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『Webメディア業界のキャリアデザインって?』(全3記事)

スペシャリストとゼネラリスト、どっちが強い? - Webメディア業界のキャリアを考える

技術やアーキテクチャの移り変わりが激しく、またさまざまな職能が技術の進化によって人の手からシステムへと自動化されていくWebメディア業界において、今後サバイブしていくためにはどのようなスキル・マインドを身に付ければ良いのか? この業界の先端に身を置く二人のプロデューサーが、忌憚なき議論を交わす。

Q2. 息の長そうな職種・スキルは?

川原崎:次の質問も同じですかね? 裏返しだったんで一気に喋っちゃったんですけど。

松浦:でも息の長そうなっていう部分でいうと、人の心を捕まえるのが上手い人なのかなぁと思いますね。そういうのをリスト化すると、どんなのが出てきた?

川原崎:これが難しいなと本当に思っていまして、結論は茂樹さんの仰っていることにすごく近くって、手段の目的化というかですね、その解析することを目的化した人はやばそうだなと。そこにプラスアルファで、これが何の目的で使われているのとか、最終的にどういうプロダクトになるのかっていうのを意識して、そこまで考えてやっている人っていうのは大丈夫なんだろうなと思うんですけど。

たとえば僕は、自分の部下に対して「外注してもできることは評価しない」っていう話をしているんですね。

松浦:単純作業回すだけだったらバイトとか外注でいいですよね。

川原崎:わざわざ中の人がやらなくていい。サイゾーで自分でしか出来ないことをやってほしい、と。それは事業作ることだったりコンテンツ作ることだったり。職種にもよりますが、作業ベースのことは僕は一切評価しないです。

松浦:僕もそうですね。ライブドアでいろいろ事業立ち上げて、たとえば赤字だったのを黒字に持って行きますってときに、手段は正直どうでもいいと。嫌いなことをやらせてもパフォーマンス出ないと思ってるんですよ。好きなようにやりなさい、それも含めて考えるのが仕事です、て考え方ですね。

与えられたミッションに自分のやりたいことを乗せて、結果まで乗せてやってくるのが仕事する上での成長だと思うし、そういうところをやらなければ結局だめなんじゃないのって話で。それは別に0から1をつくれってことではなくて。

スペシャリストとゼネラリスト、どっちが生き残る?

川原崎:茂樹さんに聞いてみたかったんですけど、スペシャリストとゼネラリストっていわゆる区分があるじゃないですか。コーダーとかデザイナーとかのスペシャリストと、僕らみたいなプロデューサーとかディレクターとかのゼネラリスト。どっちが息が長そうだと思いますか?

松浦:僕は最後はゼネラリストになるんじゃないかなと。ここはね、割と意見が分かれるところなんですよ。スペシャリストとして突き進んで行った人が40,50になってもそのスキルで一生食えるか。例えばゼネラリストの人って50とかになったときに、スキルはどっちにしたってすり減っていくものだと思うんですよ。そうなった時に、現場を含めて戦えるかどうかって時に、完全にフラットなゼネラリストだったら多分ダメになるかなという風に思います。

川原崎:というと?

松浦:生き残れるのはゼネラリストの中で一部だと思うんですよ。とがった部分がひとつでもある人。そうじゃない、フラットな、目立った特徴のないゼネラリストだったらちょっとまずいんじゃないかなと。

川原崎:そういう職種が多いですよね。ウェブメディア業界って。

松浦:そうそう。で、カワパラさんも横にいるじゃないですか。雑誌の部隊が。僕もWIRED行って見てたんだけど、雑誌ってそういう意味では縦でパンパンパンって分かれているじゃないですか。それぞれのスキルも職種も。過程も。それだと割と長く食えるのかなっていう。そういう意味では7割8割の力でも長く食えるのがスペシャリスト。突き詰めてずっと仕事の部分で楽しみも含めてやっていくならゼネラリスト。

川原崎:ゼネラリストって僕もそうなんですけど、コンプレックスがずっとあったんですよね。スペシャリストの人に対して。コーティングできない。デザインもできないみたいな。営業も専門の人には勝てないしみたいなところがずっとあって、「おれ本当に価値ないな」ってずっと思ってたんですけど。今、サイゾーでデザインのことを覚えていったり、コーディングの勉強をしてみたりとか、いろんなことをかいつまんで、要するに何でも6割ぐらいわかる人みたいになってるんですよ。で、それが価値があるんですか?っていう問いがあって。

松浦:そうだね。そういう意味では80点90点取れるスペシャリストは行けると思うんですけど、60点しかとれないスペシャリストはダメだと思うんですよ。でもゼネラリストはそうじゃない。僕SEやってたじゃないですか。30ぐらいまでSEで、当時SE限界説が35。それで思ったのが、すごい出来るSEは多分35を超越して残っている人だと思うんですよ。実際そういう方々が、「君らそんなことないよ。やれるよ」って言うかもしれないけど、やれるのはお前らだけだよ!みたいな。ホントに。

川原崎:無責任ですねー(笑)。

松浦:無責任ですね。スペシャリストは、そういうところで皆出来ると思い込んでいる悪いとこあるじゃないですか。

川原崎:分かる気がします。

松浦:それでSEだめだなと。SE60点、営業で60点ってなったときに、さっきライブドアに行ったときに何が一番効いたかというと、やっぱりSEの経験が効いた。ディレクションできる奴は周りに何人もいたけど、システム組めて、データ集めて、その他諸々含めて全部分かるっていう奴はいないんで、そういうところを任される。次に、営業をやってたから、ポータルのトップページでコンテンツを上に載せてくれって社内でもいろいろ言ってくるわけですよ。そういうのを裁く時に、営業を含めた経験が生きてくるんだと思うんですよ。

食いっぱぐれないように、人にない価値を持っている。ゼネラリストって少し横にずれた部分でそれ自体が武器になることがあるので。だからスペシャリストに関しては営業スキルがあるとかだと、ちょっとした武器になると思うんだけど、息が長いっていう意味でいうと……例えば今、現場戻れって言われても戻れるでしょ。

川原崎:別に全然問題ありません。というか、普通に自分でガンガン現場やってるので。

松浦:僕も戻れるし今でもシステムエンジニアをやろうと思えばできると思う。営業戻れるでしょ?

川原崎:やりたくないけど戻れる。すごいやりたくないですよ(笑)。

松浦:そういうところなんじゃないかなと思うんですけど。だからそういう意味では30ぐらいまでにある程度色々やっとくと、他の職種の人の気持ちが分かる。

川原崎:それはディレクションする上で重要ですよね。

松浦:経験したことないやつがやるな、て話ではないと思うんですよ。でも少なからず必要になってくるかなと。

川原崎:人間的というか感情的に、お前コード一行も書けないくせにとか、ありますよね。

松浦:あるある。だから今回ハフィントン・ポストで編集長やってますけど、お前編集やったことあんのかとか、お前記事書いたことあんのかみたいな。

川原崎:びっくりしますよね。GREEのニュース編集部やってた人がハフィントン・ポストの編集長って。

松浦:だからホントに記事書いたことあんのか、取材したことあんのかって言われたら、一応はねちょっとはあるのよ。WIREDに俺が書いているのがちょっとだけあるし、取材とか、編集もだいぶ真似ごとに近いですけどやったことはあるんですよ。でも他の人と比べて経験値その他の部分では全然違いますよね。

でもそういうところが少しでもあるから。少しもなかったらさすがにねぇ。今回のオファーは無いだろうなって気がする。そういう意味でゼネラリストとして生きてきたから編集長っていうポジションをやらせてもらっているんじゃないかなって思います。

川原崎:なるほど。紙の編集長がハフィントン・ポストの編集長は絶対にできないじゃないですか。茂樹さんって編集長というかプロデューサーですよね。

松浦:だからいろいろ言われているところもあるし、本国からは「お前編集長なんだからな」って強く言われているけど、気持ちの上ではやっぱりプロデューサーかな。

Q3. プロデューサーってどうなの?

松浦:今プロデューサーの話になったところで、どうなのっていう。

川原崎:じゃぁ皆さんに聞いてみます。プロデューサーが専門職か総合職かどっちでしょうって質問なんですけど、プロデューサーが専門職だと思う方?

(挙手なし)

松浦:お。いない。いないのか。

川原崎:じゃぁ総合職だと思う方?

松浦:おー。業界関係者ばっかりですよ。この人達(笑)。

川原崎:なるほど。これ未だに僕よく分からないんですけど。僕がそもそも自分のキャリアに不安を持ったのが、汎用性がないからなんですよ。汎用性がないって、例えばサイゾーがやっていることを他でやれるかってなったら、ぶっちゃけ出来ないんですよね。出来ないからサイゾーは強いんですよね。

ヤフーが真似できない、大手の悪口を書いたりとか、ちょっとエロいギリギリのラインを突っ込んでみるとか。普通やりたがらないじゃないですか。マクドナルドの悪口書いたらマックの広告はいんなくなるし、芸能プロの悪口書いたら、そこの芸能プロに相手されなくなるし。

そう考えたときに、僕が転職したときにこのスキルを生かせるの?ってなったら、生かせないんですよ。このままでは。なのでそういうところにコンプレックスを感じていたんですけど、今僕がやっていることを他の人がやれるかって考えたときに結構難しいと思って、そういう意味で僕は専門職なのかなって思ったんですけど。

松浦:他の人は難しいなって思うポイントはどこなんですか?

川原崎:何でしょうね。すごく具体的にいうと、編集スキルがあるとこだと思うんですよね。編集が出来るプロデューサーっていうのはまだ世の中にほとんどいないと思っていて。

例えば僕ってサイゾーに入社したときに一日10本とかネタだしを編集長にしていて、週に何本通らないと帰れないってことをやっていたんですよ。毎日毎日ニュース見たりとか電車乗っててもただ乗っているだけじゃなく、中吊りを見たりとか。話題の本を読んでみたりとか、ネタ集めをして、それを編集長に提案して、ダメ出しをされるみたいなことをずっとやっていたんですよね。

そうやるとアイディアを思いつくときのヒントとかが分かるようになってきたりとか。どういうものが人の心を掴むのかっていうスキルを身につけていって、そういう能力を持ってる人ってWebの世界にはなかなかいないんじゃないかなと。

プラス僕は営業経験があるので交渉がわりと得意なんですよ。新規営業もいっぱいやってますし。そういうハイブリッドな人が今、あまりいないんじゃないかなと思いますね。

松浦:それで言うと編集とプロデューサーのところで、今までの紙業界の人とかテレビ業界の人とか、実際にテレビはほんとよく分かんないので、今度プロデューサーとディレクションの部分をどういう風に置換しているのかなっていう話は聞いてみたいんですけど。逆にウェブのプロデューサーって本来いるっけ?っていう。

川原崎:ウェブのプロデューサーはウェブから入って上にいっている人が結構多いですよね。編集から入ってウェブプロデューサーになる人ってあんまりいないんですよね。

なぜウェブでは編集者だけじゃダメなのか

松浦:それで言うと編集はものづくりの部分が強くて、例えば料理を作る人。素材ネタがあって調理するってとこがあるじゃないですか。でも調理するってことは、今度お客さんに食べてもらうってとこが結構遠いんですよね。料理を作っても。お店に来て貰わなきゃいけない。それにカレー屋なのにお前は何でラーメン作っているんだとか、そういうとこがあるじゃないですか。

川原崎:それはもう、おれの作りたいものだったからっていう。ラーメンが作りたかったから作ったんだ!

松浦:そこが人の来ないカレー屋だったら、もう編集は終わりってことじゃないですか。その人の心を掴むっていう部分で、お客さんにどれだけ向き合えるかっていうスキルと編集のコンテンツにどれだけ向き合うかっていうスキルは結構違うのかなと思うんですよ。

川原崎:確かに。そこの仲立ちをするのがプロデューサーっていう人たちですよね。

松浦:そう。今までライブドアにいて、ライブドアってプロデューサーって職種ないんですよ。みんなディレクター。

川原崎:そうなんですか。ちなみにディレクターとプロデューサーの違いって何ですか?

松浦:それでいうとプロデューサーはお金を集めてくる人。テレビだと割とそういう話なのかな。スポンサーも含めて割とそうだと思うんですけど。ウェブだと違うかなぁっていうのがあって。

川原崎:そうですね。

松浦:例えばディレクターミーティングとかあるじゃないですか。ディレクターばっかりでプロデューサーのひといるんだっけ?って話になるじゃないですか。名刺にプロデューサーって書いている人なかなかいないじゃないですか。

川原崎:いないですね。

松浦:それが何か部長とかシニアマネージャーとかいう人がやってるのかもしれないですけど、その人達はマネージメントするのが仕事なの? みたいな。それだけじゃないよね。

川原崎:ウェブ業界にまだ、そういうポジションがあんまりないんですよね。人を見るだけのマネージャーがいない。

松浦:プレイングマネージャーが基本ですからね。ウェブのプロデューサーの定義ってあんまりされていないっていうのがあるんですね。だからこの2人でいうと、人の心を掴むことが根底のテーマみたいに言ってるけど、そこだと思うんですよ。

どうやって人を連れてくるか。お店を作った時に、どういう空間でどういう風に設計されているかっていうのをやるのがプロデュースで、その中に入ってきたときにいかにうまいメシを食わせるかが編集。

だから編集の人がプロデューサーに回った時にそこをひきずっていると、「俺のうまいと思うものを食え」ってなって、なかなかそっち側(対お客さん側)に切り替えれないっていうのがある。特に紙の編集さんでそこが切り替わらない人がちょいちょいいるなぁと見ていて思いましたね。

川原崎:偏見かもしれないですけど、僕、出版社にいる人間だから言ってしまいますけど、紙の人は結構、視野が狭くなる人が多いですね。

紙の編集者をウェブで活かしづらい理由

松浦:だからそういうのがウェブに来たときに、自分たちが作りたいものを作ってしまって、「なんで読まれないんだ?」っていう台詞を僕は何度も聞いてしまっているので。そこが大事なところですよ。あとよく言われるのが、オーマイニュースと何が違うのって。

川原崎:それはね、僕真っ先に思いました。ハフィントン・ポストって聞いたときに、「え? 市民メディア?」って。

松浦:あれは市民が書きたいこと書いちゃうんですよ。それぞれの市民の問題意識がボロっと出ちゃうのね。でもそれ読みたいんだっけ? っていう。オーマイニュースとかライブドアさんのPJニュースとかがあったんですけど、やっぱり「隣の家で柿がなってます」とかいう日記みたいな記事を書くニュースもあったりして、げんなりするわけですよ。

川原崎:笑。

松浦:ほんとにPJニュースの記事ってそういうのが何本も何本もあって、すごい本数あるんだけど、それ読むんだっけ? って話になっちゃう。だからそこって書きたいことがよく編集されて、読み物としてはいいかもしれないけど、それが読まれるのかどうかっていうのはまた別の話で。

例えばそこは媒体の違いだと思っていて、ウェブっていいものを作ったら人が来るのが原則じゃないですか。例えば新聞だとある程度家に配られるわけですよ。だからとりあえず作ったら届いちゃう。

川原崎:なるほど。

松浦:届いちゃうんですよ。我々ウェブで何かやろうと思ったらPCとかスマホ開いて該当のURLなり何なり、ステップ数がなんだかんだ言ってあるんですよ。新聞のステップ数って玄関に行くだけなんですよ。テレビはリモコンのスイッチを押すだけなんですよ。その部分の導線設計がないから、作ったら届くんですよ。でもウェブって作っても届かない。

川原崎:確かに。

松浦:だからそれを同じ流儀でやろうとしたら、そりゃ届かないよ、という。

川原崎:なるほどー。そうですね。そこの部分が絶対必要ですよね。

松浦:そうそう。そこの部分がプロデュースとかそういう観点において違ってくるっていう話だと思うんですよ。

川原崎:僕いつも媒体を作って編集者雇って、初めのうちは編集のとこもいっしょに見るんですよね。編集者の人に紙媒体の人ってたくさんいるので、はじめ上手くいかない部分がたくさんあるんですけど、それは自分が当事者になってしまうというか、言いたいことをそのまま書いちゃうっていうことなんですよ。これを分かりやすい例で言うと、赤旗新聞に書いている内容を信じますか? って話なんですよ。

松浦:うーん(笑)。

川原崎:そういう、自分自身が右翼の人が書いて作ったメディアって全然信用できないじゃないですか。それと多分一緒だと思うんですよ。柿が庭になったのが、すごい素晴らしいことだと、その人は思ったのかもしれないですけど、周りの人からみたらどうでもいいよっていう。

だから当事者になるんじゃなくて、一歩引こうって言ってます。アベノミクスすごいよね、最高だよねってなったら、自分も「そうだそうだ」ってなるんじゃなくて、その反対論者を探してくると。これはサイゾーのひとつの編集スタンスです。世間の逆張りをすることで、新しい視点を与えてあげる。

アベノミクスなんて全然イケてないし、3年後にはどうなっているか分かんないっていう反対意見もひいて、両方載せようよってことですね。で、そこから何をくみ取るかっていうのは読者次第なんだから、編集部が主張するんじゃなくて、主張とカウンターパートと両方並べてみて、判断は読者に任せましょうと。

自分で何かを言ってはだめだ。これは面白い、これはつまらないって発言するような記事は、おもしろくないって思いますね。

ハフポスは他の媒体となにが違う?

松浦:さっきからお互い話が同意しまくって、意見がぶつからなくておもしろいくないね、ていうのがあるんですが(笑)。それで言うと、さっきかわぱらさんは、「我々は主張しないでお客さんに意見を提供する」っていうのがあったじゃないですか。それで言うとね、今回ハフィントン・ポストってちょっと違うんですよ。

川原崎:なるほど。

松浦:もちろん両論併記をサイト上でしちゃっている部分もあるから中々難しいんだけど、今回他のニュースサイトと何が違うのって言われまくるわけですよ。私たち。いわゆるヤフーニュースとかブロゴスとか、サイゾーさんとか。

一番の違いはコメントがつきまくって、そこで議論がわき起こるとこだと言っているんですよ。だからどちらかというとコミュニティ志向なんですよ。コメントも含めて読めますよってなっているんで。

今までの、読者に判断を委ねるっていうかたちになってしまうと、どうしても悪いところを指摘してしまうんですよ。お互いの。で、どんどん議論が下に落ちていって何も生み出さなくて読めないんですよ。だから必ずそういう意味では意見を含めて、こうでしょって言い切るっていうのをやろうかなと。

川原崎:ディレクションのないCGMって面白くないですよね。

松浦:面白くないですね。アメリカでは1/3のコメントが削除されるんですけど、今日本の現状では20%ぐらい削除される程度。

川原崎:それどういうものが消されるんですか?

松浦:事前に「良質な言論空間でお互い議論しましょう」って言っていたところがあったので、例えば日本人は何故議論がヘタなのかっていうブロガーさんの記事に、ポジティブな意見が付いていておもしろいなぁと思うこともあるんですけど、やっぱり昨日・一昨日の橋下さんのネタでわっさりネガティブな意見が増えまして、そうすると皆さん思った以上にディスりますね。やっぱりダメなとこ指摘するのってエクスタシーなのかなって思う。

川原崎:コメント欄ってAmazonのレビューみたいにプラス評価、マイナス評価ってありましたっけ?

松浦:一応ある。あるんだけど母数そのものがまだそんなにはないので。でも見ていると、どうしてもそういうノリになってしまうところがあるかな。

コメントと空間設計

川原崎:うちもコメント欄を、僕はすごい付けたいって言うんですけど編集者は絶対嫌だって言うんですよね。何でかっていうと、ついたコメントを消すわけにはいかないじゃないですか。

はてなコメントとかでも、ネガティブなコメントが書かれると皆それが正しいって信じてしまうんですね。我々がそのコメント欄にさらに書き込んで、「いやいやこれはこういう理由であなた間違ってます」って言うわけにはいかないんですよ。

要するに一方的に書かれて反論ができないのがコメント欄だと、僕たちメディア側は思っているんですね。だからそういう意味でディレクションがないと無法地帯になりますよね。

松浦:だから全部そうだと思うんですよ。新聞もヤフーも今コメント欄が付いていないと思うんですけど、ヤフーさんも付いたりつかなかったりしたじゃないですか。コメント欄のとこ。

川原崎:一瞬ありましたけどね。

松浦:でもあれを見ていると、そこも含めてディレクションというか空間設計だと思うんで、どういう風にしたらお客さんが良質な言論空間にできるか。扉開けたところで全然知らない兄ちゃんが激論交わしていたりしたらお客が入ってこないじゃないですか。

空間設計の部分でお互いポジティブに意見を言い合えるようになったら、やっぱり読める。もちろん今も厳しいところがあります。ネガティブコメントが付いているところもあるんですけど、そういうとこも含めての設計。

やっぱリアルでも6人座ってディスカッションしてて1人がネガティブなことをバンバン言っていたら、何の議論にもなんないからお前退席じゃんってなっちゃうわけじゃないですか。でもそれって検閲でもないしディベートでもないし、空間としての編集だと思うので。

プロデューサーに市場価値はあるか?

川原崎:ちなみにこのプロデューサーってどうなのっていうのは、市場価値としてどうなのって話なんですよね。転職市場価値とか。仕事の話に戻すと。

松浦:さっき言ったけど、どうやって人を掴むかっていうスキルまで落とし込めば、全然いけると思うんですよ。

川原崎:僕も転職などのオファーを頂いた時って、話を聞きに行ってみるんですね。どういうことを僕にやらせたいんですか? とか、どういうところを買ってくれたんですか? とか。

すると、サイゾーみたいなものを作ってくれって言われたことは一度もないんですね。例えば女性が抱えているコミュ二ティサイトがあったとしたら、そこで何か新しいことやってくれとか。あるいは小さめの会社にいって、よく分からないけど幹部候補で入ってくれとか。

あとはメディアじゃなくって新規事業を作ってくれって言われることがすごく多いんですよ。僕がやってきたのは芸能とかマスニュースとかを作るメディアの部分なんですけど、そこが求められることって実はほとんどなくって。どちらかというと新しい事業とかコンテンツを作る部分で、「新しく人が求めるものを作る」っていうことを求められる。それが個人的にはびっくりしたところでした。

松浦:でもコピーできるところも含めて、評価してもらっている部分だと思うんですよ。ここにいる方々が、何で僕がハフィントン・ポストの編集長になったのかと思っていると思うんですけど。

川原崎:そこはすごい気になりますよね。だって普通に考えたら田端さんじゃないですか。

松浦:笑うとこですよ。笑うとこですよここは!

川原崎:大御所は何人かいるわけですよね。そっちの世界の。

松浦:それで言うとライブドアでやってきたこと、WIREDでやってきた部分をさっぴいて考えると、新しいものをリリースしてきたかどうかとか、成功の基準はいろいろあると思うけど、いろいろやってきた中で一番能力として認められた部分はここですね。プロデューサー。

どういう風に人の心を捕まえてくるのか。WIREDって翻訳媒体の部分があって、もちろんオリジナルな部分もあるんだけど、本国はとにかくでかいんで、どんな記事をチョイスして翻訳して載せるかっていうのも設計だと思うんですよ。そういうところで評価して頂いたのが一番大きいのかなと思います。

川原崎:なるほど。

松浦:別にだから編集の部分でポリシーがどうとかいう話ではなくて、あくまで日本的な部分で言うとプロデュース、向こうで言うと編集長がそこを兼ねている部分があると思うんですけど。そういうとこで評価して頂いたかなっていう気がしますね。

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