【3行要約】
・仕事やキャリアにおいて同じ環境にいる方が働きやすいと思われがちですが、実はその安定こそが幸福度を下げているかもしれません。
・研修トレーナーの伊庭正康氏は、「人には現状維持が良いという過剰なバイアスがある」とし、動くことの重要性を指摘します。
・いきなりの大勝負ではなく、致命傷を避けて小さく実験を繰り返す「プロトタイピング」というキャリアの考え方を提示します。
挑戦か現状維持か? 2万人の追跡調査が示す「幸福度」の意外な差
伊庭正康氏:研修トレーナーの伊庭です。失敗しない人と、挑戦して失敗をしてしまう人。長い目で見てどちらが結局、人生で得をしているのか? そんな話をしていきます。
これ、悩ましいですよね。キャリアにおいてもチャレンジするのは怖い、安定のほうがいいかもしれない。一方で、仕事においてもあまりミスをしたくない、完璧にいきたい。でも挑戦もしないといけない。
実はこんなこともよく言われますね。精神論や自己啓発の本を読むと「あえて挑戦するべきなんだ」ということを言っています。ところが、現実は「結婚相手には安定が第一」という話をよく聞きますよね。じゃあ、どっちが結果、得なのか? このあたりは自分の物差しにしておいてもいいのではないでしょうか。
今日は有名な研究を交えて、我々の物差しを作っていきましょう。得をする人になるためには、この物差しを持っておいたほうがいいと思います。仕事の選択、キャリアの選択、なんだったらお昼ご飯の選択ですら。そんな話をしていきましょう。
1つ目は、環境を変えたほうがいいのか、現状維持のほうがいいのか。よく言いますよね。同じ職場にいたほうが仕事はやりやすいって言われます。でも、ある会社は2年に1回必ず異動がある。どちらが結果、いいんでしょうね?
実は有名な研究の結果があるんですよ。それがシカゴ大学の研究で、スティーヴン・D・レヴィット教授のある研究なんですけど、これは知っておいたほうがいいと思います。
2万人の研究なんですよ。離職や引っ越しなど、重大なイベント、ありますよね。その時にコイントスをするんですね。コインを投げて表が出れば現状を変える。裏が出れば現状を維持する。すごいルールでしょう。
実際、表が出た場合に現状を変えるという行動をした人と、変えなかった人。これを確認したんですって。
すると何が起こったかというと、2ヶ月後と6ヶ月後、追跡調査をしたところ、現状維持を選んだ人よりも、変化を起こした人のほうが大幅に幸福度が高かったという話なんですね。

私自身も会社員の時に「このままでもいいかな?」と思うことがありました。転職をするのは、まだまだやりたいことがあったので、社内で「このプロジェクトに参加させてくれ」とか、場合によっては「あの部署に異動させてくれ」とか、言っていた覚えがあります。
その時、今までのやりやすさとかを捨てていくんですよね。社内の動きでも勇気は要るんですよね。新しい試み、やってよかったなと思います。
物を買うのもそうですよね。何か新しいパソコンを買い替える時もそうですよ。使い慣れたWindows 10。でも、いざ買い替えたらどうでしょう? 新しいバージョンのほうがいいですよね。
スマートフォンですらそうですよ。iPhone 8、もう探してもなかなかないと思うんですけど、8を使っていた時は8で一生いこうかなと思いました。でも、今のバージョンと比べるとぜんぜん違います。両開きする時代ですからね。
まだ使っている方がいらしたらごめんなさいね(笑)。
ということを考えた場合に、変化を起こしたほうがやはりいいことが多いんですよね。ここからの示唆は、人というのは「現状維持のほうが良いのだ」という過剰なバイアスがあるということがここで示唆されており、「じゃあ、動いたほうがいいんじゃないですか?」ということが、2万人のシカゴ大学の研究であるわけですね。
私の周りを見ても、やはりそれは思います。私自身もあなたもきっとそうだと思います。新しいものを買って後悔するってあんまりないじゃないですか。あれと一緒です。
決断に迷ったら「10-10-10ルール」。未来の自分は後悔しないか?
2つ目、視野。「どこまでを見ていますか?」なんですね。これ、けっこうおもしろいですよ。「失敗したらどうしよう」と思いますよね。「現状維持よりも挑戦したほうがいいのはわかった。変えたほうがいいのはわかった。でも、失敗したら」と思うわけですよね。
この時に「時間軸を伸ばしたら」という研究もあるんですよ。研究というほどではないのでご安心ください。
「10-10-10ルール」。「何やねん?」ですよね。10分後、10ヶ月後、10年後、「あの時やっておけばよかった」と思うかどうか。これ、めちゃくちゃ多いですよね。でも、やったことに対しては、なんかうまくいっているってありますよね。

私も覚えていることがあります。今から数年前なんですけど「あの時やっておけばよかった」という人が仲間にたくさんいらっしゃいまして。それは何かというと、経営者さんとよくお会いすることがありまして、一応私は端くれな者ですから。
「あの時やっておいてよかったよな」という声の1つが「リーマン・ショックあたりでマンションを買っておいてよかったよな」という人が多かったんですよ。あの時、底値だったわけですよね。「あの時に金融商品を買っておいてよかったな」という社長さんもいらっしゃるわけですよね。
でもその時、底値なんてわからないから、私は買いもしていないです。検討もしていません。指をくわえて「そうだったんですね」と言っていました。買う体力もありませんでしたけどね(笑)。
でも、そんなことって我々もありません? 「あの時、あれを買っておいてよかったな」「免許を取っておいてよかったな」「引っ越ししておいてよかったな」。ありますよね。
10分後なんか、これですよ。「会議で迷うけど、発言したほうがいいかな? 質問したほうがいいかな?」。したほうがよかったですよね。
10ヶ月後も、この仕事をしたほうがよかった。私、長い間営業をやっていましたので「あのお客さまにアプローチするのはちょっと難しいかな。ちょっと悩む。どうかな? ちょっと勇気も要るし」。やってよかったなと思いますよ。取引がガンと増えたこともあったんですよね。
10年後もそうですよ。さっきの社内転職、人事で自己申告のあれもやってよかったなと、10年後独立する時にめちゃくちゃ思いました。
なので、今ではなく10分後、10ヶ月後、10年後、「10-10-10」で、目の前の迷いがあったら考えてみてはいかがでしょうか?
こんな方もいらっしゃいましたね。その経営者の集まりの時に、今でも言葉を覚えているんですけど「あの時、やってよかったな」の1人の方が「迷ったらリスクのない範囲で厳しいほうを選択する」とおっしゃっていたんですね。こういう人がうまくいくんだろうなと思いました。
その方も、もともと大手企業さんでしたけどサラリーマンをなされていて、そこをチャレンジして、資格を取って、飛び出されて、すごいなと思いました。その方はやはりうまくいかれていましたよね。
もちろんいろいろあったと思いますよ。でも、表面的に見る限りは「こういう方がうまくいくんだな」と思います。もうお付き合いを15年していますけど、すばらしいなと思います。今、隙が見えません(笑)。
もう一度言いましょう。「10-10-10ルール」で、もし迷ったら「リスクのない範囲でやっておけばよかったか?」という感覚で、「やっておけばよかったな」と思うことがあればやったほうがいいんでしょうね。
リスクのない範囲とは言うものの、失敗に対する捉え方って人によって違うじゃないですか。あなたにとって失敗とはどういうものですか?