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数百億の損失を乗り越える男たち(全4記事)

2年で400億円もの損失「自殺する夢を見た」 GMO熊谷社長が失敗力カンファレンスで振り返った崖っぷちの苦難

業界の第一線で活躍し続ける経営者3名―GMOインターネット・熊谷正寿氏、SYホールディングス・杉本宏之氏、USEN/U-NEXT・宇野康秀氏が一堂に会し、「数百億の損失を乗り越える男たち」をテーマに意見を交わしたセッション。本パートでは、過去の大きな失敗をどう乗り越えたか、苦難との向き合い方について紹介します。

失敗を成功につなげる力が重要

岩本隆氏(以下、岩本):皆さんこんにちは。モデレーターを勤めさせていただきます慶応義塾大学の岩本と申します。よろしくお願いいたします。

簡単に自己紹介をさせていただきますと、私は2年前までドリームインキュベータというところで執行役員をしておりました。ドリームインキュベータというところは、今日お越しの方々よりちょっと後輩なんですけれども、2000年に設立しまして、2002年マザース、2005年に東証一部に上場している会社でございます。

ドリームインキュベータ自体はベンチャー企業の支援を事業にしておりましたので、さまざまな言うに言えない失敗というのをたくさん見てきておりますけれども、ちょうど、大きな損失を出されたというライブドア事件とか、リーマンショックの時期に我々自身も数百億ではなく数十億ですけれども、そういう損失の中でもがき苦しんできたというような経験がございます。

今日は失敗力というテーマなんですけれども、失敗力というのはなんなのだ、ということでですね、たたき台として定義を考えさせていただきました。これ私が勝手に作った ものなんですけれども、失敗力とは何なんだということで、失敗を自身とか自社のアセットにするというのが1つ目のポイントとしてあると思います。

失敗によって蓄積したアセットをレバレッジして将来の成功に繋げるということが2つ目のポイントとしてあるのかなと思っておりまして、たたき台として失敗力をこのように定義させていただければと思っております。

それで失敗によって蓄積したアセット、それに対してリターン、ある意味のROAというのを高めるというのが成長企業の経営にとっては非常に重要なんじゃないかな、というふうに考えております。

私実はバックグラウンドは技術屋でございまして、ビジネスモデルの創造を仮に技術の研究開発のアナロジーで考えますと、ビジネスモデルの研究開発というふうに捉えますと、失敗というのは失敗ではなくて、研究開発における実験データではないのかなということでございまして。

最近はノーベル賞の話なんかもありますけれども、科学技術の世界では失敗から大発見、大発明が生まれるということも多いというのもありますように、そういう力ですね。失敗を成功に繋げる力というのが非常に重要なのかなと考えております。

失敗すると急に周りが離散していく

岩本 :今日は凄まじい経験をされたお三方に来ていただいておりまして、1時間では全然時間が足りないくらいおもしろい話が沢山あるんですけれども、時間の関係上、議論のポイントは2つに絞らせていただきました。

1つ目はマインドマネジメントという部分で、マイナスをゼロにするというプロセスの中で、相当、気持ちが途中揺れ動くと思うんですけれども、そういう自分自身の気持ちをどう奮い起こして維持してきたのかという話を議論させていただければと思っています。

2つ目は、よくあることですけれど、失敗すると急に周りが離散していくと。なぜか協力する人と協力しない人が2つに分かれていくというお話がよくありがちですけれども、そういった中で、周りをどのように巻き込んできたのかという話をさせていただきたいと思っております。

早速ですけれども、まずは先日ちょうどいいタイミングで書籍を出されて、『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』ということで、これはかなりベストセラーになっておりまして、ダイヤモンドオンラインでも対談をされておりますけれども、杉本さんから議論1についてお話をいただければと思っております。

周りの人の応援が精神的な支えになった

杉本宏之(以下、杉本):皆さんはじめまして杉本と申します。大先輩お二人を前にして恐縮なのですけれども、簡単に自己紹介からさせいただきます。

私は24歳の時に起業いたしまして、不動産ディベロッパーで起業して4年で上場いたしまして、売り上げが一時期400億円を超えるところまでいったのですが、リーマンショックで一気にそれが逆回転しまして、ちょうど2009年の3月に民事再生をして一旦リセットをさせていただいたのですが、そこからまた4名の仲間と共に新しく会社を立ち上げて。

また今、おかげさまで4年が経ちましたけれども、同じくらいの規模まで成長させることが出来ています。

私はですね、どちらかというと、もちろんその起業家として、ポジティブであり前向きであり、諦めないということは大事だと思うのですけれども、そういうマインドを持つにはどうしたらいいのかと。

それをテクニカル的にどうやって持ったらいいのかということですけれど、私の場合、本当に多くのグッドピープルに囲まれていたというのが、自分自身の経験を振り返って1つの大きな糧になったなと思っていまして。

本当に素晴らしい方々が周りにいてくださったので失敗して本当に周りからぼろカスに言われて週刊誌にもネットにも相当いろんなことを毎日書かれて、相当苦しかったんですけれども、これから登壇されるサイバーエージェントの藤田さんとかもうちの大株主だったんですけれども、そういう方々が普通に接してくださっていたんですよね。

逆に言えば、「杉本君、もう一度復活出来るから諦めずに頑張りなよ」と。そういう、すごく裏切られて6億円の詐欺にあったりとか、自分自身の個人資産も100億円くらい失ったりとか、本当に人生こんなこともあるんだなっていう失敗とか裏切りをたくさん経験したんですけれど、その分、たくさん応援していただける方もいらっしゃったということで、精神的に健全でいられたと。

つまり起業するときに、マインドマネジメントとして何が大事だというと、僕は、一番は周りにリスペクトできるような、簡単に言うとグッドピープルを周りに沢山置いておいて、そういったメンターといわれるような方々なのかもしれませんけれども、相談できるような方々を周りに置いておくということが1番マインドマネジメントに繋がるんじゃないかというのが僕の感想で。

一緒にご登壇いただいている熊谷さんにも本当に苦しい時によく宴席に、カラオケにもよく連れて行っていただいて、すごく励ましていただいて、本当に元気付けていただいたなというのが印象として残っています。

岩本:ありがとうございます。今お名前出ましたので、次、熊谷さんにマインドマネジメントついてお話しいただきたいと思います。

消費者金融事業で約400億円の借金

熊谷正寿氏(以下、熊谷):皆さんGMOインターネットの熊谷です。どうぞよろしくお願いいたします。失敗はしたくないと、そう思いつつも、今日も1人だけドレスコードを失敗してしまいました。申し訳ございません。

(会場笑)

冗談はさておきですね、どんな失敗を過去にしたのかというのをお話しさせていただきますと、今グラフに映っている と思うんですが、私、東証一部に2005年の6月1日に上場させていただきました。

ジャスダック2部、1部というふうに上場したんですけれども、東証1部に上場した年に、インターネットを介した金融事業に進出しようということで、今の楽天銀行さんですね―元イーバンクと言いました ―そこの筆頭株主になりました。

GMOクリック証券っていうのを今営業しておりますけれども、それをゼロからスクラッチで作り、インターネットを通じた消費者金融事業をやろうということで、オリエント信販という会社を270億円でM&Aをいたしました。

この1つ目と2つ目はうまくいっていたのですけれども、3つ目が、過払い金というグレーゾーンの金利の返還をしなければならないという判例が出まして、そのことで、3つ目の事業でお金が足りなくなって70億円の増資を行ったんですね。

270億円+70億円=350億円。さらにそれを、50億円足りないということで、50億円を私が貸し付けて合計400億円ですね。これ約2年後に持ちこたえきれなくなって500万円で売却をすると。

2年間でリアルにキャッシュを399億9,500万円失うという大失敗をいたしまして、それこそ会社が持っているお金では全く足りなくて外部から増資をしていただいたり、私が上場してから売却をした株の自分の資産をだいたい140億円投入して、さらにお金が足りなくて私個人が30億円の借り入れを起こして、合計170億円自分で会社に投入しました。

練炭自殺をする夢を見た

熊谷:それでなんとか債務超過という、会社の資本がなくなって他人の会社になってしまうという債務超過という状態は免れて、バランスシートが2,000億円くらいの厚みがあったんですけども、自己資本は数億円というところまでいきまして、東証一部に上場した2年後には継続企業の疑義というものがありまして、ゴーイングコンサーンというのですけれども、監査法人からこの会社は危ないというものを有価証券報告書に記載されるというところまでいきまして。

私も、会社が東証一部にいって2年後に会社の存続そのものが危ういという状況になるとは、まさに夢にも思っておりませんで、一度は自殺をする夢まで見まして、目が覚めたら全身汗がビッショリで、練炭自殺をした夢を1回だけ見ましてね。その日はシャワーを浴びながら、気絶するってこういうことを言うのかなと思ったんです。

僕は朝シャワーを浴びるんですけれど、目がくらくらして倒れそうになるという、そういう経験を今から7、8年前にいたしました。そういう失敗をまずいたしました。これが私の失敗です。

結論、今から話をするいくつかのことでそれを乗り切りまして、現状は過去最高の売上1,000億円。今期ちょうど1,000億円の売り上げ。営業利益、経常利益は130億円ぐらい出るような企業グループになっておりまして、現在グループで81社、上場企業が8社ございます。

東証一部に3社グループ企業が上場しておりまして、今は4,100名くらいの仲間たちと共に、きちんと過去最高の成長を継続いたしております。

乗り越えたマインドなんですけれども、経営者にとって会社って自分の人生そのものを捧げてきたものなので、それがなくなるということは、過去の自分の人生の総否定というような状況でございまして。

本当に心が折れそうになったんですけれど、私は手帳に、毎日のスケジュールをいまだに手書きで書いたりしているんですが、そこに自分の気持ちを、弱い部分とかを書いて自分を強くするという習慣を持っていまして、その約2年間の時期は、弱気にならない、諦めない、弱気にならない、諦めないと毎日のように手帳に書いていました。

書き写すたびに、自分の気持ちをそれで支えようと思って、その手帳に書いていたことを今でも覚えております。ということで、どうぞ皆様今日はよろしくお願いいたします。

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