【3行要約】 株式会社うねり代表取締役・豊間根青地氏が、大企業での経験から独立に至る自身のキャリアを振り返ります。
・「資料作成はスキルの総合格闘技だ」と語る豊間根氏が、情報過多な「官僚パワポ」の課題と、資料に現れる組織のカルチャーをひもときます。
・メタ認知力を養い、組織と個人のキャリアを変えるアウトプットの始め方を解説します。
前回の記事はこちらインタビュー動画はWebメディア「Re|vent」にて配信中。ぜひご覧ください。 日本企業の資料はとにかく情報過多
——日本の資料作成にはどんな課題が?
豊間根青地氏(以下、豊間根):一番わかりやすいのは情報過多ですよね。
やはり日本人の作る資料って情報が多いです。霞が関の役人の方が作るような、いわゆる「官僚パワポ」と言われる(フォントサイズが)8ポイントでびっしり書いてあるような資料が、日本の会社、特にJTCで多いんですよね。
あれは単純に見にくいことだけが問題じゃなくて、それで合意形成がうまくいって意思決定ができているならいいんですよ。(フォントサイズが)8ポイントとかで訳がわからない資料なんだけど、なぜかそれをうまくロジカルに作る人と、それを使ってうまく意思決定をしていく、謎に読解力がすごい偉い人がいて、きれいに回っている会社も、実際にけっこうあります。
けれども、やはりこういう資料は論点がうやむやになりやすいんですよね。「そもそもこれは何のために、何の話をしているんだっけ?」とか「今、何が決まっていて、今日は何を決めるんだっけ?」というものが曖昧になりやすいんです。

こういうびっしりの資料を作っている会社ってだいたい、会議に参加する人数も多いし、合意形成のフローもむっちゃ長いし、物事を決めるのがめちゃくちゃ遅いんですよね。
なので僕は、資料ってその組織の性格が全部表れると思っています。僕は資料を見ると、作った人の頭の中の思考回路と、それが作られた組織の中の合意形成フローがけっこうわかるんです。
情報過多で、何でもかんでもスタンスなく伝えることを是としてしまうカルチャーの会社が日本には多いことが、みなさんが困っている一番の原因かなと思いますね。こういう悩みに共感する人もやはり多いです。
資料に見る組織のスタイル
——資料から組織の特徴がわかる?
豊間根:大きく2つの軸に分けられると思っています。1つは情報として、言語情報と非言語情報のどちらが優位なのか。もう1つは秩序や枠組みを重視するか、モメンタムやスピードを重視するか。この2軸で整理できるんですよね。
さっきの官僚パワポ的な、めちゃくちゃ官僚っぽくてJTCっぽいやつは、まず秩序・枠組み重視なんですよね。ルールや根回しをすごく大事にします。
かつ、非言語情報にかなり優位性があります。単純に書いてあることより、そこに込められているニュアンスや、そこまでの経緯がすごく大事だったり、あとはいわゆるポンチ絵がすごく好きだったりするのが官僚パワポ系です。
言語情報が優位で秩序・枠組み重視なのがコンサル系です。コンサルや金融系の会社でちゃんと腕を鳴らした人が経営企画におり、経営企画がちゃんと機能していると、そういう資料になりやすいです。
あとは、言語情報優位でスピード重視は、ドキュメント系です。ベンチャーやメガベンチャー的なカルチャーの会社さんに多いです。要はスライドをあまり作らず、GoogleドキュメントやNotionとかで社内の意思決定をしていて、社内向けにスライドをほぼ作らないところですね。ここは言葉のスピード重視です。
あとは、非言語情報優位でスピード重視という、僕が「ゴテゴテパワポ系」と呼んでいるものです。代理店系とか、あと「ゾス系」とか「やってこうぜ系」のような勢いの営業系組織にけっこう多いです。「エモい写真をドーン! 文字はちょろっと」、みたいな。「150パーセント達成! ビヨヨーン!」みたいな感じの資料が良しとされる会社もちょこちょこあります。
うちのお客さまになりやすいのは官僚パワポ系ですね。やはり望ましいのはドキュメント系かなと思っています。あと、これからはAIにとってスライドよりも理解しやすい、テキストでのコミュニケーションがどんどん重要になっていくと思います。
ポンチ絵で語っていると、おそらくAIには(正確に)伝わらないので、これからはあらゆる組織がドキュメント的なコミュニケーションツールを使って、きちんと意思決定や合意形成ができる組織にシフトしていく必要があるかなと思っていますね。
資料はあくまで組織の合意形成ツール
——組織のコミュニケーションを変えるには?
豊間根:これはけっこう悩ましい問題があります。前提として、資料って道具なんですよね。僕は資料って合意形成の道具で、占いみたいなものだと思っているんですよ。
昔、亀の甲羅を焼いて、その甲羅にヒビがどう入ったかで来年は豊作になるかどうかを占う、「亀甲占い」というものがありました。
あと、ジブリの『もののけ姫』に出てくるお婆ちゃんが石を投げて、「これは良くない相が出ている」とか言うじゃないですか。資料や会議って究極的にはああいうものなので、カルチャーがけっこう大事なんですよね。

何が言いたいかというと、「官僚パワポは良くない」と頭ごなしに否定するというよりは、個人という観点で言うと、1回そこに染まりにいったほうがいいんですよね。
官僚パワポじゃないと、「お前、こんなのぜんぜん考えてねぇじゃねぇか」と突き返される組織で合意形成をして成果を出すためには、官僚パワポを作ったほうがいいんです。
あんまり個人としてむやみにボトムアップで変えようとしすぎないほうが、個人のキャリアとしては良い方向に働くことが多いと思っています。なので、それが嫌なんだったらそうじゃないカルチャーの組織に身を移したほうが、ぶっちゃけボトムアップという観点だといいですね。