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挑戦する君たちへ 〜夢を追い続ける3人からのメッセージ〜(全4記事)

三木谷社長「楽天が成功したとは思っていない」--ビジネスとは“永遠に続く山登り”である

日本を代表するIT起業家3名―楽天・三木谷浩史、GMOインターネット・熊谷正寿氏、サイバーエージェント藤田晋氏が一堂に会し、意見を交わしたセッション。本パートでは、藤田氏が長期的に成功を収める経営者が少ない理由を明かします。

青学生発の起業家として応援したい

小林麻耶氏(以下、小林):ありがとうございました。それではここからは、質疑応答に移らせていただきたいと思います。ご質問がある方は、挙手にてお願い致します。

質問者:本日は貴重なお話ありがとうございました。GMOの熊谷さんもご愛用いただいているニュースキュレーションアプリ、ニューズピックスにてインターンをさせていただいております。

広告面のほうで、CAさんとも提携をさせていただいていて、ちょうど昨日もサイバーエージェントさんの御社に行かせていただきました。また一方でソフトバンクアカデミアに在籍していまして、孫正義の元で経営を学んでおります。

自己紹介はこの辺にして、質問というより藤田さんへのお願いになるんですが、結論から申しますと来年大学を休学して起業する予定です。藤田さんに次ぐ、青学発の起業家になることをお約束しますので、是非改めてお会いさせていただいて、お話させていただければなと。

それまでに麻雀もしっかり勉強していきますので、お話させていただければなと思います。よろしくお願いします。

小林:はい。ありがとうございます。藤田社長へのお願いです。

藤田晋氏(以下、藤田):この大事な時期に麻雀はやめたほうがいいと思います(笑)。先ほど三木谷社長が、大企業を辞めて起業するアントレプレナーのモデルケースになろうと思ったとおっしゃってましたが、そういう意味で僕は青学出身起業家のロールモデルにならないといけないですね。そういうことなら応援しなきゃいけないですから、ぜひ会いに来てください。

質問者:お願いします。

藤田:この会場に秘書がいますので、連絡あったらアポイント取れるようにします。

小林:おお! やりましたね! おめでとうございます!

夢をはっきりとイメージすることが大事

小林:では、続いて参りましょう。次の方。

質問者:お三方に質問があるんですけど、今思い返すと、人生の分岐点ってあったと思うんですけど、当時、ここで勝負をかけるべきだっていう意識というか、勘所というのはありましたか? それが今までの時点ではまだなくて、これからあるならしっかりつかみたいと思っています。

熊谷正寿氏(以下、熊谷):僕は20歳の頃が分岐点で。それが何だったかというと、この歳に、10年後、20年後の自分のイメージ夢という言葉に置き換えますけど、自分の夢をはっきりさせたことが分岐点だったんですね。

僕は何かの分野で一番の起業家になりたいという風に思って、目をつぶって強くイメージできるくらいに認識したんです。そうするとね、ありとあらゆる情報が飛び込んでくると思うんです。関わる情報が。

例えば女性が朝テレビでラッキーカラー占いとか見ちゃって、今日のあなたのラッキーカラーはピンクですとか言われるようになると、ピンクなものを身に付けたり、ピンクのものが目に入ってきたり。男性がゴルフが好きになると、なぜかゴルフのチラシに目が行ったり、ゴルフショップの看板が目に入ったりするんですね。

これは心理学的にカラーバス効果って言うんですけど。まさに、夢を目指したことによって、自分が必要な情報とそうでない情報と見分けがつくようになって、すごく、この、なんていうんでしょう。時間イコール人生、あるいは命の節約に繋がっていくんですね。

だから、おすすめしたいのは、自分が将来どうなりたいかっていうのを、目をつぶってはっきりするぐらいイメージすること。夢をはっきりさせること。これが人生の大きな分岐点になると思います。ご質問の回答になったでしょうか?

質問者:はい。ありがとうございます。

大きな選択肢が待っている

小林:それでは、藤田さんからお願いします。

藤田:学生時代に意外と分岐点がありました。たまたまアルバイトで広告代理店で働き始めたことが分岐点でした。麻雀の話が多くて申し訳ないんですけど、最近、麻雀のプロとの交流が増えたのですが、麻雀のプロって青学や東大出身の人も結構いて、高学歴を無駄にしてるというか…。正直言って僕、学生時代になまじ強かったために、麻雀の道に行こうか一瞬迷ったことがあるんです。

だから同じ歳ぐらいのプロに会ったときに、これが僕の選択しなかった未来だと思い、心底ほっとしました。やはり厳しい世界なので。好きなことやっているという面ではいいと思いますけど。

学生時代にバイトするにしても、麻雀にのめり込むにしても、意外と大きな選択肢が待っているので、やっぱり、気を張っておかないといけないですよね。

小林:ありがとうございます。熊谷社長、教えてください。

熊谷:ちょっと、裏話していいですか。この会、僕がこの御両名にお声掛けしたんですけど、ある日藤田くんから、「出られなくなった」ってメールが届いたんですよ。「ちょっと勘弁して! ありえないよ! 理由は?」って言ったら、この後の麻雀大会を……。

小林:藤田さん!

(会場笑)

留学経験によって視野が広がった

小林:三木谷社長、教えてください。

三木谷浩史氏(以下、三木谷):子供の頃の分岐点はですね、僕は一時期アメリカに住んでいたんですけども、親と一緒にドライブに行ったらアメリカ大陸を縦断して、はっと目が覚めたらですね、目の前にグランドキャニオンがあったんですよ。

子供の頃ですから、バカでかいクレーターみたいな穴があるなんて全然知らないもんですから、目の前にグランドキャニオンがあって、やっぱり地球はでかいんだと気づいたことがありました。そこで脳の構造が変わったのかなと思います。2つ目は皆さんにも関係あると思うんですけど、やっぱり僕の中で大きかったのは、大学院に留学をしたことですね。

自分の視野を広げる意味もありますし、それからこういう世界的なビジョンを作っていく上でも大変意味がありました。もしできるならば、短期でもいいから、やはり世界の他の国に行って勉強するというのがいいんじゃないかと思います。

小林:いかがですか?

質問者:ありがとうございます。

小林:ありがとうございます。

幸せの定義を決めることが大事

小林:では、続いての質問に参りましょう。じゃあ、女性の方で。質問者:今日はお話をありがとうございました。今年の夏にサイバーエージェントでインターンシップをやった際に、社員の方に「大変じゃないですか?」と聞いたら、「大変だけどやりがいがあるから今は幸せ」という答えが返ってきてとても感銘を受けたんですけども、三人の方々は本当に今心から幸せなのか、3人の方々が思ってらっしゃる成功の定義ってなんなのか、是非気になって。お願いします。

小林:わかりました。では、今幸せなのか? そして、成功の定義を教えてください。藤田さん。

藤田:先ほど熊谷さんがおっしゃられていた通り、生まれ変わってもこの仕事をやりたいと思っていますし、逆に今の僕からこの仕事を取り上げられたらもう、辛いです。毎日麻雀やっても辛いですし。仕事が一番おもしろいゲームだと思っています。

仕事を始めた頃と、その後のプロセスと今を比べると、本当に今は自分で好きにできるようになったと思います。最初の頃はがむしゃらにがんばってわずかなチャンスを掴むしかなかったんだけど。

そういう意味では、成功するということは、自由にできるようになることでもあるんじゃないでしょうか。

最初のうちは大変だけど、成功を積み上げてその自由を手にすればするほど、更におもしろいことになっていくと思います。

小林:ありがとうございます。熊谷さんお願いします。

熊谷:幸せって、僕が一番大事だと思うのは、幸せの定義を決めることだと思うんですね。そんなことを皆さんと同じくらいの時に考えまして。私にとっての幸せの定義っていうのは、心の平和だったり、心の満足感だったり、あるいは自分の目標を達成したときの喜びだったりで。

しかもそれを自分だけじゃなくて関わる仲間、関わる人たちと一緒に味わうことなんです。そういう、自分が決めている定義に照らし合わせて、今の僕はとても幸せだと思います。

人の幸せっていろんな種類があると思うんですよ。好きなもの食べるのも幸せだし、本当に、大きいこと、小さいこと、いろんなことが幸せだと思うんですけど、共通のバロメーターってあると思っていて。それは、僕は笑顔だと思うんですね。

幸せな人って笑顔が多い。人は笑顔になるために生まれてきて。で、今の笑顔を増やすために活動しているのが今の僕なので、そういう意味において僕はとっても幸せだと思うし、多くの笑顔に囲まれて、それこそ生まれ変わっても今と同じ仕事をしたいと思っています。以上でご質問の回答になったでしょうか?

質問者:はい。ありがとうございます。

日本に対して危機感を持っている

小林:では、三木谷さん、お願いします。

三木谷:直接的な答えかどうかわかりませんけど、僕は極めて厳しい局面に入りつつあると思うんです。日本は世界から取り残されつつある。そういう意味においては、「究極の目標を達成する」というのが主義なんで、そこに向かっている、山を登っている途中だというふうに思ってます。

新経連を作ったのも、内閣の競争力会議の民間議員をやっているのも、少しでも日本を良い方向に持っていきたい、オープンにしたい、もっとグローバルにしたいという意識があります。ただ、かなり危機感を持っているんで、なんとかこう、突破したいなと。という思いが非常に強い。

起業家として、人生が充実しているかといえば充実しているんですけど、楽天って会社もそうですし、それから日本という国に対しても、非常に大きな危機感を持っているので、そこに向かって全力でやっていきたいと思ってます。

小林:ありがとうございました。

調子に乗った人から脱落していく

小林:では、お時間の都合であと1人となります。いかがでしょうか? 眼鏡の男性の方、お願いします。

質問者:貴重なお話ありがとうございます。お三方が、自分で会社を興して、成功されたと思うんですけど。その成功された要因に一番つがなる、例えば営業力ですとか、交渉力ですとか、その一番の要因はなんだと思うのか、お三方の意見をお聞きしたいです。

小林:はい。わかりました。では、藤田社長。

藤田:僕は起業から17、8年目になりますが、短期的に成功する人は周りに結構いたんですけど、長く続かないんですよね。いつの間にかいなくなってしまう。自分の仲のいい堀江さんもそうだった。

皆、共通しているのは、途中で1回成功すると調子に乗ってしまうんです。ある件についてはたまたま運が良くて成功したという可能性もあるかもしれないのに、それを全て自分の実力と勘違いして、調子に乗った人からどんどん脱落していく。

成功を続けている人たちは、三木谷さんと熊谷さんもそうですけど、やたらと腰が低いんです。

例えば、罠を仕掛けてくる人たちは「あなたは本当にすごい」などと言って持ち上げようとしてくるんだけど、成功を続けている人たちは「いやいや私なんかとんでもない……なんとかさんこそ」と腰の低さを崩さない人ばかりです。

そういう人は百戦錬磨な感じで、だいたいそういう人が勝負強いんですよ。麻雀でも。

(会場笑)

小林:もう、麻雀のことで頭いっぱい!(笑)

起業家は土日も24時間仕事をしている

小林:熊谷社長、お願いします。

熊谷:ひとつ挙げるとすると営業力とか、技術力とか、そういうことじゃなくて、それはすべて大事。すべてのバランスが大事なんですね。とくにインターネットの世界ではものを作る力がすごい大事なんですけど。だから今のここにあるんじゃないですね。もっとベースのところで、人よりも努力することなんですよね。

人って与えられた共通のリソースがあって、何かというと、みんな平等に持っている24時間って時間なんです。これはどの起業家も我々も、よりうまくいく方も、それこそ5年で消えちゃう起業家も、同じリソースなんです。24時間をどう使うか。だと思うんです。

普通の人は8時間寝て、8時間仕事して、あと8時間をプライベートって思っていると思うんですけど、起業家は24時間、多分寝ている間でも仕事しているし、多分土日もずっと仕事しているんです。多分、物事を極める人って、土日って考えている人がいない。

じゃあそれこそ一世を風靡するプロの世界のスポーツ選手がいると思うんですけど、土日休みって思って、練習しない人がいるかってそんなことはないですよね。絶対、土日を含めてやっている。そもそも自分がプライベートタイムって考えている人は、考えていない人に勝てるわけがないんです。

だから多分、技術力とか営業力とか、そういうことは当たり前で、それよりも24時間、人よりも努力することが最大のポイントじゃないかなと思います。

質問者:はい。ありがとうございます。

小林:ありがとうございました。

楽天は成功していない

小林:では、最後に三木谷社長、お願いします。

三木谷:楽天は成功しているとは思っていない。ビジネスは永遠に続く山登りだと思ってるんで。どこまで行っても成功は無いという風に自分は思ってます。楽天に入る社員も、でかい成功した会社に入るとは思わないようにと。自分たちは常に改善していくということを目指していますね。

ひとつ重要なことは、僕は「シー・アラウンド・ザ・コーナー」って言ってるんですけど、英語でよく言うんですけど、角を曲がった景色は全く違いますよと。

つまり自分たちが今見ている未来っていうのは、実は未来じゃなくて、技術革新によって全く違う未来が開ける可能性がある。僕はインターネットのビジネスを18年間やってますから、ネット回線がダイヤルアップのときから見ていけば、この数年のいろんな企業の成功と失敗を見てきてるわけですね。

日本でいうと、iモードが出てきて、結局iモードはなかなか厳しくなって、その先を見越した企業は生き残ってるという。技術革新の先に、何が起こるか。じゃあ本当にグーグルとフェイスブックが見た方向に行くのかというと、やっぱりそう思っていないです。

もうみんなまるで変人。でも、そういう人が生き残るんですよね。この業界っていうのは。で、俺は成功したって思った瞬間に必ず衰退が始まると思ってます。

質問者:ありがとうございます。

小林:三木谷さんもね、変人ってことですか?

三木谷:いや、私は成功してないから。

(会場笑)

小林:本当はもっともっとお話を聞いていたいですし、質問をお受けしたいんですけど、ここでトークセッションを終了とさせていただきます。藤田さん、そして熊谷さん、そして三木谷さん、ありがとうございました。

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