【3行要約】・成果を出す営業組織を育てる具体的なノウハウとして、高橋浩一氏は商談後に「お客さまと感想戦をする」というユニークな手法を勧めます。
・お客さまの言葉は「上司のアドバイスよりも2、3倍響く」と語り、上司は部下が現場での試行錯誤から直接学べる環境を整えてあげることが大切だと説きます。
・タイパを求める若手社員に対し、マネージャーは試行錯誤の「流れ」を作るマネジメントを実践し、自走するチームを育てることが求められます。
前回の記事はこちら お客さまとの「試行錯誤」が成長に直結する
高橋浩一氏(以下、高橋):次は「試行錯誤する」って書いてあるんですけど、これは上司が自分の存在意義を示すための「お前、ダメだ」みたいな指導ではなく、お客さまのところに行って、お客さま相手にいろいろやっているうちに学ぶこと。実はこれがめちゃくちゃ成長に直結するんですね。

なんですけど、だいたい日本の企業で一番多いパターンって、先輩方がアプローチしてもぜんぜん相手にされなかった、ほとんど枯れたようなリストを社会人1年目の新卒の人に渡して、「自分で電話をかけてなんとかしてこい」って。そういう感じの人がものすごく多いんですよね。
ちゃんと試行錯誤して、いろいろ学びがあるような調整をして送り出してあげる。そうすると、けっこう自分なりにいろいろ見つけてくるので。(スライドに)1、2、3、4ってあるんですけれども、後はそれをマネージャーの人が関わらないでもうまく回るようにするにはどうしたらいいのかということで、まさしくさっきの「流れを作る」ということをマネジメントに置き換えて書いています。
営業じゃなくても読みやすいように書かせていただいていますので、もし経営者の方がいらっしゃったら読んでいただけるとうれしいです。
営業も“感想戦”をやったほうがいい
大隅元氏(以下、大隅):「発見する」っていうのは、あれですか? 新たな勝ち筋みたいなのを見つけて、また型に落とし込む流れですか。
高橋:そうです。大沢先生の本を読む前だったので将棋の例で書いていますけど。
(会場笑)
高橋:感想戦は囲碁もありますよね。
大沢摩耶氏(以下、大沢):あります。
高橋:終わった後の振り返り。感想戦で「あれがこうだった」っていうのがあって、営業も本当は感想戦をやったほうがいいんですよね。
なんですけど、やり方が難しくて。囲碁の感想戦で、勝った人が負けた人に「振り返りをやろうよ」と言うのはちょっと嫌味な感じになりますよね。
大沢:そうですね。
高橋:営業も同じように、「失注しました」とか「ダメでした」っていう案件を振り返ると、公開処刑みたいになってしまいますので、そうならないようにうまいこと(やらないといけない)。
囲碁の場合も、研究目線というんですかね。「どうやったらうまくいったのか」って考えながらやるのを、営業でも同じようにやる。
日本の営業組織って「次の目標達成率、目標達成のためにどうすんだ?」っていう会話ばっかりして、あまり振り返らないことが多いので、振り返れるようにしようと。
おすすめは「お客様と感想戦をする」
大隅:僕も囲碁をやって、終わった後に感想戦すると、たいていお相手が上級者だと、丁寧に教えてくださるじゃないですか。
大沢:そうですね。
大隅:教えられる人もすごいなって思ったんですけど、全部石をどこに置いたかを……。
大沢:手順をちゃんと覚えて。
大隅:そう、打ち手を覚えて、暗記しているじゃないですか。相手の分も覚えている。すごいですよね。
大沢:確かに。ストーリーがあるので、そのストーリーに沿って覚える感じですね。
大隅:あぁ、なるほど。相手が打ってきたら自分も打ってという、流れを。
大沢:自分の感情がそこに乗っている時はよく覚えていますけど、あまりぼーっとして考えていない時は「どこに打ったっけ?」とか……。
(会場笑)
大隅:ストーリーですね。高橋さんも。
高橋:そのストーリーが営業の振り返りにも似ていて。自分のおすすめは、お客さまと感想戦をやる。社内でやると下手したら公開処刑になっちゃうかもしれないんですけど、お客さま相手に振り返りの感想戦をやると、実は「こうだったんですよ」とか教えていただけたりします。「あの時実は他の会社さんから熱烈にアプローチが来ていて」とか。
大隅:「なんでうちに発注してくださったんですか?」ってクライアントさんに聞いちゃうということですね?
高橋:そうです。だいたいお客さまから言われたことって響くじゃないですか。だから上司ができていないことにダメ出しするよりは、お客さまから「実はこうなっていたんですよ」って聞いたほうがインパクトが大きいので、それを上司はお膳立てしてあげるということですね。
大隅:さっきのデータからするとお客さまから言われるフィードバックのほうが響いている。
高橋:上司のアドバイスよりも2、3倍(笑)。
(会場笑)
囲碁は1局打つと相手の性格がわかる
大沢:やはり「相手の気持ちを知る」っていう。
高橋:そうですね。気持ちを知るのが大事ですね。
大沢:囲碁も検討会は自分の気持ちを伝えることと、相手の気持ちを聞くことで、お互いに考えを合わせていく作業があります。それでお互いに囲碁の世界をより知っていけるという関係性が生まれます。
高橋:僕はまだ囲碁は初心者なんですけれども、将棋はやっていたので、将棋と囲碁を比較すると、将棋よりも囲碁のほうが、相手の存在を意識する感じがするんですよね。
将棋ってどこにどう打つかが序盤はある程度決まっているんですが、囲碁は本当にどこに打ってもいい感じがするんです。
大沢:はい、自由です。
高橋:だから、ものすごく性格がよく出る。
大沢:あ、そうです。1局打つとその方がふだんどういうことを考えて、どういう生き方をしているのか……。
(会場笑)
大隅:なんで笑っていらっしゃるんですか(笑)。思い当たる節がジェピコさんに(囲碁の指導をしているとき)も(ありましたか)。
大沢:みなさん、もうバレているからさらけ出そうっていう……。
大隅:素直になれますし。上司と部下で1局打つっていうのもいいですね。
高橋:それはいいかもしれないですね。
大隅:「部下はこういうことを思っているんだ」「上司はこう来るんだ」みたいなね。
大沢:合宿の時は、部下の方が強いと、部下の方が上司の囲碁を見ながら「ここ、どうだったんですか?」とかを言い合える関係(になるんです)。
大隅:コミュニケーションが自然に生まれて。
大沢:はい。
高橋:大沢先生の本の中で、(囲碁を打っている間は)しゃべっちゃいけないけど手で対話しているという話があって、相手と会話しているような気持ちになれるんですよね。
あと孫さんは碁石を離れて大局的な視点で(打っていたり)、稲盛さんは地道にみたいに、性格が出るのはおもしろいですね。
大沢:そうですね。正解はないので、自分なりに哲学を持っていくのが大切です。
“タイパ”を求める相手には「流れ」をマネジメントする
高橋:これは最後に本の一言PRみたいなものですけど、やはり今AI。たぶん囲碁の世界もそれを言われていると思うんですけど、営業もAIでとにかく効率化しなさいとか、時間を短くみたいな。どうやって人を育てるか、チームを作るかとか。

あと、「今時の」っていうのは自分はそんなに好きな言い方じゃないんですけれども、やはりマネージャーの方からよく言われるのは、「『無駄なことをしたくない』とか、『最短距離で行きたい』っていう相手にどうやって教えてあげたらいいんですか?」とかですね。
そういうところに、さっきの「流れを作る」をご参考にしていただけるといいかなと思います。
大隅:よろしいですか? 高橋さんのパートも説明が終わりました。もうお互いコメントをし合ってはいますけども、実際この2冊、それぞれの本をお読みになられた率直な感想をもしうかがえれば、これから読まれる方もいらっしゃいますので参考になると思うんですけど。
『仕事と人生に効く 教養としての囲碁入門』
『「任せて育つチーム」はどこが違うのか』
大沢:そうですね。
大隅:大沢さんから……営業本ってあまり読まれないかもしれませんけど。
大沢:営業の本は今まで1回も読んだことが……。
(会場笑)
大隅:よく読めましたね。
大沢:すぐ読めました。
大隅:よかったです(笑)。
大沢:読みやすくて。ふだんビジネスパーソンではないので、用語が難しいじゃないですか。
大隅:横文字が多かったりね。
大沢:そう、横文字が多いじゃないですか。だからふだん自分で調べながら、「これ、そういう意味なんだ」とか。でも、(高橋さんの本は)そういう難しい言葉はあまりなくて、とても読みやすくて、営業ってこういう構造がちゃんと作れるんだっていう。自走していく仕組みとか今まで考えたことがなくて、それがすごくわかりやすく書いてあって。
あと、ボードゲームのことを書いてくださっているので、もうちょっと早くこの本を出していれば囲碁のことを書いていただけたのになと。
(会場笑)
大隅:次回作は盛りだくさんで。
なぜ大沢氏に営業力があるのか?
高橋:大沢先生と対談に当たって、先生のホームページやSNSを拝見して、失礼な言い方になっちゃうかもしれないんですけど、営業力がめちゃくちゃあるなって思っていたんですよね。
大隅:めちゃくちゃあると思いますよ。
大沢:そうなんですか?
高橋:こういう仕事をしていると、営業と一見遠いような仕事……例えばアーティストの方から相談をいただくことも多くて。アーティストの方は作品作りに夢中になっているけど、自分をどう売るかみたいなのが苦手なんです。そこを両立させるのはすごく難しいじゃないですか。
大沢先生は囲碁を深める、世の中に広めると、両方やられていますけど。囲碁をあれだけ深めつつも、世の中に広げたりとか、いろんな経営者の方にも、売るって言ったら変ですけど……すごいですよね。めちゃくちゃすごい。
大隅:大沢さんにとって営業は、おそらく囲碁をどう広めていくかとか囲碁人口を増やしていくっていうのが、頭にあってやっていると思うんですけども大沢さんに誘われて囲碁を始めた人って相当数いますよね。
たぶん今日いらしている方でも何人かいらっしゃると思うんです。いろいろすごいなと思うんですけど、僕は最初大沢先生とお会いした時に、距離が近いなと思ったんですよ(笑)。
変な意味じゃなくて、普通の人の感覚だと、片手を伸ばすぐらいのコンフォートゾーンを保つんですけど、大沢さんはもっと近くにいるんですよ(笑)。お会いした時に「お、近っ!」と思って、この距離で話されるから、「囲碁をやりませんか?」って言われると、「あ、はい!」って言わざるを得ない、そんな距離感なんです。
(会場笑)
それってもともとの性格なのか、囲碁をやったから距離が縮まったのか。(どうなんですか?)
大沢:いつも人と碁盤を挟んで対面をしているので(近いのかもしれません)。碁盤ってそんなに大きくないし、手を伸ばすから、近くないと。
大隅:確かに。
大沢:例えば、ここに座っても、お互いに(顔が)近づきますよね。
大隅:基本的に近い距離ですもんね。
碁盤だけでなく表情も見ている
大沢:近い距離で人とやりとりをしていて、私はけっこう人の顔を見るんですよ。碁盤だけじゃなくて表情とか、バレないように……。
大隅:カモフラージュをして。
大沢:そうです。だから目が合わないようにいいタイミングで、「今どんな表情をしているかな?」と見る。(相手の)全体の雰囲気をいつも近くで感じて、囲碁を打っているんですね。
1対1の時もあるし、今日なんかは1対7で打ってきたので、7人にグルッと囲まれて……。
大隅:1対7ってどういう配置でやるんですか?
大沢:ここに碁盤があって、ここに碁盤があって……囲まれて打つんですね。
大隅:聖徳太子みたいなものですね。
大沢:基本的に人に囲まれているので、いつも。
大隅:なるほど、逆に見られているのもあるんですね。
大沢:全部見られています。四方八方を常に人に囲まれている生活をしているので。
大隅:なるほど。人慣れしているんですね。
大沢:碁盤を通じていろんな攻撃を受けるじゃないですか。本当に、1局打つのに250手ぐらいかかるので、(その半分だとしても、一人で)100手以上打つじゃないですか。だからそういう攻撃をいつも受けていて。まあ、たぶんお相手のほうが受けていると感じていると思うんですけど……そのやりとりを普段からやっているからなのかなと、今思いました。