2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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塚田有那氏(以下、塚田):すごくいろいろな角度の話があって、どこからうかがおうかなと思うんですけれども、みなさまも、もし気になったことがあればどんどん聞いていただければと思います。
まず、上木原さんにお聞きしたいのが、N高というのは未来の学校とおっしゃっていましたけれども、みなさまがプログラムを考えていくなかで、今の学校教育に対する問題意識や社会に対する反発というようなものがあったんじゃないかと思います。(N高が)立ち上がったきっかけといいますか、どんな経緯から今に至っているのかお聞きかせいただけますか?
上木原孝伸氏(以下、上木原):N高はいわゆる通信制高校なんですが、通信制高校は、実は不登校の割合が非常に多い学校なんですね。N高も不登校を経験した子どもたちが7割~8割くらいいます。逆にいうと、1割から2割はこの学び方のほうが普通の学校に行くよりいいじゃんということで溶け込んでいるだけで、通信制高校としては異端児と言われています。
ただ、私も全国をまわりながら、不登校の子と面談していくなかで、コミュニケーション能力がないとか、友達や先生とうまくいかないという事情ではなく、とっても元気ですごく活発なんだけれども、「学校に行っている意味がわからない」という子がどんどん増えていることを知ったんですね。
これはおそらくスマホネイティブで、知識というものが手の平からわりとスッと得られるなかで、小中学校の勉強の本質的な意味がわからないと悩んでいる子がすごく多いという実情があります。
そういう子たちの中には、実はすごい天才が眠っていて、学校では問題視されたりもするんだけれども、よくよく話を聞いてみると、ものすごくプログラミングやアートの才能を持っている子が多いんです。
そういう子たちが自然に通える学校を作っていきたいというところで、その子の才能や個性を活かして伸ばしていけるような教育機関を作っていく必要があるんじゃないかというところがN高等学校のスタートだと思います。
塚田:たぶんどの世代、どの時代でも「学ぶ意味が分からない」という子どもはいると思うんですよね。それに対して、いろいろな先生の言い方があったにせよ、今までの返答としては、「とりあえず学んでみたら分かるから、まずやってみなさい」ということが多かったと思います。けれども、そこを一律にせずに、プログラム自体をいろいろな個性を伸ばせるようなものに変えていったのでしょうか?
上木原:そうですね。私も塾で20年弱ぐらいチョークを持って授業をしていたんですが、本当に年々、偏差値どおりに子どもたちが幸せになっているとは限らないなと感じるようになっていました。
塚田:うん。
上木原:20年前には子どもに「なぜ勉強しなければならないんですか?」と聞かれていたんですけれども、その時代は「知識をしっかり入れて、それをスピーディーに出していくことが社会に大事だよね」と言わざるえなかったんです。でも、そうではなくなってきていることで、社会で求められる力も変わってきているなと感じています。
塚田:そういう意味では、内野さんが携わられている海の学校というものも、先ほどのカヌーやそういう(自然の)ところで得られた言葉、言語化できていない学びというものが相当あったんじゃないかなと思うんですね。たぶん自然が教えてくれる、思いっきり彼はいいますけど、たぶん本当に教わったという経験になるんじゃないかなって。海の学校では今、どういったことがなされようとしていますか?
内野加奈子氏(以下、内野氏):そうですね。もともとハワイに2011年まで住んでいて、日本には、自分が今やっている海の学校の前に、高知県の土佐山という地域で、地域全体を学べる場にしようというプロジェクトがあったんですけれども、それがきっかけで帰ってきたんです。
実は、海の学校という活動はハワイにいるときから始めていたんですけど、人と自然がどう関わっていけるのかというか、むしろ人間も自然で、自然としての人間とはこれからどういうふうに地球の上で生きていくのかという、人と自然の関わりが自分の中にずっとテーマとしてありました。
高知の土佐山はすごく自然が豊かで、まだ人も集落も元気で、自然を使った知恵がたくさん残っている場所でした。ただやっぱり人口も減っているところに、例えば都会でいろいろな技術を持っている人がそこで(高知の人々に)出会っていったら、どんなことができるんだろうと、都会と田舎の自然の境界や人と自然の関わりをちょっとだけ変えていくようなプロジェクトを最初の3~4年ぐらいは続けていたんです。
海の学校というのは、もともと海が専門だったこともあって、高知だけを拠点にはせず、日本全国の多様な海をベースに、実際にその海について学ぶというよりは、海を入り口に(しているかたちです)。この国連の活動もそうなんですけれども、地球と宇宙全体のつながりの中でしか、海の全体を理解することができないと思っているので(笑)。
海を見ることによって、この地球はどういう仕組みで動いているのかや、宇宙の中でこの地球はどういう立場にあるのかということまで見えてきます。なので、海の学校では、身近にある海を入り口に、自分たちが今暮らしている場所についてもっと理解したいとか、どういうふうに関わっていけるかを考える場作りをしていきたいなと思っています。
塚田:自然の恵みで考えることはたくさんあれど、今も日本ではすごいレベルの災害が起きていたり、海に対しても津波を思い出す人もいるでしょうし、たぶんあのカヌーの航海の中でも恵みだけではない部分というか、すごくサバイブしなきゃならない部分があったと思うんです。
都会にいると「ああ、自然の中にいかなきゃ」「森っていいよね」という話にしかならないですが、そんな簡単な話ではなくて、そこにはすごく複雑なものがあるんじゃないかと思います。内野さんご自身はそういった経験をされているんじゃないでしょうか?
内野:そうですね。自分たちにとって必要な情報は、海も空も、何もないように見えるところにも全部与えられているということをすごく意識しますね。ただ、それは読めない。情報があってもそれを読むためには、やっぱり自分たちがその言葉を習得していかなければいけない。
私にとっては、空や海が語ろうとしている、いろいろな言葉を理解したいという気持ちがすごく強くあります。例えば、こういう絵本に込めたメッセージもそうなんですけれども、私は言葉を覚えると、いろいろな物語がどんどん見えてくるとすごく感じています。それを伝えていきたいという気持ちが強いですね。
例えば、台風が増えてくれば、ニュースではどうしても台風の進路などだけが切り取られているけれど、もっと視点をぐーっと上にあげて、どうして今こういう台風が発生しているのか、海水温はどうなっているのかといった、いろいろな変化を地球全部のシステムとして見てみる。そうすると、もしかしたら、この台風を通じてまた違う物語が見えてくる可能性やきっかけにはなると思っています。
塚田:うんうん。
内野:そうした自然が語ろうとしている、もしくは持っている物語を、私たちは人間としてもっと読み取っていけたらおもしろいだろうなと強く感じます。
塚田:たぶんそこで内野さんがおっしゃっている情報は、例えば、Wikipediaで「海」と調べて出てくるような1ページで収まる情報ではなくて、すごく複数のメディアにまたがっている情報だと思うんですね。
情報として海というものの知識を得たと思っていても、そもそもそこに絶対に載っていないものがある。かつ、先ほどのプレゼンの中で「波の表情を読む」という言い方をされていたじゃないですか。すごくいいなと思ったので、私も次に海に行ったら、波の表情を読むという言い方をしてみようかなと(笑)。
内野:(笑)
塚田:でも、そこから新しい物語が立ち上がってくるというのは、まさにそうだと思うんですね。というところで、私はドミニクさんにバトンを渡すんですけれども、私とドミニクさんは最近『情報環世界』という研究会をしていて、本も執筆している最中です。
ちょっとご説明すると、環世界という言葉があります。環境の「環」に、「世界」と書きますが、ご存知の方もいるかもしれません。ヤーコプ・フォン・ユクスキュルという100年前の生物学者が、新しい生物の生態を調べていくときに、人間視点ではなく、例えばダニの視点や鳥の視点というふうに、視点から変えてしまわないと、その生物の持っている本質は分からないだろうということをまとめられていてました。これはすごく使いやすい概念だったので、生物学以外にも社会学などいろいろなところに広まったんです。
最近、情報社会でフィルターバグという言葉があるように、たぶんみなさんもFacebookやInstagramを使っていると思います。Facebookという使っている媒体は一緒でも、全員がそれぞれ見ている情報の内容が違ってくる、ということが起きてくる中で、じゃあどうやってそれを乗り越えていくか、さまざまな情報の環境があるということを踏まえた上で、それは繋がるべきか、繋がらないべきかということをいろいろと話してきたんですね。
それで、ドミニクさんが協和の感覚ということをおっしゃっていて。ドミニクさんは、共在するということをすごくポジティブに展開していくことを目指されていると思うんですけれども、最近の取り組みや、この情報環世界という研究を進めて感じられることをお聞かせいただけますでしょうか。
ドミニク・チェン氏(以下、ドミニク):ありがとうございます。今、二人のお話を聞いていて、すごくお二人のお話が繋がることを思い出したんですね。やっぱり今、教育をどう捉えるかということがものすごく激動しているんです。
僕も毎日大学に行くときにすごく悩みながら、歩みを重くしてですね(笑)。うーん、どうすればいいんだろう、といつも試行錯誤してます。まだ教諭になって2年目なので、20年間も教壇に立たれていた先輩の前で恐縮なんですが。
そんな中、アメリカではそういったことがすごく議論されています。例えば、1980年代に、MIT(マサチューセッツ工科大学)という大学でメディアラボというちょっと不思議な機関が作られたんですね。
それで彼らは最近になって、「反領域」と言っています。つまり「反専門」ということを言っているんですね。「専門を持つな」とずっと言っていて、あらゆる専門を脱却せよ、ということをすごく言っているんです。
例えば、自分は数学の専門家だから、自分は文学の専門家だから、と言っている限り、新しいことは起こしようがないほどに世界は複雑化しているということをおっしゃっていました。彼(MITメディアラボの所長・伊藤穰一氏)が先ほどの内野さんの話にすごく通じることを言っていて、「地図ではなくコンパスを持て」ということを10年近く言っているんです。
それはメディアラボの中でも彼が繰り返し言っていることで、地図って一体何かといったら、ここに行けば美味しい木の実があるよ、ここに行けば砂漠があるよというように、すでに決まっているものなんですね。
ただ今の時代は、1年前は砂漠だった場所が2年ぐらい経つと森林になっているかもしれないし、森林が砂漠になっているかもしれないぐらい激しい展開になっています。だから、地図を作っても、作っている間に陳腐化してしまう。だから、どんな地図になろうが、自分が向かいたいところに行けるコンパスを持てとおっしゃっていて。(内野さんは)それをもう、自分の体で。
塚田:経験されている(笑)。
ドミニク:内野さんにお会いできて、めちゃくちゃ光栄なんですが、そこで彼はもう一つそれに重ね合わせるように、「教育という言葉を使うのを止めろ」と言っているんですね。エデュケーションという言葉はもはや意味をなさない。
つまり教師が教壇に立って、大多数の人に情報を伝達するという一方通行のやり方では、もはや学習というものは上手くできない時代だと。だから、「大学・高校の教育者は、どうやったら自発的に自立的な学習を支援できるかに専念せよ」というメッセージだと僕は理解しているんです。
そんな考えで大学に行っているので、僕はけっこう座学を嫌っています。自分で何かスライドを用意して教えるということがすごく嫌いなんですね。それでも、前期はがんばって800枚くらいスライドを作って、座学をやったんですけれども(笑)。
ふだんは何をしているかというと、とにかく人それぞれ見えている世界が違うんです。同じクラスで、同じような指向性を持っている人たちの集団であろうと、アニメを作りたい子もいれば、ゲームを作りたい子もいます。だから、全員が同じ方向を向くんじゃなくて、先ほどの内野さんのコンパスで言ったら、「とりあえず北極星の方向にみんなで行こう。そこからそれぞれが自分の行きたいところに行こう」と。
そういう手伝いというか、補助、プロデュースのようなもの。なんというか自分でもまだわかっていないんですけれども。そういったときに、さっき塚田さんがおっしゃったような、環世界という言葉が役に立つんじゃないかなと思います。環世界というのは、もともと生物学の世界で生物が持っている体の構造によって、知覚できる世界が変わるということ。
だから、ダニの見えている世界と、人間の見えている世界と、鳥の見えている世界は客観的に記述できないということなんですね。「ダニはたぶんこう見えているだろう」「鳥はたぶんこう見えているだろう」とは言えるんですけれども、体験できないというところに、実は自然科学の限界があるとすら言われています。
そうなってくると、それを代弁することはできなくなるんですね。例えば「君たちは20歳だから、こういう世界が見えているはずだ」ということを教員が言いようがない時代。時代というかそういうリアリティーがあります。
そういったときに、それぞれの個人の環世界というものを、どうコミュニケーションして、情報化して、お互いに伝え合うかが非常に重要なのではないかと考えています。そこを無視して、全員が「今の時代こういうものが重要であるね」と言って、ワァーと同じ方向を向くんじゃなくて、「いや、自分はあんまりAIとか興味なくて、文学をひたすら読みたいです」と言う人がいたら、そういう人から文学とAIを掛け合わせたイノベーションが起こるのかもしれない。
なにか価値を事前に定義しないことが非常に重要なんじゃないかなと(思っていたのですが)、そのことをお二人とも別のかたちですごくやられていて、本当に今日は共感しかないです(笑)。
塚田:(笑)。まず、そもそも体験は共有できないけれども、というところが今日の本題になるのかなと思います。
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