【3行要約】・自信げにしゃべり過ぎる営業と謙虚なハイパフォーマー。両者の成果を分けるのは「自分の弱さ」を知っているかです。
・高橋浩一氏は不安からしゃべり過ぎる営業の課題を指摘し、囲碁講師の大沢摩耶氏は「営業力とは人を好きになること」と語ります。
・自身の弱さを認め相手を理解するツールとして、社内に「囲碁」を取り入れて業績を3倍に伸ばした企業の事例に迫ります。
前回の記事はこちら 営業が「自分の弱さ」を知るメリット
大隅元氏(以下、大隅):高橋さんは、今回この本を手に取ってくださって、実際今囲碁を始められて、アプリを使っているということで、これから上達されると思うんですけども。どうですか? 営業に活かせそうとか感じられていますか?
高橋浩一氏(以下、高橋):すごくありますね。大沢先生の本にも書かれていますけれども、どうしても目先のことに釣られるというか。アプリでやると、けっこう展開が早いじゃないですか。
うまいこと釣られて、あっという間に負けてしまう。自分の浅はかさがすごく感じられるんです。自分の癖というか、性格の弱いところがものすごく出るなって感じるんですよね。
あと自分はけっこうビビり症なので、つい(すでにある)石の近くに置いちゃうんです。自分でやっていて、大胆に冒険ができない性格がものすごくわかります。
大隅:自分の弱さを知るとか、思ってもいない自分の性格が出るっていうのは、営業をやる上でプラスに働くんですか?
高橋:ものすごく大事だと思いますね。
しゃべり過ぎる営業とハイパフォーマー営業の違い
高橋:例えば営業担当役員の方からよく相談されるのが、「しゃべり過ぎる営業がいるんです。しゃべり過ぎてぜんぜんお客さまの話を聞かないんです。売れないんです」という。
よくある勘違いで、そういう人って自信があるからものすごくしゃべるって思われがちなんですけども、実は自信がないからしゃべり過ぎてしまうケースが多いんですよね。不安を隠すんです。

だから逆に、自分の弱点とか知らないこととかは認めてしまって、素直にやるほうが営業はうまくいきやすいなって、けっこういろんな方々を見ていて思います。
ハイパフォーマー営業と言われるような人たちとも仕事柄よくお話しするんですけども、世間で思われているようなイメージとはちょっと違う人がやはり多くて。意外とすごく謙虚で、「いや、自分なんかが」みたいな人が多いんですね。
だから、自分をよく知っていることはすごく大事かなって。たぶん囲碁もそうじゃないですかね。
大沢摩耶氏(以下、大沢):そうですね。自分を知るツールとして、本当に頭の中が石で形として表れます。相手も自分の思いどおりにいかないじゃないですか。相手の気持ちもあるので、うまくいかない時にどうしたらいいかとか、そういうやりとりとかが味わえると思います。
実際に会社で囲碁をやって、成果は?
大隅:今日ね、だからこの、高橋さん、営業にも囲碁を使えますよ、活かせますよっておっしゃいましたけど、まさにエビデンスが目の前にいらっしゃるので、せっかくですのでちょっとジェピコさんに(お話を伺いたいです)。碁を(社員に)伝えて十何年ですか? 合宿をやられてどうだったのか、成果とか。
大友将徳氏(以下、大友):よろしいですか?
大隅:もちろんです。
大友:こんばんは。(株式会社ジェピコ取締役の)大友将徳と申します。大沢先生の本の最初のページに合宿のことを書いていただいて、ありがとうございます。
私は大沢先生と4局、5局ぐらい打たせていただいて、いつもニコニコ……優しそうじゃないですか。でも、よしよしと調子をぶっこいていると、ピキッとスイッチが入って、私の碁石が全部取られてしまうという事が毎度でして(笑)。
(会場笑)
さて、本日高橋先生の本を読ませていただいて、ふだん自分で考えていることが言語化されていて大変参考になりました。
「自走する集団をどう創るか」について、大規模プロジェクトでチームが何個も並走する際、1人では全部できないので、チームのみなさまにお任せしなければならない。という場面で、チームのみんなに「まずは、自分で考えてやってみて」と指示するのではなく、高橋先生のおっしゃる通り、ある程度お膳立てしてあげて、「あとは、自分で考えてやってみて」と、自己完結できるくらいまでケアしたうえで、お任せする。そうして自走するチームを創る事が大切だと思います。
多数のチームが並走している中で、危なそうなな「石」はどこか、この石は活きているのか、あそこのチームが崩壊したら全部おかしくなってしまうから、そこを重点的に注意してケアしようなど、全局の見方を囲碁で学ばせていただいたかと思っています。共感したところが多く、ありがとうございました。
囲碁を打つ社員は7割、業績は3倍に
大隅:囲碁をやって業績がどれだけ伸びたのかとか、実際の社員の方の士気が高まったとか……。
大友:あ、それは部長のほうが……。
(会場笑)
大友:そうですね、業績のほうは3倍ぐらい上がりましたね。
(会場拍手)
社員の7割ぐらいが囲碁を打ちます。私は囲碁を打ったことはなくて将棋だったんですが、入社してから大野社長に囲碁をおすすめいただいたことがきっかけで始めました。
「囲碁はおもしろいよ」「はい、それでは」と。その後、囲碁にハマってしまって、今はもう、ひどい時は朝から晩までずっとネット碁を打っている時もあります。妻や子どもが何を話しかけてもまったく気づかないくらい、家庭に影響が出てしまっている時もあります。
優先順位の付け方、手順、強い石・弱い石の判断など、囲碁を通じてマルチタスクへの対応方法 を勉強させていただいたという思いがあります。
大隅:ありがとうございます。むちゃ振りで申し訳なかったです。大きな拍手を!
(会場拍手)
いいですね、高橋さん。
高橋:囲碁×営業力の完成系を学ばせていただいてます。
大隅:継続することが何より大事ですよね。
大沢:そうなんです。人数がどんどん増えているのがすごいですよね。
囲碁で新人研修するメリット
大隅:おそらく社内でも教え合っていらっしゃる?
大沢:そうです。夜景を見る会(「囲碁と夜景を楽しむ会」)というのがありまして、とっても景色のいい場所で、「夜景を見に来ないか?」とお誘いをして、夜景を見に来たら実は囲碁をやる会だったと(笑)。
(会場笑)
でも、強制はしないんですよね。でも新入社員の研修で一通り囲碁のルールは教えるんでしたかね?
大友:そうですね。
高橋:あ、全員やるんだ。
大沢:全員がまず入ったら覚える。徹底していますよね。
高橋:囲碁で新人研修っていいですね。仲良くなるし、考えるようになるし。
この間私、伺ったんですけど。5月かな。新入社員の方がみんな楽しそうに囲碁をやっていて、けっこう立場が上の人に対しても積極的に発言をしていたんですね。まだ入ったばっかりなのに、こうやって意見が言えるようなコミュニケーションを取れていることがすばらしいなと感激しました。
大隅:まさに囲碁が会社を作るっていうことですね。ありがとうございます。
営業力とは、人を好きになること
大隅:「なぜできる営業パーソンは囲碁を打つのか」の正解をジェピコさんに教えてもらったので、これで(今回のイベントの内容は)だいたい大丈夫かなと。
今日初めてお二人にお会いした方もいらっしゃると思いますが、本のことでもいいですし何でもいいので、ぜひ挙手でご質問いただければお答えします。いかがでしょうか?
高橋:じゃあ、1個いいですか? さっきの大沢先生の営業力がすごいという話で、大沢先生的に「営業力とは○○」というとしたら、何なのかなと。
大隅:確かに、それは聞きたい。
大沢:人生で営業力について考えたことはないんですけど、「○○である」って言われると……そうですね、「営業力とは人を好きになること」かな。
その人のことに興味を持ってお話を聞くことで、自分にすごく学びがあるんですよね。だから囲碁を教えているように思われるんですけど、教えながら学ぶことがめちゃくちゃ多いですね。
お互いに学びの時間になっている。その方のことをよく知れますし、何を求めているのかが、囲碁を打ちながら感じ取れると、人間関係もうまくいくんじゃないかなと。
高橋:先ほど先生は、距離が近いとおっしゃっていましたね。「人を好きになる」って、あまり予想していなかった答えなんですが、伝わった感じがします。
大隅:興味を持ちやすくなるんでしょうね、人っていう存在がね。
大沢:囲碁を打つと“データ”が取れるじゃないですか。いろんな方とお会いできて、いろんな思考を知ることができる。お話でも囲碁でもそれを感じることもできるし、何よりたぶん普通に話すよりも1粒で2度おいしいみたいになると思います。
大隅:仕事や趣味に限らず、恋愛にも囲碁というのは?
大沢:そうですね、囲碁思考は恋愛にも使えます。
大隅:おぉ、すごい。ということですので、お試しください。
囲碁は絵をキャンバスに描くのと似ている感覚
大隅:他にご質問がある方、うかがいます。
(会場挙手)
大隅:いいですか?
参加者2:ありがとうございます。高橋先生に質問を2つ聞きたいです。1個は将棋を嗜まれているというお話で、将棋と囲碁とを比べて、ここが違っておもしろいとか、その対比をうかがってみたいなと思いました。
2点目は営業とかそっちの話になると思いますけれども、お膳立て、準備とおっしゃった時に、たとえば営業で共通認識とか型みたいなものを組織の中にインプットしていく時に、本を使ってやるのか。実際に行動させて学ばせて、後から振り返りの中でその型を意識させるのか。トライさせる前に先に型を意識させるのか。
そういうインプットしていく順番を……まぁ、答えはないかもしれないんですけれども、もし何かコツとかお勧めのやり方があればおうかがいできたらうれしいなと思います。
高橋:ありがとうございます。まず、将棋と囲碁の違いなんですけれども、私がやっていてすごく感じるのは、打つところの選択肢っていうんですかね。(碁石を置ける)場所の候補がものすごく多いじゃないですか。だから、すごくクリエイティブだなって思いましたね。
始まる前に(大沢先生と)話したんですけども、絵を描く方は囲碁が強くなるという話を聞いて、「あ、なるほど」と。(碁盤を)キャンバスに見立てると、囲碁は(絵を描くのと)似ている感覚なんだって、新鮮でした。
最初の自分の感覚では、自由度ですかね。大沢先生が「囲碁は自由だ」っておっしゃるのは、なるほどなと。広がりをすごく感じます。
あと将棋って王将を取るために詰めていく感じですけど、囲碁は会話していく感じがあるかなとは思いますね。
「型どおりにやらせること」が目的化するとうまくいかない
高橋:2個目は……さっきの「トライアンドハッピー」の図を出していただいてもいいですか? これ、「型」のところから矢印を3本引いているんですね。

実はそれぞれの向きがありまして、結論行ったり来たりなんですけれども、どう始まってもいいので「型」を真ん中に置いているんですね。④の「発見する」から②「型」への矢印は、何かを見つけたら、これを型にしよう。いいパターンが見つかったらこれを型にしようっていうのがあります。
例えば、さっき本の例を出していただきましたけれども、この本で「こうやってみよう」というのがあったら、じゃあ、それを元に②「型」から③の「試行錯誤する」への矢印で、いろいろ試してみようと。試していくうちに、ちょっと本に書いてあることとは離れるかもしれないけれども、逆にその部分は自由に、自分で思いっ切りやったほうがいいというのもあります。
あと、②から①(「設計する」)のところは、基本的に「型」が(仕事の)難易度を下げるほうに向いているかどうかです。多くの企業さんが型をうまく浸透させられないと悩んでいるんですが、「型どおりにやらせること」が目的化するとうまくいかないんですよ。
よくあるのは、みんな自分勝手にやり過ぎるから、ちゃんとこのとおりにやってほしいっていう意味で型をやろうとするケースです。これ、ほとんどうまくいかないんですよね。
型のうまい使い道は「難易度を下げる」こと
高橋:私が思う型のうまい使い道は、難しく感じている人に優しくする目的で使うこと。これがうまくいっている証拠じゃないかなと。だから同じように行動しているかどうかがチェックポイントじゃなくて、「難易度がちゃんと下がっているか」が型の有効性だと思います。
参加者2:ありがとうございます。まさにやっていく人によって難易度が変わりますから、その人にとって難しく感じているんだったら、違う型をやることになると思うし。逆にもしかしたらもう少しステップアップできるかもしれないってことも含めて、わりと流動的にちゃんと判断していくんですね。
高橋:そうですね。もうある程度以上のレベルでやれている人にとっては、逆に型はあまり要らなかったりするじゃないですか。
参加者2:ありがとうございました。
大隅:ありがとうございました。そうしましたら締めになりますけども、PRタイムをやりたいと思うので、それぞれPRすることがあればぜひ。
高橋:告知はあまりない……あ、でも本は、すみません、PHPさんがいらっしゃるので……。
大隅:それはもちろん。
高橋:本を読んでいただくことは大前提なんですけれども、今日は本当に自分が気づく、学ばされることが多くて。「囲碁って人との距離を縮めるんだ」っていう話がすごい発見でしたね。
あと、人を好きになるのは営業力っていう言葉をいただきました。営業を違う角度から見ることができたので、とても貴重な機会をいただいたと思います。
大沢:ありがとうございます。
囲碁を始めてほしい人の特徴
大隅:じゃあ(大沢先生も)感想も絡めた告知をお願いします。
大沢:そうですね。今回は本当にこのような貴重な機会をいただき、ありがとうございました。この本を書く時に大隅さんと、「どんな方をターゲットにしようか?」って考えていて、まさに高橋先生のような方に読んでほしいって言っていたんですよ。だから……。
大隅:確かに。買っていましたからね(笑)。
(会場笑)
大沢:趣味があまりなくて、仕事も忙しかったんだけどある程度余裕ができて、これからの人生どう生きていこうかって考えている人が、たまたま書店で手に取って、「あ、囲碁か」「囲碁の世界、知らないけどちょっと読んでみよう」と思って読み進めたら、「なんか囲碁、おもしろそう。やりたい」となってくれたら。じゃあ、実際に覚えられるようにルールも書きましょうと。
本当にこういう方に読んでいただけたらいいなって(思っていたんです)。まさに高橋さんのような方に受け取っていただけたことが、すごく感動ですね。
実際にこの本で囲碁を始める方も多くて。宣伝をさせていただくと、私が経営者の囲碁会「経営者のための囲碁倶楽部」)を月に1度、第3火曜日にやっておりまして、高橋さんが今度来てくださるんです。7月?
高橋:7月か8月か、カレンダーには書きました。
大沢:まずは月に1回やっていただいて……。
高橋:この距離、やはりこの営業力はすごいですね。
(会場笑)
大沢:これがそうなんですね。自覚なくやっていますので。大隅さんも囲碁をやらなかったのに(編集を)担当してくださって、囲碁の良さを知って、今囲碁を始めてくださっているという。
大隅:営業力が本当に高いので。
大沢:なので、みなさんと囲碁と営業について語り合える時間も楽しみにしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。