2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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加賀谷友典氏(以下、加賀谷):また質問が出ましたよ!
金城功明氏(以下、金城):梅田さんも、もうちょっと飲んで。
(会場笑)
質問者:モチーフが決まっててプラットフォームが変わっていく場合と、プラットフォームが一緒で乗っけるモチーフが違う場合とあるじゃないですか。例えば名刺っていうモチーフでWebだったりアプリだったり、どんどん変わっていく。
そこら辺って、プラットフォームが一緒じゃなくてもストック型になるのか、ならないのかって何かありますか? 僕も言っててよくわかんなくなってきてるんですけど。
(会場笑)
梅田望夫氏(以下、梅田):これ、学問ではないので、定義を厳密にするっていうより、ざっくり感覚的につかまえるのでいいんじゃないかと思う。
今、ご質問いただいたあなたの場合は、今どっちの仕事をしてるの?
質問者:僕はずっとSEOの仕事をしてて、割と天職だなと思ってて。
梅田:それはストック。
質問者:ストックですか?
梅田:それはそうですよ! 多分。
金城:SEOはストックだと思う。
質問者:多分ストック型なんだと思いながらも、トレンドってあるじゃないですか。トレンドに合わせて自分が乗っかる場所が変わっていくんだけれども、ベースにSEOといいうものがあって、その中でどうやって拡張していこうかな、みたいなのを考えるんですよ。
梅田:いや、それは完全にストック型ですよ。SEOの仕事をSEOがいちばん旬なときにはじめたフロー型の人は、今SEOやってないですよ。SEO始めたのはいつ頃ですか?
質問者:2006、7年です。
加賀谷:これはストックです!
(会場笑)
金城:最初SEOでスタートして、今、SEOとちょっとした技術的な関連はあったり、連想的には合ってるけれど、違うものにいるのがフロー。
梅田:だと思いますね。質問者の方は完全なストックだと思います。いや、良い悪いじゃなくて。ストックの人っていうのは、本当に押しも押されもせぬ専門家になってくわけですよ。
だけどフローをやってると「お前、根なし草だ」みたいなことを日本では言われがち、みたいなところもありますね。
加賀谷:言われますね。
質問者:感覚的にわかりました。どっちが偉いとかっていう話をちょっとされてたと思うんですけど。
梅田:そういうのは、まったくないです。
質問者:聞いてみたいんですけど、フローからストックとか、ストックからフローみたいな、ブリッジはどうなのかなと思って。
梅田:これが実はですね、フローの仕事を長くしているとストックの仕事はできなくなる。ストックの仕事を長くしてると、フローの仕事ができなくなるんですよね。これは原理が全く違うんですよ。原理原則みたいなのが。
加賀谷:この間、この話で盛り上がりましたね。スイッチした例はあるのかどうかというテーマで僕が「このケースどうですか?」って聞いたのが、「ほぼ日」です。
糸井さんは広告業界のエースじゃないですか。コピーライターで。
なんだけど、「ほぼ日」を始めて、全部オールインでいきましたよね。
梅田:糸井さんは、「人生を変える!」ってことを決めたわけですよね。1990年代後半にインターネットが勃興してきたとき。それまではフロー型の人生ですね、フリーランスの。コピーライターとしてプロジェクトを組んで、結構お金をもらって、何ヶ月でコピーつくってくれみたいなプロジェクトを同時にいくつもやったり、興味のおもむくままにたくさんのプロジェクトに関わるフロー型の仕事を彼はずっとやってきて。50歳を目前にして「そういうのはもう、辞めよう!」って決めたんですよね。彼の成功要因は、フローからストックに転換することに迷いがなかったこと。
そこの転換の難しさっていうのを、よくわかっておられたと思うんですよね。
僕と任天堂の岩田さんと糸井さんの3人で対談したのが「ほぼ日」の過去のコンテンツにあるんですけど、その対談の時に糸井さんが言われたんですよね。(ほぼ日刊イトイ新聞 - 適切な大きさの問題さえ生まれれば。)
「自分はほっといたら、引退するまでずっとフリーとしてやり続けていただろう」って。フリーって、ここでいうフロー型ってことです。
だけど、「あるとき、チームで仕事をすることをしたくなった」っていうことを言われてて。1人じゃなくて、チームでできることを、ということが、彼なりのフローからストックへの大転換だったと思うんです。
これはめずらしい成功例なんです。
そう決めればできることなんだけど、普通決められないんですよね。
僕自身も失敗経験があって。自分はずっとフローの仕事をしてきたんだけど、ストック的なことをできるんじゃないかと思ってやってみたこともあって。でもメンタリティが随分違って、なかなか上手くいかない、みたいなことは随分経験してきています。
自分は、もしこれからストックを本気ででいくなら、フロー的なものは一切、糸井さんみたいに辞めてやらなきゃいけないのかな、なんて思ったりしています。
質問者:プロジェクトをやる時って、例えばフロー型の人とストック型の方が一緒になってやる必要がないですか?
大抵のプロジェクトは、例えばフロー型であっても、どこかの局面で、ずっと積み上げてきた技術なり技能なりを必要とするときがあると思うんですけど。
梅田:それは今の議論とはちょっと別のまた難しい話ですね。今日は個人のキャリア構築のヒントという意味で話をしました。
質問者:梅田さんは20代後半に、いわゆるコンサルの世界に入られて、そこでフローと仰いましたけど、例えば大学の頃とか、20代前半くらいっていうのは、どういうふうに考えてらしたんですか?
梅田:いや、自分が大学にいた時は、専門の仕事をずっとしたいなと思いながらだったので、勉強をしてきた時は完全にストック型なわけですよね。勉強のときは、1つずつプロジェクトがあって、また違うことをやる、みたいなことはやらないじゃない?
だから普通は自分の専門性磨いていく時って、けっこうストック型の発想で行くし、最初にどこかに就職するっていうと、世界はそんなにいろいろ見えないから、ストック型の発想でいくわけですよ。「ここで頑張ろう!」って(笑)。
質問者:加賀谷さんはストック型時代ってあるんですか?
加賀谷:ない! 全然ない!
(会場笑)
加賀谷:今日、キャリアの説明を全くしていないので知らない方もいると思うんですけど、僕は就職したことがないんですね。
(会場拍手)
加賀谷:なんかね、無理。ストック型、もう無理ですね。
金城:だって最初、公園で寝てましたもんね。
加賀谷:よくご存じで(笑)。
金城:よく飲み会で話してる時に「そう言えば公園で寝てたんだよね」みたいな話をするんで(笑)。
加賀谷:そうそう。学校卒業して、金城さん言われたようにですね、公園で寝泊まりした時期があったんです。
東京にトランク1つ、いや当時バイトもしてたんですけど、バイト先が月島っていうところでして。
梅田:バイトはフローです!
(会場笑)
加賀谷:そこにトランク1つで行きまして、会社にトランクを置かせていただき、夜は公園で寝てたな〜みたいな。懐かしい話ですね。ありがとうございます。振っていただきまして(笑)。
そんな感じでフロー人生をずっとやっております。こんな話でいいんですか?
質問者:1個思ったことがあって、加賀谷さんもそうだと思うんですけど、僕もそうで、新しい物が好きで、新しい物でやっていくんですけど、やっぱり自分がつくった物に対して思い入れって残るじゃないですか。
加賀谷:残ります!
質問者:自分の子どもみたいなものなんで。necomimiもそうだと思うんですけど、やっぱ気になるじゃないですか。そうするとだんだんこう、一夫多妻制みたいになっていって……。
加賀谷:鋭い!
質問者:ストックとフローの融合みたいな形になっちゃうのかなぁと思うんですけど。
加賀谷:鋭い。これはさっきの梅田さんの話とも関連するのですが、僕の場合はプロジェクトが終了したら未練がましく「あれはさぁ」みたいな話はなくて。もうフィニッシュです。
質問者:フィニッシュ!?
加賀谷:はい。それをやらないとフローは全うできないです。
(会場笑)
質問者:それぞれ離婚して(笑)。
梅田:「元妻がいっぱいいる!」みたいな。
(会場笑)
梅田:たとえばコンサルティングの世界ですごく優秀だけど辞めるという人の中に、フローに耐えられないから事業会社に行きたいっていう人がいるんですよ。これは僕、たくさん見てきた。「この人、コンサルタントとして成功するだろうな」と思うんだけど、もう本人が嫌で嫌でしょうがない。
自分がプランをつくったとする。クライアント企業にそれを渡す。でもそれが全然実行されないとしたら・・・。そのときに「自分がやってきたことは何だったんだろう?」って思う人はどちらかというとストック型の人です。
で、そんなことはどうでもいいと。このプロジェクトで自分はプロフェッショナルとしての仕事をしきったから、次は違うターゲットだって割り切れる、むしろそれを清々しいみたいに思う人はフロー型の仕事ができるんですよ。
質問者:自分は今ある事業会社にいて、最初あるプロジェクトを成功させようとして、2、3年くらいやってて。
でも最初は社内SEみたいなことやって、社内のプロジェクトごとにやって。要はフローとストックをごちゃ混ぜに繰り返してきたなぁと思って聞いてたんです。
最近、しばらくストックのことをやって、プロジェクトというか、組織を大きくさせようと思って、いろいろやっていってるんですけど、自分としてはフロー的なところがあって、でも組織が大きくなってくると、どんどんストックというか、ある専門性をもった人が居ないとまわらない状態になっていって。
なんか若干、居心地が悪いじゃないですけど、うまく自分が貢献できるような、いい場所がないかなぁみたいなのを考えつつ、いろいろやってる状態です。
なので、アドバイスをいただきたいなと思っていて。フローの人が生きやすい場所とか、ストックの人が生き生きしやすい場所とかって、「こういう特徴あるかもね」っていうのがあればお聞きしたいです。
梅田:フリーランスって、究極のフロー型なんだよね。今会社を辞めて、すごく優れた人だったらいろんなプロジェクトから引き合いが来てやっていくみたいなのは、フロー型の人。自分1人の事業会社をつくってそういうプロジェクトを次々と引き受けながらやってくみたいなのが、その延長線上の先にあったり。
それとか、受託開発的な仕事とかコンサルティングっていうのはフロー型で。
それから今、日本の結構大きい会社は両方のタイプの人が生きられるように上手くできていますね。
それは、「ちょっとこれ飽きたから、また違う仕事をしたい!」と思ったら、うまくやればフロー的にも生きられる。
例えば製造業なんかでは、例えば洗濯機の事業部に30年いるっていう人がいたり、そうでなくって、いろんな企画を渡り歩く人もいたり、それは何となく希望を出しながらやっていけるみたいなことはありますよね。
一番ストック型なのは、ベンチャー起業とか、中小企業とか。そういうところは1つのことをやってるじゃない? あんまり逃げ場がないというか。
質問者:例えばベンチャーが「これでやるぞ!」って言って、でも利益が出ないからピボットするみたいなことってあると思うんですけど。
だから、ある事業にすごいコミットして、ピボットして、コミットして、ピボットして、みたいに、結果的にすごいフローになってるようなのも、やっぱりストックなんですか?
梅田:いや、常にその時点でストック的にやってればストックなんですよ。「30年同じことができるか」っていうのは結果論であって、その時点での自分の突っ込み方のタイプがどっちかということで。
だから3年ごとにベンチャーを渡り歩いているからフローだってことじゃない。それはわからないじゃないですか。入る時にはもう、「ここで頑張って、1つずっと何かやってみよう!」みたいに思うし。
例えば加賀谷さんがもしストック型だったら「よし、necomimiで!」って言って5年くらいやって、成功すればいいかも知れないけど、例えばその会社が売却されましたと。それでまた新しいプロジェクトを立ち上げるっていうのは完全にストック型の人生なんだよね。
加賀谷:そうですね。
金城:だからピボットしたその先にもう1回コミットするって感じだから、完全ストック型。
だけどピボットを基本的なスタイルとする、常にトレンドを感知して「こっち! こっち! こっち!」とかって言うと、それはフローかもしんない。
質問者:フローって、早いんですかね?
梅田:早いですね。
質問者:例えばその、周りが騒ぎだしてIoTって言うよりも先に。
梅田:いや、別に最先端だけがフローじゃないし、最先端だからと言ってフローではない。だから例えば、全然話が変わるけど、私立探偵はフローで、警察官はストック。
加賀谷:そうです! それ、わかりやすい!
梅田:加賀谷さんは典型的に私立探偵ですね。
質問者:なんか、わかった気がする。
加賀谷:ストック、フロー論争、きましたね!?
質問者:わかったつもりでいるんですけど、他のことに例えてお聞きしたいなと思っていて。例えばラーメンが好きだとして、同じラーメン屋にずっと通うのがストックで、いろんなラーメン食べ歩くのがフローっていうことですか?
梅田:いや、違う!
質問者:違います?
(会場笑)
梅田:消費者はいいんですよ。要するに自分が何を生業としてやっていくかっていう時の生き方だから。ラーメン屋を立ち上げるのならストック。
質問者:合ってました! 大丈夫です(笑)。それを聞きたくて。
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