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リクルートホールディングス 新施策報告会(全1記事)

「30歳以下は誰でも新卒です」 リクルートが始めた新しい新卒採用の仕組みとは? 人事担当・夏目和樹氏が狙いを語る

リクルートが自社の新卒採用において新しい取り組みを始めました。新卒の幅を「30歳以下」にまで大きく広げたことで話題となっています。さらに、すでに卒業していたり、他の会社で働いていたりしても2016年4月に入社可能なら応募可能とのこと。この施策の目的や立ち上げの経緯などを、リクルートホールディングス IT人材統括室の夏目和樹氏が報告会で語りました。

夏目和樹氏(以下、夏目):よろしくお願いします。それでは新施策報告会を始めさせていただきます。

夏目和樹と申します。リクルートホールディングスIT人材統括室に所属しており、リクルートホールディングスに中途入社。前職は「面白法人カヤック」というところで働いていました。面白法人カヤックでは、新卒で広報に入ってから人事、そしてセブ支社長という流れです。

過去にやってきたことは「人事×プロモーション」で、採用プロモーションという枠組みをつくってました。採用結果にもつながり、自社のプロモーション、ブランディングにつながる施策を考えてました。

たとえば「節就宣言」です。「就職活動を節約しよう」というコンセプトのもと、「説明会を省こう」とか「エントリーシートをワンクリックでできるように」という企画を前職の時につくりました。

リクナビをつくったことがある

夏目:ちなみに昔「すごいリクナビ」というのを個人でつくりまして。リクナビがオープンするときに「リクナビもあるけど、こっちもいいよ」ということで、「リクガメ」を検索できるナビサイト、略してリクナビをつくりました。

それがすごいニュースになっちゃって。このサイトがニュースになったら、リクルートの担当窓口の方から「御社の人事、変なことやってるでしょ」って突っ込まれました(笑)

他にも「すっげーあるぞ!◯クナビNEXT!」というキャンペーンがありました。「アクナビNEXT」「イクナビNEXT」というように頭文字の◯に好きなカナを入れて検索すると、それぞれtumblerでつくった特設サイトが表示されるリクルートのプロモーションがあったんです。

「アクナビNEXT」で検索すると、たしか扉が開くようなサイトになっていたり。それで、50音全部見て面白いなーって見ていたら rikunabinext.tumblr だけなぜかドメインが空いていたんですよ。他のアクナビNEXTや、イクナビNEXTなど他の50音全部のドメインは全部空いてないのに、リクナビNEXTだけなぜか空いている。

なので、そのドメインを取得しまして。当時カヤックに勤めていたので「転職するならリクナビ使ってもいいけど、カヤックもいいよ。面白法人カヤックはこちら」と双方の会社に確認せずに勝手にやりました。

これは怒られなかったです。怒られなかったんですが、当時付き合っていた彼女とこのサイトを一緒に作っていたんですけど、しばらくしてリクルートに転職して、たまたま同僚とリクナビNEXTのプロモーションの話になったので、rikunabinext.tumblr でドメインを取得した話をしました。

そして久しぶりにサイトにアクセスするとサイトの中身が変えられていて、「騙されてはいけない」という別れた彼女のメッセージが表示されていました。サイト管理のパスワードも変えられているので、僕も対応できない(笑)

悪いことして別れたわけではなくて、円満に別れたんですが。もうこれは変えられないです(笑)ちなみに前職での行動に関しては、カヤックは当時も今も関係なくぼくが勝手な判断で勝手にやりました。こういうこと言うとまた怒られちゃうので。会社としてはではなく個人としてやったことです。本当です。会社は関係ないです。

それで、今のリクルートの仕事はですね「HRナビ」というオウンドメディアを立ち上げて編集長をやったりとか、新卒サイトのクリエイティブディレクターやったりとか、アメリカに行くワークショップや産学連携の企画を考えたりしました。

あと人事情報とか社員を検索できる社内ポータルサイトがあるんですが、ここで社長の名前「峰岸真澄」と検索すると、僕の名前が上に出てきます。いろいろ触っていたら検索する仕組みがわかったので、そこの部分のタグに自分の名前をたくさん入れておきました(笑)

これは特に意味はないんですけど、けっこう社内から問い合わせをいただきまして。いきなり連絡が来て「代表で検索したら夏目さんが出てきたのですが、どういうことでしょうか?」って。みんな1回は社長を検索すると思います。面白かったです。普段こんなことばっかりやってます。

リクルートが始めた新しい新卒採用は30歳以下までOK

夏目:それで本日の内容なんですが、テーマを3つ。新施策を「なぜやろうと思ったのか?」「どのように進めたのか?」「今後の展望」この3つをお話しさせていただきたいと思います。

まず何を実施したのかといいますと、簡単に言うと新卒採用の基準について「2016年4月に入社できること」「30歳以下であること」という2点を明言したサイトを公開しました。

そして、5つの特徴「面接でのスーツ着用禁止」「手書きの履歴書不要」「既卒でも応募可」「オンライン面接可」「入社後の副業可」。もともとやっていたこともあるんですが、これをあらためて明言して打ち出しました。

そうしたら、Yahoo!ニュースさんをはじめ、多くのメディアに掲載させていただくことができました。なんとハムスター速報にものりました。

何が新しいかというと、大学生に限らず、「2016年4月に入社できる人で、30歳以下なら誰でもOK」というところです。浪人、留年、休学などを繰り返した29歳でも大丈夫です。就業していてもいいんです。30歳以下であれば。

きっかけは松井くんだったーー

夏目:そして「なぜやろうと思ったのか?」なんですが、55年間、日本の採用の歴史をつくってきたのがリクルートです。僕は今そこの人事にいて、それを誇りに思っています。

新卒採用の歴史をつくってきたリクルートは、いまこの時代に何を考えるべきなのか? ベンチャーや他の会社ではなく、リクルートだからこそできることを「何かやらねば!」とずっと思っていました。

そこで、いきなり松井くんの話をします。

僕はいまシェアハウスをしていて、そこで一緒に住んでいる松井くんという友達です。その松井くんは京大を卒業したんですよ。そして「でんぱ組」推しのアイドル好きです。好きな曲は「でんでんぱっしょん」です。

彼はすごく優秀なんですけどニートです。何でかというと「勉強してたら卒業してしまった」と言っていて、新卒で入る会社がなくて困っているんです。就職しようとしても「業務経験3年以上」とかに引っかかって応募もできない。

採用の枠組みから「浮いちゃってる」感じなんです。めちゃくちゃ優秀なんですけど、浪人、留年してるから年齢も上になってしまっている。

一緒にシェアハウスに住んでいて「彼みたいな人って、もっといるんじゃないのかな?」と思ったんです。それで、新卒採用の枠組みを変えれば働ける方法があるんじゃないかなと考えていました。

新卒採用の歴史を作ってきたリクルート

夏目:そして、News Picksの有料記事で岩瀬大輔さんが「一括採用がすべていけないとは思っていません」「新卒一括採用に乗るしかないというのが問題」と言っていたのを見まして。このあたりに何か答えがあるんじゃないかと感じて今回の施策をつくりました。

今回の施策では「新卒採用をもっと自由にしたい」と思っていて。これは会社としてではなく、個人としての意見なんですけど、新卒採用もすごくいい仕組みだと思うんですけど「もっとやり方があるんじゃないかな」という思いがありました。

新施策は「勝手にやりました」

夏目:それで2番目の「どのように進めたのか?」なんですが、めっちゃ簡単です。勝手にやりました(笑)

僕は仕事ができないんですよ。まじで。社内調整とかしてる最中にメールの返信をしなくなっちゃうし、エクセルの数字も桁を3つ間違えて怒られたりしていて。100万円が10億円。

だけど、300人くらいの人にヒアリングをして「新卒採用で何がイケてない?」と聞きまくったら、みんな意見を言ってくれて「これが嫌だ。」というものをいくつか持っている。それなら「やればいいんじゃないか」と思ったんです。

あと、僕自身がリクルートホールディングスの新卒採用のサーバにアクセスできるので「僕がつくって本番化してしまえばいいんじゃないかな」と思って(笑)

正しいことをやりたいですし、怒られてクビになっても自分で稼げるのでまぁ生きてはいけるかなと。もし社内的な理由でダメと言われても、世の中的に正しくて、働きたいと思ってる人にとっても正しくて、会社としても新しく市場を開拓できる余地がありそうだったので、怒られても絶対やってやろうと思いました。

とはいえ上長に起案はしたんですけど、企画書は手書きの2枚だけです。しかも、1枚目は「理念」しか書きませんでした。 弊社の理念から抜粋して「新しい価値創造」「社会からの期待」「一人ひとりが輝く世界」と書いたんですけど、これ企画書じゃないですよね。

それでも1時間のうち1枚目だけで50分くらい話しました。「既存の新卒採用で何が新しい価値の創造なんですか?」「社会から何を期待されて、どう応えているんですか?」「一人ひとりが輝く世界って何ですか?」というのを、こんこんと話しました。そのためにリクルート関連の本を休日に全部買って読んだりして。

それで、最後の10分で「じゃあ、新卒採用で何かやりましょうよ!」と言って「こういった内容のことが、世の中からうざいと言われています。これを全部やめましょう」と2枚目を出したら「OK!」と言われて。「OKなんだ」と(笑)

でもまだまだ関門がたくさんあるんですよ。その上に部長や室長がいて、同じ部署の人たちやリクナビの人たちなど、法的にどうなのとか、広報として何を言うかとか、役員との共有はどうするかとか。

定例会議は逃げる、サイト準備は進める

夏目:それでどうしたかというと、ギリギリで「もう出ちゃいますから」と言えばいいかなと思ってずっと黙ってました。上長だけには言っておいて、企画を聞かれそうな他部署との定例会議は逃げる、お腹痛いとか適当なことを言って。サイトは別で勝手に進めちゃう。

最悪、出したあとで何か言われても大丈夫なように、サイトをテキストでつくってHTMLを書き換えれば対応できるようにしておけばいいかなと(笑)5月29日にオープンしたんですけど、共有したのが5月27日か28日。

こんな感じで進めました。

僕の2人の上司がすごくて。広報やいろんなところからもアドバイスをもらい、なんとかOKが出ました。僕は何もすごくないんですけど、周りの人たちがすごいなと思って。実際はもっと怒られるかと思ったら、リクナビの偉い人も「じゃあもっとこうすれば」とか教えてくれる。

おもしろい文化ですよね、会社として。文句もめっちゃ言われましたけど「もう出ちゃうしね」みたいな感じで。会社の理念に「個の尊重」とあるんですけど、本当に正しいことをやろうとしたら、そこをフォローしてくれる文化があるんだと思います。リクルートはこういうめちゃくちゃ優秀な人達がいるから成り立っているんだなぁと実感しました。

本当に世の中のためになって、自社のためにもなることを強い意志をもって「絶対やりたい!」って言えば偉い人たちも意外とOKしてくれる。面白い会社です。

今回進めるにあたっては本当にみなさんにはご迷惑をおかけしました。本当にごめんなさい。そして、ありがとうございました。

ちなみに年齢を30歳以下に制限することについては問題ないです。「雇用対策法施行規則(第1条の3第1項)3号のイにより大丈夫です」というのを、すごい調整ができる上司が調べてくれました。

この採用方法を世の中全体に広げたい

夏目:それで3番目の「今後の展望」ですが、今回明言したルールを世の中全体に適用していきたいと個人的には思っています。

働きたい人と思っている人が、働きたいタイミングで、自分に合った会社に就職できればいいなと。楽しく働く人を増やしたい。

リクルートはもっとできるはずだと思います。もっともっと、おもしろいことができるんじゃないかと思っています。こんなに面白い会社は他にはないので。

司会:ここからは、いくつか質問にお答えしたいと思います。

応募者側の「本質じゃない負担」を減らしたい

質問者:新卒採用の基準にあった5つの特徴ですが、なぜあの5つを選んだのでしょうか?

夏目:たくさんの人にインタビューをするなかで、もう少しあったんですが、まずはこの5つを変えようと思いました。一番多くの人がめんどくさいと思っていて、改善する必要があると判断した5つです。

「スーツを着なくてもいい」というのは他の会社でも言われてると思うんですけど、ついスーツを着ちゃいますよね。この新施策では禁止という表現にしました。ここの部分は最後まで揉めたんですけど、「禁止というのが逆に型にはめているんじゃないか?」と言われて。

どういった思いがあるかというと、自分が就活生だったときや、転職するときを思い返してみると「スーツを着てこなくてもいいよ」と言われても、「やっぱり、ちゃんとしていかなきゃ」と思うじゃないですか。

だけど今年って8月に面接があるんですよ。暑いんです。なので「スーツ以外でも可」という表現はよく見かけるんですけど、それでもみんなスーツで来ちゃうので「スーツ禁止」にしたんです。暑いじゃないですか。スーツ。

ただしスーツが好きという方はスーツでも構いません。

質問者:よく履歴書は手書きにすべきか、パソコンで作るべきかという議論がありますよね。それについてはどう思いますか?

夏目:手書きには手書きの良さがあると思うんですが、僕たちが採用しようとしているのはウェブに関わる人材で、手書きのものに魂を込めるという仕事ではないです。なので、パソコンでつくられた履歴書のほうが合っているんじゃないかなと思います。

あと、これはすべてに言えることなんですけど、応募者の負担を減らしたいなと思っています。字を1つ間違えただけで履歴書をもう1枚買うなんて、めんどくさいじゃないですか。なるべく本質じゃない負担は減らしたいなと思っているんです。

だから他にも負担をなくすために「オンライン面接」というものがあります。僕も地方出身なので、東京に行くのに夜行バスでスーツがシワになったし、お金もかかりましたし。

それだけで一仕事です。授業も出れないし、友達とも遊べないし。というのがすごく嫌だったので「オンライン面接」を可能にしました。これはテレビ電話で面接します。

ですが、人を大事にしている会社なので相性というのもあると思います。そこはオンラインだけでは見れないと思うので最低1回は会うようにしています。

新卒の切符のためにわざと留年する必要がなくなる

質問者:従来の新卒以外の人でも入れるようになっているんですよね。そういうニーズは多かったのでしょうか。

夏目:いろいろな人に話を聞くと「卒業するのが怖くて適当に入ったけど、合わなくて辞めました」ということが多かったんです。

また次の年の新卒で入るために、わざと留年するという人もいます。でもそれって学費がもったいないじゃないですか。いろいろな会社がこれをやれば、そんな無駄なこともなくなるかもしれないですよね。

質問者:「30歳以下」というところには何か理由はあるんですか?

夏目:浪人や留年をして紆余曲折している学生でも応募できて、かつ同じタイミングで入る新卒の22歳とも馴染めるのが30歳以下という年齢かなと。正直、40歳や50歳でも良かったと思うんですけど。

質問者:逆に下は何歳まで想定されているんですか?

夏目:働ける年齢以上なら何歳でもいいです。でも学業の邪魔になることはしたくないので、大学1年生で応募をしてきたとしても「大学にも通いつつ」ということはできないです。

他の社内施策で、優秀なエンジニアと出会う機会があったんですが、一番優秀だったのが中卒でニート。めちゃくちゃ面白い人なんですが。でも、今の新卒採用の枠だと彼らは新卒として応募することができない。中途採用で入ればいいと思うんですが業界経験3年以上とか、大卒からみたいな制約にひっかかって応募できない。

高校を中退してしまったりとか、大学を中退してしまった人たちの中にも、面白い人がいる。そういう人たちが、もっと自由に働ける機会を増やすことができればと思っています。

いろんな理由で働けなかった人たちが楽しく働けたら

質問者:この新施策は来年以降もやる予定ですか?

夏目:未定です(笑) ただ、反応は良くて「続けてほしい」という声も多いので。個人的には続けていきたいなと思っています。

質問者:この新施策が今まで出てこれなかった理由のようなものはあるんでしょうか?

夏目:なんなんでしょうね。答えはわからないんですが、今だと「既卒3年以内は新卒扱い」というルールもありますし。同じようなことをしている会社は実はたくさんあるんです。

ただ、リクルートがやるというのは意味がまた変わってくると思います。「おや、時代はそっちか?」という流れをつくれると思います。

個人としてはいろいろな会社が影響を受けて、こういった施策が増えていけばいいなと思います。働きたくても、いろんな理由で働けなかった人たちが楽しく働けたらなと思っています。

司会:時間となりましたので、以上で新施策報告会を終了させていただきます。

夏目:本日お話させていただいた新卒採用は7月9日が締め切りです。応募サイトはこちらっていう形で記事にする際はリンクを貼っていただけると嬉しいです(笑)既卒の方や就業中の方も30歳以下の方はぜひご応募してみてください。本日はありがとうございました。

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