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DMM亀山会長・特別講演「中学生諸君へ」(全4記事)

DMM亀山会長「学校の勉強はほとんど使わない」“ロボットvs人間”の未来に向けたアドバイス

DMM.com会長の亀山敬司の地元石川県の中学校で特別講演が行われました。中学生が将来避けることのできない「平和」や「憲法」や「仕事」のあり方について、どう考えていくかを話しました。その時の講演内容を抜粋、編集して、4回に分けてお届けします。

10年後・20年後の仕事を考える

亀山敬司氏(以下、亀山):明日から「職業体験」が始まるらしいね。いろんな会社へ行って仕事を体験するんだよね。すごくいい経験だと思うよ。

じゃあ、「キミたちが大人になる10年後20年後に、世の中の仕事がどうなっているか?」という話をしよう。

その頃は今よりぜんぜん、多くの仕事をロボットがやるようになってるんだ。

マンガなんかで見るロボットは、人の形をしてしゃべったり、歩いたりするイメージだと思うけど、俺の言うロボットは、人の代わりに仕事をしてくれる機械やコンピューターのことだよ。一番わかりやすいのが自動販売機だね。手足はないけど、100円払うとジュースを渡してくれる。

今までのロボットは、物流や工事現場や駅の改札で、人に代わって簡単な仕事をしてきた。でも、最近のロボットは人工知能の進化ですごく頭が良くなってきててね。クイズ王や将棋王でも勝てなくなってきたんだ。だから、これからは難しい事務仕事とかもいろいろできるようになっていくんだ。

自動車も自動運転車になって、ドローンっていうタケコプターみたいなのが荷物を運んでたりね。コンビニやマクドナルドも、巨大な自動販売機になってるかもしれないよ。

だからね、明日体験する仕事っていうのが、将来ロボットに取って代わられちゃうかもしれないんだよ。

ロボットはすごく働き者なんだ。24時間サボらないし、ミスは少ないし、文句も言わない。そして、スマホやパソコンみたいに、価格もどんどん下がってる。

会社の社長さんはケチだからね。仕事をしてくれるなら、人間だろうがロボットだろうが給料の安いほうを選んじゃうんだ。

ってことは、ロボットができる仕事を人がやっても、ロボットと同じ時給しか貰えないってこと。そしてその仕事の時給は毎年だんだんと下がっていくってことさ。人が作ったロボットに人が負けるのって悔しいよね。

今までの大人は、言われたことをしっかり覚えて真面目にコツコツ働いてきた。お祖父ちゃんの頃まではそれでよかったんだけど、お父さんの頃から怪しくなってきた。言われたことだけをやっていても豊かになれなくなってきたんだ。

多くの大人はなんとなくわかってるんだけど、「まだしばらくは大丈夫」と思ってるか、「今さら変われない」と諦めてるか、どっちかなんだよ。

でもね、キミたちの頃になると間違いなくそれだけじゃダメになる。だから、ロボットができない能力を創らないといけないんだよ。

人間にできて、ロボットにできないこと

じゃあ、ロボットは何ができないのかって話なんだけど、ロボットは言われたことはできるんだけど、自分で問題を作れないんだよね。

だからロボットに勝とうと思ったら、問題を作れる能力を持たないといけない。解ける力じゃなく、作る力をね。

じゃあ「問題を作る力」ってどんな力なのかな? どうかな、みんなは自分で問題を作れるかい? でもね、それはそんなに難しいことじゃなくて、なにかあったときに「なぜ?」って思えることがその力なんだよ。

人から言われなくても、「これでいいの?」って自分に問いかけてみる。「何もないところから自分自身に問題を出す」ってことがその力なんだ。

例えば、そこにゴミが落ちてて、「汚いんじゃないかな」と思ったら、自分の意思で拾うとか、みんなが誰かを無視してても、「なんか違う」と思ったら自分の意見を言うとか。そんなふうに自分で勝手に気づいて、自分で勝手に動くことなんだよ。

もっと言えば、お父さんお母さんに注意されて、「え、なんかおかしくない?」って思うことはないかな? そんな時は、納得もしないで「うん」と言わないことさ。「そんな汚いもの触らないで」とか、「あの子と遊んじゃダメ」とか言われても、「どうして?」って聞くことだよ。

やりたいことを止められたら、理由を聞かなきゃいけない。出された課題にも「なんのためにやるの?」って考えることが必要なんだ。

でも、キミたちが日頃やってる勉強ってのはさ、出された問題に対して答えるっていうのがほとんどじゃない。テストで点を取るためには丸暗記とかしてるよね。

でも今は、そんな試験の答えはスマホの中に全部入ってるからね。「何年何月に何があったの?」って話しかければ、スマホロボットがすぐに答えてくれるよ。そんな力はスマホを買えば、すぐに手に入る力だね。

明日、いろんな会社に行ったらキミたちは作業を与えられるわけ。たぶん、「これを向こうに持っていって」とか「商品を棚に片づけといてよ」って言われると思うんだ。

だけど、それだけだと結局さっき言ったように、将来はロボットでもできる仕事なんだよ。せっかくさ、そういう体験させてもらえるなら、そこの社長さんに思いついたことを言ってみようよ。

例えば「何のためにこれは置いてあるんですか?」とか、「どうしてそんなふうにするんですか?」とか聞いてみるといい。

そして、「このほうがかわいいですよ」とか「品揃えを変えましょう」とか、「こうしたらお客さんが喜びますよ」とか、そういったことを、試しに言ってみたらおもしろいんじゃないかと思う。

大人になると「今」に慣れちゃうからね。いろんなことが「当たり前」で終わらせちゃうんだ。だから、気づいたことを教えてあげようよ。「それって、おかしいんじゃない?」って。それはロボットのできない仕事なんだよ。ロボットは命令に従うのが仕事だからね。そういうお節介なことができたら、ロボットに勝てる人間になれるんじゃないかな。

あとはね、他人に「会いたいなぁ」と思われる人になること。近所のおじちゃんや駄菓子屋のおばちゃんに好きな大人はいないかな? 会うとホッとするような人。その人と会いたくて店に行くことってあるじゃない。そんな人になれたら、それもロボットにはできない力だね。

今やっている勉強は大人になってほとんど使わない

じゃあ、そろそろみんなの質問に答えようかな。質問のある人手を挙げて? 誰も挙がんないな。う〜ん……そこの君、なんでもいいから聞いてみてよ。はい、マイク持って。

中学生:あの〜、中学校の時、頭よかったんですか?

亀山:中学も高校も悪かったよ。ほとんど勉強してなかったね。授業中も寝てるかボーっとしてた。そこの端で寝てる奴と同じよ(笑)。でもね、実のところ、大人になったら今やってる勉強は、ほどんど使わないんだよね。

例えば、「いい国つくろう鎌倉幕府」なんてさ、覚えててもなんの意味もないし、古文なんて読む機会なんてないよ。ルートや円周率なんて会社で使うやつ見たことないね。だから、キミたちは使わないことばっかりやらされてるんだよ。

(会場ざわざわ)

ただね、覚えるために頭を使ってるじゃない。その時に使った記憶力なんかは残ってるよね。考えた分だけ脳みそのシワは増えるしね。だから、詰め込んだものが大事っていうより、その時に頭を回したっていうことには価値があると思うよ。

歴史や科学は本当はおもしろいんだけど、つまんない年号や記号や人の名前ばっかり覚えろと言われるから嫌になる。おもしろくなる前に嫌いになることも多いよね。

でも、学んだことがきっかけになって興味を持つこともあるかな。初めから知らないと世界は狭いままだからね。俺なんかは英語サボってたから、日本の中でしか生きられなかった。世界が狭くなっちゃったよ(笑)。

授業が終わるのを待ってる人っていない? 俺はいつも「早く終わらないか」と待っていた。授業がつまんなかったからね。でも、大人になって仕事を始めてから、その時間がモッタイナイと思うようになってね。

どうせやらなきゃいけない作業なら、サッサと片付けて時間を作ろうと思ったんだよ。そしたらそのために知恵を絞るし、脳みそのシワも増えてね。頭が良くなってきたよ。楽しくもなってきたね。

でもね、大人になっても、時間が経つのをひたすら待ってる人もいるんだ。そんな人は人生の半分くらいを、会社の中で「つまんない」って言いながら暮らすんだよ。それは人生がモッタイナイよね。

大人が知っているのは、未来ではなく過去

中学生:今の中学校時代で、しておいたほうがいいことは何ですか?

亀山:そうだね。とりあえず、目の前の勉強や運動をしとけばいいんじゃないかなぁ。キミたちはまだ1人じゃ生きていけないんだ。

どうせ家出はできないし、学校へも行かなきゃいけない。卒業したら高校へも行きたいと思ってるよね? だったら将来役立つかなんて関係なく、受験のための勉強をするしかない。覚悟を決めてやるしかないんだ。

だって、一番始めに「将来に何かやりたいことがある人いる?」って聞いた時、手を挙げた人はいなかったじゃない。やりたいことがないのなら、それまで準備でもするしかないよね。

でもそのうち、本当に自分のやりたいことを見つけると思うんだよね。そんな時に、漢字を知らないで読みたい本が読めないとか、必要な計算ができないとかってなると困るじゃない。学歴もあったほうがチャンスが増えるしね。

今やってることが無駄じゃないんだけど、ただそれだけじゃつまんないだろ。だからちょっとでもやりたいことを見つけたら、それをやったほうがいい。マンガを描きたいとか歌が上手くなりたいとか、やりたいことは親に隠れてでもやったほうがいいよ。

そして、そのために必要なことが何かを真剣に考えてみると、目の前の勉強も受験のためじゃなく、自分のやりたいことのための勉強になるよ。その勉強はすごくおもしろいもんなんだよ。

ちょっと付け加えると、さっきから「大人の言うことは信じるな」みたいなことばっかり言ってきたけど、君たちのほうが正しいとか勘違いしないでね。どっちかと言えば、何も知らない君たちより大人のほうが正しいに決まってるじゃない。

ただ、お利口さんにだけなって、何にでもうなずいてちゃダメだってことを言いたかっただけなんだからね。

自分では何も決められない甘えん坊が、「親のせいでこうなった」とか言うことがあるけど、それはやっぱり自分のせいだからね。

思い通りにならなくても、誰かのせいにしちゃダメだってことよ。親も先生も自分の得にもならないのに、アドバイスをしてくれてるんだからね。

ただ、それが本当に正しいかどうかを、自分で考えることをやめちゃいけないってこと。大人は過去を知ってるだけで未来を知っているわけじゃないからね。

ちなみに俺も大人だからね。俺の言ったことも全部を真に受けちゃいけないよ(笑)。

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