決めて、日々それに向かってがんばっていることをなんとなく認識し、あるプロセスまでいったときには褒められる。だから、もっと褒められたいと思ってまたがんばるようになるのかなと思っています。
「無限のキャンバス × 決定性」、自己肯定感、承認欲求。今はこのキーワードを大事にして企業をマネジメントしています。自分自身も、そういう原体験の中で自分がこういう力を養ってきたのかなと今、自己認識しています。
福武:すばらしいキーワードを3つありがとうございます。
福武:今お話があった自己決定性・自己決定感、肯定感と承認欲求のところで、水野さんにお聞きしたいです。主にサービスのお客様としては中高生さんが多いと思いますが、例えばこの3つの要素をサービスに組み込むとか、もしくは会社の経営をしていく上で気をつけているところとかがあれば、教えていただきたいです。
水野雄介氏(以下、水野):ありがとうございます。まず会社で僕が「じゃあ、何をやるか」となったときに、大きく3つだけ守ることができれば、新しいことをやると決めています。1つ目が「それは中高生のためになるのか?」ということ。
僕らは、会社のミッションである「中高生一人ひとりの可能性を最大限伸ばす」ために会社をつくったので、中高生のためにならないものはやらないと決めています。なので、まずは「中高生のためになるのか?」を考えます。
2つ目が「それはワクワクするのか?」です。僕ら自身がそれをやってワクワクしないと、それはやる価値がないです。ワクワクすることは、新しいことと同義だと僕は思っています。
起業しているからには人と同じことをやってもしょうがないし、ほかの人がやっているものであればその人たちに任せればいい。なので、自分たちにしかできない、もしくは自分たちが考えた新しいものをやるようにしています。それは、ワクワクするものじゃないといけない。
「ディズニーと組んでやってみたいよね」「それってグローバルに出してみたいよね」とかですね。最初にリクルートさんとやらせてもらったときは「まさかリクルートと組めるなんて」と思いました。そういうものの積み重ねがずっと続いてきているので、こういった思いがあります。
3つ目が、「それは継続できるのか?」ですね。やはり教育なので、なかなか儲からない部分もあるんです。そこに継続性がないとサスティナブルに続かないので、継続性があるかどうかは、まず経営の意思決定の軸にしているところがあります。
水野:では、子どもたちにどういうことを教えているかというと、まず、子どもたちは全員好きで来るわけではないんですよ。夏休みに家でゲームばっかりやっているから、親が「あなた、ちょっとゲームつくってきたら?」みたいな感じでなんとなく来ていたりします。
中学2年生の男の子で、すごく緊張しながら「ちょっと親から言われたから来たんだけど」みたいな子とか、なかなか学校に行けない子とか、「自分はバレー部なんだけど、ちょっと時間が空いたから来てみた」とかなんですね。
なので、来ている全員がITが好きなわけではないのですが、でも僕らのところでもしITを嫌いになってしまったら、ずっと人生を通してIT嫌いになってしまう可能性があるんです。それは彼らにとって、非常にもったいないことだなと思うんです。
逆に言うと、僕は中高生のときがすごく大事だなと思っているんです。目標を持つことや夢があるのはすごく大切だなと思っています。例えば、甲子園に行きたいという目標があるのとしたら、それってすごく(素晴らしい)。
中高生の一番いいところは、1つのものに集中してがんばれることだなと思っているんです。もしそれを持っていない子がいるのなら、それを持たせてあげたい。これはすごく思います。
そのために、じゃあITが好きになるような仕掛けや、まず場を好きになってもらうみたいなことはすごく重要です。コミュニティを好きになってもらうとか、ただそこで学ぶものだけではなくて、学ぶ人や学ぶかたちを好きになってもらいたい。
例えばディズニーランドに行くときに、『星に願いを』が流れていて、ワクワクしながら行くあの感じとか、そういったものがすごく重要なんです。
そういう場の設計から入って、少しずつ小さな階段をつくって、承認欲求を満たしながら自走式に動けるような子たちを育てていきたい。子どもたちに対しては、そんなアプローチをしています。
福武:ありがとうございます。
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