2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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林要氏(以下、林):残りあまり時間がないんですけど、弊社でやろうとしているロボットについてササッとご紹介しようと思っています。
私は「GROOVE X」という会社を去年の11月に立ち上げて、実稼働は1月からやっております。あれ、もうちょっと時間あるんでしたっけ?
司会者:もう過ぎてます。あと3分くらい。
林:あと3分。かしこまりました。ぜんぜん違ってました。
(会場笑)
ロボットをやっているんですが。ロボットという名前、ここに今日来た方は「これってバズワードだよね」ってことを理解して帰っていただきたいと思います。
ロボットって言葉はなにも表してないんですね。なぜかというと、ちょっと賢くてモーターが付いていれば、全部ロボットだって言われちゃっているからです。
このロボットを理解する上で、まったく相容れない2つの世界があります。機能重視の部分と感性重視の部分。
こちら側が自動運転だったり、ドローンだったり、そういったもの。感性重視っていうのが、ペッパーが切り開いたような、心の琴線に触れるような瞬間のあるロボットです。私共がやっているのは、まさにこの後者に両足ずっぽり突っ込んでいるロボットです。
機能重視と感性重視というのは、メリットが明確に違っていて、機能重視というのは、コスト低減のためにあるロボットです。
感性重視というのは、究極的には人の能力の向上のためにあるロボットです。いわば僕らが疲れた時に癒されてパフォーマンスが上がるとか、もしくは弱い自分をどうやって元気づけてくれるのかと。存在が大事なのが右の感性重視型、存在自体はなるべく消して、人の仕事の代わりをしたり補助をするというツールの延長が左です。
洗濯機とかいい例ですよね。どんどん存在感がなくなって、機能だけが進化していく。それが左側です。ドローンなんかも同じで、ドローンってすごいよねって言われてますけど、実際に飛んでいるのを見たら、ブオーンってすごい音で、怖いわけです。誰もその怖さは実は必要としてない。上から撮れている映像や、物が運べるという機能が必要なだけです。
ゆえに、存在は要らなくて機能さえあればいいものと、それから存在自体がすごく大事なものの2つに対して、今のロボットブームに乗ったロボットって、こっち側だけちょこっとできて、あっち側もちょこっとできるみたいなロボットがけっこう多い気がします。
それはどうしてかと言うと、ここを綺麗に区分けしてないからですね。なので、仕事がそこそこできるけど、ちょっとかわいいから、まぁいいかなという、50と50を足して100みたいなロボットが出てきちゃうんです。でも僕らはそういうのはビジネスとしては立ち上がらないと思っています。
こっち側だけで成立して、もしくはあっち側だけで成立している、それが大事。私共はこっち側だけで一旦成立しているロボットを作ろうとしています。
とりあえず、最後は納まっていませんが、以上で終わらせてもらいます。ありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:ありがとうございました。さっそく、質疑応答を10分間したいと思います。手短に、お1人1つの質問ということでお願いできればと思います。
質問者1:どうもありがとうございました。最初のほうに、ベンチャーはIPOではバイアウトを目指すというお話ありました。もう1つはずっとしつこくやり続けるというのもあると思うんですけど。GROOVE Xはどの道を?
林:個人的にはIPOのほうが夢が大きいから、まずはIPOを目指すほうがいいですよね。それぞれのスタートアップはIPO目指していいと思うんです。目指していいと思うんですけれども、僕の今日のプレゼンはどちらかというと、日本の産業を元気にするというマクロ目線で話しています。
大企業にとってベンチャーというのは、実は、新陳代謝をするために有力な方法。ベンチャーを買うというのが大事な選択肢だというのをそろそろ認識したほうがいいんじゃないかなって思うんですね。
大企業のなかで新規事業を一生懸命立ち上げようとするのは、その努力は続けていってもいいんですけど、意外に効率が悪い。なので、今日のテーマはベンチャーとしてどう成功するかという話ではなくて、日本の産業をどう盛り立てますかという話でいくと、ベンチャーと大企業は車輪の右輪。
この車の両輪でいくと、今は片輪走行ですよ。左側というのは、日本もスタートアップがさかんになってきましたねって話はあるんですけど、それが大企業にとってすごく新陳代謝がさかんになるようなスタートアップかといわれると、ちょっとまだそこまでは揃っていないわけです。
その両輪が大事だよという意味で、M&Aというのは、大企業にとってすごい大事だから、がんばってプレミアム付けて買うことが大事だよという大企業目線で今話しています。
ベンチャー側は別にIPO目指していいと思うんです。むしろ、ベンチャー側がバイアウト目指したら僕は不健全だと思ってます。ベンチャーがどこどこに買われたいから、こういう会社作ろうっていうのが、シリコンバレーでは今起きています、実際。でも、それを突き詰めるのは健全と言えないので、たぶん、ベンチャーはIPO目指しながら、大企業がM&Aを目指すというのが正しい姿じゃないかなって思っています。
司会者:ありがとうございます。もうお一方いかがでしょうか?
質問者2:どうもありがとうございました。1点、教育とは自分を知ることとか自分の役割を知ることじゃないかということなんですけど。要は、大企業からすると「教育って学校でやってきてもらうものでしょ」というものなのか。やっぱり、新入社員を入れて育てていくという意味で、教育を企業側としてもやるべきだと思われているのか、そのあたりを。
林:ありがとうございます。教育って、実は会社にやってもらうものではないだろうなと思っています。勝手に自分がどういう育ち方をしたいのかというのが大事。受け身な人はダメですね。
ただ、この自らの育て方をちゃんと知っておくというのは、教育のなかに入るんだと思うんですね。「会社や学校が育ててくれるでしょ」って人ができてしまっている時点で、それは教育が間違っている。
自分で育つんだよ、育つためにはこういう経験しなきゃといけないんだよというのを教えるのが、僕は本来の教育だと思っているんですね。
けっこう脳の性質って人によって違うんですよね。役割がみんな違うようにできています。そして集団はある程度のバリエーションがあることによって、いろんな状況に対応できるようになっている。
ちょっと例が悪いかもしれないですけど。例えば集団のなかで、ある一部の人はすごく生産性が高くて、真ん中に平均的な生産性の人が6割ぐらいいて、残りの2割かくらいは生産性が低いという話ってよく聞くと思うんですけど。
この、生産性の低い2割ってなにをしているかと言うと、ほかの生物の研究などでは明らかにされているようです。ここのトップの生産性の高い2割が死んだり、中間の6割が減った時に動き出せるように、生産性の低い2割は、あえて仕事をしていないと言われているんですね。
これが、昆虫なんかの研究でわかっている話です。なので、仕事をしない2割にすら意味があるわけです。集団として、企業として生き残るために。
ちょっと今の例は適切だったかはわからないんですけど。例えば、ある物事にすごい集中できる代わりに、対人関係が苦手な性質を持つ人というのは、本来はすごく貴重な性質なんですね。物事にすごく集中して、突破できるわけです。
その性質の人たちが今の世の中で生きにくいとことは、実は産業にとってはすごい損失なわけですね。理系でよくできるプログラマーとかってそういう性質の人が多くたってぜんぜん不思議じゃないわけです。
その人たちがぜんぜん負い目なく、俺ってこういう性質で、こういう状況だったらがんばれるけど、こういう状況だったら弱いよねということをちゃんと認識させてあげることが教育じゃないかと思うんですね。
今の教育というのは、そういうところが比較的弱くて、標準偏差でいうと、真ん中の人たちを対象にしていて。分けているのが、学歴で分けていたりするわけですけど。
本当はこういう性質の人がこういう性質の人にマネジメントされると両方が輝くよねみたいな。例えば、アスペルガー気質の人のマネジメントみたいな仕事があったっていいと思うんです。そういうふうに人の性質がいろいろあるってわかってきているわけですよね、僕らの性質ってどういうバリエーションがあるのかって。
そういうのをちゃんとクラスタリングして、それに合わせた生き方というのを教えてあげるというのが、今後の教育、少なくとも産業を伸ばすためには、大事なことじゃないかなと思っています。
大企業のなかでは、そういうのじゃなくて、みんなとコミュニケーションがとれて、問題を起こさなくて、失敗をしないような人、というふうになっちゃうので、飛び抜けたパフォーマンスが出ないわけですよ。
飛び抜けたパフォーマンスを出そうと思ったら、そういうちょっと偏った人たちがどれだけ快適に暮らせるのかというのが実は大事だよね、と思うのです。例えば、西海岸のフィンテックなんかに行くと、あえてアスペルガー気質の人を集めている会社もあるそうです。それで、パフォーマンスを出している。
そういう人の能力を適切に使い切る会社に対して、日本の大企業が勝てますかっていうと勝てっこないんですね。というのを冷静に考えてみると、本当の教育のあるべき姿って見えてくるんじゃないんでしょうかと僕は思っています。
司会者:ありがとうございます。もうお一方いかがでしょうか?
質問者3:ありがとうございます。ソフトバンクアカデミアの卒業生という、話し方から大変若くて素敵なお話の仕方だなと。ただ、内容は大変厳しくすばらしかった。
心のサポートで人の能力の向上という御社の考え方なんですけど。癒しかなと思ったり、身体的なものに、脳に働きかけて、身体的な能力の向上してくださるのかって。人と考えると可能性が広すぎちゃうと思うんですけど、どこにポイントが置かれているんですか?
林:最終的にはすべてだと思っています。最初の製品がどこまでいけるのかというのは、僕らのなかでは落としどころは決めています。ここまでやろうと。
今の現時点での技術のなかでは、そこまで満たせば製品になるだろうと思っているものを今作ってます。ただ、それで僕らにとってのゴールではなくて、スタートとしての1つ目ですね。それは。
ディズニーで言ったらミッキーマウスみたいなもの。ミッキーマウスの後で、ドナルドも出てきて。その内、ニモも出てきて。いつかスターウォーズも買収してってことになるかもしれません。
人の能力をどれだけ向上できるのか。文化というのは、昔はここの左側、いわば、生きるために僕らほぼ100パーセントの力をかけていたわけです。洞窟に壁画を描いていた人もいるので、98パーセントぐらいが生きるのに使っていて、2パーセントぐらいが余力で洞窟に壁画を描いていたわけです。
それが、文化が進歩して、ツールがどんどん発達することによって、僕らというのは、生きるためだけに必要な労力の比率がどんどん減っています。(先ほどの図の)左の青い部分は減っている。
減った部分をどこに使ってますかと。みんなお金も時間もそんなに余裕があるわけではないですよね。だけど、それというのは生きる部分以外のところ。例えば、美容院に行くとか、男性だったらゴルフ行くとか。クダを巻きに、お酒飲みに行くとか。
僕らはそれらを生きるために必要って言ってますけど、でも、本当に必要ですかと言うと、なくたって生きていけるわけです。そういう部分にどんどん僕らというのはお金をかけています。
なので、左の100対0から0対100に持っていくのが文明の進歩だと思うんですね。その時の0対100の100側の受け口というのが、実はIT産業で今のところあんまりない。僕らはこちら側をやっていこうと思っています。
最終的にロボットが自分の能力をちょっとでも上げる、自分をちょっとでもよくしてくれるんであれば、そこは人にとって大事な部分になるんじゃないかと思ってやっております。
司会者:ありがとうございます。最後、もう1人だけいかがでしょうか?
質問者4:すいません。お話ありがとうございました。最近ふと考えるのが、日本にしかできないエコシステムってないかなって考えるんですね。
どうしてもやっぱりイノベーションとか新しいことというと、シリコンバレーというのがベンチマークとしてあると思うんですけど、やっぱり、シリコンバレーができた生い立ちとか歴史とか今までの流れというのは、日本で必ずしもできないと個人的には思っていて。日本だからこそできるものがあるのかなと思っているんですけど、その辺を、もしお考えがあれば教えていただきたいと思います。
林:ありがとうございます。ちょっと質問に質問で返すようで恐縮なんですが、日本でできない理由ってなんでですかね?
質問者4:なんとなく思うのが、各企業の特徴って土地柄ってのがあると思うんですね。シリコンバレー日本に近いと一方で思うのが、自然、日本の国って7割くらいが森林に自然に囲まれていますし。シリコンバレーも広い大地とかあって、自然もあると思うので、その辺はけっこう近いかなと思います。
やっぱりその人間の考え方とかというのは、やっぱり歴史が作ってきたものとか。先ほど、遺伝子の話もありましたけど。それとまったく違うなかで、必ずしもシリコンバレーを真似ずにできることあるかなということをなんとなく思っただけです。
林:はい、わかりました。あの、シリコンバレーが正しいかどうかは別として、大企業だけではもはや新規事業って生まれないよねというのが、僕は、大企業のいわばトヨタとソフトバンクっていう正反対のものを見て、意外に一緒だなと思って感じたことなんですね。これがまったく違っていれば、いろんな可能性あるかなって思ったんでしょうけど。
基本的にはぜんぜん違う会社です。だけれども、共通している部分を見てみると、イノベーションが企業内でとくにボトムアップで起きない力学が、僕はけっこう見えた気がするんです。それって海外を見渡しても、ほとんど一緒だなと。
だとすると、そこを日本ならではとかと言うのは難しいかな、と思っています。なので、大企業はなんらかの外部の力を得て、新陳代謝をしなきゃいけないという認識はしなきゃいけないと僕は思ってます。
じゃあ、その事業の立ち上がり方、どういう事業を狙うのかといったところに関しては、日本のオリジナリティっていくらでも出せると僕は思ってるんですね。
例えば、宗教が違う。宗教が違うとずいぶん思い込みが違う。例えば、この右側、いわばドラえもんとかガンダムとかハロとかそういういったような世界に近いわけですよね。
そういうのって日本人にとってごく自然なわけですよ。だけど海外のアニメーションでそういうのってほとんど出ていない。それは、宗教観もあるし、それから陸続きだったっていうのもあるし、いろんな条件が違うので。発想は相当違うんじゃないかなと。
そこを狙っていくっていうのは、大いにチャンスがあると思っています。例えば、僕がすごいなと思うのが、その千利休のお茶。
海外である中国から煌びやかなお茶の文化を輸入していた当時の日本で、千利休は60歳過ぎるまでそのきらびやかなお茶の世界で登りつめたわけですよね。登りつめて権力を手中にした瞬間にこれじゃないよねって言ってばっさり全部削ってわびさびの世界を作っちゃったわけですよ。
そのわびさびの世界みたいなやつというのは、たぶん日本人は相当得意。そこが、例えば、スティーブ・ジョブズなんかが憧れた部分。ミニマリズムみたいな部分に憧れた部分ではあったようですね。
なので、日本人としてどこがオリジナリティを出す部分で、どこがこのまんまじゃいけないと認めるかがすごい大事だと思うんです。なので、いわばシリコンバレーの真似をしないことが大事なのでは決してないと僕は思います。無理なものは無理と諦める。強みはどこかを知るっていう冷静さがいるんじゃないかなと僕は思っています。
司会者:ありがとうございました。これで質疑応答も終了したいしたいと思います。もう一度林さんに拍手をお願いします。
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