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『仕事と人生に効く教養としての囲碁入門』『「任せて育つチーム」はどこが違うのか』刊行記念対談~なぜできる営業パーソンは囲碁を打つのか~(全4記事)

部下を迷走させる「まずは自分なりにやってみて」の罠 囲碁に学ぶ、ちょうどいい「難易度」のマネジメント [1/2]

【3行要約】
・若手社員に「まずは自分なりに考えてやってみて」と任せるのは一般的ですが、実はその教え方の効果は低いと言われています。
・営業への研修やコンサルを行う高橋浩一氏は、上司の役割は逐一アドバイスすることではなく、「流れを作る」ことだと語ります。
・部下が自然に育つ状態を生み出すため、囲碁にも通ずる「難易度調整」のメソッドを紹介します。

前回の記事はこちら

営業のプロが考える、囲碁と営業の共通点

大隅元氏(以下、大隅):じゃあ、大沢さんのパートは以上ということで、すみません、お待たせしました、高橋さん。

高橋浩一氏(以下、高橋):あらためまして、高橋と申します。ふだんは営業の方々を対象にした研修とかコンサルティングの会社でやっております。もともとはコンサルティングの会社で2年半ぐらい働いて、2003年の25歳の時には起業して、そこから6年ぐらい、その会社の創業役員をやっておりました。

2011年に今の会社を作りまして、いろんな企業さんの営業のご支援をやらせていただき、2024年からは東京学芸大学で研究の仕事とかもやっております。



本を何冊か書かせていただいているんですが、けっこう営業系の本が多くて、いわゆるビジネス書といいますか。もともとオセロとか将棋とかはやっていてルールも知っていたので、実は過去の本のそういう例のところでオセロの例を出したりとか。あと今回の『「任せて育つチーム」はどこが違うのか』の中でも、将棋の例を出したんですけど。

大隅:けっこう出てきますよね(笑)。

高橋:そうなんですよ。実は今回の対談の前に大沢先生の本を持っていたんですよ。SNSを見たら大隅さんの名前がタグ付けされていたので、「あれ、これはPHPさんじゃないか」ということで、「もしよろしかったら対談をお願いできませんか?」と、ちょっと私のほうからお願いをさせていただきました。

ビジネスにも使われる囲碁用語

高橋:営業と囲碁はすごく通ずるところがあるなと、やはり本を読ませていただいて感じたんですけれども。本の中にも出てきますが、「布石」とか「定石」とかありますよね?

大沢摩耶氏(以下、大沢):はい。

高橋:なんかそういう言葉は囲碁から……。

大沢:そう、囲碁から来ていて、けっこうビジネスで使われていますよね、「次の1手」とか。

高橋:そうですね。やはり営業も……例えば「お客さまから契約をいただくための布石として」とか、いわゆる「こういうふうにするといいですよ」という定石とかもあるんですけど。たぶん囲碁も、あんまり定石に溺れちゃうとよくないみたいな……。

大沢:そうですね。定石に溺れちゃうと、相手が定石どおりに来なかった時に、もうどうしていいかわからなくなってしまうので、やはり自分なりに石の強弱とか、弱いのか強いのか、どこを守るべきか攻めるべきか、そういうのがわかっていないと定石だけ覚えてもあまり意味がないですね。

高橋:そういうのはまさに営業もすごく似ていて、やはり「こういうふうにやったらいいですよ」というとおりにやってもうまくいかないのは、すごく通ずるところがあっておもしろいなと思っています。

営業関係の仕事をされている方はすごくコミュニケーション力があって、めちゃくちゃ陽気な方が多いんですけど、どっちかというと僕はあんまりそういうのは苦手で……。

大隅:え、そうなんですか?

(会場笑)

高橋:人としゃべるのが本当に得意じゃないほうなので。というところからやって、どっちかというとけっこう1人で遊ぶのが好きなタイプで、子どもの頃に将棋を教わって、親とやったり弟とやったりみたいな、けっこう内向的な子どもだったので。

逆にそういうのは今の仕事をやっていると、営業の人も……たぶん世間には、営業は明るくてしゃべりがうまくてというイメージがあると思うんですけど、意外と営業パーソンの中で「しゃべるのが得意じゃないです」とか、「好きじゃないです」という方はけっこう多いんですよね。逆にそういう方には、すごく理解されやすいところかもしれない。

「直属の上司」に対して評価は高くない

大隅:口を挟んで恐縮ですけど、過去に10冊(本を)出されていて、最初の本は『人を巻き込む仕事のやり方』なんですか?

高橋:そうです、そうです。

大隅:これは何年ぐらいに出されたんですか?

高橋:これは2009年ですね。

大隅:2009年。今は2026年だから、15、6年で10冊出されているってけっこうなハイペース。

大沢:ハイペースですか?

高橋:ハイペースなんですか?

大隅:1年から1年半で1冊ぐらいですよね。すっごいですね。いや、単純にお仕事とかをされていてめちゃくちゃ忙しいのに……。

高橋:いやいやいや。でも、けっこう本を書いたりするのは好きといいますか、まとめて言葉にするのはわりと好きなので、なんとなく頭の中でこうだなという感覚でやっている人もいっぱいいらっしゃるじゃないですか。だから、囲碁とかもそうだと……。

大沢:確かにそうですね。なんか言葉にしようとするとけっこう難しかったりしますよね。

高橋:なので、そういうのをスッキリさせる。あとは、けっこう営業も囲碁もすごくそうだと思うんですけど、思い込んで視野が狭くなってしまうとやはりうまくいきにくいみたいなところがあるので、それはわりといろんなデータとかロジックみたいなところで「実はこうなんですよ」という。

それが次のページの「例えば……」というところで、この例を出しているんですけど。今日はもしかしたら経営者の方もいらっしゃっているかもしれないんですが、けっこうふだん企業相手に仕事をしているので、だいたい組織で働いている人たちは直属の上司への評価は高くないんですよね。

例えばリーダーシップの研修とかで、「みなさんが、この人こそリーダーだと思い浮かべる人はどういう人ですか?」といったら、やはりさっきの大沢先生のお話で出てきたようなスティーブ・ジョブズとか孫正義とか松下幸之助みたいな人の名前が出てきて、「リーダーといえば私の上司です」みたいなことを言う人が受講生にいると、失笑が生まれるんですよ。

(会場笑)

高橋:たぶん、ほとんどのビジネスパーソンの人からすると、「いやいや、もう自分の上司とかはそんな大したことはなくて、そんな上司がすごいリーダーだなんて、なんてあなたはかわいそうな人なんだ」という、そういう視線が行くわけですね。

だから、5,000人の営業の方に「成果を上げられるようになったきっかけは何ですか?」と聞くと、やはり上司からのアドバイスってそんなにスコアが高くないんですが、だからといって上司が要らないというわけではぜんぜんなくて。





高橋:実はこれの上のほうからの並びに意味があるんですけど、一番最初のグループが「お客さまからのフィードバック」、次が「やり切った体験」ということなので。

上司はアドバイスではなく「流れ」を作る

高橋:世の中の上司の教え方は、例えば「あなたはしゃべりっぱなしだからしゃべるのをやめなさい」という、こういう感じの人がけっこう多いんですよ。

でも、そんなの本人もわかっているじゃないですか。しゃべり過ぎちゃいけないとわかっているんだけど、どうしたらいいかがわからない。そこをどういうふうにするとうまく回るのかを、今回ちょっと本の中で書かせていただいたんですけども。

ポイントは、お客さまからの感謝の言葉とかお客さまからの本音って、別に上司のアドバイスではないですよね。だから本当は上司が逐一教えてあげるよりは、こういうものが生まれるような流れを作る……流れを作るというのが囲碁的というか(笑)。

大沢:流れを作るのはすごく大事です。

高橋:そうですね。だから流れの作り方という観点から書いているんですよ。「上司が部下にこういう声をかけましょう」とか、そういうマネジメントとか指導の本はけっこうよくあると思うんですけど。それをずっとやっていると、上司が部下の人にずっとついていなくちゃいけないし。

だいたい上司は部下の人を見ると、「これができていない」と言いたくなるので、そうじゃなくて、どうやって流れを作るかという角度から書かせていただいています。

大隅:営業に限らず流れが舞い込んでいるチームは強いじゃないですか。スポーツの時でも、「なんかノっているな」というチームは、おそらくこれから説明されるサイクルがうまく回っている状態なのかなと思っていて、それを意図的に作り出すことができるという。

高橋:そうですね、はい。さっき大沢先生が「夢中になる」とおっしゃっていましたけど、「フロー状態」とか「ゾーンに入る」って、たぶんみなさんも言葉として聞いたことがあると思うんですけど。

だいたい世の中の上司の人というのは、無意識のうちになんとなく上司の存在意義を示すというか。やはり上司が部下に「君、これができていないじゃないか」と言うと、なんとなく上司の存在も満たされるみたいな。なんですけれども、中身を作るという角度から、今回は書いています。

「自分なりにやってみて」は効果が低い

高橋:次のページのかぎ括弧の中にせりふを入れているんですけど。何が入りますか? というのが、「まずは自分なりに考えてやってみて」というのは、これはたぶん日本の会社だとものすごく多い教え方なんですよね。


若手の人が、「課長、これはどうしたらいいですか? 企画書を作るのは初めてなんです」と言うと、「まぁ、まずは自分なりに考えてやってみな」とやはり言うんですけど。私ももうすぐ50歳で、社会人になった年は今みたいにワークライフバランスとかそういう言葉もあんまり言われない時代だったので、とにかく「背中を見て覚えなさい」とか、「苦労して覚えなさい」という時代だったんですけど。

やはりそういうので育った人は、つい部下の人に「まずは自分なりに考えてやってみて」と言うんですが、やはりけっこう(部下が)迷走してしまったり、ものすごく時間がかかっちゃったりするということで。

実は本の中でも書いているんですけど、この上側の教え方は効果が低いというのは、研究の世界ではもうけっこう出ているんですよね。すごくやりがちなんですけど、実は効果が低いです。どうやったらいいのかというのが、さっき「流れを作る」という話をしたんですけど、ちょっとお膳立てをしてあげて、後は自分なりに考えてやってみてと。

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