2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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大谷晃司氏(以下、大谷):人を育てるって意味では、米国の場合、初めから専門家志向で入ってくるっていうことだとすれば、人を育てないっていう意味ですか?
ジェイソン・ダニエルソン氏(以下、ジェイソン):育てますけど、スタート時点がはるかに違いますね、日本とは。もう何も知らない馬鹿だと思われないで、結構そこそこできる人という前提で、それよりさらに生かしていく教育ですね。
だから成長するスピードが全然違うと思います。新卒として入って2年後にやってることを比べたら、アメリカの新卒の2年経った人たちのが、全然進んでいることをやってると思いますよ。
大谷:日本は、会社に入るって意識が非常に強いのかなと思ってまして。例えばどこの大企業に入るとか。
例えば弁護士さんは弁護士って職があると思うんですけども、普通に一般の会社員って、私もそうかもしれませんけども、何かどこの会社に入りたいっていうのが初めにあって、もう仕事のスタイルが全く違うのかなって気もするんですけれども。
ワークスタイルって意味では、それが専門家志向で初めから入った方と全く違うのかなと思って、そこら辺はアメリカってやっぱり違うんですか?
ジェイソン:違いますよ。それだったら何で大学に行かないといけないんですか。その4年間知識を辿って行って、そのあと全部捨てて、もう1回教育を受け直すんですよね? もう意味がない。4年間、ただ暇していたのと同じです。
大谷:大学は、ある意味職業訓練みたいなものだったりするんですか?
ジェイソン:はい。大学で本当に働いてるのと全く同じようなことをやらされて、それも進んでいるから、もうできてるという称号は、その学士号を取ったことですから、そのあとは真面目に普通に仕事をやらされますね。
大谷:専門家を雇いたいといった場合、ランサーズさんみたいな仕組みを使ったら、専門家って集まってくるものなんですか?
秋好陽介氏(以下、秋好):そうですね。今の日本のクラウドソーシングでいうと、エンジニアとかデザイナーとかライターっていうのがメインなんですけど、アメリカのクラウドソーシングだとそこをさらに超えて、まさに弁護士さんとか、行政書士さんとか、そういったプロフェッショナルの仕事が流通してるんですよね。だから日本もそうなっていくとは思いますね。
大谷:ワークスタイルの話をしたいんですけども、仕事の仕方という意味で、スペシャリストの方と、いわゆるワーカーと違うような気もしていて、その辺ではゲーム業界って顕著にそういうのがあると思うんですけども。
椎野真光氏(以下、椎野):そうですね。やはり今ゲームの作り方自体は、一部のスペシャリストの考え方をいかに映像であったりとかゲーム性に反映させること、ワーカーと呼ばれている人の質とセットでクオリティが上がってくるものだと思ってます。
全体で言うと、ゲーム自体が、本当に規模感が大きくなってくる。小さい規模感のコンテンツだと、本当にワーカーと、ワーカーっていう言い方が正しいかどうかわからないですけども、言われたことを丁寧にこなすような方たちと、あと本当にそのイマジネーションを最大化する人たちの、垣根がないんです。
大きくなればなるほど、むしろそこを、きっちり整備をしないといけないなっていうのが、今ゲーム業界で言うところの流れになってきていると思っています。
大谷:ワーカーっていうのは別にして、ある意味ロールがはっきりしてきている気はするんですけど、ジェイソンさん、その辺聞いてもいいですか?
ジェイソン:そうでしょう。仕事の定義に入ってないことはだいたいやらないです。ワーカーという考え方も本当に間違っていると思いますけどね。それが言われたことを考えずにやるとなると、その人がやる意味がないですね。代わりはいくらでもいますし、できるだけ安くできる人を採用しようとなります。
だから、そのスペシャリストではない人達は本当に危なくて、仕事が近いうちになくなるはずなんですよ。誰でもできるようなことを言われたとおりにやってるだけですから。蟻のような存在ですよね。
大谷:要するに、専門家でなくてもできる一般的な仕事っていうのはどんどんコストも安くなってきて、まさにクラウドソーシングでそういう人がいっぱい現れることになったりもするんですか? 「これ、できます」って手を挙げて、どんどん。
秋好:そうですね……。クラウドソーシングの中でもそういった簡単な作業をする部分もあるし、クリエイティブな仕事をする部分もあるんですけど。特に簡単な仕事に関しては、もう日本国内においてはあんまりクラウドソーシングは融通しなくて、どちらかというと海外。
単純なデータ入力であれば中国の大連がそういうBPOの企業はたくさんありますし、とてもじゃないですけど、僕らでは受けきれないような単価でされている世界があるので。
アメリカのクラウドソーシングっていうのも、英語圏ですよね、アメリカって。そうするとフィリピンとかインドにものすごい安いワーカーの人が仕事をしてたりして。先進国っていうか、そこはある種クリエイティブというか、今後はそこの仕事の勝負になってきますよね。
大谷:日本語の壁っていうのがある。それで守られてるところはあるんですかね?
秋好:そこはありますね。やっぱり日本語というより、日本は商慣習の壁が大きくて、例えば稟議云々とかもそうですし、日本の場合はFacetoFaceで会わないと発注できませんっていう世界もあったりするので。
そういった商慣習に守られている部分はありますけど、さすがにそれを言い訳にもできない、、今後どんな企業もグローバルに勝負しにいかなきゃいけないので。
ジェイソン:それは逆に必要になっているから安くできないんですよね。それは、別に稟議書とかはどうでもよくて、世界と同じようなやり方だったら、フィリピンはどうだろう。
10分の1ぐらいで安くできるはずなんだけど、今後無理やりに今までどおりと同じやり方で粘ってるからこそ、コストが余計にかかりますし、時間が余計にかかりますよね。
大谷:秋好さん、そういったところは感じないですかね? 旧来型の人材派遣とは違うっていうところで、旧来型の人材派遣をしているところとぶつかる部分も当然あったりもするわけですよね?
秋好:派遣とぶつかるっていうことは特になかったです。
どちらかというと今まで仕事をしてなかった潜在的な労働力って言い方はあれですけど、働いてなかった人が働いているケースがすごく多いので、そこでぶつかるっていうことはなかったです。
我々の場合は、法律があるから法規制があるってわけではないので、どちらかというと、日本の企業がインターネットで個人に発注するっていうことの障壁の大きさのほうが、仕事には一番障壁でしたね。
大谷:いわゆる商慣習みたいなことですよね? これまでやってたことと違うっていうことに対する抵抗みたいな。
秋好:そうです。単純に、やったことないので恐いといったもの。前例にないのでなかなか受け入れられづらい。なので、最初はベンチャーや中小企業がメインの顧客でした。ようやく大手の企業様にもご利用いただいています。
大谷:商慣習っていう意味ではジェイソンさん、そういった違いとかって感じたりしますか?
ジェイソン:前例がないから怖いのはないと思いますね。ちゃんと自分で考えて、これはうまくいくかどうか、どう思うかで判断すると思います。だからベンチャー企業が普通に大手にすぐ使われるケースが多いと思いますね。
「前例がないから怖い」イコール「競合会社よりは先に進みたくない」と同じなんですよね。「みんなが同じようにやってるから、のこのこやっていくのでいいんだ」みたいな感じになりますよね。
大谷:1人で先にやることに価値があるわけですよね。例えばテラスカイさんって、おそらくSkyVisualEditorをつくったのは、多分Salesforce自体の使い方をよくしようというところで。
多分今でも類似のベンダーさんって結構出てると思うんですけども、テラスカイさんって少し早めに出したから固有客があるんですか?
ジェイソン:SkyVisualEditorですね。出ているところもありますけれども、全く同じようなことをやってる会社はまだいないですね。ここまで専門的な、あるSalesforceの技術に特化した部隊がいちから製品をつくってきたのは、なかなか再現できないと思いますよね。
大谷:先行者利益があるっていうことになるわけですよね。
ジェイソン:はい。SIとやりながらこの製品をつくってきたから、1,000社以上の導入支援を終えてから、その案件それぞれのコンソールプロジェクトとかも、経験を生かしてつくった製品ですから、それはなかなか出てこないですね。
大谷:皆さん共通するのは、ITとかテクノロジーがあるからこそできたっていうのが、きっとあると思うんですけど。クラウドだったりですとか、ネットですとか、そういったことが当たり前になってきて、あとスマートフォンの登場ですとか。
そういった背景があるからこそ、今の事業ができてきてるっていうのがあると思うんですど、そのテクノロジーとの関係をちょっとお話してもよろしいですか。
多分椎野さんはスマートフォンがあるからこそ、今のゲーム会社があるような気がするんですけれども。
椎野:そうですね。もちろん完全に、ゲーム業界でいうと、昔はコンシューマーからガラケーだとか携帯に大きくメジャーが動いて、それからスマートフォンにどんどん動いていきますと。
そのデバイスとか仕組みがかわると、そこで流通するコンテンツの質も大きく変わってきて、そのコンテンツの質を変えるのにギャップを感じる人はドロップアウトをしていくというのはありますよ。
なので、特にそのデバイスとか仕組みが出たタイミングで、より早めにそれに乗っかれる人材っていうのが、すごく次の時代のコンテンツをつくるんじゃないかなというのは感じています。
大谷:ヤフーさんは、1回モバイルパート、スマートフォンパートという形でがらっと変えましたよね。
椎野:はい。
大谷:そこに対する抵抗っていうのは、中でやっぱりあるんですか?
椎野:売上げとしてはやっぱりPCの広告事業の数字がすごく堅調なので、それに対して新しいデバイスにトライをしているんですけど、まだまだなかなか実が採れていないと。
そういうところで今回その現場ということで、ゲーム事業を新しく立ち上げたんですけれども。
大谷:ヤフーさんではできなかった、もしくは抵抗があったところを切り出して、いかに早くするかっていうのが現場のスタンスっていうことですか?
椎野:そうですね。徐々に変えていくよりも1回成功事例を外部で作って、それをもう1回実行したほうが、おそらく早かろうと。
大谷:ランサーズさんは登録するのは、スマートフォンから登録することが多いんですかね?
秋好:そうですね。登録するときもスマートフォンですし、メッセージのやりとりもスマートフォンです。仕事自体はPCでやるケースが多いですね。
ランサーズなんかは、まさにインターネットがなければそもそも成り立たないサービスなので、テクノロジーの恩恵云々じゃなくて、それがないともう無理ですというサービスですね。
大谷:一般の企業がクラウドを導入する場合、多分ジェイソンさんが以前、日経BPのサイトで書かれてたのが、やっぱりスピード感が全然違うと。スピード感がない企業はクラウドにしても意味がないじゃん、そんなことをおっしゃってたと思うんですけど。
ジェイソン:というのは、今クラウドサービスが結構進んでいまして、もうある使い方に従ったら、すぐ買って翌日から使いこなせるはずなんですけど、日本の企業さんが大体自分が特別だと思い込んでて、ある程度カスタマイズしてから使いたがるんですよね。
それだど、せっかくのクラウドも、つくってあるサービスを使うメリットが半減されてしまいますよね。
大谷:せっかくそのスピード感をもって導入しようと思っても、自分達の好みにカスタマイズをしてっていうところに時間がかかってしまってスピード感が得られないっていう話ですか?
ジェイソン:そうですよね。そこまでやるんだったら、今使っている社内システムとそんなに変わらない危険性も出てきますね。せっかく新しいものがあるのに、それは使い方を間違っているような感じですね。
大谷:今ここにいる皆さん、TeamSpiritを使われていると思うんですけど、クラウドサービスを導入するっていう意味というのは、やっぱりそういった自分達の仕事みたいなのを標準化するというか、ある程度そういった汎用できるものは汎用化してテクノロジーに任せちゃう、そういった発想で導入しているっていうのが印象的でいいんでしょうか? 椎野さんから。
椎野:そうですね。もう外部に任せられるところは任せていきましょうと。本業、我々で言うとゲームを製作するところにソースを集中していこうというところに。
大谷:具体的には勤怠管理とか、経費精算とか、そういったもので使われているっていうことになるんですか?
椎野:そうですね。実は導入してからまだ2カ月くらいなので試しながらなんですけど、基本的には勤怠とか、あとはセールスの管理画面ですね。そういったところの見える化が非常にTeamSpiritは優れているというふうに話を聞いていますので、それを最大限に活用していこうと、今導入を本格的に進めていると。
大谷:本業にフォーカスするのは重要ですよね。
大谷:「本業にフォーカスする」というのがキーワードかなと思うんですけど。ランサーズさんも、きっとそういうところがあると思うんですけど。
秋好:そうですね。我々はエンジニアリング、クリエイティブをつくるっていうところが本業なので、基本的に社内のスタッフはそこにフォーカスして、そうじゃない部分は外部のクラウドサービスなり、アウトソーシングをするっていうのが基本的な方針でやってます。
チームスピリットさんは今勤怠と稟議と経費精算で使わせていただいていて。起業したときは2人だったんですけど、そのときはノートに「何時に来て何時に帰った」って書いて勤怠管理してたんですけど、さすがに今150人ぐらいなので、それはできないので(笑)。1年半前くらいですかね。かなりお世話になっています。
社員は便利になって喜んでると思いますし、チームスピリットさん以外のSalesforceとか、Google docsとかSlackとか、基本的に社内のサービスは全てクラウドのサービスでやってますね。効率的なので。生産性がある。
大谷:自分達で持とうとかって発想はなかったんですか?
秋好:それは基本的になかったですね。サーバーもamazonさんを使わせていただいてますけど、そこに僕らの強みはないですし、世界中でいろいろ考えられた中の集合知が溜まってると思っているので、そこを再発明的にやるっていうのはナンセンスかなとは思っています。
大谷:ジェイソンさん、クラウドサービスを提供する側でもあるわけですよね。そういったときに日本の企業は変わってきていると思ったりしますか? カスタマイズがあったりもしますけれども。
ジェイソン:一応テラスカイIncとしてもそうですけど、僕がやってるのは、できるだけ標準を追いながら、それでもニーズが合わないようなことだけに絞ってカスタマイズしましょうみたいな話で。
もう全部作りなおしからの前提ではなくて、「こういうようなことがあります、今やりたいこととどのくらい離れてますか?」と。その後は、その差分が本当に必要かどうか。必要な部分だけは絞って、最低限カスタマイズを生かすんですね。
大谷:それはある意味、あるものを少しずつ改善していってということですか?
ジェイソン:ある意味そうですね。できるだけ世界で使われているようなベストアンドブライテストを生かしながら、自分の特化したところだけをちょっと手に入れると。
大谷:そこがやっぱり強みになるっていうことになるわけですよね?
ジェイソン:本当に特化したところだったら強みにはなるんですけど、自分だけは特化したことだと思ってて、本当はそんなに変える意味のないところもまだあるとは思うんですね。だから本当に冷静に、これが本当に差があるかどうかを考えるべきだと思いますね。
大谷:従来パッケージってありましたよね。パッケージ製品。それとクラウドサービスってどう違うって考えてらっしゃいますか? 相違点ってありますか? これ誰に聞けばいいのかな……やっぱりジェイソンさんですかね。
ジェイソン:従来のパッケージとクラウドサービスですか? 本当に標準で使うクラウドサービスだと、パッケージとインターネット上で誰でもどこからでもアクセスできるという面があるんですけど、そのままのものを使うという意味だと、そんなに特にはないですね。
ただ提供しているプラットフォームが変わるだけで、そのまま使って、皆すぐ結果を得るという意味だと。
大谷:ベンチャー企業さんの場合って、やっぱりものを持てない、持ちたくないっていうのがきっとあると思うんですけど、そういう時にクラウドサービスっていうのはぴったりな気がするんですけど、ランサーズさんもそういう声がありますか?
秋好:そうですね。当時はサーバーでいうと、自分達で買ってきて、社内にサーバーを入れてってやりましたけど、そこの盗難とかセキュリティっていうリスクも取れますし、クラウドであれば、まさに持たないっていうところもそうですし、セキュリティ以外も非常に安心なので。
大谷:ゲーム会社さんはちょっと違うんですかね? そんなことないですか?
椎野:そうですね、そんな変わらないですよね。先ほどの、経営の集中っていう話もそうですけど。信頼たるものがあれば、他に預けていこうっていうのは変わらないですね。
大谷:本業に特化するとか、変化に耐えるっていう意味では、クラウドサービスはイノベーションに似てるっていうことになるんでしょうか? もう少しまとめられればと思ってるんですけど(笑)。いかがですか?
椎野:そうですね。特に標準化されているもので、他社も使っていると。しかもどこよりも早いということであれば、それを使わない手はないですよね。
大谷:多分これから先大きな変化として、企業のシステムにおいてはマイナンバーっていう対応があると思うんですけれども、マイナンバー対応というのは、いちから全部やるんではなくて、何かと組み合わせやるとか、もっと簡単にできる方法っていうのはあると思っていて、それはやっぱりクラウドのサービスとか、そういったものを使うってことがいいのかなあと思っています。
そういった意味では、チームスピリットさんの製品はそういったマイナンバー対応しております。
今日は時間がそろそろきましたので、この辺で締めたいと思います。最後にパネラーの皆さまに拍手をお願いいたします。
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