2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岩本隆氏(以下、岩本):3人目として、宇野さんは実は数百億ではなく、1100億の損失を出されたということで、一桁違うんですけれども、見た感じ飄々とされているんですけれども、実は相当マインドマネジメントをされているのかという所で、今日はその一端を紐解ければなと思っております。是非よろしくお願いいたします。
宇野康秀氏(以下、宇野):損失額が最高ということで、お恥ずかしい次第でございますが、宇野でございます。
少し自己紹介が長くなってしまうかもしれないんですけれど、私は25歳の時に仲間と4人で株式会社インテリジェンスという人材サービスの会社を起業いたしまして、10年間かけて上場を目指してということで、ちょうど上場を果たすというタイミングで。
自分の実の父が現在の株式会社USENの創業経営者であったんですけれど、突然癌に罹って3ヶ月で逝ってしまうということになりまして、急遽USENの方も私が株式を引き継いで代表権を持ってということになったんですが、その時点で当時のUSENは営業利益が10億円くらいの会社だったんですが、社長の連帯保証付きで有利子負債が800億円ありまして、過去の電柱諸々の未払負債が500億円ぐらいありまして。
そういう状態で、当然ながらすぐにでも債務超過突入という状況だったものですから、何とかそれを解消しなければいけないということで、2年で株式上場をして市場から400億円ほど調達させていただいて、それをそういった意味では資本増強させていただいてなんとか越えたというのがあったんですが、どうしても大型の上場をしますと、株主さんからの期待も非常に大きくなってまいります。
また時代もそういう時代でもあったゆえに、どんどん売上ないし利益を時価総額に見合うものにしていかなければいけなかったので、大型のM&Aを繰り返し、自分で作ったインテリジェンスという会社と当時学生援護会という会社を、今となってはあれなのですけれど500億円ぐらいで買って。
それを子会社化してということをやっていた頃にリーマンショックが訪れ、子会社の株式の大きな減損ということで、結果もろもろの減損がクラッシュするように起こりまして、500億円以上の当期損益を計上するというのが2カ年続きまして、先ほどおっしゃっていただいた1,000億円以上の損失を出すということになってしまいました。
宇野:そういう状況下の中でシンジケートローンを組んでいたところから、コベナンツにヒットするという状況の中でリファイナンスがなかなか組めないということで、期限を持ってしまえば会社がデフォルトするというような状況に追い込まれた時がございました。
その頃から銀行さんとはかなり対峙した関係の中で、いわゆる法的な整理に近いところですね、当時企業再生機構とかいくつかの手段があったんですが、そういう所に早く駆けこめというような話もいくつかあり、その葛藤の中、自分としては一旦社員を含めて身を切る思いでありましたけれど、とにかく整理をしてということで、ダウンサイジングを進め、赤字業務部分を整理し、何とかその会社の整理がつきました。
ということでUSENの方はおかげさまで現在は、売上規模は小さくなったものの、上場来、過去最高益の計上をするようになりまして、借り入れの方も、ピーク時から10分の1くらいになり、あと2年もすれば自然と無借金状態になるというところまで回復出来ましたということと、
あわせてその当時赤字事業部門で、これはとにかく当時のメインバンクさんからは即刻停止と言われていた部門がございまして、そこの社員のクビを切るわけにもいかないんで、私が個人でMBOをして、4年前に株式化したというU-NEXTという会社をスタートしまして、おかげさまで今週火曜日にそちらの会社も上場出来ました。
宇野:ということで、この負債の失敗は、先ほど三木谷さんも言っていましたけれど、乗り越えたのか乗り越えてないのかまだ分からないところでございますが、何とか乗り越えるところの手前の所までは来たのかなっていうことで、お恥ずかしながらこういう場に立たせていただいているということでございます。
どういうことでそのマイナスをゼロにするという気持ちを持っていたかというと、正直その頃は怒涛の中で明日どうするかというようなことしかなかったんで、あまりいい格好のことではないんですけれども、一番自分が思ったのはとにかくいろんな子会社を整理したり部門を整理したり、ダウンサイジングしなければいけない中で、自分は何が辛いんだろうと思いまして。
当然切らなければいけない社員とか、そういうことは辛いんですけれど、それは本当に辛いのかどうかわからなくてですね、ちゃんとした行き先を見つけてちゃんと幸福な道のりをやってあげるんであれば、実は嫌なのは自分のプライドだけなんじゃないかなとそんなふうに思い始めて。
一方で借り入れを債権放棄みたいな話も出た時に私が思ったのは、私はもともと商売人だったのだと。自分は子供の頃から商売人の家に生まれて商売人としてやってきたんだし、商売人だとしたら借りた金を返すのが当たり前なんだと。
だからとにかくいろんなことが悩ましかったので、自分は唯一のプライドである商売人としてのプライドだけを守ろうと。借りた金は返す、絶対に返す。それだけを考えたことと、後は先ほどちょっと熊谷さんともお話をしていたのですけれど、体力がなくなったらもうどうしようもないので、とにかく体力作りをしようということでトライアスロン始めたり、山登りもしたりしておったんですけれど。
皇居のまわりを週に何回も走りながら、某銀行の横を通りながら、絶対返してやるぞ、と思いながらずっと走って(笑)、もうあと2年ぐらいで全部返せるかなと思っております。そういう自分のプライドっていったい何なんだろうなということを、今一度思い直すっていうことが、自分の中で自分をマインドコントロールできたのかなと思っております。岩本:ありがとうございます。
岩本:宇野さんからありましたけれども、熊谷さんとも先ほどお話しさせていただいておりましたけれども、体力と精神力というのはわりと一致するものだということで、体力を鍛えるということは皆さんも結構やられているという話を伺っています。
2つ目の議論に入らせていただきますけれども、周りの巻き込みについて、ここをどのようにやってこられたかということですね。
特に成長企業、私はビジネススクールにおりまして、ビジネススクールで実は一番教えるのが難しいのが、このへんのマインドの有り方だとか周りの巻き込み方みたいな、ただこの2つというのは成長企業の経営者にとっては非常に重要なポイントかなというふうに思っておりまして、この辺について議論させていただければと思っております。では杉本さんのほうから、よろしくお願いします。
杉本宏之氏(以下、杉本):私は周りを巻き込んでいったというより、先ほど申し上げたように協力をしていただける方が本当にいて助けられたということなんですけれど。
自分自身としては、その時に実はたくさん裏切っていった人達もいて、ゼネコンの社長さんとか、不動産業界なので、拉致監禁みたいなこともあったんですが、人生でこういうことも本当にあるんだなという、ドラマじゃないよねというシチュエーションが何度も僕の場合あったんですけれど。
そういう方々も、もう一回起業して、さてゼロからスタートだという時に、実は最初に施工していただいた方がそのゼネコンの社長だったり。カラッと生きていこうということを心がけておりまして、あまり人を恨んだり、人に対してぐちぐち過去のことを言わないとか、それこそまさしく生産性のないことだと思っているので。
いかにこの今のビジネスをうまく成功に持っていくために周りを巻き込んでいくかということを、悪く言えば、どんなものでもゼロから立ち上げる時は、起業家は利用していかなければいけないという側面もあると思うんですけれど、ゼロからスタートするという時は、僕はそういう想いでいろんな人たちに、もう1回このままじゃ俺は絶対に終われないと。
どうしても復活をするために協力をして欲しいということで、いろんな人たちにわかりやすくビジョンを語って、1年でこうなって、辞めていった仲間たちをもう一度集めて、そしてまずは不動産業ですから、お金を借りていかなければいけないのですけれども。私が復活できた要因というのは、先輩方、いろんな方々に当時27億円程借り入れをすることが出来まして。
銀行はお金を貸してくれませんし、本当に無担保でお金を貸していただけるというのは、自分で言うのも恐縮なのですけども、信頼というものがなくてはいけないと思うのですけれど、本当に先ほど大先輩2人もおっしゃっていましたけれど、嘘をつかないとか、やると言ったことはやるとか、そういう人間として基本的なことをしっかり守ると。
ご迷惑をおかけした銀行さんにも、うちは50億円ほどご迷惑おかけしてしまったんですけど。ちゃんと最後まで自分なりにご迷惑をかけてしまったんですけれども、説明責任を果して、そしてもう一度チャレンジをしたいということをご説明して、銀行さんも再度我々のグループに融資をしていただいて、良いお付き合いをさせていただいているという状態でして、基本的なことを守ることなんだと思います。
岩本:ありがとうございます。熊谷さん先日、日経ビジネスで取材受けておられて、give and giveということをおっしゃられていましたけれど、その辺のお話しも含めて、是非周りの巻き込み方についてお話をいただければと思います。
熊谷正寿氏(以下、熊谷):まず大失敗した時に、周りにどういうことが起こったのかを2、3皆さんにご説明させていただきます。
まず社内は情報開示を徹底して、沈没しかけの船に例えればいいのですけども、セウォル号みたいに船長が逃げちゃうケースもあるんでしょうけれども、やっぱり操縦桿をきちんと握って情報開示をきちんとして、今はこんなに苦しいけれども未来はこうだという話をすることによって、実は社内はすごく固まったんです。
幹部は誰1人辞めませんでした。日経新聞にGMO何百億円赤字というのが出ると、それこそお正月にご実家に帰って、新入社員の仲間たちがお前の会社大丈夫か? と親から言われたらしいんです。
でも本当に、業績悪化によって社内で辞める人が続出したりということはなかったんです。むしろ私達幹部が問題解決に集中しているがゆえに、営業の方に目を向けてられなかったら、現場は会社を救わなければいかんということで、現場は成長したなんていうことが起こりました。
一方外はどういうことが起こったかというと、まず傾いた会社に対して狙ってくるような、その会社を乗っ取っちゃおうとか、困っているから騙してやろうという人達が必ず現れる。私の事例ですと、実際に僕は会社にお金を入れなきゃいけなかったから、自分が持っていた不動産を売ろうとしたんです。
不動産を売ろうとしたんですけれど、やっぱり入札で高い方に売りたいじゃないですか。そして高い方と契約をしたんですけれども、その人は転売目的だったんですね。転売先が見つからなかったらしくて、契約日に入金にならなくて、連絡が付かなくて逃げられてしまったりとか。
あとは、会社を救っていただきたくてある投資銀行さんと契約をしたんですね。私の会社を何とか救ってください、問題解決のために知恵を貸してくださいと。で、契約をしたんですけれど、ある日、「社長の会社はこんなバランスシートでお金がなくてもう駄目なんです。社長、会社売りましょう」と言われたり。
しかも週末、社長1人で来てくださいって言われて1人でその場所に出向いたら、投資銀行さんですから非常に有名な会社の幹部の人たち、MDの人たちが何人も出てきて、スタッフの人が5~6人で夕日をバックに呼ばれまして、「社長もう売りましょう」と威圧的に言われて。
テーブル叩いて怒ったんですけれど。でも彼らは諦めずに、実は上場企業というと決算があるから、やっぱり日付のマーケットに握られているんですね。その日までやらなきゃいけないというのがあるのが上場企業なんです。
熊谷:うちは12月決算なんですけれど、年末になって六本木のあるカラオケ屋さんに、そこの投資銀行さんの社長さんと幹部の人たちに呼ばれて、カラオケを歌ってお酒を飲みながらその投資銀行の社長さんに、「熊谷君、もういい加減自分の経験では7~8割、君は年を越すことは出来ない。だから本当に諦めて会社を売ったらどうだ。はっきりさせなさい」と肩を抱かれて言われたんです。
その時、その都市銀行の人事部長、女性の方だったんですけれど、アン・ルイスの格好をして『六本木心中』を歌っていたんですよ。マジなんですけれどもね、これ(笑)。忘れられないです。
その後うちの幹部をみんな呼んで、「そんなこと言われたけど私は絶対負けないぞ」と言って。その投資銀行の社長さんに「僕は絶対あきらめない、年をきちんと越したらご飯をご馳走してください」と言って、きちんと越せたんで、「お前ずるいよ」と言われましたけれど、ありとあらゆる知恵を絞って年を越したんで、きちんとご飯をご馳走していただきました。だから笑い話になっていますけれども、そんなことも起こったと。裏切りですよね。
一方、外部ではあっという間に逃げてしまった方も居ます。例えば、僕たちパソコンをリースしているんですね。ある日突然、「熊谷さん、もうお宅の会社にパソコンリースできません」と。
IT企業でパソコン使えなくてどうするんだという話です。あっという間に逃げちゃって、「あなたの会社いいです」と言って引いちゃった会社もありますし。でも、こんなことが周りでどんどん起こるんです。
一方で、ある銀行さんに年末の挨拶に行ったら、トリガーっていうんですけれども、先ほど宇野社長もコベナンツという話ありましたけれど、銀行との契約なんですね。そこに抵触するとお金を引き上げるという話です。
そういう銀行もあると思うけれど、我々は君たちを支援するから何かあったら相談してきなさいと、銀行の頭取から言われてですね。うちのCFOが帰りのエレベータの中で泣き出したんですよ。男泣き。そんなこともあったんです。
熊谷:周りが本当にそういうふうに、裏切り、逃げる、一方支えてくれる。杉本社長もおっしゃっていましたけれど、僕も自分自身で、先ほどの不動産が売れなかった時に本当に困ったなって思って、先輩の経営者に電話で、別にお金を貸していただこうと思ってお電話したんじゃないんですけど、「本当に先輩困ったんです」と話をしたら、「いいよお前、貸してやるよ」と言うことで、電話で無担保で何十億もお金を貸していただいたり。
まさにですね、周りでそういうさまざまなドラマみたいなことが本当に起こります。一番大事なのはやっぱり、乗りきれたのは、いくつも理由があると思います。僕自身も会社を売っちゃって、それこそ海外に行って生活をしてなんていうこともあると思うんですけれども、それってお金に魂を売っちゃうことだと思って。
自分の人生とか自分の心を、お金と引き換えにしたくないと思ったんです。これは以前から言っていることなんですけれども、人の価値ってやりたくないことをやってしまう金額で決まってしまうのではないかと思っていまして。
つまり、本当に変な話ですけれど、1,000万円で人殺しを頼まれて人殺しをしてしまう人もいると思うんです、世の中。それって僕は、心が動く金額がその人の価値だということで、僕自身は当時は、お金に自分の人生、今までずっと言ってきたこと、自分が逃げてしまうんだということで、あれは全部嘘だったんだというような人になりたくなかった。
あとやっぱり僕は、人ってみんな寿命があって、永遠に生きられる人はいないわけで、だとすると80歳プラスマイナス10年、みんな人生決まっているわけですよ。
何千人もの仲間が自分の人生を捧げてきたのが事業じゃないですか。だからそういう人の命を裏切ることはやっぱり出来ないですよね。だからそういう思いで全ての物事の解決にあたってきました。それが乗りきれた理由ではないかなとういふうに思っております。
岩本:ありがとうございます。
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