2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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福武英明氏(以下、福武):みなさんおはようございます。だいぶ飲まれたような顔の方も多いですね(笑)。
(会場笑)
朝一番からがんばっていきたいと思いますが、今日は「テクノベート時代を生き抜く力とその育て方」ということで、どんなお話をみなさんにしてもらおうかなと思っています。ちょっとカタカナが多いし、堅苦しいので、なんとなく教育論でいいんじゃないかとも思いますが、朝一なので、いろいろざっくばらんに聞いていきたいと思います。
教育論の話になると、かなり幅広のテーマになると思います。例えば子どもの教育とか、あとは社員の教育とか、あとは自分自身の教育というのもありますね。みなさん今日どんなお話が聞きたいのか気になるので、(スクリーンを指して)実際に今日のテーマを見て、例えば「子どもに関する教育」について聞いてみたいという方は、どれぐらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
おおっ! 意外(に多い)ですね。じゃあ「社員向け教育」は?
(会場挙手)
「自分自身の(教育)」は?
(会場挙手)
一番少ないですね。じゃあ、やっぱり高濱先生を中心に、という感じになりますね(笑)。わかりました。
一応いろんなテーマについて、最近打ち合わせでも話をしたのですが、例えば、高濱先生はもう20年以上「花まる」をやられています。この20年間、同じ教育理念でサービスを提供し続けながらも、実際にやられている内容は、もう本当に激変しているという話がありました。ここ最近どんなところで取り組みが変わってきているかとか、新たに気づかれたこととか、そのへんを少しお話いただければと思います。
高濱正伸氏(以下、高濱):はい。なにから話すかについては、とりあえずこの題名に対して、答えみたいなことを言って、そこをスタート地点にできればと思います。
テクノロジーのイノベーション、まず人工知能とかロボットとかですよね。確かに20数年前に「Googleに就職する」と言ったら、もう田舎の親は「は? 意味わからないし、なにその変な名前」みたいなことが、今は一番就職してほしい場所になりましたよね。
携帯なんか、こんなでかいのを持っていたおっさんがいたのに、もうみんな時計でブラジル(に住んでいる人)と顔を見ながらしゃべれるように変わったわけです。
そういうなかで、子育てしてる親世代が一番心配なのは「我が子の時代はどうなるんだろう?」みたいなことです。これはそういうテーマですよね。
高濱:「テクノベート時代」は、言い換えると「大変化」ということに尽きると思うんですよね。もう誰も予測できない、あの(ヤフー株式会社CSOの)安宅和人ですら予測できないぐらいの変化をする時代に、どういう教育をすればいいかというテーマだと思うんです。
僕がここのところ、自分なりに答えを出しているのは、ほら、子どもがよく四角を描いて、上に三角描いて「お家!」とやるじゃないですか。あのイメージです。
四角が基盤力みたいなものだと思っています。ここは「いつの時代も変わらないもの」みたいなものです。国語の力とか、数理的思考力とか、ある程度必要なことですね。ただ、その三角の屋根の部分、昔の「平均的に成績取れ」という時代はそうでもなかったのですが、(今は)むしろこっちのとんがり具合が勝負なのかなと思います。
いくつかお家があって、基盤力の部分はみんな一緒なんだけれど、片方(屋根の部分)は人間力の勝負なんです。山口文洋なんか典型かもしれないですけれど、「この人ならついていきたい」と思わせるなにかがあるかどうかですね。
自分がテクノロジーをものすごくわかっているというより、ジャック・マーもそうでしょうし、メルカリの小泉(文明)さんも話してみると完全にそっちで勝負してる。
彼は、本当に山梨県の山の中で、明野村(現北杜市)だったかな、本当に1時間ぐらいかけて学校に行くところで育ったんです。主体的で外遊び中心で、道草食いまくりみたいな、僕が花まる的に言う「最高にいい子育ての中」で育っているんです。
なので、「あの木にカブトムシがいるかどうかとか、いまだにわかりますよ」とか言うわけです。メルカリの仕事になんにも関係ないんだけれど、「俺、カブトムシのいるところがわかるから」「ああいうところにいるから」みたいなことを言うんですよ。
そんな彼にインタビューをしておもしろかったことがあります。例えば、200人ぐらいいるとすると、「あいつとあいつ、顔曇ってるな」とか「こいつとこいつとこいつを束ねて、こうチーム組んだら絶対うまくいくよな」というのが、彼はもう瞬間的にパッと見えるというんですね。
これが、花まるがずっと言っている「見える力」なんです。ほかの人には同じ状況に見えていても「これとこれを動かしたらこうなるじゃん」みたいな、アイデアとか要点とか本質とか、そういうものが見える。
そういう力で、誰よりもリーダーシップを発揮できちゃうんですよ。「みんなこうしたほうがいいと思うよ」ということを言えちゃう。もう屋根の上側、人間力勝負組ですよね。
だから、それは絶対にありだなと思うんです。つまり、どんな業種でも、お医者さんだとしたら「あの先生に診てほしい」と言わせる力とかですね。そういう人間力は、育て甲斐があるし、絶対に仕事としてはなくならない。人工知能では代替できない部分だと思います。
高濱:もう1つは、屋根のとんがりが、僕がさっき言った(昔と比べて)変わった部分なんです。実は私、「ゲームなんか子どもにやらせるな」と言ってスタートしたんですよ。私の問題意識は、(高濱氏が書いた)本でもまた見ていただければと思いますが、社会的な引きこもりを大テーマとしてスタートしました。つまり、「飯を食えない大人を量産し続けている社会」ということですよね。
そこのなにが問題かというと、彼らは本当に考える力が弱いんです。「中間テストですか。はい。中間テストですね」「入試ですか。はい。その入試の中でどこを受ければいいかな?」しか見えていない。
つまり、与えられた価値観を鵜呑みにして、そのなかで成績を取ることだけをやっている。山口文洋さんだと、「いや、そもそもそんな入試必要?」みたいに言えるのですが、この考えがないんですよね。
「別に社会がどうなるかわからないし、免許持った人だからってなんでそんなこと聞かなきゃいけないの?」「俺が生きる上でぜんぜん関係ねぇじゃん?」みたいに、ザッと流して全体を構築をするような思考力がないんです。
これは「なぞぺー」というところで(テーマにしているのですが)、そこはまだイマイチですが、「Think! Think!」というものをWebに乗せたら世界にリーチしたんです。この面でも「私が思いもつかないリーチの仕方をテクノベート時代の新世代はやっちゃうんだな」と思いましたね。
「ゲームをやるな」と言っていた意味は、社会的な引きこもり君たちが本当にゲーム漬けになっていたからなんです。男子たちが「中毒性があるな。かわいそうに。この20数歳の人は、お母さんがゲームばっかり与えちゃったからこんなんなっちゃったんだな」と現場感からそう思って言っていたのですが、もうこの時代になっちゃうと……。
屋根のとんがりの、もう1つの意味は専門性です。超専門性。もうほかのことはなんにもできなくていいから、めちゃくちゃプログラミングで尖っている、みたいなことがありますよね。
まぁ、どことは言いませんが、ある会社のある天才プログラマーはそうなんですよね。挨拶はちゃんとできないし、着ているものもTPOをわきまえない。常識は読めないけれど、(ゾーンに)入ったらガーッと人の何倍もやっちゃう。この力があれば、すごく人間力のある社長と組んで1+1が1000になるみたいな時代です。
そういう意味でいうと、武器を持っておく、すごい尖りを持っておくということを意識して、我が子たちに専門性を(つけるのも選択肢の1つです)。賭けですけどね。だけど、それで社会的に成立している人たちを見ると「この子は本当好きだから、そっちやらせるわ」というのは今の時代、絶対ありだなと思います。それが僕の、ここ数年での1つの答えです。
福武:ありがとうございます。
福武:今、先生のほうから話があって、何度か山口さんの話が出てきましたね。みんながついていきたい山口文洋の人間性。今でこそそう言われていますが、もともとパチプロで……。
高濱:25歳までパチプロですよ。
福武:(パチンコで)生計を立てていたんですよね。どういうふうにそうやって変わってきたんですか? あの頃、人ついてきてないですよね。
山口文洋氏(以下、山口):それ、動画で(残るのに)言っちゃダメだって!
(会場笑)
いや、僕は今リクルートで教育事業をやっていて、「スタディサプリ」という、EdTechというか、テクノロジー使ったサービスをやっています。でも、なにか高尚に教育を進化・発展させたいということではありません。
実は子どもの頃、自分の環境が自己肯定も含めてすごく良かったので、自分の原体験で「こういう環境がもっとあったら、さらにいいだろうな」とか、それが少しでも広がらないかなとか思っています。
あと、自分に子どもが3人いるんですよ。子どもにこういうような、学べる環境を提供できたらいいなという個人的な理由がけっこう大きな比率であります。そういう思いで日々仕事をしています。
それはどういうことかというと、僕も神奈川県の秦野という、田舎で育っているんですよ。本当に実家も、そのときは嫌いだったんですけれど、振り返ると、登山口の近くにあって、家の周りは畑と田んぼと山と川がいっぱいありました。田舎だからこそ、例えば土地も庭があったり、家も広かったりしたんですね。そういう無限なキャンバスがあったんです。
その無限な中で、縦横無尽に自分で創意工夫をしてなにかつくっては、親やおじいちゃん・おばあちゃんに直されたり壊されたりして、また自分でもう1回つくる。そういう創造活動を何度も繰り返した中で、今の自分の、事業をつくったり会社の未来を描いたり、そういう想像力が養えたのかなと思っています。
その一方で、やっぱり小学校から義務教育として学校へ行って学ぶことが出てくるんですよね。でも、この学校の中で出会った先生とか英語・数学・理科・社会とかの学びも含めて、なんだかハマれなかったりもするんですよ。
でも、母親が教育熱心だったこともあって「絶対これやりなさい」とか、学校が終われば、いろんなお稽古を含めて、自分の興味が湧かないことをいっぱいやらされる。親は親で考えてくれたんでしょうけど、ハマれなかったんですよね。
学校も、本当にワクワクを教えてくれる、恩師と呼べるような先生との出会いもなかった。でも、本当はここにもおもしろさがあったのかもな、と今は思っています。
「スタディサプリ」というものを、僕はなんのためにやっているかというと、やっぱり学校の先生とはリアルな運命的な出会いがあったらいいですよね。でも、いろんな学校に通う中で、そういう人と人との相性も含めた出会いは、なかなか難しいです。
そこで、オンラインでもいいので「あっ、この先生の学びは引き込まれる」というような、「この学問のおもしろさはこういうことだったんだ」「よし、わかった。できる」みたいな感覚を教えてくれる先生との出会いがあればいいなと思っているんです。
山口:あとは、英語・数学・理科・社会じゃなくても、無限の学びがあるじゃないですか。そういった教養とかリベラル・アーツとかを学べるようにしたい。実はライフイズテックの水野君と組んで、プログラミングの講座なんかも置いているんです。
学校では学べないような無限の学びの場があって、そのオンライン上の動画で、最速・最良のコンテンツで、最大限に効率よく基礎知識が学べたらいいですよね。なんだったら学校の中でも、英語・数学・理科・社会はICTと先生がうまく組み合わせながらパッと終わらせてしまってもいいと思うんです。それ以外に、もっとディベートとかクリエーションとかをしていくような授業があればいいですよね。
それがプロジェクトベースラーニングとかアクティブラーニングとか言われるのかもしれないですけれど、そんな授業がいっぱいできるようになってほしいし、放課後も、授業の繰り返しの塾・予備校よりは、花まるさんはまさにそういったことをしていると思いますが、学校では学べない体験ができるアフタースクール的なものがいいと思うんです。
そういったサービスを受けられることもそうですが、僕は、自ら自分の遊びをつくれる子ども時代を過ごせるようになることが、この不確実な時代の中で生きていく大人になるために大切なことの1つなのかなと思っています。
とにかくやらないといけない、must(やるべきこと)やcan(できること)は、できるだけICTも使って生産性・効率性をマックスに上げていく。その上で、will(やりたいこと)を自らつくり出せるような、幼年期の時間をつくることがやりたいですね。
これには社会の仕組みや、あとは学校関係とか教育関係者とかが関係してくるのですが、キーは両親になると思っています。「生き抜く力」は、親が子どもに提供していくことが大事なんです。
だから、子どもが勝手に自分で考えて決められる、その時間と空間を与えられる社会にしていきたいなと思っています。日々の事業としては、その効率化を進める源泉の仕組みづくりをがんばっています。どうですか? パチプロからまぁまぁ真面目な話になりました。
(会場笑)
福武:すごく良い感じの話になりましたね。お子さんがいらっしゃる中で、社会的にはそういうサービスを提供するということですね。ただ、実際は自分のお子さんとあんまり向き合ってこれなかったという話がさっきありましたよね。
そのなかで、環境がすごく大事ということで、花まるさんのキャンプに参加されたんですね。一泊二日でしたか? その体験で考え方が変わったなどはありましたか?
山口:僕は今、7歳、3歳、0歳の子どもが3人いるんです。1人目の長男が生まれたときには働き方改革ブームの手前で、本当に「24時間働けますか?」という感じで、この「スタディサプリ」中心に、事業をつくっていくことに、誠心誠意懸けていたんですよ。
ですが、ある時に、これを動画で言うのもなんなんですけれど、うちの妻から「それは人間としていかがなものか?」と言われたんです。
高濱さんに後ほど話していただいてもいいんですけれど、当時、父親と息子が肩寄せ合って2人だけで過ごす時間がぜんぜんなかったんです。息子は花まるさんの学習会に通っていたのですが、息子が3歳4歳になった時に、改めて妻が父親と子どもが行くキャンプに申し込んだんです。
はじめて3歳4歳だった息子を車に乗っけて2人旅をしましたが、そこで仕事以上に大切なものに気づいたんです。それと社会の変化が相まって、僕は今、社長として4年目になりますが、「死ぬまで働けますか?」というモーレツ社員から、今では朝の9時半までは予定を入れず、子ども3人を送って通勤する子育てパパ社長になりました。
(会場笑)
福武:あと、先ほど山口さんから話がありましたけれども、例えばワクワクするとか、ハマるハマらないとか。今日は水野さんもいらっしゃいますけれども、今日いらっしゃるなかで「私プログラミング超得意です」という人はいますか? いない。
水野雄介氏(以下、水野):いないですね。
福武:ただ、先ほどのmust・canという話でいくと、なんとなく「やらなければいけない」という流れがありますよね。とはいえ、そのプログラミングの勉強に対するアプローチとしてfun的な要素や楽しさの要素が重要だと先ほど水野さんがお話しされていました。
おもしろかったのは、最近、単なるプログラミング教育だけではなくて、そこに例えばディズニーさんと一緒にやっていて、おもしろさを追求した取り組みが、実際は子どもだけではなく、大人にもウケているんですよね?
水野:そうですね。僕らは中学生や高校生向けのプログラミングをやっているんですけれど、中高生向けにディズニーさんと共同でプログラミングの教材をつくったんです。4月に出したのですが、実際のユーザーとしては、7割ぐらいの方が20代後半から40代ぐらいの方なんです。
50代の方とかも、実際に自分でプログラミングをやっている。それはディズニーの力だと思いますが、そういった方がやってくれているというのは新しい気づきでしたね。
あとは女性の比率がすごく高くて、ユーザーの6割ぐらいは女性です。この間アメリカに行ってきたのですが、女性クリエイターを増やしていくことは社会的な課題でもあるので、そういったところもすごく驚かれましたね。
なので、なにを入口にするかが重要だと思っています。「やらなきゃいけない」で学んでも続かないし、つまらないし、そんなの身にならない。
社会人でも「やらなきゃいけない」で仕事をするのではなく、やっぱり好きなもの・興味があるものとしてやっていれば、ほかの人よりも仕事に対しての思考の時間が深まって、いい仕事ができることがあると思うんです。
僕は「なんか楽しそうだからやっていたら、勝手に学べちゃっている」というのが学びとしての理想だと思っているんです。今はそういったアプローチから学び方を変えていきたいと考えています。
福武:ありがとうございます。
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