2024.10.10
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平尾貴志氏(以下、平尾):みなさん、こんにちは。デジタルハリウッドSTUDIO米子の平尾と言います。米子というと、ちょっとわかりにくいと思いますが、鳥取県というと最近よく聞くんじゃないかと思います。
鳥取県は、今日本で1番忙しい知事といわれる平井(伸治)知事がよくメディアに出ています。先日も『ダウンタウンDX』に出て、浜ちゃんといろいろやっていました。
今日は、なぜ鳥取県にデジタルハリウッドができたのか、というところと、今どういう現状になっているかというところを、お伝えできればと思います。
2012年に平井知事が非常に有名になった言葉で、「鳥取県にはスタバはないけど砂場はある」という親父ギャグがありますけれども、今年、鳥取県にもめでたくスターバックスができまして。この親父ギャグはもう封印ということになっています。鳥取県には「すなば珈琲」というコーヒーショップがあったり、ちょっと変わった町でございます。
その平井知事が、2012年に「漫画王国を建国する」と言ってしまったわけですね。県の職員はけっこう驚いたそうです。「漫画王国、建国したはいいけど、何すんの?」と。
その年に、漫画王国の流れで漫画サミットを鳥取県で開催いたしました。これは東京と鳥取県で争ったわけですけども、平井知事がなんとか鳥取県で開催するということで勝ち取って、サミットを開催しました。
このときに、「鳥取県で漫画王国。どうやったらそうなっていくのか」と、やはり人材育成が必要だということで、デジタルハリウッドをつくるという流れになりました。
私、今はデジタルハリウッドを運営していますけれども、元々こういう業界に精通していたわけではありません。クレイドという会社を平成14年につくりましたが、元々は飲食店の経営とか、保険会社とかで、こういう業界に携わっていたわけではなかったんですね。
それが、「漫画王国建国」のなかで、人材育成をしないといけないということで「山陰コンテンツビジネスパーク協議会」という一般社団法人の設立をしました。
これは全国でも非常に珍しい取り組みということで、経済産業省さんから全国の地域活性モデルの1つとして認定をしていただきました。鳥取県のなかにある1つの雑居ビルを1棟まるまる使って、コンテンツの産業をやっていこう、コンテンツ産業の会社さんで集積しようとなりました。
当初はそのなかにデジタルハリウッドをつくる予定でしたが、経済産業省さんから、「商業ビルにしてくれ」と言われ、デジタルハリウッドは教育だということで入れず、その流れで別の場所へつくることになりました。
今日は「コンテンツ工場」ということで呼んでいただきました。コンテンツ工場という名前をつけていまして、僕はこの名前を聞いた時に、非常にわかりやすい名前でいいなと思いました。それが今、活動をどんどん広げているという状況です。
そもそも、なぜこのようなものをつくらなければいけなかったのか。鳥取県って全国で一番人口が少ない県なんですね。三洋さんが何年か前に撤退したり、パナソニックさんもあったんですけど撤退したり、県で企業誘致を一生懸命やるものの、2、3年したら撤退していく。
そういったように、なかなかビジネスができない、鳥取県で働こうと思っても就職先がないという現状がありました。デジタルハリウッドをつくった時も、その卒業生をどうしたらいいんだろうと。学生が卒業した後どうしたらいいんだろう、とずっと考えていました。
ですけども、ITに関する仕事は全国にあるというのは非常に感じておりました。鳥取県には就職先はないけれども、仕事は全国にある。あるいはクラウドソーシング上には仕事がたくさんある。我々も協議会のなかでクラウドソーシングの会社をお呼びして勉強会を行ないましたが、卒業生はなかなか試してくれないんですね。
「クラウドソーシングの仕事あるよ」「こんな仕事あるよ」と言っても、卒業しても、在学中でも、なかなか仕事をしてくれない。でもアンケートをとると、「みんなとだったらできそうな気がするかな?」みたいな感じがあったんですね。
それから、卒業生はいろいろ制作物を作るわけですが、自分が作ったものをいくらで売ったらいいかわからないと。どれくらいの金額で引き受けたらいいかが、なかなかわからないっていうのがありました。
仕事したいと言うわりには仕事をしようとしなかったり。「お金稼ぎたいんだよね?」と聞いても、「生活には困っていません」みたいな。田舎ですので、実家暮らしの人が非常に多かったり、生活コストが非常に安いので、そんなにお金を稼ぐことに対して貪欲ではないという中で、なかなか自分で仕事を探してくれないということがありました。
ただ、これはデジタルハリウッドを始める時に、ある程度は想像できていたんですね。なかなか仕事がないだろうな、なかなか仕事しないだろうな、というのはある程度想像していました。
なので、1年くらい経ったときに、卒業生のネットワークを作ることにしました。卒業生みんなで何か仕事に取り組めないかなということです。
最初は、ただ単に卒業生ネットワークということで想定していました。今、STUDIO米子を開校してからの3年間で約170名の卒業生がいるんですけど、最初に卒業した50名くらいの方に声をかけて、「こういうグループ作るので一緒に仕事しない?」ということで集まったのが今の写真のメンバーでした。
彼らに、「デジタルハリウッド卒業生グループではなくて、何か名前をつけたら?」と言いました。ということで、みんなで考えたのが「米子コンテンツ工場」でした。
どんな仕事をしたらいいかということで、一番最初に取り組んだのが、クラウドソーシングを活用した仕事でした。とはいえ、最初はなかなか仕事ができませんでした。ただ、デジタルハリウッドを運営していたことで、「デジハリで何かやってくれないか?」とか、県からも「一緒にロゴマーク作ってほしい」という話が来ました。
これは「とり銀 万灯隊」という、銀行さんの万灯チームがあるんですけど、今まではこういったものを作らずに、ただTシャツを作ったりとか、文字だけで社内で作っていたのを、「デジタルハリウッドと何か一緒にやりたいんだ」ということで取り組みました。
私の会社の事業が10くらいあるんですけど、その10の事業を1冊の本にまとめようということで、コンテンツ工場のメンバーで1冊の本を作ることをスタートさせました。
なんとなくそれを作れたので、第2弾は、企画・営業・取材・制作すべてをコンテンツ工場でやってみようとなりました。その第2弾は半年くらいかかったんじゃないかなと思うんですけど、1つの本になりました。
これをメンバーみんなが、自分たちで企画をして、さらに広告を取りにお客様のもとへずっと歩いて回り営業して。取材や制作までを、コンテンツ工場のメンバーだけでやりました。これが非常に彼らの自信につながった。
通常、クリエイターやデザイナーというのは、誰かが営業でとってきた仕事をするんですけども、そういったことも全部、どうやってお金が流れていくかとか、自分たちはいくらお金がもらえるのかとか、自分たちはこれくらいの利益をあげるためにはいくら売らないといけないとか。
そういったことを全て自分たちでやってごらんということでやらせたのが、この秋くらいに完成したんです。こういう活動を、今おこなっております。
今年、地方創生元年といわれていますけども、地方創生担当大臣が石破(茂)さんで鳥取県出身なんですね。今年、地方創生の各都道府県がプランを出すというので、鳥取県は一番早く出したんです。
僕の考え方でいくと、地方ってずっと頑張っているんです。どんどん少子化になっていってますし、限界集落もどんどんできていって、今まではその頑張りが、空振りとは言いませんけれども、成果が出にくいというか。企業を誘致しても、すぐ撤退してしまったりしていた。
そんななかで今回のSTUDIOの作り方は、非常に効果を出していると思います。今、地方各地にオープンしていて、11箇所あるんですけれども(2015年11月現在)、すべての拠点が、元々そこでビジネスやっている企業などとデジタルハリウッドさんが連携してやっているので、基本的には撤退がないのではと思います。
僕がデジタルハリウッド(の運営)を止めることは、もしかしたらないわけではないかもしれないですが、撤退という言葉ではないと思うんですね。結局僕らは、地方にあったビジネスモデルをつくっていかなければいけないということで、頑張っているわけです。
「じゃあ、米子だからできることって何だろう?」ということを卒業生と一緒になって考えていますが、これが地方のビジネスというか、地方創生の原点なんじゃないかなと思っています。
おいしい空気、おいしい水、おいしい魚、おいしいご飯。これって地方はすべてそうなんだと思います。別に米子だけがおいしいわけじゃなくて、地方はどこもすべて、水もおいしいし空気もおいしいし、食べ物がおいしい。
今、地方に出て行く人たちと話をすると、やはり、「ご飯がおいしいというのが非常にモチベーションになる」ということを言われます。
10年米子で頑張っているクリエイターさんと話をしても、やっぱり何らかに行き詰まったときには、外に出て空気を吸って、ちょっとリフレッシュしてから(仕事に取り組む)と言います。
大山という山があるんですけども、昨日雪が降りました。その友達が「雪山に登山する」と言って登山して、今ごろはもう下山して仕事してるんじゃないかと思いますが。
地方ってそういう遊びと仕事が融合できるというか、同時に楽しみながら仕事ができるんじゃないかなと思います。ですので、これからクリエイターさんにとっては、地方が非常によくなるなと感じています。
鳥取県と東京の格差って、昔は10年と言われていました。でも今は3年くらいなんじゃないかなと僕は感じています。インターネットが普及し、いろんな情報が早くなって、3年くらいになったと思っているんです。
でも、ここからはなかなか縮まらないですね。どんなに早くなっても、地方と東京の情報格差は縮まらない。だからこそ、地方にビジネスチャンスがあると感じております。
地方って、非常に不便なことがいっぱいあります。例えば米子からだと1番近い県は、実は、島根県を除いては東京都なんです。米子に限っていうと、ANAさんしかないので、飛行機代も非常に高いです。
だからこそ、米子の人たち、鳥取県の人たちはいろんな不便さを改善していこうと努力をしないといけないし、そういうことが徐々に生まれてくるんじゃないかなと思います。
今年、鳥取県がAdobeさんと包括契約を結びました。奈良県に続いて2例目です。僕が3年間デジタルハリウッドSTUDIOを運営してきて、非常に思うのが、やっぱり学生にどれくらいデジタルリテラシー教育をするかが、非常に大事になっていくと思っております。今、教育委員会さんとAdobeさんと我々で、学生に向けて、Webのリテラシーをつけていきましょう、という取り組みをしております。
それから昨日ですけど、「ビジネスマッチング」を米子でやりました。STUDIO米子には170名の卒業生がいまして、そのうち50名くらいがフリーランスです。そのメンバーと地元企業のビジネスマッチングを行なって、かなり成果がでました。30社くらい来ていただきました。
ということで、まだまだやり足らないことがいっぱいあるんですけども、今後全国にデジタルハリウッドSTUDIOができていくと思いますので、そういうデジハリのネットワークを使いながら、地方の人材育成ができたらなと思いまして、今日は事例を紹介させていただきました。どうもありがとうございました。
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