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ローカルからグローバルへ〜アジアで勝つ方法論〜(全4記事)

日本で教育を受けることは不利になる? 0〜4歳児の親に海外の学校をすすめる理由 

グロービスの経営理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を継続的に提供することを目的として、グロービスのMBAプログラムの学生・卒業生、講師、政治家、経営者、学者、メディアなどを招待して開催されるカンファレンス「あすか会議2015」に、大幸薬品・柴田高氏、ミルケンインスティテュート シニアフェロー・田村耕太郎氏、ブイキューブ・間下直晃氏、GRA・岩佐大輝氏が登壇。「ローカルからグローバルへ〜アジアで勝つ方法論」をテーマに意見を交わしあいました。本パートでは、田村氏がアジアで成功している企業の共通点や、自身の著書『アジア・シフトのすすめ』にもとづいて、0〜4歳児の親に日本ではなく海外の学校での教育をすすめる理由を語りました。

アジアを席巻するヨーロッパ

岩佐大輝氏(以下、岩佐):さて、ローカルからグローバルと言ったらこの人ということで、耕太郎さん。

今シンガポールからつながっているんですけど、最近のご自身の活動と、今アジアやグローバルでどういうやつらが勝ってるかということをお話しいただければと思います。

田村耕太郎氏(以下、田村):いろんなことをやってるんですけど、大学の先生をやってますから、ちょっと学者っぽいことを言わせていただくと、さっきの間下さんの話おもしろかったですね。

やっぱりアメリカの企業というのはアジアにあまり熱心じゃないんですね。それはなぜかっていうと、(移民が)アメリカに選挙権も含めて回帰してきてますから。

アメリカは世界最大のイノベーションの工場でありながら、新興国並みに人口増加してるんですね、ほとんど移民ですけど。

だからアメリカ企業は自分にしか関心がなくて「自分の言うことを聞くんだったら、出て行ってやる」くらいの感覚で新興国に出てて、アジアはまだ。これから来ると思いますけどね、急いだほうがいいなと思うのと。

あともう1つ、アジアで席巻しつつあるのはヨーロッパですね。ヨーロッパはご存知のように、域内に成長ポテンシャルがほとんどないので。

それと同時にASEAN、インドもそうですけど、中国もある一定の期間そうでしたけど、今回の定義で言えば、AESAN+中国+インドで30億人ですね。

ここをアジアと定義するとしたら、ほとんどがヨーロッパの植民地だったんですね。フィリピンが最後アメリカに植民地化されましたけど。

アメリカとフィリピンは特異なんですけど、アジアの人々は心の底ではヨーロッパにコンプレックスがあるんで。これからの世代は別ですけど。

ヨーロッパの企業、中国でもASEAN全体でも、ドイツの企業とか…ドイツは植民地化はうまくいかなかったんですけど、フランスの企業なんかすごく強いですし、もちろんイギリスの企業も強いですね。

だから、アジアはまだアメリカの草刈り場になってないんですけど、日本企業はアジアが裏庭という意識を持っていてゆっくりしているんですけども、実はヨーロッパかなり入ってきますから、日本の裏庭とは言えないというところがあると思いますね。

アジアで成功している企業の定義

田村:間下さんも含めて、(アジアで)成功している企業を僕なりに定義してみると、1つは最低でも意思決定をするトップが英語がしゃべれる。それに中国語もプラスしたらいいんですけど。

あと、拠点を移しているから見える絵があると思うんですよ。間下さんもシンガポールに住まれてから、ここが意外と世界最大手であるアメリカの企業と5分以上に戦えるかもしれないというのに気付かれたと思うんですね。

ひょっとしてその前から気づかれてシンガポールに移ったんだとしたら、それはそれでもっとすごいことだと思うんですけど。

それが1つと、あと僕はミルケンインスティテュートという……みなさんから非常にわかりにくいところにいるんですけど。

これは何かというと、マイク・ミルケンという、ウォール・ストリートの映画でカーク(マイケル)・ダグラスが演じた主人公ゴードン・ゲッコー、彼のモデルになって金融イノベーションを起こした人間です。

今世界の金融界というのはほとんどがユダヤの人なんですけど、彼もユダヤ系で、ユダヤ系の現代の総本山の方ですね。

金融、メディア、ソフトパワーですね。ハリウッドみたいなメディア産業、教育産業、その辺はユダヤがとても強いんですけど、形としてはそこを仕切っているNPOのシンクタンクなんですけど、彼らのネットワークをうまく使って、新しい投資機会を生み出していくというところで、シニアフェローとして日本人で初めて入っているのが僕なんですね。

何が言いたいかというと、これは新興国に限らず先進国でもそうだし、アジアに限らず世界中そうだと思うし、ビジネスに限らず人生すべてにそうだと思いますけど、ネットワークがすべてなんです。

誰に囲まれて、誰と話ができるか。知ってるだけじゃダメで、ビジネスで使うんだったらお金の話もできる。そういうネットワークがあって初めて、いろんな世界とのビジネスが成り立つと思うんですね。特にアジアはそうです。

アジアでうまくいっている企業、これは日本に限らず、非アジア圏を母国とする企業でうまくいっているところのほとんどは、やっぱりパートナー選びが非常にうまいですね。

日本企業でも成功しているところっていうのは、誰と組むべきかというのをよくわかっています。

アジアのビジネスにおけるパートナー選び

田村:アジアは政治とビジネスが、いい意味でも悪い意味でも非常に密接に関係しています。誰と付き合うかによって、販路はもちろん違いますね。

それ以上に、登録書類の処理のスピードとか規制とか、例えば訴えられたときの裁判の処理の仕方とかが違う。

(政府関係者には)会っちゃいけないとか、日本にいたらクリーンじゃないなと思うかもしれません。これは現地化の1つですからね。

現地では、誰と付き合うかによってビジネスに関わるすべてのスピードと拡がりが全く違うんですね。自力でやって勝つ人も中にはいると思いますよ。非常に強い製品を持ってるとか。ただやっぱり、誰とやるかですね。パートナー選び。

そしてもう1つは、先ほど間下さんが言ってましたけど、アジアと言っても中国もあればインドもある。ASEANの市場統合とか言ってますけど、10個全部バラバラなんですね。宗教もバラバラです。

EUというのは基本的に白人系でカトリックなんですけど、ASEANに至っては、カトリックもあり、イスラムもあり、ヒンズーもあり、仏教もあり、土着宗教もあります。民族もありますね。言葉も山のようにあります。インドだけでも公用語で70以上ありますからね。

それで今、英語も通じる、中国語も通じる、ヒンズー語も通じる、マレー語もありますね。本当に多様なんですよ。

経済発展段階で言えば、(EUでは)今問題になっているギリシャと一番豊かな国ドイツは1人当たりGDPで10倍も変わらないんですけど、ASEANの中で、世界最貧国のカンボジアと一番豊かなシンガポールは1人当たりGDPは50倍以上開いています。経済発展段階もバラバラなんですね。

どこと組むかの前に、最初にどこの国に出るかということで、結構みんな苦労するし、結構間違えられています。

自分のビジネスモデルで一番重要なのは何なのか。インフラなのか、人口サイズなのか、平均年齢なのか、それとも規制なのか、宗教なのか。

そこのベストマッチで最初に出るところを選ぶべきだと思うんですけど、最初に出るところを選んで、できたら関連する業界で一番強い財閥、現実的には3番目ぐらいまでに(パートナーとして)入れれば非常にいいと思います。

もう1つ言えば、そういう財閥には日本企業を含めて欧米からもいろいろなオファーがきていますから、組めたのはいいけど、実はそんなに大事にされなかったというケースもたくさんあるんですね。優先順位が低い。

だから、いい国といいパートナーにたどり着いても、彼らがどこまで本気でやってくれるかというハードルがありますので、そういうことを(自分が)水先案内人としてできるかどうか。

僕もこういう水先案内人みたいな仕事を一定時間ハンズオンでやってますから、そういうことをやりながら、やっぱりネットワーク(が大事)だなと思います。

世界中で起こるアジア・シフトの流れ

岩佐:なるほど。耕太郎さんの最近の著書『アジア・シフトのすすめ』拝見いたしました。その中で、「これからは日本で教育を受けることがもはや不利になる」ということがはっきり書かれていました。

そのあたりについて、お子さんを持っているオーディエンスの方もたくさんいらっしゃいますので、日本で教育を受けないほうがいい? あるいはどうしたらいいのかというところをお話いただけますか?

田村:アジア・シフトというのはね、アジアにシフトするだけじゃなくて、世界中がアジア・シフトを起こしていくわけですよ。

例えば、アメリカですね。アメリカは2040年には白人の人たちがマイノリティになります。ヒスパニックがマジョリティになるんですけども、その次は何年かかかるかもわからないですけど、今ヒスパニックの人口の伸び率の3倍くらいアジア系が伸びてるんですよ。今世紀の最後のほうにはアジア系がマジョリティになる。

日本は注意予測では2100年に(人口)5000万人を切るわけですけど、日本人だけでやっていけなくなると思うんですよ。今の日本国籍の人の人口は間違いなく減っていきます。これは取り返しがつかないくらい、破たん的な減り方をしていきますね。

ただ、国家としてそんなにバカじゃないですから、途中であきらめて、日本語を押しつけることなく、アジアを中心にたくさんの人に入ってもらう。そうじゃないと、介護も社会保障も、経済自体がもたないですから。

先ほど、岩佐さんが(日本から)出るか残るかという決断の話をされたんですけど、まさにそこが出発点で、残っても間違いなく日本の中はアジア化していくわけです。

だって、御堂筋歩いてる人の7割以上中国系の人ですよね。銀座だってそうですね。この前銀座通りのしゃぶしゃぶ屋に入ったら、僕と友達以外全員外国の方でしたね。(アジア化が)すでに起こってますよね。

これがもっと広いスケール、長いタイム・スパンで起こっていくと思うんですよ。だから、出ても残ってもアジアなんですけど。

そういう時代に、日本の教育も変わっていくと思いますけど、日本の教育の問題点っていうのは今の文部科学大臣も文部科学省の幹部もわかっていますよ。

ただ、彼らでも簡単に変えられない。いろいろな組合の問題とか、規制とかありますから。成り手の問題もありますし。だからもうスピードが追いつかないですよ。変えていかないといけない。そういうことは『アジア・シフトのすすめ』でも書きましたし。

大学のグローバル化よりも幼児教育

一番大事なのはやっぱり幼児教育だと思うんですよ。大学のグローバル化ばっかりしてますけど、申し訳ないですけど、出来上がった人にやるよりも、国家としての投資の効率からみれば、一番集中投資しないといけないのは0~4歳ですね。遅くとも0~6歳。

この辺りに集中投資をしているというのがシンガポールの国家ですね。民間企業も国営企業も、教育に関わる産業というのは0~6歳で語学のベースをつくっていく。

そして脳のソフトウェアとハードウェアをつくっていく。これに集中投資をしています。何といってもすごいのは、うちの子供が去年2歳で(シンガポールに)来て、入った15人のクラスで12国籍があったんですよ。

国籍だけじゃなくて、僕ら以外は全員ミックスなんですよ。ハーフとかクォーターとかね。しかも、ものすごく多様なミックスなんですよ。おじいちゃん、おばあちゃん含めたら、家族で祝う祭りが全然別、もちろん宗教も別。それぐらいのスケールで混ざり合ってるんですね。

「僕らの家族は、嫁も日本人、私も日本人、子供は純粋な日本人です」と自己紹介したら、「ワオ! 絶滅危惧種か」みたいな感じでしたね。

語学とか脳の基礎的なハードウェアの出来上がりとかもあるんですけど、もう1つ日本にいたら学べないのは、多様性の中での多様力ですね。これは僕も大学でスイスに行って、刺激を受けて頑張ったというところもあるんですけど。

もっと21世紀の子供たちは小さいうちから、黒い顔、褐色の顔、白い顔、みんなわがままですよ。そういう人たちに囲まれながら、ぶつかり合いながら育っていかないと。

21世紀、テクノロジーも追いかけてきます。グローバル化も進みます。日本も高齢化しますけど、世界も同じようなスピードで高齢化してきますから、こういう大変化の時代に日本の教育のトラックに乗せたら、21世紀に勝つスキルセットを整えられないと思うんですね。

だからやっぱり、突拍子もなく聞こえるかもしれないですけど、やっぱり外で育てたほうがいいというのが僕の考えですね。

岩佐:じゃあ、耕太郎さん。0~4歳の子供を持つ親はとにかく外に出したほうがいいということですね。

田村:「無理してでも出せ」と思います。早ければ早いほど入りやすいんですよ。だって、8歳とか超えたら試験があるから(学校に)入れないんですよ。

0~4歳とか、うちの子供もそうでしたけど、試験のしようがないから順番待ちで入れるんですよ。現実的にも、そうやれば世界のトラックに乗っていきますから。中学校まで日本にいたら、世界の高等教育機関、大学に入るのは非常に難しいと思いますよ。

イエロー(黄色人種)はイエローでまとまって経済圏をつくるべき

岩佐:なるほど。そんな中で柴田さん、日本で50%の下痢止め薬のシェアを持ちながらアジアで戦われているんですけども、ご自身がどのくらい日本以外のグローバルに重きを置いているのか、そして正露丸、クレベリンをアジアでどのように展開していこうかと、その戦略的な話、そのあたりをお聞きしたいと思うんですけども。

柴田高氏(以下、柴田):私はまず11年前に大幸薬品に帰りましてね、病院に一日中ずっといる生活から、会社を介して海外に出るようになって、そのときにいろいろな著名人の方とか、サムスンの会長とかとも話をしたときにも、やはりイエロー(黄色人種)はイエローでまとまって、経済圏をつくるべきだというお話をされていました。

私がその時に思ったのは、やはりぱっと見たときに仲間だなと許容できる範囲ってありますよね。顔を見れば。まずそこは、人間の血統学的にも同種であると。

同種なのであれば、元の起源に戻って、友達関係、家族関係を再構築して、国という囲いはありますけども、それを外してですね、「同じ価値観を持って繁栄しましょう」という握り合いができると思ってるんですよ。

それは言語力じゃなくて、やはりFace to Faceでずっと一緒にいれば通じるものがあります。そして、何を必要として、何が楽しくて、何がおいしくて、何が幸せでというのがかなり共有できます。宗教はいろいろあるにしても。でも宗教もそれを統合するための信じるものであって。その辺りは、まず絶対に「正露丸が日本で効く、使ってください」「クレベリンが日本で効く、使ってください」っていうのが言えるんですよね。

先ほど政治の力という話がありましたけども、昨日メコン5ヵ国の首脳のところに呼ばれて、食事をして名刺交換をしてきたんですけども、それぞれのアジアの国、別々の言葉で別々の価値観がありますけども、意外と顔似てますよ。

ということは、ある意味、何をどういう思いでどうビジネスにしていくかというのを一本ストーリーをつくって、いいパートナーを見つけて順番に当たっていく。そして選択していく、契約していくというプロセスをやれば、いいものであれば、その思いは伝わると考えています。

岩佐:ちなみにですけども、正露丸を歯に詰めると虫歯の痛みが取れるというのは日本では有名な話です。これ中国のほうはどうですか?

柴田:あれは(歯の)神経を抜くときに使うフェノールが一部入ってますから、当然神経は麻痺します。それで、一時的に痛みを泊めて歯医者さんに行って、また麻酔を打って、歯科用のフェノールで神経を殺して抜くんですよ。だから、それは応急的な処置として正しくて、日本でも推奨しています。

岩佐:みなさん、正露丸を歯に詰めるのは、都市伝説じゃなくて正しいということを、社長から直にお聞きしたんですけども(笑)。

(会場笑)

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