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Stanford Graduate School of Business MasterCard CEO Ajay Banga on Taking Risks in Your Life and Career(全4記事)

「人生とキャリアでは進んでリスクを取るべき」マスターカードCEOがスタンフォードMBA生へアドバイス

マスターカードCEOのAjay Banga(アジェイ・バンガ)氏がスタンフォードMBAで講演を行いました。本パートでは、リスクを取ることの重要性や、生まれもった性質ではなく環境に柔軟に適応し、変化していくことが成功への道であると語りました。また、MBAの生徒が抱えているような「アメリカで就職するのか、母国で事業をおこすのか」という悩みに対して、アメリカという国家への自身の見解や、インドにずっと住むことは考えられなかったと語り、アメリカで就職することの素晴らしさについて意見を述べました。

進んでリスクを取ろう

司会:さて、ここでちょっと趣向を変えます。謙遜の気持ちは封印して、窓から外へ投げ捨ててください。あなたは今やマスターカードのCEOであり、シティグループでは次期CEOと目されていましたね。フォーチュン誌は、あなたを「2013年トップの業界人」のひとりとして取り上げました。あなたは大物なのです。

アジェイ・バンガ氏(以下、アジェイ):私の娘は観客の中にいるのかな。今の話を聞いていてほしいところだけれど。ああ、あそこに隠れていた。

(会場笑)

司会:さて、あなたはプロフェッショナルとして多くの成功を収められましたね。他の皆が停滞している間に、一人勝ちで密度の濃い成功を収めることができた、あなた個人の特徴ないし性格を、1つ2つ挙げてください。

バンガ:その質問は、誰か私を評価してくれる第三者にしてもらって、その内容を私が君に伝えるほうがよいのではないかな。謙遜は、今の質問への重要な答えでもあり、窓から投げ捨てるわけにはいかないよ。

他者から学び、柔軟に適応・修正し進歩する意欲は不可欠です。学びは常にあります。学び無しには、企業が成功することはできません。とても大切なものです。

私は、周りの人を見たり、観察したりしてこれを身につけました。例えば、バリー・ラインはネスレで最も若い社員と最も年配の社員とを、同等に大切に扱いました。

シティの紳士、サンディ・ライムは、頭取にしてCEOであり、新生シティグループ創設者です。彼もまた、まったく同じ態度でした。彼は、ワイン用のブドウ畑を所有するほどの成功者ですが、ブドウ畑の作業員を一国の首相へ対するのと同様に情熱をもって扱いました。

成功した人がそうなるのかどうかは、私にもよくわかりません。多分もともとの性格であり、成功できるか否かもそれで決まるのでしょう。

謙遜の心がなくても成功はできるとは思いますが、恐らく成功をあまり楽しめないのではないでしょうか。謙遜の心が大切なのは、そういうわけです。

第2に、人生とキャリアでは、進んでリスクを取るべきだということです。皆さんもそうしてください。

この学校は、リスクを進んで取る企業家や人材を輩出しますから、釈迦に説法かもしれません。しかし何年か前までは、そういう時代ではありませんでした。皆さんの同期生、友人や親友にもリスクを取る人がいないかもしれません。

私がここで言うリスクとは、単に転職のことだけではありません。生きていくにあたって、皆さんが起こす行動についてです。

娘のアリエティは、高校を卒業するまでに、世界中、別々の場所の学校を8~9回転校しました。彼女の妹も同様でした。家族で覚えていないくらいの回数の引越をしました。持家に住んだのは、アメリカに来て初めてです。それまでは借家もしくは社宅に住んでいて、常に引越をしていました。

私は、さまざまな部署、さまざまな会社を移動しました。皆さんもこういったリスクを取ってください。

この2点が、恐らく1番大きな要素だと思います。

生まれつきの性質なんて存在しない

司会:さて、昨日あなたの娘さんとお話ししたのですが、あなたはレディ・ガガの大ファンだそうですね。そこで僕からの質問です。

つまり、あなたは生まれつきそういう方だったのですか。(注:レディ・ガガの楽曲「Born This Way 」を引用している)

もしくはある日突然、「僕は謙遜し、リスクをたくさん取る人間になろう」と決めたのでしょうか。

バンガ:生まれつきこうではないとは思います。生まれつきの人柄というものの存在を、皆が信じ過ぎていると思います。人の考え方とは、学習により変化し、柔軟性を持ち、物事を理解でき、規律を守り、自分の信念に基づいて機能しうるものです。

若い時の経験や、身につけた価値観で変化します。生まれつきの性質などというものを私は信じません。生きていくうちに形成されて行くのです。自分を変えていくことは可能です。

司会:大変ためになるお話が聞けましたね。さて、直近の10年について話を進めます。シティであなたは、非常にグローバルな展望のお仕事をされましたが、マスターカードではグローバルなビジネスモデルを創出することに、熱心に取り組んでおられますね。現在の展望において、今日の世界経済で起こっている、最もわくわくする事象とは一体何だと思いますか。

バンガ:私はアメリカに心酔していて、経済危機の時期でもずっとそうでした。競合校だから匿名にしますが、その頃私が行ったMBA他校の学位授与式スピーチの概要は、イノベーションはアメリカではまだ生きていてうまく機能する、イノベーションは起こる、刮目して待つように、というものでした。2008年か2009年くらいのことでしょうか。

今でも私は、さまざまな理由から世界経済で1番面白いのはアメリカ経済界だ、と思っています。経済危機の後でも、他地域よりも非常にうまく軌道修正し、痛みを伴う取り組みをしてきたと思います。経済危機を経て、アメリカ企業のバランスシートはより健全になりました。あえて言えば、もっとこれを進めなければいけません。

個々の企業のバランスシートは、より健全になりました。今、企業は大量のキャッシュを抱えています。他企業や弊社のバランスシートを見ると、負債はほとんどありません。現金ばかりです。弊社だけではなくアップル社など多数の企業が、現金をなんとかしようとしています。

支払い能力の環境も大変良くなりました。生産性も高く、イノベーションは生きていて、ちゃんと機能しています。

さまざまなことが興っているアメリカは、今も5年、7年、8年後も、経済状況には活気があり、面白いだろうと言えるでしょう。

その後のことなど、誰が予測できるでしょう。過去のどんな時代よりも速く、世界は刻々と変わっています。これもまた、わくわくするような状況です。

中国とインドだけではなく、アメリカとASEANにも目を向けよう

バンガ:次に私が面白いと感じるのは、東南アジアです。中国、インドについてはさまざまな議論がなされていますが、もっと視野を広げるべきで、東南アジアは巨大なマーケットです。観察するにも手を広げるにも、大変面白い場所です。

今後の5年、7年、8年で、爆発的な成長で経済をけん引するのはASEANだと言うことを、誰もわかっていません。ASEANは、経済コミュニティとして結束を高めつつあります。ラオス、カンボジア、ベトナムからシンガポール、マレイシア、フィリピン、タイにまたがる、3兆ドルの市場となるでしょう。

これらの国々は、鉄道、橋などで繋がりつつあります。現に、中国南部とこれらの国々とを海で繋ぐ橋が建設中です。向こう5年間で、インフラへの5,000億ドルの予算が検討されています。

健全な政府を持つシンガポールのような国々のコミュニティは、良質な行政と労働基準を持っています。皆さんは、アジアのすさまじい成長力を目の当たりにします。

アメリカに次いで面白いのがASEANと北アメリカ大陸の国々です。メキシコなども面白いですね。

アメリカとASEANにはなぜか皆、注意を払いません。中国とインドについてばかり議論をしますが、もっと視野を広げるべきです。

MBA卒業後はどういう進路をとるべきか

司会:MBAを所持する大勢の学生が、世界中の国々から来ています。僕の知り合いも、多くが卒業後の進路として、母国に帰国して事業を立ち上げるべきか、アメリカで職を見つかるかを悩んでいます。バンガさんの今の視点から、決断を導くアドバイスを頂きたのですが。

バンガ:一気に個人的な話になりますね。大切なのは、自分は何が1番得意か、自分がどんな場所に行きたいかということと、夢と野心ですね。

帰国して何かをしようとするな、などとは、私は絶対に言いません。他にも大勢にチャンスのあるアメリカより、良い意味で突出するでしょうし、競争率から言えば、帰国しないほうがいい、などと言えるわけがありません。

しかしながら、アメリカでは本当にやりたいことがやれます。成長拡大について、存分に考えることができる環境です。他の国ではこうはいきません。

私は、インドで生まれ教育を受けました。海外留学経験はありません。私の娘たちは、私の自慢です。なぜなら、私にはできなかったことをしているからです。

皆さんが、ここで学んだことをインドに持ち帰り働くとしたら。もしくは私がそうするとしたら。インドのインフラの問題や、思うように力が発揮できない環境下での事業に対し、うまく太刀打ちできる自信がありません。

許可を申請するのも一苦労です。私はよく冗談の種にしますが、中国の権力者の合意を取り付け事業を始めると、赤いカーペットを敷いてもらえますが、インドの権力者は赤いリボンしか敷いてくれません。

(会場笑)

他にも600人近くに、何がしかの心付けが必要だったりと、まったくもって話になりません。大いに結構だ、立ち向かって見せようじゃないか、という方はぜひ頑張ってください。私は御免です。

桁違いのスケールでグローバルなことを成し遂げてしまうアメリカのインパクト、オープンな気風、チャンスのある環境、マーケット、どれをとっても私にとっては非常に魅力的で、よそに行くことなど考えられません。

将来、キャリアの一環として別の国へ行くことは考えられますが、一生暮らす場所としては、よそは考えられません。

インドでの定住は私には考えられなかったので、インドを出る前に15年間働きました。インド、アメリカでの就労を両方経験したわけですね。

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