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管理職への昇進はゴールではなく「別競技の始まり」です(全2記事)

新任管理職が苦しむのは「才能がないから」ではない 昇進後こそ学ぶべき4つのポイント

【3行要約】
・プレイヤーとして優秀だった人が、新任管理職としてチームで成果を出し続けるために実践する「4つのポイント」とは。
・木下勝寿氏は「立場が変われば必要な姿勢まで変えられる人が本当に優秀な人」と述べ、意識の切り替えの重要性を指摘します。
・部下の育成から空気づくり、そして自身の学び直しまで、新たな役割に適応しマネジメントを軌道に乗せる方法がわかります。
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管理職に求められるのは、人を通じて成果を出す力

木下勝寿氏ここまでの話を一言でまとめると、こういうことです。あなたは今、偉くなったのではなくて、新しい職種の初心者になったんです。プレイヤーとしては成果を出してきたことは誇っていいと思います。それは間違いなくあなたの努力の証明ですし、会社があなたを昇進させた理由でもあります。

しかし、その成功体験に酔っていてはいけないんですね。管理職に求められるのは、自分が結果を出す力だけではありません。人を通じて成果を出す力です。メンバーを育てる力です。組織の空気を作る力です。仕組みを整え、再現性を高め、チームで勝つ力です。

つまり、武器が変わります。これまでのあなたは、自分の能力、自分のスピード、自分の努力量で勝ってきました。しかしこれからはそれだけでは足りません。むしろ自分ができることが強過ぎる人ほど、最初はちょっと苦労するかもしれません。なぜなら自分でやったほうが早いんですね。自分のやり方のほうが正しいと思ってしまいます。だから部下の未熟さにイライラしたりとか、自分の優秀さを基準に周囲を見てしまいます。

しかし、それをやり続けた先にあるのは強い管理職ではなくて、いつまでもプレイヤーの気質が抜けない上司になってしまいます。

新任管理職は最初に「自分が未熟だと認める」

新任管理職が最初にやるべきことは、格好をつけることではなくて、管理職らしく見せることでもなくて、ましてやプレイヤー時代の延長線上で自分のすごさを証明し続けることではなくて、最初にやるべきことは、まずは自分が未熟だと認めることです。

わからないことを学ぶ、うまくできないことを受け入れるっていうことですね。先輩管理職のやり方を吸収すること。自分より経験のある人の意見を聞くこと。部下との関わり方を試し、失敗し、修正することです。

そうやって1つずつ管理職として筋力を付けていくしかありません。プライドがちょっと邪魔をするかもしれません。「これまで結果を出してきた自分が今さら初心者みたいに学ぶのか?」と思うかもしれませんが、しかし、学ぶ姿勢こそがあなたを本当に強い管理職にします。

逆に言えば、ここで初心者になれない人は伸びません。過去の自分の栄光から抜けられない人は、新しい役割では成長できませんので、本当に優秀な人とは、何をやっても自信満々な人ではなくて、立場が変われば必要な姿勢まで変えられる人です。

プレイヤーのトップだった人が管理職の末端に回った時、「自分はまだまだです。これから学び直そう。新しい競技でイチから立ち上がろう」と腹をくくれるかどうかです。ここが分かれ目になってきます。

部下を「自分より遅い人」ではなく「育てる対象」として見る

「じゃあ、管理職の初心者になった人は何を学ばないといけないのか?」を話したいと思います。

まず1つ目、部下を「自分より遅い人」ではなくて「育てる対象」として見ること。これも本当に大切です。優秀なプレイヤー出身の管理職ほど部下にイライラしやすいんですね。なぜなら自分ではできたから。「なんでここで止まるの?」とか「なんでそんな聞き方をするの?」とか、「なんでこれぐらい考えないの?」と思ってしまいます。

でも、ここで感情的になってしまうと終わりなんですね。なぜかというと、部下はあなたのコピーではないんです。得意・不得意も違いますし、理解の速度も違いますし、育ってきた環境も違いますし、それらに無意識に過去の自分を当てはめて基準にしてしまう人が多いんです。「昔の自分ならもっとできた」「自分ならそんな失敗をしなかった」、そうやって比べてしまいます。

でも、そうやる上司の下では、人は萎縮します。報告が減ります。挑戦しなくなります。ミスを隠すようになります。結果、チームは弱くなります。管理職に必要なのは、「自分ならできる」ではなくて、「この人ができるようになるには何が必要か?」を考える視点です。



考え方を変えるのか、任せ方を変えるのか、仕事の仕分けを変えるのか、期待値の伝え方を変えるのか。この視点に切り替わった瞬間にマネジメントはようやく始まります。

自分を基準に、相手が自分のようになれることを考えるのではなくて、相手を基準に、この相手が成果を出せる方法はどういう方法なのかを自分が考えていくということですね。

「正しさ」よりも「伝わり方」を重視する

2つ目、正しさよりも伝わり方を重視することです。プレイヤー時代は、正しい答えを出せる人が強いです。でも管理職はそれだけじゃダメなんですね。どれだけ正しいことを言っても、相手に伝わらなければ意味がないんです。もっと言うと、伝わっても動けるかたちになっていなければ意味がないんですね。

例えば上司が部下にこう言います。「もっと主体性を持て」とか「もっと考えて動け」とか「もっと視座を上げて」とか。これ、言っていることは別に間違っていないんですけど、ほぼ伝わらないですね。

部下からすると、「で、何をどうすればいいんですか?」「主体性を持つってどういうことですか?」「『もっと考えて』って、一応僕、考えているんですけど」とか、「視座を上げるってどういうことですか?」っていうことですね。



優秀な管理職は、抽象論を具体に落とします。「次回から相談に来る時は、自分の案を最低2つ持ってきてください」とか、「報告をする際は、実態と要因と改善策の順番で話してください」とか、「この目的の上位の目的って何だっけ? それに合わせて話をしてください」とか、相手が行動に移せるレベルまで言語化していってください。これはすごく地味なんですけども、めちゃくちゃ重要なんですね。

管理職は、「わかっている人」じゃなくて、「わかるように伝えられる人」がすごく強いんです。基本的には相手の人は一生懸命やっているという前提でお付き合いしてください。一生懸命やっていてもできない状態なので、「もっと一生懸命やれ」って言っても仕方がないんですね。

一生懸命やってもできない人がなぜできないかというと、何か考え方が違っていたりとか、同じ言葉を言っていてもぜんぜん違う意味で受け取られているから、一生懸命やってもできない。ここのすり合わせをしていくことが大事なので、言語を明確にしていくことがすごく大事だと思います。

チームの空気をよくするには

そして3つ目、空気を作ることですね。これを意識していない人が多いんですが、すごく重要です。



チームの空気って、上司の影響をすごく受けるんです。上司が不機嫌になっていると報告が遅れますよね。上司が細かく詰め過ぎると、部下は守りに入っていきます。上司が結果だけで人を見始めるとチームはギスギスします。

(チームの空気をよくするには、)逆に、失敗を責め過ぎないことです。確認しやすい(状況を作る)とか。

でも、甘いわけではなくて、基準は明確に。挑戦を歓迎して、振り返りを厳密にやる。そういう空気のチームってやはり強いんですね。ここもプレイヤーとは違うところです。

プレイヤーは自分1人が集中して成果を出せばよかったんですけども、管理職は自分が場に与える影響がすごく重要になってきます。黙っていても空気は生まれます。黙っていても文化が生まれます。なので、意図して空気を作る必要があるんですね。

昇進後こそ一番「学ぶこと」が必要

そして4つ目。学ぶことをやめないことですね。これは本当に重要です。新任管理職の中には、役職が付いた瞬間に「教える側」が100パーセントになってしまう人がいます。でも本当は逆なんですね。昇進後こそ一番学ばないといけないんです。

先輩管理職の会話を観察するとか、うまくいっているチームの運営方法を見るとか。叱り方、任せ方、褒め方、会議の進め方、全部学ばないといけません。教える方法を学ぶ必要もあります。

そして、教える内容のブラッシュアップも常に必要です。今まで自分がやってきたことを教えているだけでは追いつかないんですね。なぜなら状況はどんどん変わってきます。ここを怠っている人のことを「老害」と言います。年代ではないんですね。

スポーツ選手だってレベルが上がればやはりコーチを付けていきますよね。一流の人ほど自分を客観視する仕組みというのを持っています。

管理職も同じなんですね。にもかかわらず、会社では管理職になると、もう突然学ぶことをやめて、自分はわかっているという前提で動き出す人がいます。でも実際そんなことはないです。みんなね、最初は手探りでやります。だからこそ自分が学ぶ必要があります。

本を読むとか、他部署の上司と話すとか、上司に相談する、部下の反応を観察するとか、失敗したら言い訳をせずに振り返る。上司こそ、この姿勢がすごく大事になってくると思います。

新任管理職が苦しむのは、役割の切り替えが難しいから

そして最後にここで1つ、すごく大事なことを言います。新任管理職が苦しむのは才能がないからではなくて、役割の切り替えが難しいからです。これはかなり救いになると思います。管理職になって最初に苦しむ人って多いです。



「部下との距離がわからない」「厳しくすると関係が悪くなりそう」とか、「優しくするとチームがまとまらない」「自分でやったほうが早い。でもそれではダメだとわかっている」とか、めちゃくちゃ悩むと思います。

当たり前ですね。なぜなら今まで自分が強みにしていた武器がそのままでは通用しないから。でもそこで、「自分は管理職に向いていないのではないか?」と結論付けるのは早いんです。多くの場合、それは才能の問題というよりも単に競技が変わったばかりでまだフォームが固まっていないだけなんですね。

最初からうまくできる人はほぼいないですし、いたとしてもかなり少数です。なので新任管理職に必要なのは、完璧さではないんです。必要なのは初心者である自分を受け入れて改善し続けることですね。小さな修正の積み重ねが管理職の筋力になります。

逆に危ないのは、過去の成功体験にしがみつくことです。「自分は結果を出してきた。自分は優秀だ。だから自分のやり方でいい」と。このモードに入ると本当に伸びなくなります。プレイヤーとして優秀だった人が管理職として伸び悩むということですね。

原因は能力不足というより、初心者になることへの抵抗

原因は能力不足というよりは初心者になることへの抵抗だったりします。これまではチヤホヤされてきたとか評価されてきた、周囲よりできた。だから今さら「わからないから教えてください。まだ未熟です」と言うのがつらい。

でも、本当に優秀な人はそこを越えられる人なんですね。私自身も会社が上場した時に感じたんです。今まではベンチャー企業のエースとして扱われていたんですけども、上場した瞬間に、「俺、上場企業の末端になったんだな」ってすごく痛感しました。

ここの意識を切り替えてさらにがんばろうとしたことで、上場がゴールだったと言われる会社が多い中、今でも当社は、上場した時の30倍の株価になっているんですね。

立場が変われば自分の姿勢も変わります。武器が変われば練習も変える。勝ち方が変わればね、自分の癖も捨てる。これができる人が、結局どの環境でも強いんですね。

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