2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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河田豊氏(以下、河田):「HOTEL SHE」におけるコミュニティの作り方のような話は、これから先の学校の現場に大事なのではないかと僕は思っています。
最近ですと、大学などもそうですが、外部の方を呼んで講演をしてもらったり、特別授業のような話がこれからもっと増えるのではないでしょうか。
そうなったときに、親と学校や、外部の方と学校の先生、生徒などをコミュニティとしてうまく機能させていくというか、1回のみでは終わらないような仕組みづくりのようなものがすごく大事なのではないかと思っています。
「HOTEL SHE」でやっている仕掛けは、本当に小さなことも多いと思うのですが、ヒントになるのではないかとなんとなく思うのですが。具体的に宿泊者とホスト、あるいは宿泊者同士が仲良くなるための話しかけ方や、この場所でこういう話題を振るなど、なにかそうした工夫をしているとすれば、どんなことがありますか?
龍崎翔子氏(以下、龍崎):1つあるとすれば、ホテルの共有スペース内にゲストが滞在する時間を多く作るということと、そこでゲストがなんらかの行為ができるようにするフックを作るというのがあります。
1つは、コーヒースタンド。ここでは、お客さんがコーヒーを注文するといった行為が生まれますよね。そういう「コーヒーが飲みたい」という目的を持ったお客さんがいらっしゃるときにコーヒーの話をすれば、自ずと、会話の共通点ができるじゃないですか。「どういうコーヒーが好きですか?」、「今日はこういう豆が入っているのです」など、そうした会話の生まれるスポットを作っておく。
もう1つは、レコードのラックですね。私たちのホテルはすべての客室にレコードプレーヤーが置いてあり、フロントのレコードラックから、お客さんが自由にディグって(探して)「お部屋に持って帰って聴いていいですよ」というシステムにしています。
そうすると、やっぱりお客さんがレコードを見ているときに、お客さんがレコードを聴きたいという気持ちになっているのはもうわかるじゃないですか。そのタイミングで「今、こういうレコードが入っているんですよ」「このレコードはどこどこがセレクトしたものなんですよ」といった話をすると、自然と共通の話題が生まれて、すごくコミュニケーションが取りやすくなります。
そうしたフックをたくさん作るというのが、1つの仕掛けかなと思います。
河田:なるほど、なるほど。
三原菜央氏(以下、三原):シェアキッチンもあるそうですね。
龍崎:シェアキッチンもあります。「HOTEL SHE, KYOTO」はシェアキッチンに大きなスペースを取っていて、そこでお客さんが自由に料理をしたりできる仕組みになっています。そこも話しかけやすいですね。
三原:そうですね。
龍崎:「今日はなにを作らはるんですか?」と話しかけると、やっぱり「今日はこんなのを作ったよ」というような話になったり、かなり楽しかったりします。
河田:「保護者と先生、地域の人たちが、一緒に学ぶ場を作りたい。HOTEL SHEの話をすごく聞きたい」と、まさにその通りのことを書いていただいていますが。
龍崎:ありがとうございます。
河田:すごく共通項、共通の話題を探す、あるいは作りにいくようなことをかなり意識してやっているということですよね。
龍崎:そうですね。はい。
河田:それは、いつそのようにするとうまくワークすると気づいたのですか?
龍崎:そうですね、
「共有スペースに滞在する理由がない」というのが「HOTEL SHE, KYOTO」のときの自分の反省点でした。どうやって滞在する理由を作るかということを考えたときに、「その場で長時間なにか行為をする、そうしたスポットが必要だな」という考えに至って、その結果、OSAKAのかたちができたという経緯があります。
きっかけとしては、「HOTEL SHE, KYOTO」において、箱はあってもコンテンツが不十分だったというところに考えが至ったのがきっかけだと思いますね。
河田:なるほど。
河田:おお、ちょっとおもしろい質問がありますね。「ホテルに来るお客さんの対象として、コミュニティを持ちたいと思っている人だけに絞っているということでしょうか?」という質問があるのですが、これはどうですか?
龍崎:そうではありません。というのは、ホテルに関しては選択肢の多様性を常に作りたいなと思っていましたから。ホテルで、疲れたから自分の部屋でゆっくり寝たいという方にはそうしてもらいたいので、自分のお部屋の中でも楽しめるような仕掛けを作っています。
また、「旅先だからちょっと現地の情報を知りたいな」「ちょっとおもしろいことがあったらいいな」という気持ちの方には、そういったポジティブな体験をしていただけるよう、共有スペースに仕掛けやイベントを施し、コンタクトの多様性をとろうと思っています。
だから、すごく積極的な方ももちろん来てほしいですし、「1人で過ごしたい」といった方でも楽しめるような空間にするというのが最大のポリシーではありますね。
河田:なるほどなるほど。でも確かに、この質問の意図はすごく僕もよくわかりますね。オープンな人じゃないとあがりにくいのではないかというように思われますが。
龍崎:そうそう。
河田:そこはでも、そういう人はそういう人で楽しめるようにしっかり担保しているよと。
龍崎:そうですね。今もソーシャルホテルというコンセプトでホテルを作らせてもらっているのですが、たぶんゲストハウスもすごく似ていると思っています。
ゲストハウスのいいところは、すごくラフにいろんなお客さんと知り合えたり、スタッフと絡めたりすることだと思うのです。しかし、逆にいえば、ゲストハウスは自分の専用スペースが狭すぎるから、そうせざるを得ないというところもあると思っています。
それはそれでちょっと負担だと思うのです。よほど人と話すことが好きな人じゃないと行きにくいと思うので。
ですから、そうした自分のプライベートな空間を確保するということと、ソーシャルな空間がある、ソーシャルな時間があるというところをうまくハイブリッドすることができないかということを考えて、ソーシャルホテルという形を作りました。ですので、どのような過ごし方でもできるようにしたいと思っています。
河田:ああ……え、21歳ですよね?(笑)。
三原:言葉の選び方が素晴らしいですよね(笑)。
河田:すごすぎるなと思っていますが。ありがとうございます。
河田:ちょっと別の話題を聞いてみたいと思うのですが。日本とアメリカ、両方の教育を体感値としておそらくご存じだと思います。違いはどこにあると思いますか?
龍崎:大きな違いとしては、そうだな、1つはアメリカの教育はすごくラフですね。
河田:ラフ?
龍崎:ラフですし、フリースタイルだと思います。読み聞かせをするとなると、1カ所に集まったり、また別の授業をするときは違う机の組み方をしたり。すごく教室内を動きますし、教室外に出ることも多々あります。すごく昔のことなので、私もはっきりとは覚えてないことが多いのですけど。
河田:いらっしゃったのはいつ頃の話でしたっけ?
龍崎:小2なのですね。
河田:小学校2年生ですか?
龍崎:はい。ですから「教室、時間割、座席」といった感じではなくて、空間自体を最大限活用して授業をしている印象がありました。後はアメリカの小学校ではイベントをめちゃくちゃやっていましたね。
河田:イベントですか。どういうものがあるのですか?
龍崎:ハロウィンやクリスマス、バレンタイン、100日記念日(始業から100日目を祝う)など……本当にたくさんありました。ハロウィンの日は2日間ぐらいかけて準備して、みんなでお墓のボウリングをするのですよ。
河田:お墓のボウリング?
龍崎:R.I.P.と書いてあるお墓をピンに見立ててボウリングをしたり、みんなでクッキーを作って配ったり。誰かの誕生日には、保護者がケーキを持ってきてみんなで食べたり。すごくラフだなという。
河田:それを学校でやるのですか?
龍崎:学校でやっていました。あと、彼らは意外と評価が辛辣ですね。
河田:どのような感じなのですか?
龍崎:彼らは普通にABCDのDをつけますね。もちろんうちが海外から来ているので、本当に英語などはダメだったと思うのです。だからDをつけられたということもあると思いますが……。
日本の小学校では、きっちり評価せずにみんなふんわりとした先生のコメントをつけるようなことが多かったと思います。でもアメリカでは、もう生徒の作品などに対してもA、Bなどという評価をはっきりつけていたという印象があります。
河田:なるほどなるほど。ありがとうございます。
河田:(sli.do、会場から質問などを受け付けられるサービスの)一番下の質問を僕もしたいなと思っていました。さっき話に出てきたラフさや、場所に応じて変えるといったことも、まあメリットはいろんな場の活性だったり、みんなの空間づくりといった話がたぶんあるのだと思いますが、それでデメリットだと思うことはありましたか?
龍崎:デメリットになる部分……たぶん学習効率はめちゃくちゃ悪いと思います。あまり勉強という意味では伸びにくいのではないかなと。たぶん、学習などにかけられる時間自体はそんなに多くなかったような印象があるので。
河田:それは知識をインプットするということですか?
龍崎:そうですね。知識のインプットという意味での効率はあまりよくないと思うのですが。
私はアメリカの教育に関してくわしいわけではありませんが、たぶんそうした知的好奇心を刺激する土壌づくりという意味ではメリットになるほうなのではないかと思います。
あとは、先生のコントロール能力が問われていました。確かに1クラス20人ぐらいだったからできたことではないかとも思いますね。
河田:そうですよね。ラフにすると、それこそ学級崩壊になるのではないかというイメージがありますが、そこをコントロールするコミュニティマネージャーのような能力が求められそうな、レベルが高い感じがしますが。
龍崎:そうですね。なかなか難しいと思いますね。例えば小学校高学年や中学校になったときにどうやっているのかは私にもわかりませんし、日本でそれが丸ごと適用できるかというと「どうだろう?」というところもあると思います。
河田:確かに、1つ前のセッションで藤原(和博)先生がおっしゃっていた日本の小学校教育の強み。とにかくインプットをしっかりしていくというところでいくと、もしかしたらさっきお話しされたデメリットみたいなところは、そっちに日本が寄せ過ぎてしまうと、日本の強みそのものがもしかしたら失われるのかもしれません。
でも、エッセンスとしては参考になることはきっとあるのでしょうね。
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