コールセンターで学んだストーリーテリングの真髄
——独立前にやっておけばよかったことは?
豊間根:めちゃくちゃありますね。今振り返ると、もっとできることがめちゃくちゃあったなと思っています。
まず、これはサントリーという会社のカルチャーなんですけど、やはり「やってみなはれ」と言うだけあって、ちゃんと信頼を積んで「これがやりたいです」と言えば、けっこうやらせてくれる会社でした。今振り返ってもそう思います。
言われたことをそのままやるんじゃなくて、「いや、もっとこうした方が絶対、業績にインパクトを出せますよ」と自分なりに考えて提案するということをやっておけば、今にもつながる経験がもっとできたなと。こういうことを、すごくいろんなシーンで思いますね。
——社外での出会いが独立につながった?
豊間根:でも本当に、サントリーで学んだことが今めちゃくちゃ活きているなと思っています。
最初、僕はコールセンターの企画部門だったんですよね。僕自身が電話するわけじゃないんですけど、実際にお客さまと応対している音声を聞いて対応方針を考えるという仕事を1個やっていたんです。
それってめちゃくちゃ顧客の視点(が理解できるんです)。プレゼンテーションやコミュニケーション、(つまり)一種のネゴシエーションをするんですが、相手を説得し、納得してもらうためのストーリーテリングの考え方をすごく学べたと思っています。
よく「大企業に行くべきか、ベンチャーに行くべきか?」という話がありますけど、どこに行っても学べることがあるんだなというのは、あらためて本当に思いますね。
キャリアはもっと自由に考えていい
——目の前の仕事をおもしろがるコツは?
豊間根:一番わかりやすいのは、シンプルですけど、やはり自分の仕事で喜んでいる人を1人でも見つけにいくことだと思いますね。手触り感がないと、やはりおもしろみって見いだしづらいです。
例えば、特に企画部門だったりすると、「毎日Excelの数字いじりをするだけで、俺の仕事で何がどうなっているのかわからない」みたいな仕事ってけっこうあったりします。
それを、例えばそのExcelをきれいにしてあげることによって、その次の部門の人に喜んでもらえるようにするとか、その人にもっと喜んでもらうためにはどうすればいいかを本人に聞きにいく。そういうふうに、自分の見えている範囲だけじゃなくて「それは誰が喜んでいるのか?」にフォーカスするのは1つの手段だと思いますね。
あと究極的に言うと、これはすぐにできる話ではないんですけど、「みんな勝手にすればいい」という大前提を持つことですよね(笑)。
我々日本人は、仕事を辞めて山とかに行っても、別に死なないわけじゃないですか。「自分が好きで選んでいるんだから、別に自分の好きなようにすればいいんだよね」という大前提を持つと、「この道も俺が選んだんだから、やるだけやってみるか」という発想になってくると思うんです。
なので究極的には結局、一種の諦めというか、「まぁ、俺が選んだからな」という感覚を持つのが、マインドセットとしては一番大事ですよね。
自分の人生を自分で選択しているという意識を持つ
——独立前から自分でキャリアを選ぶ意識はあった?
豊間根:僕は昔からクソ真面目なんですよね。責任感が強くて、「1回やろうとしたことはやらなきゃいけないな」とずっと思っちゃうんです。だから、物事にあんまりちゃんと取り組もうとしない人の気持ちがあまりわからないんです。
でも、それも一種の自己決定感ですよね。「自分でこの会社を選んで入ったんだし、別に辞めようと思っても誰も止めないだろう。俺が今選んだんだからやりたいようにやればいいし、どうせやるんだったらちゃんとやろう」というマインドを持つということですよね。

——自分で物事を決めることが大切?
豊間根:自分の人生を他人に決めさせるとか、生殺与奪の権を他人に握らせている人が多いんですよね。だから、やはりスキルを身につけた方がいいんです。
スキルと言っても、100万円払ってよくわからんAIの副業セミナーに行っちゃ駄目なんですけど、いつでも自分で仕事を選べる状態になっておくことは、やはり大事です。その状態になっておけば「今は自分でこの会社を選んでこういう仕事をしているし、別にいつでも環境を変えればいいし」というスタンスを持てるので、気が楽になるんですよね。
でも、そのスキルを身につけるためには成果を出さなきゃいけないんです。成果を出すためには、今期待されている目の前のことに全力でいかなきゃいけないので、そこがいい感じに回っていくといいんですけどね。
アウトプットの習慣がメタ認知力を鍛える
——(会社のビジョンとして発信している)仕事をおもしろがる人を増やしたいという思いは?
豊間根:僕は「仕事をおもしろがる人を増やす」という表現を使っているんですけど、ちょっと表現を変えると、もっとみんなにアウトプットしてほしいんですよね。
僕自身も、アウトプットというかコンテンツを作ったり、人に楽しんでもらったりすることがやはり趣味というか、好きだったんです。だから、アウトプットをXでしまくっていたら、それを見てくれる人や興味を持ってくれる人が増えたので、自分で会社を立ち上げる道を選べたわけですよね。
我々は、資料作成のノウハウをいろんな方に伝えているわけです。実際に我々が教えたことを学んで、企画提案をしたら、それが通って新しい部署ができて、そこの長になった方がいます。
あるいは資料作成を通してすごく自分に自信がついて副業を始めた人とか、資料作成がきっかけで本を出して独立した人もいます。こういう人たちが多く現れているんですが、結局、起点にあるのはアウトプットだと思っているんですよね。
やはり日本人って基本的にアウトプットが苦手で、みんなに合わせて、内に閉じこもっちゃう人が多いんです。けれども、これからは何も自己表現しない人はAIに代替されてしまいます。
なので、「自分はこう考えるんだ。自分はこれをやりたいと思っている」と、かたちはどうあれ、とにかくどんどん出して人にぶつけていく。そうすると、徐々にメタ認知ができるようになって、「あ、そうか、俺ってこういう人間なんだ。こういう選択を今、自分でしているんだな」と認識できるようになると、主体的に仕事をおもしろがれるようになっていくと思っています。
なので、資料というのも1つのアウトプットですけど、意味のあるアウトプットをする人を増やしたいというのが我々の根底にある思想かなと思っていますね。
おすすめは“誰かに見せるアウトプット”
——アウトプットは何から始めればいい?
豊間根:僕は、一番は日記だと思います。日記か日報かXか「note」ですね。ポイントがあって、「チラ裏」じゃ駄目なんですよ。チラ裏というのは、ちょっと前に2ちゃんねるでよく使われていた用語ですけど、チラシの裏(という意味です)(笑)。
便所の落書きやチラ裏じゃ駄目で、特定の人に何かを伝えて動かすという意志を持ったアウトプットをすることと、できればそれにフィードバックをもらうことが大事ですね。
Xとかnoteだとなかなかフィードバックをもらいにくいので、ある意味一番やりやすくておすすめなのは日報かもしれないですね。今時、特に年齢が上の方だと「日報を今更書くんかい」と思う方もいると思うんですけど、やはり日報ってめっちゃ大事なんです。
上司から求められていなくても、「仕事で今日はこういうことをした。こういうことを学んだ。新しく知った。だから、これからこういうことをやっていこうと思っている」みたいな日報を、上司に勝手に送り付けるとか。
場合によっては、それを人に見せずに日記として蓄積してもいいんです。ただ、例えば文句や呪詛みたいな愚痴を書き殴るのは何の意味もないんですよね。特定の意志を持って人を動かすつもりでアウトプットをして、何らかのフィードバックをもらえるといいと思いますね。
僕は昔から記録オタクだったんです。サントリーに入社して間もないころに考えていたこととかが、スマホのメモ帳に残っています。そういうのを持っておくと、やはり自分の思考をメタ認知して、人から自分がどう見えるかとか、何を考えているかに自分自身で気づけるんですよね。なので、見せなくてもいいんですが、できれば見せるものとしてアウトプットしてもらいたいですね。
——言語化がキャリアの理解にもつながる?
豊間根:そうですね。思っている以上に、我々は自分が何を考えているかがわかっていないですからね。やはり言葉にして目に見えるようにして初めて、自分でも何を考えているかがわかります。だから言葉にする習慣がある人はやはり思慮深い人が多いし、語彙も多いわけですよね。
まずはいったん書こうということですね。ちょっと前ならTwitterをおすすめしていたんですけど、最近Xがもう、イーロン・マスクのせいでちょっと魔境なんですよね(笑)。なので、日報がいいかもしれないですね。